Brand new page   作:ねことも

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ハルさんの回想(2)
守護している魔神族の領地で、たびたび訪れる奥さんと交流していく話。
  


ハルさんの回想(嫁さんとのささやかな交流)

待ち合わせは、住処から東方向へ位置する水辺のある場所。

あそこは身体を清めるために利用している。

同胞は、住処より奥にある水辺へ足を踏み入れたりしないため、必然的にこの場所に

限られてくるのだ。

 

そう…俺と彼女の《秘密の喋り場》

 

 

「どーも」

「こんにちは」

 

あの【保証】の契約を交わして以降、俺は嫁さんと定期的に会うようになった。

嫁さんは、マーテルを探すために各地を回っており、情報収集している。

 

二、三日に一回は此処に顔を出す事。

掴んだ情報は包み隠さず俺に教える事。

 

彼女は契約をしている限り逃げないと思うが、もしもの時の事も考慮してその二つを条件にした。

 

「…西の方は人間族の行き来が活発してました。

あそこは海に面していますし、近い将来、町ができて産業が活発になる可能性はあります」

 

「交易関係か…となると、そこは目をつけておく必要があるな」

 

嫁さんはきちんと約束を守ってくれた。

彼女は己の目と耳で見聞きしたものを自分の意見も交えて、俺に語ってくれた。

 

「この世界にも…色んな種族がいるんですね。

先日は妖精族に会いました」

 

「まあな…だが、その口調だと『ラザラス』の住む世界にも種族がたくさんいるように

聞こえるが…」

 

『ラザラス』とは、嫁さんの名字にあたる。

本当の名前は別にあり、もう一つの真名に相当するものがそれだった。

当時、俺は彼女を名字で呼んでいた。

 

「ええ、いっぱいいますよ。

人間だけじゃなく、鱗狼族や鳥人族、仙老族に蛇人族…両手では数えきれないくらい」

 

「ほーう…」

 

嫁さんの故郷は、この世界からかなり遠い場所にある。

そこには此処とは比べ物にならない位の多数の知的生命体が存在しているようだ。

 

「…その分争いも多いけれど」

 

そう告げた嫁さんの表情は哀愁を帯びていた。

何気ないその発言で、彼女がどんな境遇を味わってきたのか…俄かに感じ取った。

話をしていくうちに、嫁さんの人となりが分かってきた。

 

…嫁さんは心が優しい。

 

その分、感情を内側に溜め込みやすい。

生まれた頃から、多種族の争いを見続けてきた所為で、その傾向が顕著になったらしい。

 

争い事が嫌いなのに、戦う技量を身に着けざる負えなかった。

一歩間違えれば、殺されるか否かの環境だったために仕方ないと割り切るしかなかった。

さらに、“特異的な種族”であるという現実が彼女を追い詰めていった。

 

―――《エクレシア》

 

『神の卵』と称される種族。

癒しの術に特化しており、体内に宿る血や髪…その身体全てにおいて治癒の効果をもたらすとされている。

元は人間族や他の種族が寿命を迎えた後で、潜在的な血の覚醒が起き、『神』が己の眷属として

認められる事によってエクレシアとなれる。

 

この世界ではエクレシアは希少だ。

魔神族と女神族の長が、その選定を行える立場にあるが、ここ千年の間にそういう逸材は

現れていない。それゆえに、エクレシアは五部族を含め他の小部族からも貴重な人材。

希少種ゆえに喉から手が出る程ほしがる者も少なくない。

 

「なんで、俺に素性を話すんだ?」

「…不思議です。でも、ハルさんだったらいいかなって思ったの」

 

嫁さんの顔に微笑みが戻った。

それだけで、ふわりと心が暖かくなる。

 

「甘い。人を見かけで判断するとしっぺ返しを食らうぞ。

良い人に見えても…裏では身の毛もよだつレベルの残酷な考えを抱く者だっているしな」

 

「ハルさんは、そんな人じゃないでしょう?」

 

「どうかな…今、こうやって親切そうに接してて、いざ本心では如何に利用してやろうかって

なんて思ってる、なんて言ったらどうする?」

 

お人好しすぎると痛い目にあうぞと遠回しに忠告した。

すると、彼女は軽く目を瞑って意外な言葉を返してきた。

 

「なら、その時は私の目が節穴だっただけの事です。

痛い目を見るのも自業自得。

それで死ぬようだったらそれまで、の話」

 

「…随分とあっさりした受け止め方だな」

 

「長年、異種族の修羅場を目撃してきましたから…

こうみえて、観察眼はあるんですよ?」

 

青空色の瞳を光らせて、くすりと笑う嫁さん。

…この発言で、俺の相手を見る目はまだまだ未熟だったと気づかされた。

彼女は、守られるだけのか弱い淑女ではない…強かな面もあるようだ。

 

「私は、ハルさんを信じていますから」

 

…けれど、嫁さんのそういう所も気に入った。

だから、少しずつ彼女の事を知りたい気持ちが増していった。

  

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