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多重クロスオーバー形式連載 第17話。

今回の話のメインは、TOGのソフィ。
また、後半でNARUTOのとある人物が登場します。



第17話【初対面な常連客と…】

 

私は眠っていた。

気が遠くなるくらいの長い年月を、あの樹がある花畑と、ひとつになって…。

 

『……女の子?』

『お、おい! どうしてこんなところで寝てるんだよ!?』

 

…声がした。

私を起こしてくれたのは…二人の少年だった。

 

『俺はアスベル・ラント。こっちは―――』

 

彼が名前を教えてくれた。

これが…私と、私に【ソフィ】と名付けてくれた人

…【アスベル】との最初の出会い。

 

 

*** ***** ***

 

 

空を海で覆われた世界…【エフィネア】

そこは、『煇石(クリアス)』と呼ばれる物質に含まれる『原素(エレス)』を

エネルギー源として使用する文明を築いていた。

 

国は三つで形成されており、それぞれの政治体制の下、人々は独自の文化をもっている。

三カ国の一つ…【ウィンドル】の領地である『ラント領』に、ソフィの姿があった。

 

 

「たーねをうえまーしょー♪ みーずをまきまーしょー♪」

 

 

ソフィは、このラント領の領主の家で暮らしている。

主な日課は、きちんと整えられた庭にある花壇の植物の世話。

先日、通っている貸本屋の副店長…ゲルダからもらった植物の種を、歌を口ずさみながら

空いているスペースに植えていた。

 

 

「すーくすーくすこやかにー、おおきくなーれー♪」

 

 

植えた場所にジョウロで水をかける。

湿った土を見ながら、ソフィは口元を緩める。

 

(…どんな花になるのかな?)

 

この花は、比較的育ちやすいタイプだから…とゲルダが勧めてくれたもの。

貸本屋の庭園に咲いている花の一つとの事。

 

このラント領のある【ウィンドル】は、安定した気候のために緑が豊かな国だ。

植物が育ちやすい環境に恵まれた場所でよかった…とソフィは思う。

こうして、大好きな花を植える事ができるのだから。

 

「ソフィ様」

 

名前を呼ばれ、振り返るとフレデリックが立っていた。

 

「フレデリックさん」

「そろそろ昼食の時間ですので、お呼びに参りました」

 

フレデリックは、アスベルの父の頃からラント家に仕えている老執事である。

ソフィがあの花畑で目覚めて、アスベルにこの領地に連れてこられた際に、

彼とは初めて顔を合わせた。

 

やや戸惑いの色は見え隠れしていたものの、フレデリックは、ソフィの事を

“一人の客人”として丁重にもてなしてくれた。

 

フレデリックだけでない…このラント領に住む住民達は親切だ。

紆余曲折を経たけれど、此処に暮らすようになったソフィの事を受け入れてくれたのだから。

 

「ありがとう、すぐ行くね」

「それから…本日も、あの不思議な貸本屋に行かれる予定ですか?」

 

「うん、前に借りた本を返さないといけないから」

「左様ですか…ならば、準備をしておきます」

 

にこやかにそう告げるフレデリックに、ソフィは「ありがとう」と再び御礼を言った。

 

 

*** ***** ***

 

 

ソフィが、貸本屋【双月文庫】の存在を知ったのは、ラント領にある風車小屋の前に

時空の歪が発生した出来事がきっかけだった。

その時期、ある事情で旅に出ていたソフィとアスベル達は、たまたまラント領に

用事があって戻っていた。突如、おかしな歪が出現した事に不安がる住民達の声に、

アスベルはこれはいけない…とその現場へ向かった。

 

『…なんだこれ』

『ヘンな穴が空いてる…』

 

住民の証言通り、風車小屋の扉の前にそれはあった。

戸惑いを隠せないアスベルの横で、ソフィはその摩訶不思議な光景に目が釘付けになった。

 

『無闇に、至近距離まで行かない方がいいですね…』

『うーん、これ空間に何かが干渉してるのかなー…って、うわぁ!?』

『って…言ってる傍からッ! パスカルさん!』

 

仲間の一人である、アンマルチア族のパスカルが興味深そうにその歪を調べようとして、

吸い込まれそうになったのだ。咄嗟に、アスベルの弟であり、今はストラタの名家の

養子となったヒューバートが腕を掴んで助けようとした。

 

しかし、あまりにも吸引力が強く、ヒューバートは宙に浮くパスカルの両手を離さぬよう

地面に踏み止まるしかできない。

 

『!? パスカル! ヒューバート!』

『つかまって!』

 

見かねたアスベルとソフィも加わって二人を助けようとしたが…

 

『うっ…な、なんて強い力だ…』

『…足が…浮いちゃう…』

 

逆にピンチな状況に陥ってしまう。

 

『四人とも、なんとか踏ん張れ!』

『教官…こ、このままじゃ…』

 

アスベルが通っていた騎士学校の教官だったマリクとアスベルの幼馴染のシェリアも

加わったものの状況は変わらず…

 

 

『『『うわぁあああ(キャアアア)―――!』』』

 

 

とうとう六人とも、その歪へ吸収されてしまった。

 

 

 

 

 

『…ココは、どこ?』

 

ソフィ達が辿り着いたのは、貸本屋【双月文庫】の庭園だった。

たまたま、そこで植物の手入れをしていたハルにより、彼等は保護された。

 

『元の世界への帰り道を探すまでの間、こちらで宿泊してください』

 

ハルはいい人だった。

ソフィ達を【エフィネア】に戻す事を約束してくれた上で、その間の寝食をすべて

負担してくれた。

 

そして、お世話になっている間…【双月文庫】にある書物を好きなだけ閲覧できると

告げられ、彼等はハルの厚意に甘える事にした。

 

 

まず、店の中にある本の多さにソフィは驚いた。

アスベルの家にある書庫にも分厚そうな本がびっしり揃っていたが、この店はその何倍もあった。

 

『おお~、たっくさんあるねー』

 

パスカルは、ほぅほぅ、へーと興味を抱いた本を片っ端からパラパラと頁を捲って

斜め読みしていた。

 

『うぅ…なにこれ、切なすぎる…』

『おーい、シェリア…って、夢中すぎて全然聞こえてないな』

 

シェリアは、主に恋愛小説を読んでいた

時折、小説の展開に目を潤ませながら真剣に一頁ずつ熟読していく姿に、アスベルが

どう声をかけたらいいか困っていた。

 

『ヒューバート、それ面白いのか?』

 

『なっ…背後からいきなり話しかけないでください!

こ、これは…ただ気になって目を通してみただけです』

 

ヒューバートも、二階のコーナーにある漫画が気に入ったのか、何故かアスベル達が

見えない場所でこっそり読んでいた。

マリクに声をかけられ、慌てていたのは何故だろうか?

 

かくいう、ソフィもたくさんの種類のある本の中から一冊ずつ気になった作品を

読んでいった。

 

中でも、異世界の植物が掲載されている図鑑が好きになった。

鮮やかな色の花や草木、木の実…見ているだけで、ソフィは実物がそこにあるような

気分になれるのだ。

 

 

さらに、ソフィは友達ができた。

 

『よかったら、庭園の花を見てみます?』

 

…その人物は、副店長のゲルダだった。

ゲルダも、ソフィと同じく植物を育てる事が好きらしく、共通の趣味のもつ事に

親近感を覚えた。

 

――― “ 異世界の初めての友達 ”

 

ソフィは胸にくすぐったいような、温かい気持ちが芽生えていた。

それから、ソフィは特にシェリアも交えながら時間が許す限り、ゲルダと交流を

深めていき…気付けば、元の世界に帰る時があっという間に訪れた。

 

(このまま、別れるなんてヤダ…)

 

【エフィネア】に戻れる事は嬉しい。

でも折角、ゲルダと仲良くなれたのに…二度と会えなくなるのが寂しかった。

 

 

『もし、貴女が望むなら…このお店の顧客になりますか?』

 

 

すると、ソフィの気持ちを汲み取ったのか、ゲルダがそう提案してくれたのだ。

【双月文庫】は、店主であるハルに顧客になりたいと申請する事で、店に繋がる道を

生み出す鍵をもらえる。つまり、そのアイテムを使用すれば、好きな時にお店を

行き来できるという事。

 

ソフィは、アスベル達と相談した上で【双月文庫】の顧客となった。

それ以来、時間が出来たら店に行くようになった。

 

通い続けてから、ゲルダとは別の異世界の友達が何名かできた。

会うたびに、友達から彼等が住む世界や文化など…色んな話題で盛り上がった。

食事処で、好物のカニタマやお菓子を食べたり、一人でお泊りしたり…

 

ソフィにとって、【双月文庫】は特別な場所になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

昼食を済ませてから、ソフィは首にかけていたチェーン付きの鍵を手に取った。

自らの部屋の鍵穴にそれを差し込むと、扉全体が一瞬だけ白い光に包まれる。

扉の隙間から緑色の光が見え隠れしだしたら…店へ通じる道(ルート)に繋がった証拠だ。

 

そして、ソフィは扉を開いて今日もお店へ向かう。

 

 

  カラン、カラーン

 

 

「いらっしゃいませ」

 

カウンターにいる店長のハルが、笑顔で出迎えてくれた。

 

「こんにちは、ハルさん。ゲルダさん…いますか?」

「今、買い物に行ってますよ。一時間ぐらいしたら戻ってくる、かな」

 

ゲルダは外出しているようだ。

時計を見ながらいつ帰宅するのか、ハルは教えてくれた。

 

(…早く帰ってくるといいな)

 

先日の花の種をくれた御礼に、ラッピングしたクッキーをもってきた。

本当はすぐにでも渡したかったのだが、仕方ない。

帰ってくるまで、本を読んで時間を過ごそう。

ありがとう、とソフィは御礼を言うと、一階に設置されている本棚を見て回る事にした。

 

植物関連の本がある棚を見る。

下から中の段にある書物は、もう読み終えたものばかりだ。

 

ソフィが視線を上へ移す。

上の段に、面白そうな書物がないか探す。

右側から三番目に『魔法界 希少植物とその生態系』というタイトルの分厚い本がある。

その本が気になって、ソフィは背伸びして取ろうとするが…届かない。

 

(そうだ、ジャンプしてとれば…)

 

「君、本を取りたいのかい?」

 

持ち前の身体能力を生かして、跳躍しようとしたその時…後方から声をかけられた。

振り返ると、黒髪の男性が立っていた。

 

外見は、アスベルよりも少し年上くらいだ。

鼻のやや上部分に一直線の傷跡があり、少々長めの髪を後ろで立つ様に髪ゴムで

止めている。紺色がベースの見慣れない服装をしている。

 

「はい…上にある本を取りたいんです」

「どの本かな?」

「アレ…緑色の大きな本」

 

ソフィがその目当ての書物を指さすと、その男性はそれを棚から引き抜いて、

はいどうぞとソフィに差し出す。

 

「ありがとう…ございます」

 

ソフィは目を丸くして、差し出されたその本を両手で受け取り、御礼を言った。

 

「どういたしまして。もし、読みたい本が手の届かない所にあるなら、

お店の人に頼んだらいいよ」

 

くれぐれもジャンプして取らない様に、足を怪我する危険があるからね…と

親切にアドバイスしてくれた。

自分がやろうとしていた事を見透かされ、ソフィはちょっとドキッとした。

 

男性が別の本棚に向かい、ソフィはパタパタと早歩きでいつもの席に座る。

分厚い本の表紙を開いて、頁をゆっくり捲っていく。

本の内容に目を通す傍ら、ふと視線をあげると、本棚を見ているさっきの男性が

視界に映った。

 

(あ…あのお兄さん、たまに見かける人だ)

 

ソフィはここで、さっきの親切な男性が普段はあまりこない常連客である事を

思い出した。今まで、話した事がない人だったため、今回初めて会話した事になる。

 

 

「ふぅ…ちょっとブレイクタイムにしようかしら…」

 

 

ちょうど、グリモワールが階段を降り終えて、食事処へ向かっている途中だった。

本棚から数冊、本を抜き取っていた男性が彼女を目にするや驚き交じりの嬉しい

表情で近づいていく。

 

「グリモさんじゃないですか!」

「あら…イルカの坊や。久しぶりね」

「はい。お元気そうで何よりです」

 

ソフィは目を瞬きさせる。

あの男性が、グリモワールと仲良さそうに話している。

…二人が親しい友人関係なのだと知り、意外だと思った。

 

(あのお兄さん、イルカさんって言うんだ…)

 

イルカとグリモワールが談話しているところを、ソフィはじぃーと見つめていると…

 

「そこのお嬢ちゃん。何か御用かしら?」

 

視線に感付いたグリモワールが、ソフィに声をかけてきた。

 

「あっ…ごめんなさい」

「謝らなくていいよ。読書中だし、声が気になったんだね?」

 

イルカはさして気にしていないようで、邪魔してすまないねと気遣ってくれた。

 

「そういえば、イルカの坊や…私がいない間に顧客になった人、

どのくらいいる?」

 

「そうですね…俺が知ってる限りでは五、六人くらいいますよ」

 

「ふーん…暫く、この店で世話になるから会う可能性も無きにしも非ず

…ってとこかしら」

 

グリモワールが頬に手を当てて、面倒くさそうね…と溜息を吐く。

 

「ここだと何ですし、食事処で話しませんか?」

 

「そうねぇ。今の時間帯は空いてるし、手頃な話し相手がほしかったところだし…

いいわ」

 

 

 

【初対面な常連客と…】

 

 

 

「お嬢ちゃんもいっしょにどう?」

「!……いいの?」

 

「ええ、今日は久々に話したい気分だから…

話し相手は増えても問題ないわ」

 

坊やもいいわね、というメッセージを含んだアイコンタクトをグリモワールはイルカに

送る。彼女の誘いに、イルカは笑って「構いませんよ」とすんなり承諾した。

 

「えと…よろしくお願いします」

「こちらこそ」

「そうと決まれば…早めにハルに注文しないとね…」

 

ぷきゅぷきゅと独特の足音を立てながら、グリモワールは先に行ってしまう。

 

 

(アスベル……私、知らないお客さんとお話する事になっちゃった)

 

 

この場にいない親友に語り聞かせるように、ソフィはドキドキしながら、

イルカの一歩後ろをついていく形で、食事処へ足を進めた。

 

 

 

【つづく】

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