Brand new page   作:ねことも

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多重クロスオーバー形式連載 7話。

今回は、杜王町トリオ(ジョジョ4部の三人組)がややメイン。
「イーブイ命名」を主に、「謎の青年ゼレフ」「知らぬ間の邂逅」といったサブイベントも
含まれています。
  


第7話【名前をつけましょう】

その日は雲一つない快晴だった。

窓際の席で、ぼぉーとグラウンドを眺めていると、担任の教師の言葉が耳に伝わった。

 

「明日から長期休暇に入るが、くれぐれも羽目を外しすぎない様に。以上」

 

そう、明日から連休だ。

土曜日、日曜日と合わせると9連休を迎える人もいるだろう。

視線を教室内に戻すと、待ちに待った長期休暇に突入する事もあって、

周りは地に足がつかないようだ。かくいう彼…広瀬康一もその中の一人。

 

「よぉ、康一。今日、予定あるか?」

 

鞄に教科書を入れていると、声をかけられた。

リーゼントヘアが特徴的な高身長の同級生で、彼の友達でもある東方仗助だ。

 

「ううん、塾は明後日だし、特にないかな」

「だったら行かねえか? “あそこ”に」

 

仗助がニヤッと口端を上げて誘ってくる。

“あそこ”とは―――週に三回くらい通っている『貸本屋』の事を指している。

 

「うん、いいよ。あ、億泰君は…」

 

「あいつ、数学のテストでやべぇ点数取っちまって今日は補習らしいぜ。

『先行っててくれ』って」

 

その店に行く時は、もう一人の友達、虹村億泰も含めた三人でいっしょが習慣となっている。

億泰はどうやら、先週の抜き打ちテストの結果が大打撃だったらしい。

補習を受けながら、時計と窓をチラチラ交互に見る彼の姿が目に浮かんでしまい、思わず

苦笑する。

 

「早く終わるといいね」

「ま、一時間程度だしダッシュで駆けつけるだろ。あいつの事だから」

 

ほらほら、行くぞーと仗助に背を押され、康一は教室を出た。

 

 

 

―――M県S市杜王町(もりおうちょう)

 

人口約五万人の東北地方の中心都市の郊外にある大規模なニュータウン。

町の花は「フクジュソウ」で、特産品は「牛たんのみそづけ」

康一が生まれる少し前までは、農村が目立つ田舎だったようだが、1980年前半から急速に発展。

今では、洒落たカフェや住宅街が並ぶ町となった。

 

通学路を進んでいると、同じ学校や別の高校の制服を着た生徒が行き交っている。

この時間帯だと、カフェ・ドゥ・マゴの席は埋まっているに違いない。

 

「今日はどこにする?」

 

そう考えていると、仗助が尋ねてきた。

例の貸本屋に行くためには、特殊な方法を用いなくてはいけない。

 

「そうだね…オーソンの裏側なんてどうかな?」

「よっし、決定!」

 

仗助は両手をパンッと叩いて、康一の提案を受け入れる。

徒歩で十分…杜王町勾当台2のコンビニ『オーソン』へ到着した。

入り口を通り過ぎて裏手の方へ回り込む二人。

周りに人気がないのを康一がキョロキョロ見回して確認すると「いいよ」と合図する。

 

「んじゃ、いくとすっか」

 

仗助はズボンのポケットから《鍵》を取り出す。

オーソンの裏手の壁にそれを向けると、一筋の光が壁を直撃し、眩い光が一瞬広がっていく。

 

そこに出現したのは、檜色の不思議な扉。

仗助は康一にアイコンタクトすると、康一はコクリと頷いて、その扉を半分開けて急いで

中へ入る。続けるように、仗助も素早く入ると扉をすぐに閉めた。

 

 

 

「いらっしゃいませ」

 

カランカラーンと扉のベルが鳴り響く。

馴染みの店長…ハルが朗らかに笑って出迎えてくれた。

 

「こんにちは」

「こんにちはー…ハルさん、この間借りた本返しまーす」

 

挨拶をすると、仗助は鞄から先週から単行本二冊を取り出して、カウンターへ置いた。

 

「どうだった?」

「やばかったッス。いやぁーこれ寝る間惜しんで読みましたよ! マジで」

 

先日、ハルがお勧めした単行本は最近若者の間で流行している冒険物の小説だ。

一見王道にみえるが、主人公が壮年の男性で、彼がおかれている立場がかなり特殊。

それでも、持ち前のポジティブ思考で難題を解決していき、クセのある仲間達とともに望んだわけではないのに

地位をあげていく…といった多少捻りのあるサクセスストーリーである。

その目新しさが、仗助の読書魂を大いに刺激したようだ。

 

「次回作っていつ頃販売するんスか?」

「これは第二巻が今年の春頃に出版されたから…次巻は二週間後になるかな」

 

ハルは、カウンターの裏側からリストを取り出して、続きの単行本の入荷日を調べてすぐさま

口答した。

 

「グレイト…! そんじゃ今の内に予約いれます!」

 

続編は近い内に取り寄せる予定だと判明するや、仗助は目を輝かせて予約をしようとする。

 

(気が早いなぁ)

 

親友の即決に、康一はクスッと笑う。

このお店へ通う前までは、仗助がゲームが趣味だったが、通いだして数日後にそのカテゴリーに

読書も含まれるようになった。わずかな期間で、読書の魅力に(いい塩梅で)とりつかれた親友。

かくいう康一も、そうだったりする。

 

「仗助君、先に行ってるよ」

 

店長と話している仗助にそう言うと、康一は一足先に階段を昇って行った。

二日前は塾に行く時間が迫っていたためタイトル名と帯の文章しか見なかったが、密かに

気になっている本がある。それを読んでみて、よかったら借りようか…と考えている。

 

(まだあるといいけど…)

 

階段を上がりきると、すぐ目の先にある長椅子で爆睡している太公望がいた。

 

(あれ? 太公望さんが…寝てる?)

 

太公望が毎日その椅子で眠っている姿は、康一も見慣れている。

だが、それはあくまで“午前中の光景”だ。

太公望は、昼食の時間帯…遅くても午後三時頃になると起きている。

いつも、この時間帯なら、難しそうな古文の書籍を読むのに夢中になっているはずなのに…。

 

「珍しいだろう、彼が熟睡しているのは」

 

聞き慣れない誰かに声をかけられ、康一は前方へ視線を直す。

声の人物に、康一は見覚えがあった。

 

【双月文庫】によく訪れている常連の一人だ。

角のように前髪が少し飛び跳ねているのが特徴の黒い髪の青年。

見かける事はあれど、今まで会話した事はなかった。彼もまた、他の常連と関わりを持つ事は

なく、二階の隅で分厚い書物を一人で読んでいる姿が多い。

 

「あ、はい…」

 

「今日、珍しく【表玄関】からお客さんがきてね…

それが理由で午前中は眠れなかったんだよ」

 

「【表玄関】から?」

 

青年が語った理由に、康一は目を丸くした。

康一やこの店に通う客の大半は異世界出身で、【裏通り】を利用している。

【表玄関】から訪れる客とは、すなわち“店のある世界の住民”の事を指している。

 

「小学生の男の子女の子が五人と保護者の中年の男性が一人だった。

その内の三人が好奇心旺盛な元気な子達でね…」

 

青年曰く、太公望はいつもの如く長椅子で眠ろうとしたら…

 

『にいちゃん、まだ午前中なのに昼寝するのか?』

『そこはお客さんが座る席ですよ。ベッド代わりにしたらダメです』

『そうだよ! もしかして具合悪いの? 店長のお兄さん呼んでこようか?』

 

…とその三人の子達に口々に注意と心配をされたらしい。

途中で、眼鏡をかけた男の子が空気を察したのか止めに入ってくれたものの、子ども達の視線が

気になって、太公望は仕方なく重たい瞼をプルプルさせながら耐えた。

 

「…太公望さん、大変だったんですね」

「さすがの【彼】も、子ども相手に悪態をつく事はできなかったよ」

 

一時間前にその子ども達がようやく帰り、彼は夢路へと旅立ったようだ。

青年の説明から、太公望の持久戦の光景がありありと目の前に浮かんでしまい、

吹き出しそうになる。

 

「夕食までは寝かせてあげよう。そうしないと、酷だろうから」

「分かりました。…えっと~…」

 

名前を知らないため、目の前の青年をどう呼べばいいのやら…

康一のその悩みにすぐに気付いた彼は「そういえば…」と言葉を紡ぐ。

 

「君と話すのは初めてだったね。僕の名前は『ゼレフ』」

「ゼレフさんですね、僕は…」

「知ってるよ、広瀬康一君」

 

青年…ゼレフが薄ら笑みを浮かべて、名前を言い当てる。

康一が微かに目を見開くと、ゼレフはさらにこう続けた。

 

「この店にはちょくちょく訪れてるから、君だけじゃなく他の常連の名前も自然と覚えてしまったんだ。此処は…僕にとって唯一の“やすらぎの場”だから」

 

真顔で発したゼレフの意味深げな言葉に、康一はなんとも言えない顔になる。

 

(この人…複雑な事情を抱えてるのかな)

 

刹那の間きまずい空気が漂うが、それを察したゼレフが苦笑する。

 

「少し昔の事を思い出してしまったんだ。不快にさせてしまってごめんね」

「いえ、僕は気にしてませんので…」

 

康一が軽く首を左右に振って「大丈夫ですから」と言う。

 

「君は優しい人だね…ありがとう」

 

ゼレフは微笑んでそう返すと、三階へ続く階段へ視線を移す。

 

「それじゃあ、僕はこの辺で…」

 

 

また会えるといいね。

 

小さくそう囁くと、ゼレフは階段を昇っていった。

彼の背中を、康一はうーんと頬を指で掻きながら見送る。

 

「このお店って、どれくらいのリピーターがいるんだろう…?」

 

改めてその疑問が浮かび上がった。

康一は、常連(裏通り限定)の顔ぶれを大体は知っているが、すべて把握している訳ではない。

先程のゼレフのように顔見知りでも話を一度もした事がない人もいれば、一ヶ月に一回しか

顔を見せない人もいる。もしかしたら、まだ一度も面識のないお客もいるかもしれない。

裏を返せば…それだけこの店に訪れたがる魅力があるのだろう。

 

(あ、本探さないと…)

 

余所見をしていて、本題の事を思い出した。

康一は、右端にある本棚の二段目を指先でなぞりながら、お目当てを探していった。

 

 

 

 

 

『ぶいー!』

「お、今日も元気だねぇ」

 

一階でハルと話し込んでいた仗助は、勢いよく駆け出してきたイーブイに声をかける。

仗助の足元でぐるぐると二周すると、ハルの足元へ行き、頬ずりする。

 

「どうした?」

『マスター、だっこ!』

 

最近、この店に住み始めた茶色の愛らしいポケモンはハルに懐いている。

通常の特徴的な鳴き声ではなく人語で、抱っこしてほしいとおねだりしてきた。

ハルは、要望通り抱き上げてヨシヨシと背中を撫でる。

 

「甘えん坊だなぁ、ハルさんの事…親みたいに思ってんのかな」

「そうだと嬉しいな」

 

仗助が笑って言うと、ハルはほんのり笑ってそう返す。

密猟者に襲われた経緯から、トラウマがでてこないか、と従業員からの心配の声もあった。

だが、その懸念を払拭するほどイーブイは店にくる人々と積極的に関わっていき、すっかり慣れてしまったようだ。

 

顧客の中には苦手なタイプもいるようで、その人物には極力近寄らないが…

何はともあれ、イーブイがこの環境に馴染んでいるのは喜ばしい。

 

「此処にいたんですね!」

 

聴こえてきた常連の声に、ハルと仗助の視線は一階の通路へ向かう。

二人の目に映ったのは、常連の一人…エステルだった。

 

「お、エステルさん。こんにちはー」

「こんにちは、仗助君。…あの、ハルさん。お願いがあるんです」

 

小走りでやってきたエステルは、仗助に挨拶するとハルと…彼が抱きかかえているイーブイに

熱い眼差しを送る。

 

 

「えと…なんだい?」

「はい…………その子の名前、私も考えていいでしょうか?」

 

「「はい?」」『ぶい?』

 

その場にいる二人と一匹の声がはもった。

 

 

*** ***** ***

 

 

イーブイを保護した翌日、ハルはメールでオーキドと連絡を取った。

内容を確認したオーキドは彼の申し出を承諾し、それ以降、イーブイに関する情報をメールで

事細かにアドバイスしてくれるようになった。

 

その中で分かった事だが―――

彼の住む世界では、人々はポケモンを種の名前で呼ぶのが主流らしい。

しかし、中には手持ちのポケモンにニックネームをつける人もいるらしく…

 

「マスター、この子に名前をつけてはいかがでしょうか?」

 

ゲルダからそう提案されて、それなら考えようかな…と

漠然とだが思うようになったのが数日前の話。

エステルは、どうやらセッタからその話を聞いたらしく、

自分もその一大イベント(?)に参加したくなったのだ。

 

「…それで、名前は考えたんすか?」

「いや、それがなかなか浮かばなくてね…」

 

仗助の問いかけに、頬を掻きながら曖昧に笑うハル。

ただいま食事処を長机を借りて会議中。

食事が終わったソフィといつきも参加している。

 

「なら、皆さんの意見を聞いて決めるのはどうです?」

「そうだな…何かいいネーミングはあるかい?」

 

「はい!」

 

最初に挙手したのはいつきだった。

 

「どうぞ、いつきちゃん」

「このコさ、茶色くて男の子だべ…だから『茶太郎』はどうだ?」

 

『茶太郎』―――いつきの言う通り、茶色のふさふさした毛並みと性別を考えると

シンプルで呼びやすいネーミングだ。

机の上で細目で寛いでいるイーブイを観察しながら、ハルは冷静に分析していると…

 

「でも、その名前、渋すぎねぇか?」

 

仗助が異論を唱えてきた。

 

「もうちょっと垢抜けた感じにした方がいいんじゃねーかな?」

「そうかなぁ、じゃあ仗助のにいちゃんはどんな名前がいいんだ?」

「んっとなぁ~…『プリンス』とか?」

「おぉー、かっこいいべ!」

 

『プリンス』―――王家の血を継ぐ男子や高貴な身分の人物に贈られる称号。

また、業界で活躍している若い有名人などの愛称として使われている事もある。

イーブイが【双月文庫】のアイドル的な存在になりつつあるから…

そのネーミングが思いついたのだろうか?

 

この時、仗助は単に自分の好きな歌手の名前が思い浮かんだので、それを口にしただけなのだが…

そんな裏事情をハルは知る由もない。

 

「『タイガーフェスティバル』はどう?」

「えっ…タイガー?」

「ぶっ…フェスティバル…!?」

 

すると、順番を待っていたソフィが挙手してそれを言った。

思いもよらない言葉に、ハルはきょとんとし、仗助は吹き出してしまう。

 

「なんか強そうな名前だべ!」

 

いつきはキラキラと目を輝かせて、ソフィの考えたネーミングに関心を抱く。

 

「うん。かっこいい感じがいいかな、と思って…」

 

リチャードも気に入っているよ、とソフィは付け加える。

補足すると、リチャードとは彼女の親友の名前で、とても高貴な身分の男性である。

まだ幼かった頃に、彼が自らの正体を隠すためにその名を愛用したとの事だ。

…偽名として使うには、かなり目立つネーミングだが。

 

「エステルは?」

「そうですね…『オルセルグ』なんてどうです?」

 

ソフィに話題をふられ、エステルは考えていたイーブイの名前を公表した。

 

「うわぁー…エステルのねえちゃん、難しい言葉知ってるんだなぁ」

「グレイト、かなりいけてるっすね! その名前」

 

いつきと仗助の評価は上々のようだ。

 

「『オルセルグ』ってどういう意味なの?」

「異世界の古代語で【穢れなき瞳】を表しているんだ」

 

ソフィの質問に、ハルが答える。

エステルは、このイーブイの特徴を観察した上で思いついたのだろう。

ここまで四人に候補をだしてもらったが、なかなか甲乙つけがたい。

 

「ハルのにいちゃん、何か思いついただか?」

 

思考の最中、いつきが声をかけてきた。

 

「…うん、一つ浮かんだかな」

「本当?」

「どんな名前だべ?」

「是非教えてください!」

 

候補を聞いている間、うとうととしているイーブイを眺めていて、ある思いが生まれた。

いや、その感情はとっくに芽生えていてしっかりと根を張り巡らせ、大きく育っていたのだ。

 

このコの故郷を見つけるまでに一週間、一ヶ月…一年いやもっと長くかかるか分からない。

早いか遅いかの違いはあれ、いずれ帰ってしまう。

それでも、枯らすよりは成長させていきたい。

―――『愛情』の芽は、いずれこのコの心を豊かにしていくはずだから。

 

「こういうのはどうだろう?…名前は―――」

 

スヤッ…と寝息を立てるイーブイの頭を優しく撫でながら、ハルはその名を口にした。

 

 

 

【名前をつけましょう】

 

 

 

一時間前、舞台はM県S市杜王町へ戻る。

 

「はぁ、ひぃ…くっそ…! 思った以上に長引いたぜ…!」

 

一人の男子高校生…虹村億泰は必死に走っていた。

本来なら、一時間半前に友達二人と【双月文庫】へ行く予定だった。

その予定を大幅変更せざる負えなくなったのは、先週の数学のテストが返却された事が原因だ。

 

結果は撃沈…さらに『補習授業』という最も関わりたくないイベントまで発生してしまう。

授業が数分前に終わるや、億泰はいつもより少し重たい鞄を抱えて猛ダッシュで駆けだした。

 

明日から待ちに待った連休。

とある事情から一人暮らしの億泰は、二週間前にハルにあるお願いをした。

それは、貸本屋【双月文庫】の三階の来客専用の部屋へ宿泊するための予約。

基本、三階の部屋の多くは次元の歪により彷徨いこんでしまった人が、元の世界へ戻るまでに

使用するためにつくられたものだ。

 

つい最近、ある人物から事前に予約をして料金を支払えば、常連でも宿泊できる事が判明した。

来客用の部屋は広く、バスルームも完備。

食事処で、三食提供してくれるというサービス付き。

 

(しかも…朝食作りを担当しているのが―――ゲルダさん!)

 

億泰の顔はだらしない位ににやけている。

何を隠そう、彼は副店長のゲルダのファンなのだ。

 

『億泰さん、目玉焼きとスクランブルエッグ、どちらにしますか?』

 

(俺は、ゲルダさんの笑顔でおなかいっぱいでーす! なんつってv)

 

そんな妄想を頭で思い描きながら、億泰は走っていく。

ふと、反対方向からこの辺では見慣れない人物が歩いている姿が見えた。

左目を髪で隠したガタイのいい男性だ。

 

(待っててくださいねー、ゲルダさーん♪)

 

うししっと上機嫌でスキップする億泰はこの時全く気付いていなかった。

すれ違いざま、その男性が目を見開いて歩を止めて、自分の背中を見つめている事を…。

 

 

 

【つづく】




※億泰は見知らぬ男性に目をつけられた…が、本人は全然気付いていない。
  
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