機動戦士ガンダムSEED~二重の輪舞曲   作:アマゾンズ

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アークエンジェルは水の問題を解決する為にデブリ帯へと赴く。

マサユキとキラはそこで核の爪痕とコーディネーターの怨恨の根っこを見てしまう。


核の傷跡

マサユキはアルテミスの脱出からの疲労が軽く回復し、フラガに護身術の特訓を付けてもらっていた。

 

「ほら、隙だらけだぞ!」

 

「うわ!?」

 

軽く投げ飛ばされ、壁に激突してしまう。今は宇宙空間であるために受身が取れず、こうして壁に叩きつけられるのだ。

 

「時間だ。今日はここまで」

 

「はい、ありがとうございました」

 

マサユキが出て行ったのを確認し、フラガその背中から何かを感じ取っていた。

 

「情けない限りだな。あんな坊主達に全てを押し付けちまってるんだから」

 

 

 

 

 

それと同じ時刻、クルーゼ隊のうちメラクとアスランはプラントに呼び戻されていた。アスランはクルーゼと共にザフトの国防委員会へ呼び出され、メラクは別の場所に呼び出されていた。

 

「ああ~、メラクちゃん!こっちこっち!」

 

「カメラさん!?モデルの仕事は休業だって言ってるのに!」

 

「いや、ザフトの公募用のポスターのモデルをお願いしたいんだって頼んだんだよ。世間は戦争状態だし」

 

「えええ~!?でも、なんで私なんですか?私じゃなくてもラクスやあの子だっているでしょう?」

 

「いやー、歌姫のお二人だと軍人としてのイメージに合わなくてね。現役のザフト軍人でしかも、プラント人気上位の女性モデルのメラクちゃんならバッチリなんだよ」

 

「はぁ、仕方ないですね。じゃあ、モデルとして復帰しますけど今回だけですよ。私は今、現役なんですから」

 

「助かる!ありがとう!メラクちゃん!!ギャラは以前の4倍出すからね!」

 

女性カメラマンはメラクの手を握ってブンブン振った後、撮影所にスタッフと共に向かった。

 

「はーい、敬礼姿でお願いね!ライトは少し弱めて!メラクちゃん、凛々しくね。はーい、そのままでお願い!」

 

ザフトの軍服姿のまま撮影に入り敬礼姿、送風機を利用して靡く髪をかき上げている姿などを撮影していく。

 

「ありがとう、メラクちゃん!最高のポスターになるわ!ギャラは振り込んでおくからね!」

 

「はい、それじゃ私は帰りますね」

 

「はーい、お疲れ様。戦争が終わったらモデルに復帰してね」

 

女性カメラマンはウインクを一つ残すとスタッフと共に車でメラクを送り届けた後、帰宅していった。

 

「戦争が終わったら・・・か」

 

女性カメラマンからの言葉を呟くと同時にメラクは自分の部屋へと戻ってシャワーを浴び始めた。

 

 

 

 

 

宇宙では折り紙で作った華をユニウスセブンが見える場所から放っていた。手向けの華としてだ。

 

マサユキはアスクレピオスのコクピットの中から黙祷をしている。あまり信仰とかはしないタイプではあるが、現実にこうして核を撃ち込まれ何万人という犠牲が出た宇宙の墓標を見れば鎮魂の意味を込めての黙祷をするべきだろうと思ったのだ。

 

「死者から金品を盗るような行為ですが、申し訳ありません・・・俺達が生きる為に使わせてもらいます・・・」

 

「!・・・・・」

 

マサユキはストライクとだけの通信を切っておくのを忘れていた様子で、その言葉を聞いたキラもわずかに黙祷した。マサユキ自身もこの行為が正しいとは思っていない。だが、生きる為には使わせてもらうといった意思表示をする事で自分を慰めているようにも見えた。

 

「キラ、俺は向こうに行く。お前は反対側の方を頼む」

 

「分かったよ」

 

アスクレピオスは警戒しながら作業用ポッドを守っている。内部調査ではシェルターに入れなかった人達や、集団自決した人達、子供を庇って死んだ母親などの遺体が浮かんでいた。

 

「っ・・・」

 

内部の映像を見る度にマサユキは唇を噛み締めた。こんな現実を知らずにのうのうと中立コロニーで学生をしていたのかと。だが、知らなかった事は事実、それを言い訳にして逃げる気もない。今、現に自分はモビルスーツに乗ってこの現実を受け止めているのだから。

 

「さて、と・・・作業終了まであと一時間か。ん?救命ポッド?こんな所に?」

 

マサユキは一隻の救命ポッドを回収し、キラに通信を繋げた。今のところ、情報共有出来るのがストライクだからだ。

 

「キラ、そっちはどうだ?」

 

「あ、マサユキ。今、複座のジンが居てそれを撃破したんだ・・・」

 

「そうか・・・複座って事は重要な人物の探索だったんだろうな。こっちも救命ポッドを一隻回収した」

 

「え、そっちもなの?」

 

「ん?キラ、お前も回収したのか?」

 

「う、うん」

 

「そっか、おっと作業も終わったようだしアークエンジェルへ戻るとしようぜ」

 

「分かった」

 

アスクレピオスとストライクが帰投し、二つの救命ポッドを開ける。すると中からピンクの髪と赤みの強い紫色、杜若色(かきつばたいろ)の髪を持った女の子が二人出てきた。

 

『ハロ!ハロ!ラクス、ラウス!』

 

「ありがとう、ご苦労様です」

 

「お姉様、此処はどうやら私達の知る場所ではないようですよ」

 

「あらあら、そうなのですか?」

 

「おっとと・・・!キラ、そっちの彼女を」

 

「え?あ、うん」

 

マサユキとキラはそれぞれの女の子の手を取って床に着地させた。女の子達はニッコリと笑ってお礼を言った。

 

「ありがとう」

 

「助かりました」

 

 

 

 

 

メラクがシャワーを堪能している最中、部屋にある通信機器が呼び出し音を鳴らしている。それに気づいたメラクはシャワーを止めると髪を拭きつつ、バスローブ姿で通信の呼び出しに応じた。

 

「メラク・アウストです」

 

『認識番号285005、クルーゼ隊所属、メラク・アウスト。軍本部より通達です』

 

「はっ!」

 

『ヴェサリウスは予定を35時間早め、明日1800の発進となります。各員は1時間前に集合、乗艦の事。復唱の後、通信受領の返信を』

 

「ヴェサリウスは明日、1800発進。各員1時間前に集合、乗艦。メラク・アウスト、了解しました」

 

「はぁ、ゆっくり出来る時間もないわね」

 

メラクは通信受領をしたという返信をすると通信を切った。ニュースを見ながら髪を乾かそうとした時だった。

 

『臨時ニュースです。本日、慰霊団を乗せた視察船、シルバーウインドが消息を絶ちました。その中には評議会のシーゲル・クラインのご息女、ラクス・クラインとラウス・クラインの両名も乗っており、安否が気遣われます』

 

「!あの二人が!?」

 

メラクは髪を乾かすのも忘れて、ニュースを食い入るように見続けていた。

 

 

 

 

 

 

マサユキとキラの二人が救出した二人が、プラント評議会現委員長であるシーゲル・クラインの娘である事を知ってアークエンジェルの上官達は頭を抱えた。

 

此処は地球軍の戦艦であり、最悪な事もありうるからだ。艦長であるマリュー・ラミアスはまだ話の解る人間である為、悪いようにはしないだろう。

 

そんな中、マサユキはフラガから言われていた特訓をアークエンジェル内にあるトレーニングルームでこなしていた。すると扉が開き、誰かが入ってくる。

 

「フッ・・フッ!ん?」

 

「やっぱり此処にいたんだ」

 

「っと、キラか。何か用か?」

 

「うん、あの二人の事だけど」

 

「プラントの、お偉いさんの、娘さん達の事だろ?」

 

マサユキはベンチプレスを始め、会話を途切れながらも続ける。キラは少し不安そうな顔で口を開く。

 

「うん、大丈夫かな・・・此処って地球軍の戦艦だし、彼女達も」

 

「コーディネー・・・ター、って・・言っても、事実、だからな!ふう・・・」

 

ベンチを戻すと、マサユキはタオルで汗を拭う。その身体付きも少しずつではあるが変化している。元々、身体能力の高いコーディネーターだ。そんな彼が鍛えれば変化も出てくるだろう。

 

「ま、マリューさんは悪い人じゃなく優しい人そうだし大丈夫だと思うぜ?少し問題はナタルさんかな」

 

「え?なんで?」

 

「あの人、軍人一直線って感じの人じゃん。作戦の為なら切り捨てるって考えも出来る人だよ。今のご時世には必要な考えだけどさ」

 

「・・・・」

 

「下手したら、アークエンジェルが攻撃されないための人質として使う可能性もある」

 

「そんな事!」

 

「可能性の話だよ、ムキになるなって。でも、視野に入れておけよ?」

 

「う・・・・」

 

キラは思った。マサユキは普段、優しかったりふざけたりしているけど、土壇場やちょっとした嫌な可能性がある事に対して、かなり鋭い指摘をしてくると。

 

そんな彼に自分は少しずつ苦手になってきている。友人として接してくれるし、周りにも優しい。自分に対しても厳しさと優しさを教えてくれている。それでも、苦手になってきている事を自分の中で感じてしまう。

 

「ん?どうしたん?」

 

「い、いや・・・僕、彼女達の所に行ってくる」

 

「おお、俺も後から行くわ」

 

「うん・・・」

 

キラはトレーニング室から出ると、救出した二人の女の子、ラクス・クラインとラウス・クラインの下へと向かっていった。




次回は大気圏内戦闘、民間人はどうなるのか。

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