銀魂パートは少しお休みです。
退屈な塾が終わり、蛇の餌・・・もといネズミもどきを、動物病院に預けて、現在なのはは自室のベットの上で大の字になっていた。
「疲れた・・・マジで疲れたアル」
それは肉体的疲労というのり頭脳的疲労と言ったところだろうか。
元々江戸では勉強なんてしてこなかった。
せいぜい簡単な計算や常識範囲での読み書き程度の知識でもやっていけたので然程気にしていなかったのがここに来て仇となってしまった。
「この世界の少年少女は大変アルなぁ。毎日こんな思いで勉学しているなんて。私感心しちゃうヨ」
そう思っているのはあんただけだろうと思ってしまうのはこれを読んで割る皆様もきっと同じ思いなのだろうと思います。
「はぁ、憂鬱アル。皆は元気にしてるアルかなぁ?銀ちゃんに姉御にババァにキャサリンにヅラにマダオに定春に後は・・・そんなもんか」
「僕の事忘れてるぅぅ!」何処かでそんなツッコミが聞こえてきそうだが生憎神楽には届きそうにない。
後はこのまま明日の朝まで眠って学校の帰りに例のネズミもどきを引き取る。
明日の段取りを考えていた時だったーーー
【助けて・・・助けて下さい】
またあの声が響いてきた。
だが今はすっかり夜の時間。良い子は眠るだけなので無視する事にする。
【ちょっ!無視しないで!お願い助けて!今すごくやばいんですよ!】
なんとも切羽詰まった感じにまた声が聞こえてきた。
うん、面倒だし無償で助けてもらおうなんて虫が良すぎるのでやっぱり無視する事にする。
【お願い助けて!お礼ならしますから!とにかく今すぐ助けて!ヘルプ!ヘルプミー!!】
ほほう、今お礼ならすると言ってたな。
その言葉に偽らないのかな?
もし助けた後で「あ、やっぱさっきの無しで」なんてオチじゃないよね?
【します!必ずしますからお願い助けて!このままだとマジで僕ヤバいから!】
やれやれ、しょうがないなぁとため息まじりに上着の袖を通した。
今の時間外出したのがバレれば家族に怒られるが、まぁその時は例の声の主にでも責任転嫁すれば良い訳だし、何より久しぶりに暴れたかったから今回だけは特別に助けてやる事にしよう。
そう勝手に納得しつつスニーキングしつつ玄関を目指した。
『こちらナノーク!大佐、応答願うアル』
【誰大佐って?もしかしてそれ僕がやるの?】
『んだよノリ悪いヤツだなぁ。そこはちゃんとノレよ!台本ちゃんと呼んできたのか?あんまプロ舐めてんじゃねぇよシャバゾウが!』
【なんで怒られてるの僕?えぇっと、よ、よし!ならば続いての指示だがーーー】
『あ、やっぱウザいんで良いアル。すぐ行ってやるからとりあえず黙って待ってるヨロシ』
【チックショーーーーーーーー!!!】
なぜか脳内に響いてくる声とそんな三文芝居をした後何の問題もなく家を出る事に成功した。
「確か、あの蛇の餌もどきは動物病院に預けた筈アルから、まぁどうせ蛇にでも喰われかけてるんだろうし、とりあえず助けに行ってやるか」
そう言って暗い夜の道を一人走るなのはであった。
因みに、お子様の夜中の一人歩きは大変危険なので絶対にやらないでくださいね。
***
夜の静寂を破るかのように静まり返った動物病院を何かが襲撃した。
それは全身真っ黒のけむくじゃらな何かだった。
それしか分からない。こんな生き物実際に生息していないだろうし。
一つわかる事と言えば、そいつの狙いは今日ここに運び込まれたフェレットだと言うことは確かだった。
「狙いは僕・・・と、言うより僕の魔力か?だけど、僕だってそう簡単にやられてやるもんか!」
強がっては見たものの現在の彼にこのけむくじゃらを撃退する余力はなかった。
こいつの追跡にだいぶ消耗してしまったし不慣れな土地の上に体内の魔力循環が上手く行かず八方塞がりになった時の襲撃だ。悪い材料が多すぎた。
はっきり言って分が悪いなんてレベルじゃない。ほぼ詰みの状態と言っても良い。
「す、少しでも・・・ここの人達の被害を減らさないと・・・わっ!」
此処では被害がでると人気のない場所へ移ろうとしたがそんな悠長に敵が待ってくれるはずもなく、有無を言わさず攻撃してきた。
決まった形がないからだろうか自在にその形を変異させてこちらに襲い掛かってくる。
体の一部を鋭い槍状に変化させてそれを放ってきた。
とっさに身を翻してかわしたものの、外れたそれはコンクリートの地面を深く抉っていた。
その威力に戦慄が走る。まともに食らえば終わりだ。
それが隙となってしまい、敵の突進を許す事となってしまった。
気がついたときにはそいつの突進をもろに喰らってしまいかなりの距離を跳ね飛ばされた後に地面に叩きつけられた。
「い・・・づぅ・・・」
激痛に意識が持っていかれそうになったがなんとか持ち堪えた。此処で気を失えばそれこそ本当に終わりだ。
倒れるわけにはいかない。だけど、今の自分に一体何ができるのか?
自分自身の不甲斐なさがこれほど恨めしく思うとはーーー
負担に抵抗する気力もなくなったかと目の前のそいつは不気味な笑みを浮かべながら近づいてくる。
後はその不気味な口で獲物を咀嚼するだけ。思わずそいつの顔から笑みが浮かんできた。
「ホワチャァァァーーー!!!」
それは、突如横から飛んできた。
化物の横面に向かいまっすぐに飛び蹴りを放ち、そいつを壁に吹き飛ばした。
「き、君はーーー」
「おぉう、まだ生きてたアルかぁ?よく頑張ったアル!後の事はこの私に任せるが良いネ!」
そう言ってなのはが目の前に横たわる小動物相手に自信に満ちたサムズアップをして見せた。
それだけの自信が一体どこからくるのか不思議だったが、今はそんなことを詮索してる余裕はない。
「き、きをつけて!あれはこの世界に存在してはいけないものなんだ!」
「さっき蹴飛ばしたヤツアルか?馬糞ウニの親戚とかじょねぇの?」
「バフっ?!と、とにかくあれは危険な存在なんだ!元はロストロギア、ジュエルシードと言う宝石状だったんだけど暴走してしまって。しかもこの世界の魔力に順応したらしくてとても強大な力を持っているんだ!だからそいつはーーー」
「話が長い!!」
「えぇ!!」
いきなり怒鳴られてしまい困惑してしまった小動物を前になのはは面倒臭そうに頭をかいていた。
「ようするにあれは何アルか?10文字以内で説明しろや!」
「そ、そんな滅茶苦茶なぁ?!」
「さっさとしろよ!でないとこのまま帰るアルよ」
「ぐぬっ!あ、あれは・・・要するに【メッチャヤバい奴】だよ」
「ふむ、9文字アルか。良くまとめたもんアル。で、あれは何アルか?」
「だぁかぁらぁ!つまりあれはロストロギアーーーー」
「まぁ、要するにアレはメッチャヤバい奴で今すぐぶちのめさないといけない奴ってのは理解したアル。お前はそこで待ってな。あんな馬糞ウニなんて一発で消し炭にしてやるネ!」
腕を鳴らしつつ壁に叩きつけた馬糞ウニへと向かう。
その後ろで「危険だ!」とか「生身でなんて無茶だ!」とか喚いているが全て無視する。
見た所ただでかい馬糞ウニみたいだし江戸の時で戦ったエイリアンの時と同じように適当に殴ればそれで仕舞い。
そう思っていた。
そう、【元の体であれば】・・・だがーーー
トドメの一撃とばかりに固く握りして締めた拳を突き出した。
だが、その渾身の一撃は馬糞ウニの体に弾かれてしまい大きくのけぞってしまった。
そこへ再度馬糞ウニの突進が今度はなのはを襲った。
鈍い激突音が響く。馬糞ウニの突進をもろに食らったなのはが放物線を描きながら遠くへと跳ね飛ばされていた。
「ゲッホ!わ、忘れてたアル・・・この体・・・結構虚弱だったアル」
先の飛び蹴りが決まったのですっかり忘れていたが、今の神楽の体は夜兎族の強靭な体ではなく生育の未熟な華奢な少女の体だった。
これでは江戸の時みたいに殴って仕舞いとはいけそうにない。
それどころか馬糞ウニからすれば餌が自分からやってきたと喜ばしい状況になる。
「君!大丈夫?!」
「う〜ん、大丈夫・・・じゃないかも?」
「なんでそんな他人事なんだよ!あんな無茶な真似して!」
「いやぁ、元の体だったらワンチャン行けたアルよ。ただ、今のこの体は弱すぎてダメアルな。もしこの体の持ち主に会える時が来たら体を鍛えるように言っておくネ」
「言ってる場合じゃないだろ!このままじゃ僕達揃って奴の胃の中だよ!」
「そうアルなぁ・・・困ったアル」
意識がはっきりしてないのか偉く他人事で話す彼女。
見れば額から血を流しているし恐らく骨も折られてる筈。
こうして意識を保ててるだけでも奇跡としか言いようがない。
しかし、それは実際には奇跡などではなく、神楽自身が過去に戦い抜いた実績によるものが大きかった。
とは言え、今のままでは勝ち目がないのは明らかな事。
「もうこうなったら、これに賭けるしかない!」
そう言って倒れたなのはの前に置いたのは赤い球だった。大きさ的にはビー玉くらいだろうか。
「それ、何アルか?ラムネの景品とかアルか?」
「これはレイジングハート。インテリジェントデバイスと呼ばれる・・・要するに武器みたいなものだよ!」
なのはに難しい説明は不要と判断したのか偉くざっくりと説明してくれた。
「ほほぅ、ぶ、武器アルか・・・いててーーー」
ゆっくりと身を起こす。
右腕の動きがおかしい。多分折れてるーーー
それでもなんとか起き上がりレイジングハートを手に取る。
「で、これをどう使えば良いアルか?ぶん投げるアルか?」
「僕に続いて!我使命を受けし者なり・・・契約の元その力を解き放て・・・」
「わ、我・・・使命を・・・受けし・・・も、の・・・」
まともに詠唱できていない。それもそうだ。ダメージが大きすぎて立つ事すら困難な現状で長い詠唱なんて言えるだろうか?
だが、詠唱しなければこれは使えない。辛いが今はそれしか打開策がない。
「頑張って!続きを!!」
「け・・・契約の、元・・・その、力を・・・」
「危ない!!」
ふらつきながらも必死になんとか詠唱する。
そんな状況をいつまでも敵が待ってくれる筈もなくこちらが動けないところを畳み掛けるように今度は自身の体の一部を鞭のようにしならせて放ってきた。
放たれたそれは鞭のようにしなり、縄のように叩きつけた対照を絡め取り自身の手元へと引き寄せた。
身動きが取れない今のなのはは格好の獲物に過ぎない。
「ぐ!がぁ!!あぁぁ!!」
絡みついたそれがなのはの体を締め上げていく。
彼女の顔から激痛と苦悶の表情が浮かび上がる。
「駄目だ!意識を手放したら駄目だ!頼む!早く詠唱を!」
「ち、ちか・・・ら・・・を・・・と、とき・・・は・・・なーーー」
詠唱している間も体を拘束しているそれはさらにキツくなってくる。
骨の軋む音が聞こえる。臓器を圧迫され、呼吸がまともに出来なくなってきた。
(ダメアル・・・体が、言う事聞かなくなってきたネ・・・大体何アルかこれ!こんなやばい時に詠唱とかそんなまどろっこしい事やらせんじゃねぇよ!)
ふつふつと、なのはの中で焦ったさが怒りにすり変わってきた。
こんな馬糞ウニなんぞにやられてる事にも腹が立つが、何よりこのまま良いように嬲られるのは我慢がならなかった。
「い・・・良い加減にしろよこのポンコツがぁぁぁ!さっさと起動しやがれボケがぁぁぉぁーーー!!」
それは、詠唱でもなんでもなく、ただの罵声だった。
しかし、その声を聞いたレイジングハートから光が発せられた。
「き、起動した!?詠唱もしてないのに・・・これが、この子の素質なのか?!」
下の方で小動物が驚いているが一番驚いているのはなのは本人だった。
「こ、これで・・・どうすれば良いアルか?」
「想い描いて!君の戦う姿を!それをレイジングハートが読み取って形にしてくれるから!」
「私の・・・戦う姿ーーー」
その時、脳裏に浮かんだのはかつて江戸で暴れ回っていた神楽の姿だった。
真紅のチャイナ服を身に纏い傘を振り回して数多のエイリアンを蹴散らしてきた時の彼女本来の姿がーーー
「私が戦う姿と言ったら、これしか無いネ!」
光がさらに強まった。
彼女の中に思い描いた戦う姿をレイジングハートが読み取り形作りだしたのだ。
眩い光は馬糞ウニを吹き飛ばし、なのはの姿を闘う姿へと変貌させていく。
「す、凄い魔力だ!」
その光景を彼はただ見つめていた。
光が収まった時、其処には闘う姿をしたなのはが立っていた。
それは、一言で言うなら『赤』だったーーー
チャイナドレス風の赤い衣服に身を包み、手には巨大な傘が握られていた。
これが、彼女が思い描いた闘う姿なのだろうか。
「やっぱ、私には傘が欠かせないネ!」
左手に持たれた巨大な傘を自在に振り回して感度を確かめる。
悪くない。寧ろ元の体に戻ったような感じさえある。
これならば行ける!
「良く聞いて!それは元々砲撃戦に特化したデバイスなんだ!だから相手と距離をとってーーー」
「そんなまどろっこしい事しないアル!こいつの使い方はこうアルヨォォ!!」
叫ぶやいなや飛び上がり傘を振りかぶる。
そして、真下にある馬糞ウニ目掛けてそれを一気に振り下ろした。
突然の事で馬糞ウニは動かずにいた。
もしくはどうせ効かないだろうと高を括っていたのか。
もしそうだとしたら、それはそいつの命運を分けることとなった。
振り下ろされた傘の一撃は、馬糞ウニの体を真ん中から真っ二つに引き裂き、そのままそいつの活動を停止させてしまった。
「か、格闘!?砲撃用デバイスで格闘戦?!」
「み、見たアルか!こ、これが・・・私の・・・た、た、か、いーーー」
そこまでが限界だった。
度重なる負傷に多量の出血。ここまで意識がもっただけでも大したものだぅた。
それが、敵を倒したことによる安心感により彼女の意識がその場で断ち切られ、地面に倒れ伏してしまった。
すぐにでも助けに行きたかったのだが、肝心の彼もまた限界が来てしまい、その場に倒れ伏してしまった。
この世界に来て初の戦いがなんとも痛々しい勝利となった瞬間である。
ついに魔法少女になれたなのは(神楽)ちゃん。しかしその勝利はとても痛々しい結果に終わってしまった。
今回のなのはのバリアジャケットは中身が神楽なので元の世界で神楽が着ていた服をそのままバリアジャケットにした感じです。
なのでレイジングハートも杖状ではなく傘になってます。
尚、一応これでも砲撃は出来ます。
今後の活躍を期待しててくださいね