Brand new page   作:ねことも

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多重クロスオーバー形式連載 第18話。

今回は前回と引き続いて、TOGのソフィとグリモワールの二人がメインの話。


※エフィネアの平均寿命などは、この作品内のオリジナル設定です。
※この話の最後の方で、王国心のとあるキャラが登場しています。
  


第18話【とんがり帽子のノルミン天族は、少女に問いかける】

ソフィは、食事処のカウンターの席に腰を下ろしていた。

食事処はソフィにとって、好物の【かにたま】をよく注文するところであり、

友達とお喋りする憩いの場でもある。

普段は慣れている場所が、今日は違うところにいるように感じてしまう。

 

「お嬢ちゃん、名前は?」

 

隣の席に座ったグリモワールが名を尋ねてきた。

 

「ソフィ…です」

「そう。じゃあソフィ、甘い物は好きかしら?」

 

グリモワールの問いかけに、ソフィはコクリと頷く。

 

「ならいけそうねぇ…ハル、いつものメニュー、三人分おねがい」

「了解、飲み物はいつもので?」

「ええ、貴方達はどうする?」

 

「俺はコーヒーで」

「…ホットミルク」

 

グリモワールの問いかけに、二人は各々飲みたい物をオーダーする。

かしこまりました、とハルは厨房の奥へ向かう。

 

(ハルさんがつくるんだ…)

 

食事処の料理は、セッタが主に担当している。

彼の作る「かにたま」は絶品だ。

ソフィは、ハルが作る料理はまだ片手で数えるほどしか食べていない。

でも、セッタと同じくらいハルの作る料理も美味しい事は知っている。

 

「さーて、注文がくるまでちょっとお喋りしましょうか。

坊や、最近どう?」

 

「ハハッ、忙しい毎日を過ごしてます」

 

「教職についたって、他の古参から聞いたけど?

たくさんの子どもに知識を教えるのは大変でしょうに…」

 

「でも、その分やりがいがありますよ。

個性的な生徒が多いけれど…どんな子にもそれぞれ長所がある」

 

危険な任務よりも、この仕事の方が好きですね…とイルカは朗らかに笑って言う。

 

(イルカさん…先生なんだ)

 

グリモワールとの会話で、イルカの素性がほんのちょっとだけ分かった。

ソフィは、「先生」と呼ばれる職種の人に会った事がほとんどない。

強いて言うなら…仲間であるマリクと、まだアスベルが少年だった頃に、

親友のリチャードに危害を加えようとした人(名前は忘れた)だろうか。

 

「ふーん…ちゃんと食事はできてるの?」

 

「『完璧に』とまではいきませんが、自炊はできるようになりました。

休日は此処でお世話になってますし…」

 

「あらそぅ。成長したものねぇ…」

 

話を聞く限り、イルカは一人暮らしのようだ。

自炊とは、自分で料理を作る事。

ソフィは、一人だけで料理を作った事はない。

 

旅をしていた時は、シェリアが料理を専ら担当しており、ソフィは時々食器を

準備したり、洗ったりしていた。

 

「ところで、ソフィ…」

「あっ…はい!」

 

イルカと話していたグリモワールが、ソフィの名を呼んだ。

ただ、話に耳を傾けるだけだったため、突然話を振られて、ソフィは少々慌ててしまったのか

大きな声を出してしまう。

 

「あんたはどんな理由で、此処へ通う事にしたの?」

「…友達がいるから」

 

「友達? 常連の誰か、それともハルの事?」

「両方とも…それから、ゲルダさんもいるよ」

「そう、たくさんいるのねぇ…」

 

素直に答えると、グリモワールは目を細めて口元に綺麗な弧を描く。

 

 

「グリモさんは…どうして、このお店に来るの?」

 

 

逆に、グリモワールは何故この店に訪れるのだろう?

素朴な質問を聞き返してきた少女に、妖精は小さな手を頬に当ててふぅ…と息を漏らす。

 

「そうねぇ…話すと長くなるから、結論から言うと…『古馴染み』だからね」

「ふる…なじみ?」

「要するに、ハルとは長い付き合いがあるって事」

 

グリモワールは、ハルとの出会いをかいつまんで話してくれた。

昔々…それこそ、一々数えるのが億劫になるくらいの大分前に…グリモワールの故郷に

あたる世界で、彼女はある出来事がきっかけでハルと出会った。

当時のハルは、今とは多少違う雰囲気の青年だったらしいが、性格はその時から

変わっていないとの事。

 

それ以来、定期的に交流をするようになり、現在に至ると言う。

 

「昔って…グリモさんは長く生きてるの?」

 

「ええ…あたしは『ノルミン』と呼ばれる天族だから。

【天族】っていうのは姿形はそれぞれだけど…人間の長生きの年齢対象を遥かに超える

年月を生きる種族なの」

 

グリモワールは、自らの種族の事を分かりやすく説明してくれた。

話を聞いていて、ソフィはハッとした。

 

「じゃあ、ハルさんも…すごく長生きしてる?」

「ふふ、そうなるわねぇ…」

 

妖精は蠱惑的に笑って肯定する。

ソフィは目を大きく見開いた。

人間の寿命は、この世界ではどうか分からないが、ソフィのいる世界…エフィネアでは

平均的に70歳位だと、ヒューバートから聞いた事がある。

 

そうなると…ハルは人間とは異なる種族という事になる。

 

 

「ハルさん…何者なんですか?」

 

 

自ずとその疑問をストレートに口に出していた。

 

「やっぱりそこが気になっちゃう?」

 

グリモワールは、カウンターテーブルに置かれていた水を一口飲むと、

目をキラリと光らせる。

 

「もし、彼の正体が【人間じゃない】って言ったら…

あんたはどう思うの?」

 

その質問を口にした彼女の声音は、ひんやりした冷気を帯びているように聞こえた。

ソフィは、小首を傾げながらうーん…と考える。

数分の時を経て、彼女が導き出した答えは…

 

「『そうなんだ』って思う」

「…あら?」

 

グリモワールは微かに目を見開いた。

 

「こういう話をすると…多少、答えるのを躊躇する人が多いんだけど」

 

意外そうに言うグリモワールに、ソフィは不思議そうに聞き返す。

 

「…普通は違うの?」

「まあね。むしろ……そういう答えを出す方が少数だもの」

 

グリモワールは興味深そうにソフィに視線を注ぐ。

 

「…もしかして、嫌な気分になった?」

 

「いーえ…その逆よ。ソフィ、念の為、聞くけど…あんたが言ったその答えは

『ハルが人間以外の種族だったとしても嫌悪感を覚えたりしない』って意味よね?」

 

さらに深く追及されると、ソフィはすぐに首を小さく縦に振る。

それにしても、なんでグリモワールがそういう質問をするのだろう…?

 

 

『むしろ、公にする事を控えたい方もいますから…』

 

 

浮かんだ謎を紐解くように、ソフィの脳裏にこの間、ゲルダが言っていた言葉が蘇る。

あの時…彼女は悲しい感情を顔に露わにしていた。

 

(だからなんだ…)

 

これは憶測だが、グリモワールや…ハルは過去にそういった問題に遭遇した事が

あるのだろう。人間とは違う存在だから、と差別されたり、偏見な目で見られたり…

文字通り、人間側から拒絶されたのかもしれない。

 

かくいうソフィも、人間ではない。

エフィネアとは異なる星で…優秀な科学者の手によりつくられた『ヒューマノイド』だ。

“ある存在”を倒すために、ソフィは故郷である星からエフィネアへ降り立った。

 

その存在との戦いは激しさを極めた。

一時的に身体を癒すために眠りについた…その場所はラント領のあの裏山の花畑だった。

 

千年の時を経て眠りから覚めた直後に…幼いアスベルとヒューバートに会った。

それからシェリアやお忍びでラント領を訪れていたリチャードとも知り合い、

幼い四人とほんの少しの間行動を共にした。

 

 

それから…ある事情でまた眠りについてしまい、大きくなったアスベル達と再会した。

姿形が変わらない自分を目にしても、アスベル達は受け入れてくれた。

思えば、ソフィは周囲に恵まれていたのだろう。

 

もしも…あの花畑で出会ったのがアスベル達ではない、他の誰かだったら、

自分はどうなっていただろう?

 

(…考えた事もなかった)

 

そんなもしも…の仮定を想像する事なんてできない。

それだけ、ソフィは今の環境が好きなのだ。

アスベル達や…ラント領の人達と時間を共にする事で満たされているのだ。

 

(だから、私は…こんな気持ちになれる…)

 

人間でない自分を素性を知った上で、受け入れてくれる人がいる。

それが、とても尊くて幸せな事なのだと改めて実感した。

ソフィはグリモワールと向き合い、こう返した。

 

「うん。だって人間でもそうでなくても…

ハルさんは【ハルさん】でしょう?」

 

例え、ハルの正体がどんな存在であろうと関係ない。

ソフィは、ハルが『優しくていい人』だと知っている。

…過去がどうであろうと、その事実があれば十分なのだから。

 

「ふふ…いいわねぇ、気に入ったわ」

 

自分の思っている事をありのまま話すと、グリモワールは笑みを深めてそう言った。

その様子から…自分の出した答えは、彼女的に【正解】なのだと、ソフィは感じ取った。

 

「もし機会があれば…ハルさんに、その気持ちを伝えてあげたらどうかな?

きっと喜ぶと思うよ」

 

二人の会話を聴いていたイルカが、ソフィにアドバイスしてきた。

…自ずと、ハルが嬉しそうに笑う姿が浮かび上がった。

 

「うん、そうします」

 

ソフィは笑顔でそう返事する。

 

(いつか、伝える事ができたらいいな…)

 

メッセージを…ハルに贈る日がくる事を願いながら。

 

 

 

 

【とんがり帽子のノルミン天族は、少女に問いかける】

 

 

 

 

貸本屋【双月文庫】の鉄製の門の前に、ある人物が立っていた。

 

「…ここが調査場所か」

 

薄い金色の髪に、ひょろっとした細めの体型の男性が、じぃーと屋敷を凝視している。

ぺらぺらと茶色の手帳を捲り、目に留まった頁に挟んでいた写真と目に映る屋敷を

交互に見比べる。

 

「ゼムナス殿からの直々の命令だ。慎重にかつ正確に情報収集せねばな…」

 

くくくっと忍び笑いをするその男性。

傍から見れば、あまりお近づきになりたくないタイプの人物である。

 

(…まずは店に入らねば…いや、その前に屋敷周辺の地理を調べるべきか)

 

頭の中で、どこから調査すべきか…と男性は思案する。

ブツブツと呟いていると…

 

「あの…すみません」

 

背後から声をかけられ、男性はビクッと肩を震わせる。

 

「なっ、なんですかな…?」

 

バッと振り返ると、その声の主がちょっと驚いた顔を浮かべた。

華美なワンピース姿の儚い雰囲気を醸し出す美しい女性だ。

 

「私はこの店で働いている者ですが…当店に何か御用でしょうか?」

 

「え、あ…ああ、お店の方でしたか!

いやぁ…その、『珍しい書物がある』という噂を聞きましてな。

このお店で取り扱っているとか…」

 

「まぁ、それでわざわざこちらに…。

はい、当店は幅広い書籍を取り扱っております」

 

男性は咄嗟にお客だと主張すると、女性は警戒を解いたのか、微笑みを浮かべて

男性に丁寧に答えていく。

 

「もし、よろしければご案内いたしましょうか」

「…! では喜んで…」

 

思いがけない形で、屋敷の中へ入る事となったが…概ね『潜入成功』であると言えよう。

男性は内心、安堵しながらも…任務を開始する事にした。

 

 

 

 

【つづく】




※次回(第19話)からは、最後に登場した男性視点の話となります。
  
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