機動戦士ガンダムSEED~二重の輪舞曲   作:アマゾンズ

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地上に降りたアークエンジェル。キラとマサユキはそれぞれ悔恨を胸に秘める。


悔恨と客観

落下していくストライクとアスクレピオスを見たマリューは早急に指示を出した。

 

「ストライクとアスクレピオスを回収!急いで!!」

 

「しかしそれでは、予定落下ポイントより逸れてしまいます!」

 

「あの2機を失ったら何の意味も無いわ!急いで!!」

 

ストライクとアスクレピオスはアークエンジェルへ着艦する事は出来たが、キラはコクピット内部で気絶してしまいマサユキは悔しさから歯ぎしりしていた。彼が気絶しなかったのは怒りで気持ちが溢れすぎていたからだろう。

 

コクピットから出されたキラはすぐにベッドルームへ運ばれ、マサユキは壁にもたれかかるような形で座り込んでしまった。

 

「ちく・・しょう・・・・!」

 

誰も居なくなっているモビルスーツデッキでマサユキはヘルメットを投げつけた。ヘルメットは音を立ててアスクレピオスが置かれている場所へと転がっていった。

 

「俺は・・・結局、調子に乗っていただけじゃねぇか・・・!!」

 

壁を強く叩き、悔しさを露にする。何がコーディネーターだ、何が助けてやるだ、幼い女の子1人助けられず、守っていた気になって調子付いていただけではないかと自問自答し続ける。

 

「俺も休まねえ・・・と」

 

いくらコーディネーターでムウとの特訓で肉体を鍛えていると言っても、モビルスーツによる初の大気圏突入をした身体は熱によってダメージを受けている。歩いている途中でマサユキは倒れてしまい、通路を歩いていたロクとトールによって発見されキラと同じベッドルームへ運ばれた。

 

「う・・・うううう!」

 

「ぐ・・・ぅ・・・・ううう」

 

キラは大気圏突入時の戦闘による悪夢と肉体へのダメージで発熱していた。マサユキも発熱しているが、キラほど苦しんでいる様子はない。

 

ナチュラルしか診察したことのない医者は発熱時の基本処置しかできないとサイ達に説明していた。

 

数時間後、先に目を覚ましたのはマサユキだった。少しだけぼんやりするが発熱は治まっている。

 

「う・・・ん?俺、なんで此処に?」

 

「やっと目を覚ましたか?」

 

「ロク・・・?」

 

「お前、通路で倒れてたんだよ。トールと一緒に此処へ運んで医者に処置をしてもらったって訳」

 

「そうだったのか、すまねえな」

 

「良いって事よ、お前とキラは戦闘と同時に辛い事があったんだろ?」

 

「お前には解っちまうか?」

 

「当たり前だろ、何年お前とつるんで親友(ダチ)やってると思ってんだ?」

 

「ふっ・・そうだったな」

 

マサユキに少し笑顔が戻るが、表情は暗かった。向かい側では未だにキラが悪夢にうなされている。

 

「話してみろよ。学生だった時お前が以前、吐き出せばスッキリするかもしれないだろって言ってくれたろ?今度は俺が聞いてやるよ」

 

「ああ、そうだな。実は」

 

マサユキは大気圏突入時の戦闘の時、自分とキラに何があったのかを話した。そこで、自分にお礼を言ってくれた親子の乗ったシャトルをデュエルによって撃墜され、守れなかった事も。

 

「そうだったのか・・・そんな事が」

 

「悲しいよりも悔しくてな・・・守れなかったって」

 

「マサユキ」

 

「ん?・・・ぐっ!?何しやがんだ!?」

 

ロクはマサユキを思いきり殴り、マサユキは胸倉を掴んで抗議した。

 

「情けない事を言ってんじゃねえよ!お前が大事な事を忘れてるだろうが!!」

 

「!!お前に何が解んだよ!」

 

「解らねえよ、お前の気持ちはお前だけにしかな!けどな、守れる場合と守れねえ場合がある事をお前が忘れてどうすんだ!?」

 

「!!」

 

ロクの言葉にマサユキはハッとした。そうだ、自分は守れる時と守れない時を考える事が出来ていたはずだ。それをフレイのお父さんを救えなかった時に自分で言っていたはずだ。

 

マサユキは静かにロクの胸倉から手を離した。マサユキは手を出しそうになっていたが冷静になればロクの言っている事が正しかった。

 

マサユキ自身、冷静になって納得できれば殴る事はしない。それを知っているからこそロクは言葉と拳をぶつけたのだ。

 

「そうだ・・そうだった。俺、なんでそれを忘れてたんだ‥?」

 

「冷静になれる状況じゃ無くなってたし、ショックが重なりすぎてたからだろ?」

 

「ホント、敵わないな。ロクにはよ」

 

「それはお互い様だって、騒がしくしちまったから食堂にでも行こうぜ?その後はキラの様子を見よう」

 

「ああ、そうだな」

 

 

 

 

 

一方、宇宙ではナスカ級ヴェサリウスの内部でGの整備が行われており、それをアスランとメラクが様子を見ていた。

 

「メラク、やっぱりアスクレピオスのパイロットが気になるのか?」

 

「え?・・・そうね。けれどアスラン、貴方だってストライクのパイロットを気にかけてるんじゃないの?」

 

「っ・・・そうだな」

 

艶のある黒髪をふわりと靡かせながら、腰かけられそうな場所に足を組んで座るメラク。もしも軍服ではなく一般的な服装であれば、現役モデル時代のように映えていただろう。

 

「あれー?此処に居たんですか?二人とも」

 

「あら、ニコルちゃん」

 

「イザーク達、無事に地球に降りたようです。さっき連絡が来ました」

 

「そうか・・・」

 

「でも、帰投は未定ですって。しばらくはジブラルタル基地に留まる事になるようです。ん?」

 

「イザークの・・・傷の具合はどうなんだ?」

 

「ああ・・・それは。でも、心配ないですよ、あの時もあれだけの戦闘をやってのけたんですから」

 

「え・・・ああ、そうだな」

 

「でも、大丈夫なんでしょうか?」

 

「何がだ?」

 

「結局、僕らはあの最後の2機、ストライクとアスクレピオス・・・それに新造新艦の奪取にも破壊にも失敗しました」

 

「・・・・」

 

「この事で隊長は・・・また、帰投命令でしょう」

 

「クルーゼ隊長でも落とせなかった艦よ、委員会でもそう見ていると思うわ」

 

メラクの言葉にアスランとニコルは目を丸くするが、メラクが何か物思いに耽っているような表情していたのに気づき、ニコルが声をかける。

 

「メラクさん?」

 

「・・・大丈夫よ、ニコルちゃん。ね?アスラン」

 

「え?ああ・・・そうだな。この帰投も何か別の作戦のようだから」

 

「そうですか、ですよね。僕、ちょっとブリッツ見てきます」

 

ニコルは二人を少し見つめた後、モビルスーツデッキへと向かっていった。

 

「解っているんだけど・・・ダメね。割り切りがまだ出来そうにないわ」

 

「俺もだよ、どうしてもこっちへ来て欲しいと考えてしまうんだ」

 

「アスランも私と似たようなことを考えていたのね、友人と想い人の違いはあっても・・・って感じだけど」

 

「そうだな・・・」

 

2人の考えは同じ、自分達の所へ来て欲しい。ただ、それだけだが向こうに守るべきものがあると言われ敵対された。それでも、という思いは未だに燻り続けていた。

 

 

 

 

アークエンジェルでは食堂でサイ達が食事をしており、フレイがキラへ食事を準備している僅かな時間を狙ってマサユキとロクがキラの様子を見に来ていた。

 

「キラ、大丈夫か?」

 

「マサ・・・ユキ?それに・・・君は、ロク?」

 

「俺の名前、憶えててくれたんだな」

 

「ん・・・」

 

キラは起き上がろうとしたが、マサユキがそれを手で静止して止めた。

 

「まだ、万全じゃねえんだ。寝たままで良いさ」

 

「ありがとう・・・」

 

「お互い・・・守れなかったな。あの親子を含めてさ」

 

「!そうだ・・・僕は・・・僕は!!!」

 

「落ち着けよ、俺だって同じだ」

 

「けど、僕は!!」

 

「マサユキから話を聞いてるんだけどよ。あれはお前達のせいじゃない」

 

「けれど・・・守るって決めたのに!!」

 

キラは納得が出来ない様子だ。どんなに客観的で冷静な意見でも感情が納得しないのだろう。

 

「キラ、俺もロクから言われて冷静になれたんだけどよ。守れる場合と守れない場合があるって言ったじゃん?それが今回、守れない場合に当たっちまったんだよ・・・」

 

「・・・それってもしかして、フレイのお父さんの時の・・・?」

 

「そう、それだよ。俺だってすげえ悔しい、悔しくて悔しくてガンダムに乗れて調子に乗っていただけじゃないかって考えもした。けど、ロクに言われて冷静になれたんだよ。自分は手の届く範囲でしか守れないって・・・今回のシャトル撃墜は間が悪すぎたんだ」

 

「そんな事で納得しろって言うの!?」

 

「納得出来る出来ないんじゃなくて・・・割り切るしかないんだよ。納得は出来ないけど、もう起きてしまった事は取り返せないし失った命は生き返らせる事も出来ない、そうだろ?」

 

「・・・・っ」

 

「けど、守れなかったし悔しいって事だけは俺もキラと同じだよ。そこだけは胸に留めといてくれな?行こうぜ、ロク」

 

「ああ、邪魔したな。キラ」

 

マサユキとロクは軽く手を挙げて、ベッドルームから去っていった。それと同時に食事と水が置かれたトレイを持って歩いているフレイと出くわした。

 

「あ・・・」

 

「ん?フレイか、キラん所へ行くのか?」

 

「そうよ、貴方達キラの所へ行ったの?」

 

「行ったと言っても様子を見ただけだから何にも無いって」

 

フレイは怪しいと言わんばかりにマサユキを睨みつけているが、本人は嘘をついている様子はなく肩をすくめている。そこへロクが割って入った。

 

「一応、コイツとキラはパイロット同士だから簡単な相談があったそうでな?キラが眠ってたから戻ってきたって訳だ。マサユキ、フレイに任せて俺達は行こう」

 

「ああ、キラの事を頼んだぜ」

 

「そう、分かったわ」

 

フレイはそのままキラのいる部屋へと向かっていき、姿が見えなくなるのを確認するとマサユキがロクへ両手を合わせた。

 

「すまねえ、助かった」

 

「こういうちょっとした機転、苦手だもんな?今度、何か奢れよ?」

 

「おう、貸しにしといてくれ」

 

 

 

 

 

それぞれが、アークエンジェル内部での仕事をしつつフレイが部屋に入る前、扉の前で声をかけるとキラが返事を返した。扉が開き、フレイが中へ入る。

 

「キラ?」

 

「はい」

 

「これ、整備の人に渡してくれって頼まれたんだけど・・・ストライクのコクピットにあったからキラのだろうって」

 

それを見てキラは動揺した。紙で作られた花、それは守る事の出来なかった少女がお礼としてくれた物だった。

 

「?キラ?」

 

「あ・・・・うん・・・・ありが・・・と」

 

震える手で紙の花を受け取ると、キラはすぐに背を向けてしまう。

 

「キラ?どうしたの?」

 

「あの子・・・僕は・・・守れなかっ・・・うああああ!!」

 

マサユキとロクの二人との会話で精神的な負担は多少、緩和されてはいたがそれでも抑えていた物が一気に爆発してしまったのだろう。キラはフレイが居るのにも関わらず、大声で泣きだした。

 

「キラ、大丈夫・・・私がいるわ。私がいるから」

 

フレイはキラに寄り添い、優しく抱きしめる。まるで幼子をあやす母親のように。

 

「私の想いが貴方を守るから」

 

そう言ってキラへと口づけするフレイ。目を閉じて泣いていたキラにフレイが浮かべていた怪しい笑みを見る事は無かった。

 

一方でロクと共に食事をしていたマサユキは、自分の直感が何かを予感させていた。

 

「(なんだか・・・嫌な予感がするな。外だけじゃなくこの中でも)」

 

本人としては全くの無自覚で、よくある胸騒ぎ程度だと思っていたが、この胸騒ぎがパイロット同士の揉め事になってしまうのをこの時はまだ、知る由もなかったのだった。




パイロット同士の揉め事、それはマサユキがキラへ注意していた事に起因します。

彼は物語の中でキラへ注意していた事がありました。それが起こってしまい、揉め事になります。
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