MVPの人   作:ゆんあ

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(いい加減に相手してるのもダルいな)

 

 ──スポッ

 

「こらあああああ!! なんで、シュートなんか打つんだああああっ」

「なんでって、勝負じゃなか……げっ?!」

 

 桜木との勝負を止めようと、シュートを決めた三井は気づいていなかった視線とざわめきに気づく。

 

(バスケ部が来る前に体育館から離れようと、思ってたのに……やっちまった)

 

「ていうか、桜木の相手してやってたのって武石中の三井だよな?」

「あぁ。怪我してたって聞いてたけど、治ってたんだな」

「バスケ部にやっぱり来るのか?!」

「流川もいるし、三井が入ったらまじでこれ全国狙えるんじゃないか?!」

 

 三井の慌てる様子を他所に、バスケ部員たちははしゃいでいる。

 

(ん? 流川もいるし? やっぱり、あいつ出来るやつなのか)

 

 流川の名前が出てきて、三井はチラッと流川の様子をうかがってしまい、またもや体育館から脱出する機会を失ってしまう。

 

「あ、やべ……先輩たち来たぜ」

「?!?!」

 

(オレもやべえ!! 赤木と木暮に、どんな顔して会えばいいんだよ?!)

 

 赤木たちが入って来た入口とは別の方向から、三井は静かに出ていこうとしたがうるさい声にそれを止められてしまった。

 

「おいこら、坊っちゃんヘアー!! どこ行くんだ、まだ勝負は終わっとらーーん!!」

 

 坊っちゃんヘアーとは、三井のことだろうか。

 呼び止められたことと、変な呼び名で呼ばれたことにイラついた三井は思わず叫ぶ。

 

「んだよ! 下手すぎるんだよ、お前とは勝負になんねえよ!! ……あ」

 

 やさぐれてたときの癖が抜けきれてないのか、元々そういう性格だったのか、桜木の安い挑発に反応してしまって三井が「やばい」と思った時は後の祭りだった。

 

「桜木花道いいい!! カラダは温まってるみたいね。あんたがやることは、勝負じゃなく基礎練習よ、初心者!!」

「あ、彩子さん?! いや、でもあいつと……」

「つべこべ言わずに、さっさっと始めんかっ!」

「いてぇええええっ!!」

 

 桜木はバスケ部マネージャーの彩子の後ろから来ていた、バスケ部主将赤木の鉄拳を食らって渋々だが勝負を諦めたようだ。

 

「あのバカがすまんな。入部希望か?」

 

 赤木が三井の近くに来て、声をかけた。

 

「え? あー……」

 

 三井が歯切れの悪い返事をすると、赤木の表情が強張った。

 

(桜木が下手なおかげで、いろんな動きを試せてカラダは思ってた以上に動けることが分かった。楽しかった……)

 

 が、前の記憶を引きずっているのか、変なプライドが邪魔をして三井の決断を鈍わせる。

 

「ふん。やる気のないやつなら、無理して入ることはないがな」

 

 考え込んでる三井の様子を見ながら、少しだけ返事を待った赤木だったが即答出来ない時点で見切りをつけていた。

 

「ああ、そうだな。じゃあな」

 

 赤木が今は上級生だというのを忘れて、思わず前の口調で返して、そのままその場を離れようとする。

 だが、三井を追いかけて来る足音も同時に聞こえた。

 

「あ、ちょっと、待って三井!」

「ああ?」

 

 その声は木暮だった。

 声の主はわかっていたが、赤木の言葉にイラついてる三井は木暮も上級生ということは忘れている。

 

「怪我はもう大丈夫なんだな?」

「はん? おまえには関係ねえだろ」

 

(そういや……赤木も木暮も今は、タメじゃなかったのか。まあ、いいか。これでバスケ部に入らなくてすむだろ)

 

 赤木の言葉にイラついてた三井は、バスケをやりたい気持ちを無理矢理押し込んでいた。

 

「こう言っちゃなんだけど、怪我したの少し早い時期でよかったな」

「……どういう意味だよ」

 

 三井の態度にを気にしていないのか、木暮は普通に三井に話かけた。

 

「見舞いにオレが行こうと思ってたんだけど、流川が行くって言うから一緒に行こうか悩んだんだけど譲ったんだ」

「だから、どういう意味だって……」

 

 三井は木暮の言葉に違和感を感じる。

 

(なんで、今は知り合いでもねえ木暮が見舞いに来ようとしてたんだよ)

 

 ニコニコしてる木暮の表情は、三井には読み取れない。

 

「全国制覇するんじゃなかったのか?」

 

 そういいながら、木暮は三井の頭をグリグリと撫で回す。

 

「おい、ガキ扱いしてんじゃねえ!」

 

 それを振り払うと、素直に木暮は手をはなした。

 

「ははは! オレはお前より今は年上だ」

「そうだな、今は年上だな」

「「ん? ……今は?」」

 

 ハッとした顔で二人が同時に声を上げる。

 

「な、な、な、な?! どういうことだ、三井?!」

「はあ?! オレも聞きてえよ?!」

「よーし、よーし。落ち着こう、落ち着け。おまえはいつの三井だ」

「いつって……ああ? 二年の終わり頃だったか」

「そうか、そうか」

 

 うんうん。と一人で納得し始める木暮。

 

「何勝手に納得してんだよ?!」

「オレは三年になって数ヶ月までの記憶は、あるんだよ。オレもまた一年からやってるから、本当に三井より年上になったな。いやあ、三井がいなくて驚いたよ。あはは」

「お、おう?」

 

 木暮と赤木の二人とどういう顔をして、会えばいいのかとも悩んでいた三井。

 それに、やさぐれてた三井の記憶も持っているだろう木暮の気安い接し方に、三井は戸惑っていた。

 

「三井。バスケやりたいんだろ?」

「なっ?!」

「あ、ほら。安西先生も来た」

 

 バスケ部監督の安西が三井と木暮が立ち話をしていた入口と別のところから、練習を見に安西が入って来たところを視線だけで教える。

 

「っ!!」

 

 三井は安西の方を向かずに、下を向きギュッとどうしたらいいのか悩むように唇を噛む。

 

(まだ三井は、素直になれないか。前と状況が違うからなあ……)

 

 三井がやさぐれてた時代を知ってる木暮は、どうやったらバスケ部に戻りやすくなるか手助けがしたいようだ。

 

「なあ、三井? お前は三年になってから、部活に復帰してたよ」

「あのオレがか?!」

「ああ! これは、嘘じゃない。じゃなきゃ、オレだって今こうやって、わざわざ話しかけたりしないよ」

 

 自分の知らない自分を知ってる木暮の言葉に三井は「あのオレが」と、自分でも思ってるくらい酷い状態だったと自覚はしているらしい。

 そして、現在もよくわからないプライドが邪魔をしている。

 そのせいでバスケ部に入ることをウダウダ悩ませているのに、今よりも状況の悪い自分が、バスケ部に戻ったという自分に驚いていた。

 

(確かにあのままのオレだったら、木暮がオレに話しかけるメリットは何もないのはわかるが……)

 

「三井くん、怪我をしていたと聞いていたがもう大丈夫なのかね?」

「あ、安西先生っ?!」

 

 いつの間にかそばに来ていたのか、安西に声をかけられ下を向いていた三井が勢いよく顔を上げる。

 安西の顔を見ながら、三井は唇を噛みしめる。

 

『──諦めたら、そこで試合終了だよ』

 

 三井の頭の中には、もう勝てないし優勝はダメだと、諦めていた中学最後の決勝戦の試合が再生された。

 諦めていた時に安西の言葉で救われて、それで優勝とMVPがとれた。

 

「お、オレは……」

「ふむ」

 

 安西には三井がなぜ苦しそうな顔をしているのかは、わかっていない。

 だが、三井の横にいる木暮が見守るようにニコニコしていたので、三井から言葉が出るまで待とうと安西も見守ることにしたようだ。

 

「オレの目標は……湘北高校全国制覇、日本一です!!」

「ほお。頼みましたよ、三井くん。ほっほっほっ」

 

 目に涙を溜めながら、声高々に安西に三井は宣言した。

 

 その様子を見ていた木暮は、ニッコリ笑って三井の背中をバシッと気合い入れるようにはたいた──。

 

 

「武石中出身、1年10組三井寿。176センチ63キロ、ポジションはどこでもやれる。怪我で少し制限がまだあるが、よろしく」

 

 入部届は後で出すということで、そのまま自己紹介をする流れになった。

 自己紹介をすると、三井のことをほとんどが知っていてざわめきがおこる。

 そんな中、三井には一つの疑問が浮かぶ。

 

(そういや、宮城がいねえな)

 

 それよりも三井が今気になるのが、桜木と流川の闘志を燃やす視線だ。

 

「……次は負けねえ」

 

 流川はまだわかる。怪我をした時に一緒にいたのが流川だったらしいからだ。

 

「全国制覇とかシロートの癖に生意気だぞ!!」

「初心者に素人とか言われたくねえ」

 

(なんで、ただの初心者に絡まれなきゃいけねえんだよ)

 

 三井はうんざりした顔で、桜木を見る。

 

「オレは次期キャプテン。ゴリに勝った男だ」

「……赤木に勝った?」

 

 桜木の発言の真意を求めるためチラッと木暮を見ると、苦笑いしている木暮と目が合う。

 そんな木暮の顔を見て、フと頭に一つのことがよぎる。

 

「なんだ? まだ赤木はドリブル苦手なのかよ」

 

 ボソッと三井が放った一言で、その場が静まり返った。

 

「おっ、おい?!」

「三井?! 先輩に対して呼び捨て?! しかも、キャプテンだぞ?!」

「……あ」

 

(そうだ、年上だった。木暮と普通に話してたからって、赤木はそうはいかねえか。あ、だったら……)

 

「あー。ゴリ先輩? 昔から木暮から聞いてたから、つい知り合いな気になってたわ」

 

 木暮がギョッとした顔で三井を見る。

 とりあえず、木暮になすり付けることにしたらしい。

 

「ゴリって呼んだぞ……」

「もしかして、三井も桜木と同じ系統か……」

「ぷぷぷ。ゴリは、ドリブル苦手だったのか? ……っいってえええ?! なんで、オレを殴るんだよ!!」

 

 赤木は無言で桜木を殴った。

 そして、目が笑ってない笑顔で叫ぶ。

 

「木暮! 桜木! 三井! ダッシュ20行ってこいいいいい!!」

「ええ?! オレも?!」

「もうオレのことは殴ったじゃねえか!!」

「あ。オレ激しい運動は、まだドクターストップで、できねえよ」

 

 沈黙。

 とても怖い沈黙。ついでに目の笑ってない笑顔の赤木。

 

「さ、桜木! オレたちはやろう。さあ、行こう!!」

「お、おう! メガネ君!!」

 

 その圧力に二人は負けた。

 

「おい、三井ちょっと来い」

「は? なんだよ。あ、おい……ぐえっ」

 

 赤木に首根っこを捕まれ、体育館の隅の方に三井は引きずられる。

 

「ああ……三井は終わったな。可哀想に」

 

 三井に同情する声が体育館に響きわたった。

 

「おい、離せよ。苦しいだろうが!!」

 

 必死に暴れると、目的地と言っても体育館の隅なのだがやっと赤木の拘束から三井は抜け出す。

 そして、ボソッと三井にしか聞こえない声で、赤木が三井にはなしかける。

 

「木暮から何を聞いてる」

「何って、何をだよ」

「お、オレのことだよ!」

「……はあ?」

 

 チラッとダッシュをしている、木暮を見る三井。

 

(そういや、ドリブル苦手つうの木暮から聞いことにしたんだった。んー、オレのことガキ扱いしたこもあるし……仕返ししてやるか)

 

「しょうがねえな、教えてやろう」

 

 悪い笑顔で三井は赤木の肩に手を回して話し出す。

 

「…………」

 

 話を聞くと、また赤木は固まってプルプルと震えだす。

 

「木暮ええええええ!! ダッシュお前だけ20追加だあああああ!!!!」

「はあはあっ……え、なあっ?! えええええええええ」

 

 自分の黒歴史を聞かされて、顔を真っ赤にして怒る赤木。普段の練習より多いダッシュをやらされて、青ざめてる木暮。その様子を見て、腹を抱えて爆笑している三井。

 

 何がおきてるのか、わからない他の部員たち。

 最初は三井の心配をしていたが、何故か三人の様子を見ているうちに、心強い安心感に変わっていた──。




本当はこの後に、練習試合とかかきたかったあああああ!!
けど、バスケの詳しいルールとか駆け引きわからんちんです。
なので、りょーちん登場させれんかった……。
中途半端ですが、お読み頂いてありがとうございました!
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