MVPの人   作:ゆんあ

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「なぁ、三っちゃん。一年に生意気なのがいるらしーぜ?」

 

 授業をサボって校舎裏でタバコを吹かす堀田が三井に話しかける。

 

「生意気な一年? そりゃ、顔を拝みに行かねーとな」

 

 堀田の吹かしたタバコの煙をうざそうに手で払いながら、読んでいた漫画を置いて寝転んでいた三井が体を起こす。

 

「で、なんてヤツなんだよ」

「宮城リョータ、ピアス開けてチャラチャラしたガキだってよ」

 

 その時は三井も堀田もただ宮城の顔を見て、いつものように軽くしめに行ってからかうかとニヤニヤとしてるだけだった。

 

 **

 

「おい、宮城リョータってのはおまえか?」

「ああ? んっだよ」

 

 放課後、宮城を探しにウロウロしてた二人は宮城を見つけた。

 見つけた堀田が宮城の肩を掴んで引き止めようとすると、威勢のいい態度にイラついたのか三井が口を開く。

 

「おうおう、一年のくせにセンパイに対してその態度はよくないぜえ?」

「すんませんね。で、そのセンパイ様がオレになんの用っすか」

「はん? 随分と威勢がいいな。おい。ちょっと面貸せよ、クソガキが」

 

 堀田が宮城の首元を掴み、これでもかというくらい顔を近づけて睨む。それに怯む様子もなく、宮城も年齢に似合わないイカツイ顔の堀田を睨み返している。

 

「離せよ、部活があんだよ」

「お? お偉いこった。部活だってよ、あはははは」

 

 生意気だと聞いていた宮城が部活をやってることに驚きつつ、やはり宮城の態度が気に食わない二人。

 

「どうせまともに行ってないんだろ? 都合のいい言い訳だこった」

「うっせぇな。遅れると赤木のダンナがうっせぇんだよ」

「……赤木」

 

 ケラケラと笑ってた三井の表情が赤木と聞いて、急に無表情になる。

 

「バスケ部か。堀田、離してやれ」

「ん? いいのか、三っちゃん」

 

 三井がなぜ急に離してやれと言ったのかわからない堀田は不思議そうな顔をして、宮城から手を離す。

 

「わりーな。んじゃあな……っ!?」

「行かせるわけねぇだろうがっ!!」

 

 堀田が手をはなし宮城が後ろを向いて手をヒラヒラと振りながら、その場を離れようとした瞬間──。

 

 三井が宮城の背中に蹴りを入れた。

 

「クッソ、何すんだよ!!」

 

 不意打ちの三井の蹴りでよろめいて膝をついた宮城は、体制を直してニヤついてる三井を睨む。

 

「生意気な後輩を優しい三井センパイが、指導してやるって言ってんだよ。宮城リョータくん?」

「ってめぇ……!!」

 

 おちょくるようなニヤケ顔の三井の拳が宮城の顔面に飛んでいく。

 殴られて口の中が切れたのか口の端から血を流すも、三井から視線は外さない宮城。

 

「そこ……退けよ」

 

 宮城はペッと口から血を吐き出す。

 

「オレは、部活に行くつってんだろーーがああああ!!!!」

「っ!!」

 

 宮城が三井に勢いよく飛び蹴りをすると、三井の腹に入る。

 反撃して来ると思ってなかった予想外のダメージに腹を抱えながら三井がしゃがみこむ。

 

「み、三っちゃん?!」

「こんの……ふざけやがっ……」

 

 三井がやられて、慌てて駆け寄ろうとした堀田だったが宮城が次の行動に驚いてピタリと動きが止まる。

 

「三井サンだか、センパイ様だか知らねえけどよ。こっちもヤラれたら黙ってらんねえよ……なぁああっっ?!」

 

 おりゃああああ!! と、叫びながら三井の肩を掴んで宮城が頭突きを凄い勢いをつけてくらわす。

 

「ぐあっっっ」

 

 宮城の頭突きが三井の顔面に直撃。

 鼻血も流しているのか、口元を抑えながらブツブツ何か言いながら宮城を凄い顔で睨んでいる。

 

「んじゃあ、オレ部活あるんで」

 

 三井の睨みを無視して再び宮城は、その場を離れようとする。

 

「ぶざんじゃ……ねええええええよ!! このクソがあああああっっ」

 

 三井がキレて宮城に飛びかかる。

 さっきもキレていたが、それ以上だった。

 堀田も流石にこれ以上の乱闘は、ヤバイと思ったのか止めようとするが、宮城もそれに合わせて同じくらい頭に血が登っている。

 止めようにも三井と宮城にふっ飛ばされ、堀田は見てることしか出になくなっていた。

 

 **

 

 ──ズキン。

 

 鼻が折れてたのか、その痛みで三井が目を覚した。

 

「……んだよ。病院かよ」

 

 目が冷めた三井は、真っ暗な部屋の天井を見てボソッと呟く。

 見慣れた天井ではない。が、三井には高1の初めにもよく見ていた天井だった。

 

(ちっ。イヤなこと思い出させやがって。この病院もあのクソ宮城もっ)

 

 忘れていた……忘れようとしてた、バスケットボールのことを三井は思い出していた。

 

 中学生の時に神奈川県大会で優勝し、最優秀MVPを取って湘北のバスケ部員だったこと、湘北での練習日初日に左脚を負傷してやさぐれてたことを──。

 

「あぁっ!! ちきしょうっっ」

 

 両拳をベットに叩きつける。

 ボフッと軽い音だけを残して、病室は静まりかえっていた。

 イラつきとモヤつきを抑える為に、三井はギュッと目をつむり必死に眠りにつこうとした。

 

 

「はーい!! おはよう。三井くん、起きなさーい。朝食の時間よー」

 

 三井の応答も聞かずに個室の病室に、看護師がズカズカと入ってくる。

 

「うるせえな……」

「また、遅くまでバスケの雑誌見てたの?! ハイハイ、起きて朝ごはんしっかりと規則正しい生活する!」

「はぁっ?! いてぇぇ?!」

 

 何ふざけたことを!! と、思い体を勢いよく起こそうとするとなぜか左脚にズキンと痛みが入る。

 

(なんだ?! 脚も怪我してたか? いいや、痛みがあったのは鼻だけだったはず)

 

「ちょっと、三井くん?! 調子乗って勢いよく起き上がったらダメじゃない。まったくもう、朝食置いてくわよ。無理しちゃダメよ」

「…………」

 

 看護師が部屋から出ていくのをボーっと見送る。

 

 前に入院した時もあの看護師に同じようなことことを言われたことがある気がして、脚の痛みでバスケのことを一瞬忘れていたがまた頭によぎる。

 

「なんだってんだよ。取りあえず飯食うか……ん??」

 

(そういや、宮城に頭突きされた時に、前歯折られて余計に腹を立てたはず……なんで前歯があるだ?)

 

 鏡を見ようと立ち上がろうとサイドデーブルに手を掛けて立ち上がろうとしたが、やはり脚の痛みがズキンと響く。

 その代わりにまたもう一つの違和感を発見する。

 

「なっ?!」

 

 サイドテーブルに目をやると、そこにはどこにあるのか、捨てたのかすら覚えてない中学の時にMVPを取った時のメンバーたちとの集合写真があった。

 それを見つけて、慌てて病室を見渡す。

 花が飾られた花瓶に、三井が好きだったバスケ選手のポスターが貼られている。

 

(それに昨日作ったはずの、すり傷も打ち身の痛みも顔にも腕にもない。どういうことだ……?!)

 

 手のひらをジッと見る。

 バスケを辞めてから、自分のカラダのことなんか考えることはなかった。だかそれでも、自分のカラダの小さな違和感くらいは気付く。

 その違和感を嘘だと思いつつ、腕を横に広げてみる。

 

(腕が短くなっている……?)

 

 違和感を確認しながら、指先を見つめているとふと病室の窓ガラスに自分がうっすら映ってる姿が目に入った。

 

 そこには湘北に入学した頃の三井の姿が映し出されていた──。

 

 **

 

 ──コンコン

 

 日も暮れて暗くなってきた、病室の扉をノックする音が聞こえる。だが、それを無視する三井。

 

 朝からずっと天井だけをジッと見ながら、三井は混乱していた。

 自分が一年の時に怪我した時に、なぜか戻ってしまったのかは一応は理解した。

 

(なんで怪我した時なんだよ……って、何を?! オレは、もうバスケなんて)

 

 というのを頭の中で何回も繰り返していた。

 

 ──ガラッ

 

「?!」

 

 何度かしつこくノックがあったのは気付いていたが、無視を続けた三井。待ちくたびれたのか、中からの反応も気にせず病室の扉が開いた。

 

「……いたのか」

 

 勝手に開いた扉の方をキッと睨みつける三井。

 それを気にも止めないでスタスタと、ベット横の椅子に湘北の学ランを着た男は黙って座った。

 

「…………」

「…………」

 

 お互い沈黙。椅子に黙って座ってる人物に三井は心当たりはない。

 学ランの男は黙って三井の足を見ながら、ボソッと呟く。

 

「今日、湘北バスケ部の練習初日だった」

「はっ?!」

 

 なぜ知らないヤツがバスケ部の事を自分に報告しに来たのかと、驚いて声を三井は上げたがそれでも何かがおかしい。

 前に三井が左脚を怪我したのは、練習初日のはすだった。

 

「じゃあ、オレ帰る」

「お、おい! おまえ、誰だよっ」

 

 誰だと聞かれて、ん? と言う顔をして、何かを思い出したのかまたボソッと言葉を口にする。

 

「流川楓。同じ学校で同じクラスになった」

 

 それだけ言って、スタスタと病室を出て行ってしまった。

 

「流川楓……? 同じクラスだと……?」

 

 また、三井はまた混乱する。

 一年の時に流川楓というヤツがいくら三井がやさぐれてたと言っても同じクラスに居た記憶はなかった。

 

 流川楓は三井が三年になった時に一年として入学してくるはずの人物。

 宮城とケンカをして入院した当時は、二年だった三井は知らなくて当然だった──。

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