Brand new page   作:ねことも

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ハルさんの回想(10)

クリームシチューが何者かに食べられる事件が発生。
少年ハルさんは速やかに真相を究明する話(笑)
  


ハルさんの回想(【少年時代】クリームシチュー事件)

‟ 事件は現場で起きている ”

 

 

とある刑事ドラマの主人公が言った名台詞が、頭に浮かび上がる。

 

これは、事件だ。

血が充満するような生臭い系統のモノではないのが幸いだけど、決して容認できない出来事だ。

 

 

遡る事、五時間前にガランのじいさんと鍛錬のために外に出かけていた。

その前に、俺はクリームシチュー(試作品)を作っていた。

 

「これは…事件の匂いがプンプンするぞ~」

 

今日から数日間、夕食のメインになるはずだった寸胴鍋に入っていたシチューが

…七割減っている。

 

まず、俺は床を見た。

どうやら、地響きか何かで零れたのではないようだ。

 

次に…俺は部屋を見渡した。

 

「あ、おかえり」

「…むにゃ…ッ! ヴぁ…ヴァイス…」

「……すぴ~ zzz」

 

「おやまぁ、ヴァイス。帰ってきたんだね。

ちょうどいいタイミングというべきか否か…」

 

不法侵入者が四名がいた。

 

「うん。とりあえず、みんな…事情を説明してくれるかな?」

 

俺は微妙な顔を隠す事無く、取り調べをする事にした。

 

「ベッドで寝ているリリは後にして…

まず、エル。なんで此処にいるんだ?」

 

「メラを探してたんだ。この間、借りた本を返したくて。

…ついでに、ヴァイスの家で寛ごうと思って来たら、メラとデリエリがいた」

 

「わ、わたしは…『ヴァイスの様子をみてこい』って、メリオダスから言われて

…来ただけよ。デリエリといっしょに!」

 

「私は、デリエリがなかなか帰ってこないから迎えにきただけだ。

ちょうど私が着いてからすぐに、ヴァイスが来たんだよねぇ…」

 

なるほど、メラとリリが此処に不法侵入したのは、メリオダスの命令があったからか。

…エルは単純に遊びに来ただけ。

モンさんはリリを探していたようだ。

 

それぞれの証言を聞きながら、俺はさらに追及した。

 

「この鍋に入ってたシチュー、誰か食べた?」

「ヴァイス、それ新しいメニューかね?」

 

モンさんが興味深そうに、クリームシチューに視線を向けてきたので、解説する事にした。

 

「うん、まだ試作品段階で…俺の夕食にするつもりだったんだけど」

「…大分減ってるな」

 

「よかったら、食べてみる?」

「おや、いいのかい? じゃあ…お言葉に甘えて」

 

シチューをよそった皿と手渡した木匙を手渡して、モンさんに味わってもらった。

 

「どう?」

「ほぉ~…いい味出してるじゃないの」

 

モンさんはそう言うと、木匙でスープを一口ずつ味わっていく。

その様子から…この試作品はモンさんの口に合ったようだ。

 

「それにしても、今回の具は偏ってるね…肉は入れなかったのかい?」

「…あっ!」

 

モンさんの指摘に、俺はハッとした。

シチューの具は、野菜がやたらと残されていた。

特に、人参や玉葱の量はほぼ減っていない。

逆に、多めにいれた鶏っぽい鳥の肉が欠片もなかった。

 

「あのさ、もしかして……って、あっ…」

 

エルとメラに再度聞き返そうとしたその時、寝ているリリに目が止まった。

リリは、スヤスヤと熟睡中だ…その頬に白い痕跡が残されていた。

 

「メラ、リリはどのくらいシチューを食べてた?

あと、モンさん、リリの口元をまだ拭かないでね」

 

…シチューを食べた犯人は一人確定した。

口元に証拠を残していた犯人、もといリリはまだ夢路にいる。

その痕跡を手拭いで拭こうとしたモンさんにストップをかけておく

…ここで証拠を消されたら困る。

 

メラは、きまずそうな顔で視線を斜め下に落としている。

 

「…メラ、教えて」

「……」

 

「怒らないから」

「……本当に?」

 

「うん。けど、ちょっとお説教はする」

「………ごめんなさい」

 

メラは正直に答えてくれた。

俺の不在時に、家に入った際に試作品のシチューに目がとまった事。

好奇心から、それを口にして味がよかった所為かおかわりを三回した事

(リリは五回したらしい)。

やや目を潤ませながら、メラが告白している最中にリリの目が覚めた。

 

「ごめん…わるかった」

 

リリは状況を察知したのか、まず謝罪を口にした…うん、いい子だ。

 

「もう、勝手に食べちゃダメだよ」

「ん」「…はい」

 

「さて…ここで謎が残る」

「え、何が?」

 

俺の言葉に、モンさんが聞き返した。

 

「メラとリリがおかわりした回数を計算しても、シチューの量はせいぜい

二割程度しか減らないはず。

現状から判断して…これを食べた犯人が別にいる事になるんだ」

 

そう説明しながら、俺はジト目でもう一人の幼馴染を見る。

 

「エル…言いたい事あるか?」

「…えっと…」

 

「素直に本当の事を言えば、今なら平手チョップで済ませるから」

「えぇー! なんだよ…その対応の差!?」

 

「仕方ない、じいさんに来てもらって聴取してもらおうか…」

「ごめん、うまかったから調子に乗りました」

 

だったら、最初から白状しろよ。

予告通り、頭を下げるエルに平手チョップをお見舞いしてやった。

 

「まったく、お前って奴は…」

「いてぇ~…ホントにやりやがったな。このヤロー…」

 

頭を利き手で擦りながら、エルは文句を零す。

無断で食べたお前が悪いんだろうが…。

 

「自業自得だね、エスタロッサ。

デリエリとメラスキュラも…

今後はこういう事はしないように」

 

「…ちぇー、分かったよ」

「…ん」「はーい…」

 

モンさんの言葉に、三人はそれぞれ同意した。

きちんと謝ってくれたからいいとして…折角だから、聞いておこう。

 

「味はどうだった?」

「…けつからいって、濃いのがいい」

 

「あのシチューはあれで美味だったが、さらに味を濃くしたら美味しさが

格段に増す…という事か」

 

リリの言いたい事を、モンさんはさらりと翻訳してくれた。

ちなみに、私はあの味付けでも十分だったけどねとモンさん自身の意見ももらえた。

 

「俺もデリエリの意見に賛成。もっと味が濃くてもよかったと思う」

「そう? わたし、あの味付けでよかったわよ」

 

四人中、二人が味付けが濃くしてほしいと希望した。

なるほど…これはもうちょっと改良してみよう。

残ったシチューの具をマイ箸でとって、味見しながら思案する。

 

「毎回思うけど、よく木の枝二本で器用な使い方するね」

「…ん? コレの事?」

「そうそう、いつの間にそんな使い方を覚えたんだ?」

 

モンさんの何気ない質問に、ドキッとしてしまう。

記憶を思い出して以降、生前の習慣が少しずつ表れるようになった。

 

「えと…頭にぽっと浮かんだイメージを試してたら、できるようになったんだけど、

ダメかな?」

 

「そうかい…いや、単に気になっただけだよ」

 

モンさんは一応納得してくれた。

でも、これから先、俺のこの些細な変化に難を示す人が出てくるかもしれない。

それをどう対処しようか…。

 

 

この時、幼馴染の二人が不安そうに見つめていた事を

…俺は後に聞かされる事となる。

  

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