今回はそんな二人の冒頭っぽい部分のお話になるのかなぁ?
~神楽(高町なのは)サイド~
「どうなってるのぉこれぇ! 目が覚めたらいきなり知らない場所で寝てるし、しかも何今の私ぃ! 私の髪の色オレンジ色じゃないし瞳の色だって違うし! そもそもこれは一体誰なのぉ!」
鏡の前で仕切りにパニックに陥っているのは見た目こそ此処万事屋で働いている従業員の一人で自称銀魂のヒロインでもある神楽だが、その中身は全くの別人なのでそのせいでパニックに陥っていた。
「おぅい、朝からうっせぇぞ。一体どうしたんだよ。鼻くそでもくっついてたのか?」
「そんなんじゃないよ! って言うか、そもそも此処は何処で貴方は誰なんですか? 私を元居た場所に帰して下さい!」
「・・・はぁ? 何言ってんだお前」
「はぁ? って・・・だから、私を家に帰して下さいってーーー」
「お前の家は此処だろうが。まだ寝ぼけてるのか?」
話にならなかった。この目の前に居る銀髪天然パーマの男では全く話に進展が見られない。
かと言って、他に話せる人間はいない。後いるのと言えばヒグマ並みにでかい巨大犬くらいだ。
「おいおい、朝から何訳分かんねぇ事のたまいてんのお前。こっちは昨夜から二日酔いが抜けてなくて気持ち悪いってんだよ。分かったらさっさと着替えて外へ遊びにでも行って来い」
「そんな遊びに行ってる場合じゃないの! それよりも今のこの状況をなんとかしないとダメなのぉ!」
「はぁ・・・ったく、お前今朝から何か変だぞ? 何時もの口調はどうした。何時ものアルアル口調や変な中華なまりはどうしちまったんだよ。完全に標準語じゃねぇか。設定守れコノヤロー」
「設定って、それってどういう事なの? そもそも私此処の住人じゃないよ! 大体、私は神楽って人じゃないよ!」
仕舞には涙目になる始末だった。
必死に訴えてはいるのだが、相変わらず銀髪の男は訳が分からず面倒くさそうな顔をしてしまっている。
「おはようございまぁす」
そんな時だった。
近くで声がし、同時に引き戸が開かれる音がした。誰かが入って来たみたいだ。
「あれ、銀さんに神楽ちゃん、どうしたんですか洗面所なんかで集まって?」
「ぱっつぁんよぉ。神楽がなんか変なんだよ、俺もどうしたら良いか分かんねぇよ。こいつさっきから変な事ばっか言ってるしよぉ、口調も標準語になっちまってるし、仕舞にゃ自分は神楽じゃないって言ってるんだぜ? もう俺ついていけねぇよ」
「えぇ? 何ですかそれ。新手のボケですか?」
現れたのは眼鏡をかけた少年だった。銀髪の男に比べると少々影が薄く感じられるが今はそんな事どうでもよかった。
「お願い、私を元居た場所に帰して! 私は神楽じゃないの!」
「本当だ。確かに標準語喋ってるし、一体どうしちゃったの神楽ちゃん。幾らボケが楽しいからってそういつまでもボケてたら皆困っちゃうよ」
「・・・・・・」
駄目だった。この少年も結局取り繕ってはくれなかった。誰も彼もが自分を相手にしてくれない事実に次第に神楽(なのは)の中で苛立ちが募りだして来ていた。
硬く握りしめた両の拳がふるえている。
「とにかくだ、何時までもボケかましてねぇでさっさと支度しろ。今日は仕事なんだ。お前にも活躍してもらうからそのつもりでーーー」
「・・・ない・・・」
「へ?」
「ボケて・・・ない・・・」
「な、なんだって?」
「ボケてないって言ってるのおおおぉぉぉぉ!」
怒号と共に溜まりに溜まった怒りを感情のままに壁に向かって叩きつけた。
それだけであれば普通なら壁に手がぶつかってぶつけた手がじんじん痛む程度で済む話なのだが、今彼女の体は宇宙最強の戦闘民族と恐れられている夜兎族の体。
勢いよく壁に向けて放った手はそのまま壁を突き抜けて隣の部屋まで貫通してしまっていた。
「・・・・・・え?」
その光景に誰もが驚いていたが、一番驚いていたのはそれをやった本人であった。
「おまっ、何家壊してんだよ! こないだは風呂をぶっ壊して今度は洗面所の壁ですかぁ? 修理代だって馬鹿になんねぇんだぞ!」
「ごごご、ごめんなさい! 壊すつもりはなかったの! ただ、どうしても二人にはお話聞いて欲しくてそれで・・・それでーーー」
「銀さん・・・何か、神楽ちゃん何時もと様子が違いますよ」
「そ、そうなの・・・か?」
ようやく神楽の様子がおかしいと気づいた二人は相当ニブチンなご様子だったりした。
とにもかくにも、そんな訳で場所を移し、三人は応接室らしき場所に集まっていた。
「えっと・・・まず聞きたいんだけど・・・君は神楽ちゃんじゃないの?」
「はい、違います」
「違うっつったって・・・見た目はまんま神楽じゃねぇか。あれですか? 外見は似てても中身が全然違うってパターンの奴? 最近映画でやってたよね。【貴様の名は】って奴だっけ?」
「まぁ、それと似てるっちゃぁ似てますね。けど、それじゃ君は・・・一体誰なの?」
問題は其処であった。目の前に居るのが外見は神楽であっても中身は別人と言うのであればならば一体誰なのか聞かねばならない。
「はい・・・えと・・・私の名前は【高町なのは】って言います。海鳴市出身で、実家は喫茶店を営んでいまして」
「ちょっと待って! 海鳴市って・・・何処?」
「聞いた事ねぇ場所だな」
「そんな意地悪しないでくださいよ! 此処日本ですよね? 日本のどのあたりなんですか? 東京とかですか? それとも大阪とか?」
「「???」」
神楽(なのは)の問いに、銀時と新八は揃って首を傾げるだけでしかなかった。
「えと・・・それじゃ・・・此処は何処なんですか? もしかして、九州とか北海道とかだったりします?」
「何言ってんだよ。此処は【江戸】だよ」
「もっと細かく言うと江戸のかぶき町ってとこだよ」
「え・・・江戸・・・江戸って・・・あの、江戸・・・」
江戸と言うフレーズを聞いた途端、神楽(なのは)の表情が一気に青ざめていくのが確認できた。
その上、携帯のバイブレーションみたいにブルブル震えているのが見える。
「お、おい・・・どうしたんだよ?」
「神楽ちゃ・・・じゃねぇや。なのはちゃん、大丈夫?」
「江戸・・・江戸って・・・それじゃ此処は・・・此処は過去の世界なのぉ!?」
突然、神楽(なのは)は駆け出した。一心不乱に向かった先は外へと続く玄関への扉。
確かめねばならない。もし、彼らの言っている事が本当ならば、自分はとんでもない過去の世界にきてしまった事になる。
まさか、そんなアニメやSFや小説みたいな展開が起こる筈がない。
内心そう願いながら外へと飛び出す。だが、その淡い希望は音を立てて崩れさってしまった。
外からうかがえるのは木造の古ぼけた作りの家屋が並ぶ光景と、その近くを歩く着物にチョンマゲ。この時点で明らかに江戸だと認識出来た。
だが、いくつか理解出来ないのがちらほらあった。
まず、この江戸と呼ばれた場所なのだが、過去の世界にしては何処となく現代の技術が使われている事に気づいた。
そう言えば、最初に目を覚ました部屋にはテレビがあったし、江戸時代に蛇口のある洗面所なんておかしい。
次に、空を見上げて驚いたのは、空を飛び交う飛空船の数々だった。
江戸と呼ばれる地の遥か上空を幾隻もの飛空船が飛び交っている。
こんな技術は現代ではまず見られない。普通に船を飛ばす技術なんてある筈ないのだから。
最近の研究でどうにか車は飛びそうな話をしているがあんな大型な飛空船が飛ぶのは見た事がない。
最後に驚いた事は、道行く人々の中にちらほらとだが異様な姿をした連中が見られた。
その連中の特徴と言うのが、身に着けている制服は明らかに高そうなそれと思われるのだが、彼らの顔は明らかに何かしらの生き物を無理やりくっつけたような顔をしていた。
「え・・・こ、・・・これが・・・江戸?」
「そだよぉ。俺達の普段から住み慣れている江戸だよ」
彼女の問いに銀時はさも当たり前とも言えるおうに答えた。その答えを前に神楽(なのは)は、思わずその場にへたりこんでしまったと言うそうだ。
******
~高町なのは(神楽)サイド~
「誰アルかぁこいつはぁ!? 昨日まで超絶プリティビューティーな私の魅惑のボディは何処いったアルかぁぁ!?」
こちらでは高町なのは(神楽)が鏡に向かいこれまた絶叫をしていた。
しかしまぁ、よくそこまで自分の体に自信がもてるもんだ。原作終了したからと言っても其処まで変わってない筈なのにねぇーーー
「何か天の声辺りから罵倒された気がするアル。後で締め上げるアル」
これ以上酷い事言うとこちらが締め上げられかねないのでこの辺で切り上げさせて貰います。
「おぉいたた・・・朝から一体どうしたんだよ。変な夢でも見たのか? 兄貴に向かっていきなりドロップキックかますなんてヤンチャなのも大概にしてーーー」
「ほわちゃあああああああああああ!!」
「またげぶふぉぉぉぉぉ!!」
再び現れた見知らぬ男性に向かい再度ドロップキックを決める。そして、倒れた男にまたしてもマウントを取って今度は額を鷲掴みにする。
「おぅい、どうなってるアルかぁ? 目が覚めたら全く見知らぬ別キャラになってるアルよぉこれ。目が覚めたら何時もの空〇顔のキャラから全く見知らぬ作者の顔になってんぞゴラァ! 誰アルかこいつはぁ!? 私こんな目力の籠ったロリキャラ見た事ないアルよ!」
「いだだだだぁ! 頭が割れるぅぅぅ! さっきから何訳の分からない事言ってんだよなのはぁ! お前はいつも通りのお前じゃないか! ってか離して! お願いだから離してその手をぉ! つぶれる、頭がつぶれるぅぅぅ!」
なのは(神楽)の下で頭を掴まれた自称兄貴がじたばたもがいている。
だが、幾らもがいたところでマウントを取られた上に果実を握り潰さんが勢いでこちらの頭を掴んできているそれを払いのけることが出来ずいいように嬲られ続けていた。
「兄さん、何してるの? お父さんずっと待ってるんだけど・・・」
そんな騒ぎを聞きつけたのか、これまた見知らぬ誰かがやってきて事の惨状を目撃してしまった。
まだ10歳にも満たない妹がもうすぐ二十歳くらいになりそうな兄のマウントを取ってその頭を握り潰そうとしている摩訶不思議な光景をーーー
「み、美由紀ぃぃぃぃ! た、助けてくれぇ! なのはが、なのはの様子がおかしいんだ~~~!」
「ちょっ、ちょっとなのは! 朝から何してんの?」
「だぁかぁらぁ! 私はなのはじゃねぇっつってんだろうがこのアバズレがぁ!!」
「あ、アバっ!! ・・・何処でそんな言葉覚えたのよ! さては兄さん!」
「教えてない! 俺は断じて教えてないからなぁ!」
「ごちゃごちゃ言ってんじゃねぇよ! とにかく、私を元の体に戻すアル! 元のプリティビューティーな神楽ちゃんに戻すアルよぉ!」
「「神楽?」」
突然聞かない名前を言われてしまい、戸惑う姉と兄。
「な、なのは・・・その神楽ってのは一体誰なんだ?」
「もしかして、なのはの新しいお友達とか?」
「何言ってるアルか? 神楽は私の事アル。お前らの言うそのなのはって奴こそ誰アルか?」
会話にならなかった。はっきり言ってなのは(神楽)の言っている事はこの二人には分からないし、逆にこの二人の言っている事はなのは(神楽)には全く理解出来ていなかった。
「と、とにかく・・・朝ごはんにしない? もう用意は出来てるしさ」
「マジでか!? キャホーい! お腹ペコペコアルゥ!!」
会話より腹の虫。そう言わんがの如く二人を無視して食卓へとすっ飛んでいくなのは(神楽)。そんな彼女を見て深くため息を吐く二人。
「なぁ、今日のなのは・・・何か変だろ?」
「う、うん・・・そうだね・・・何か、何時もと全然違うって言うのは分かった気がするよ」
たった数分程度だと言うのに物凄く疲労を感じてしまっていた兄恭也と姉美由紀であった。
つづく
あんまり話が進まなかったかも・・・反省orz