MVPの人   作:ゆんあ

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「病院から抜け出さずにいてくれれば今週末にでも退院は出来るぞ、三井くん!!」

「……今週末?!」

「そうだよ。本当は入院なんて5日位でよかったものの君が抜け出すから、適切な治療ができなかったからなんだよ?」

 

 三井の怪我は前に怪我したときのものと同じだった。

 前に入院したときは、二週間以上は入院していた。それが今回は一週間と少しで済むと医者が言うので三井は驚いたのだ。

 

「いやあ。しかし高校の入学式前日に入院なんて三井くんはついてなかったね。あ、だからと言ってすぐにバスケットはしてはダメだよ? 退院してから一週間は無理せずそれから様子みながら運動を開始しよう」

 

 医者の診察が終わり、松葉杖をつきながら病室に戻る。

 前は医者の言うことを聞かずに、病院をぬけだして学校に行き。退院してからは痛くないと調子に乗り、赤木に負けたくないと、みんなと同じ練習メニューをこなして、悪化させた。

 そして、今回は自分の置かれてる状況がわからず病室でジッとしていた。

 

(今週末に退院して一週間は運動できなくても、それを守ればバスケがまた出来る? それにインターハイの予選にも……)

 

 そう考えて、頭をブンブンと横に振る。

 

 ──バスケがやりたい。

 

 なんて自分が今でも思ってたことに気づき、考え直せ。と、必死に三井は押さえ込もうとした。

 

(それにしても、オレは入学式の前日に怪我ってどうやってしたんだ?)

 

 バスケをまたやるかは別として、高一の時の自分になってしまったことはもう受け入れることにはした。

 だが、三井の知ってる高一の時と状況は違う。

 

 怪我をした日と自分が入学するはず年度が二年、遅いということが発覚したからだ。

 

 怪我をしたとしたら、湘北に入学して安西先生にまた会える! と、浮かれて近所のバスケゴールがある公園で、練習してた時かもしれない。

 とは、予想は立てているものの、前の記憶の三井は軽くシュート練習をしてたと言う記憶しかない。どう考えても、練習の時ほど激しくは動いてはない。

 

 やはり謎が深まるばかりだった。

 

 **

 

「入院していて、入学式には出れなかった三井だ」

「うっす」

「あそこの空いてる席が三井の席だ。みんな、なんかあったら助けてやれよー」

 

 三井が退院して初登校の日。

 クラスを見渡すと三井の知っている顔はやはり、窓際の席で突っ伏して寝ている流川楓以外はいなかった。

 そうは言っても入院時に一度だけ見舞いなのか、その時に見ただけだったが。

 

 HRが終わると、三井の周りに人だかりが出来る。

 

「三井ってバスケの大会で、MVPとったんだよな?!」

「やっぱりバスケ部入るのか?」

「もう怪我は大丈夫なんだろ?」

 

 いきなりクラスの男たちから、三井は質問攻めの洗礼を受ける。

 やはり聞かれることはバスケのことばかりで、前の自分だったら調子に乗ってここでも「湘北で全国制覇するためにバスケ部に入る!」とビックマウスで声高々に宣言していた。

 キレるわけにも、無視するにも、踏ん切りがつかず笑って誤魔化すことしか出来なかった。 

 

「はあ……疲れる」

 

 昼休み他のクラスの人まで集まってきて、朝と同じ質問攻めに合うと思い、教室から逃げ出すように三井は屋上に来た。

 

「……うがっ」

「うわ! なんだ?!」

 

 ブツブツと考えごとをしながら歩いていると、何かを三井は踏んだ。

 足元を見ると、流川が踏まれて声を上げたクセに寝ている。

 

(こ、こいつ!! 三限目からいないと思ってたが、こんなところで寝てやがったのか)

 

 三限目から居なかった流川を、三井は聞きたいことがあって探していた。

 むしろその前から話しかけようと思っていたが、声を掛けるタイミングがどうしても合わなかった。三井は男どもに囲まれるし、流川は教室にいても寝ていたからだ。

 

「ふぁ……ん? 三井寿?」

「お、おう」

 

 流川を起こそうと、肩を叩こうとした時に丁度よく流川が目覚めた。

 踏まれても寝てるくらいだ、すぐには起きないと思っていた流川が思ってたより早く目覚めて三井は固まる。

 

「なんだ?」

「なぁお前、何しにオレが入院した時に見舞いに来たんだ」

「勝ち逃げされたくねえから、見に行った」

「勝ち逃げ?」

 

 どうやら、何か勝負をしていたらしい。

 バスケ部のことを報告して来たくらいだ、きっとバスケ関係のはず。

 

「ぶっ倒れる前に、あんたが先に点数入れた」

 

 それを聞いて、確信に変わる。

 

(1on1でもしてたか? また無理な体制で、シュート入れよとしての怪我か。それだけオレが必死にやってたってことは、こいつ結構出来んのか?)

 

 それでも、今の三井にはその記憶はない。

 が、少しだけ心当たりがあった。

 

(二年も経ってれば、身長は伸びるよな──)

 

『よーし!! 明日は入学式だ。湘北バスケ部で心機一転でやってやるぞー!! おりゃああああ』

 

 入学式前で通ってた卒業した中学の体育館も使えず、近所のバスケコートがある公園に来た当時の記憶の三井。

 

『……ん?』

 

 三井はどこからか視線を感じる。

 

(お。入学式前で体育館が使えない、バスケ難民仲間か?)

 

 中学生だろうか。バスケットボールを腹で抱えて、三井の練習をジッと見ている背の低い男の子がいる。

 

『おい、チビ助。一緒にやるか? こっち来いよ!』

『?!』

『あ、おい?!』

 

 三井に声を掛けられて驚いたのか、その男の子は走って逃げてしまった──。

 

(あのチビ助か? 流石に今回はチビ助って声は掛けてねえよな。今のオレより流川でけえし)

 

 三井が昔のことを思い出していると、流川から声をかけられる。

 

「部活いつから来れんの?」

 

 流川の中では、三井がバスケ部に入ることは確定しているようだ。

 

「怪我治らねえの?」

 

 三井の返事が待ちきれないのか、流川はもう一度質問する。

 

「あぁ? あ、来週くらいから、運動していいとは言われてる」

「……来週か」

 

 三井の返事に何か「うんうん」と、納得している流川とは裏腹に、三井はギョッとした顔をしている。

 

(なんで、オレは普通に答えてんだ?! クソ……昔のことなんかを、考えてたからか?)

 

 **

 

 バスケ部主将は赤木。副主将は木暮。

 

(やっぱり学年が変わってるのは、オレだけか)

 

 運動してもよい許可が出るまで、1週間。

 三井は自分の記憶との違いを、探すため情報を集めていた。

 

 だが自分が堀田と関わってないことくらいで、特には目新しい記憶違いはなかった。

 それに、この時期……三井が三年になってたかもしれないという時間は、今の自分も前の自分も過ごしていない。

 

 そして、運動する許可が出た当日。

 部活が始まる前の授業をサボり、丁度使われてなかった体育館に三井は一人でいた。

 

 ──ダムダム……ダムッ

 

 三井しかいない体育館に、三井が弾くボールの音だけが響く。

 

(二年ぶりか……)

 

 実際は数週間なのだが前の記憶しかない三井には、そのボールの感触とゴムの匂いがすごく懐かしいものだった。

 

 ──ポスッ

 

 三井が投げたボールは、綺麗な放物線でボールがゴールに吸い込まれていく。

 一本入れると、次から次へと違う形のシュートを無心で投げ始めた。それでも、次々と投げるボールは全て命中し、ゴールに吸い込まれていく。

 

「わーはっはっはっはっ!! なんだね、そのへなちょこシュートは!! これだから、イヤだねシロートくんは。シュートは、ダンク、スラムダンクですよ?」

 

 無心にシュートしていた三井の集中力をかき消すように、デカイ声が体育館に響きわたった。

 

「はあ?!」

 

 集中力を切らされたからか、三井のシュートをバカにされたからか、もしくは両方か。

 三井がキレて思わず声を上げて、睨みつけるように振り返る。

 

(なんだ、この赤毛は。邪魔しやがって)

 

「よーし、よーし! 暇潰しに、この天才桜木花道が勝負してやろう!!」

「はあ?!」

 

 本日二度目の三井の「はあ?」だ。

 三井の不機嫌な表情を無視して、ズカズカと笑いながら桜木は三井の目の前にやって来た。

 

(この赤毛、背も高えしガタイもいいな。オレのことシロートとか騒いでたが、こんな目立つ赤毛今まで見たことねえから、一年か?)

 

「おまえ、バスケ部か?」

「天才桜木をしらんとは! 湘北バスケ部エースとは、このオレのことよ。わーはっはっはっはっ」

「…………」

 

 この自信過剰の意味のわからない男、桜木に三井はポカーンとする。

 

「どうしたのかね、シロートくん。勝負はせずに逃げるのかね、しょうがない! 次期キャプテンのスーパーダンクを見せてやろう!!」

 

(いや、なんも言ってねえし。時期キャプテン……バカかこいつ)

 

 呆れた視線を三井は桜木に送るが、それが本人に届くわけもなく勝手にドリブルを始めた桜木。

 とりあえずは見とこうと、桜木に視線を向ける。

 

 ──ダムダダムダムダムッ

 

「どっちが素人だよ……」

 

 桜木のドリブルを見て三井はつぶやく。

 

(隙だらけのドリブルだな)

 

「はあっ……」

 

 本日三回目の「はぁ」は、ため息だ。

 そんなため息をしながら、三井はスタスタと桜木に近づく。が、それに気づいてない桜木は、自身満々にまだ何か言っている。

 

「さあ、見ていなさい!! シロートくん、これからオレの華麗で素晴らし…………って、あああああああっ?!」

 

 ──パシッ

 

 桜木がドリブルをしてる横から、ボールを三井は叩いて(はたいて)何食わぬ顔をして桜木の持っていたボールを取った。

 

「おいおい……隙だらけだ本当にバスケ部か?」

「ぐぬぬぬぬぬぬぬ!! 今のは油断していただけだ!! ボールを返せ!!」

「バスケ部なんだろ? 自力で取りに来いよ。勝負だなんだって、騒いでたのあんただろ?」

 

 今度は三井が桜木を、おちょくるようにリズムよくドリブルをする。

 三井の言葉に桜木は火がついたのか、必死に三井のドリブルからボールを取ろうとする。

 

「おいこら!! ドリブルしたまま逃げるなんぞ、卑怯だぞ!!」

「はあ?! ボール取られないようにすんのが、バスケだろーが!!」

「うるさーい!! 黙って、ボールを取られろ!!」

 

(小学生かよ。それに避けないと、思いっきりファールされる気配しか感じられねえよ!!)

 

 桜木のギャーギャーうるさい文句を無視して、桜木の動きを見ながらボールを奪われないよに三井はかわしていく。

 

(動きがデカイのは、慣れてねえせいか。だけど、素早さはあんな。まあ、二年ぶりに動いてるオレのボール奪えないなら、まだまだだな)

 

 何度も言うが、三井の体感は二年ぶりかもしれないが実際は数週間ぶりだ。

 数週間動いてなかったぶん、多少は体力は落ちてるかもしれないが二年のブランクほどではない。

 

「おい、桜木がバスケ部員じゃないやつと、なんかやってるぞ……」

「けげ?! これ、キャプテンに見られたらやばくないか?!」

「……どあほう」

 

 授業が終わったのか、バスケ部の一年たちが一足先に体育館に来た。

 だが三井は、必死で桜木からボールを、奪われないように……と言うわけではない。

 桜木を観察しながら、自分のカラダは鈍ってないか、どこがダメかと確認しながら動くのに必死で、他に人が入ってきてることに気付いていなかった──。




みっちーとりょーちんの、すげえバトルで入院の時期って実際はいつだったのだろうか。
入学式後だったのかな……と、思い始めてきた←
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