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ハルさんの回想(5)

少年時代、前世と現世の記憶が融合したハルさんが手始めにある物の栽培を試みる話。
  


ハルさんの回想(【少年時代】最初の試み)

 

「…あっ!?」

 

あのサツマイモ蔓事件を経て、俺は前世の記憶が目覚めてしまった。

その事に多少の戸惑いを当初は覚えていたが、数日経過したらすっかり慣れた。

前世の記憶と今世の記憶が入り混じった俺は、現在進行形であるプロジェクトを進めている。

 

プロジェクト…という表現はちょっと大袈裟かもしれない。

ストレートに言うと、サツマイモの栽培を始めた。

 

 

前世は、芋類が好物だった。

さらに、肉じゃがとカレーライス、芋ケンピに、大学芋は大好物だった。

今世では、それに該当する食物をまだ目にした事がない。

食生活に不満がある訳ではない…と言いたいところだが、いくつかある。

 

芋を含めて野菜類が不足している事だ。

戦を終えた後の宴の時は、主に肉や酒がメインだし、どうも栄養バランスが

偏っている気がする。

 

魔神族の体の構造は人間と異なり、無敵とは言えないが頑丈であり、

平均寿命も1000歳と人間の10倍は長生きできる。

でも、戦で重傷を負えば場合によったら命を落とす事もあり得るし、

生まれつき身体が病弱であれば、平均寿命よりも前に儚くなる事だってある。

 

俺は、幼馴染や世話になっている人達が少しでも長生きできるように

健康を維持する術を見つけ出したい。

 

その一環として、芋や野菜等の食物栽培から始めようと思ったのだ。

あの領地で生息していた蔓をいくつか持ち帰った。

それから、お世話になっている家の庭に植えた。

 

『どんな物が実るのか、楽しみね』

 

義理の母親は綺麗で優しい女性だ。

噂では、魔神族の隷属化にある部族の長だとか、魔神族と他種族とのハーフだとか

…真相はハッキリしない。

 

魔神王とは親しい間柄なのは確かなようだ

…男女の関係なのか、友情のどちらなのかは不明だけど、とにかくいい人だ。

 

赤の他人である俺を実の息子のように接してくれる。

サツマイモ栽培計画にも賛同してくれた数少ない人だ。

実は、この計画…反対している人が多い。

 

 

 

「エル…何してるんだよ」

 

特に、幼馴染のエスタロッサがその代表格だった。

 

「何って…草むしり」

「それは雑草じゃないよ」

「ああ、雑草じゃないか…毒草だった」

「あっ~!」

 

説明する俺をよそに、エスタロッサは蔓をぶちぶちと引っこ抜いていく。

何するんだ…と慌てて彼の行いを制止する。

 

「だから、これは雑草でも毒草でもないんだって…」

「違う、毒草だ! じゃなきゃ…」

 

エスタロッサが感情を荒げて、言い返そうとした時…

 

「任務だ。さっさと準備しろ」

 

冷淡な表情を浮かべたメリオダスが、その言葉を遮った。

エスタロッサは何か言いかけたものの口を噤んで、メリオダスの命令に従った。

 

「…草いじりはほどほどにしとけ」

 

去り際に、メリオダスが俺へ忠告してきた。

珍しく、眉を下げてやや困ったような顔だった

…まるで、愛猫がいたずらしたのをうまく叱れない飼い主のようだ。

 

多分、あの時…メリオダスも本音は俺の行動を止めたかったのかもしれない。

 

あの出来事からまだ日が浅く、メリオダスやエスタロッサだけでなく

…他の幼馴染や大人でさえ、俺の事を気にかけている。

エスタロッサが頑なに、芋の蔓を毒草だと言い張ったのも

…俺を危険物から引き離したかったから。

 

その事を申し訳ないな…と思う反面、嬉しく感じる自分がいる。

 

(…根気強く説得するしかないか)

 

芋の蔓が、危険ではない事を証明しなければならない。

そのためにも、早く現物である芋を収穫しよう。

 

(この世界の芋が、前世と同じ味だといいけど…)

 

無事収穫できた時の懸念が頭をよぎる。

 

(…って、その前に芋を育てないと)

 

自分にツッコみを入れながら、心は不安と期待が右往左往しつつも、

俺は計画を進行させていった。

その過程で、エスタロッサやガランのじいさん達の妨害にあったものの、

なんとか生育は成功した。

 

後に、『毒草』呼ばわりされていた芋は、俺の前世の記憶にあるレシピも

功を奏したのか、『お菓子の材料』や『おかず』へ昇格したのだった。

  




※当時のメリオダスは、エスタロッサと同じく秘密裏に獄炎で蔓を消滅させようと画策していた模様。
 その事に気付いたゴウセルに止められて、渋々様子見する事になった裏設定があります。
  
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