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ハルさんの回想(16)

少年時代、フラウドリンと料理の試食会をする話(2)
参加者がぞくぞくと増えていきます(笑)
  


ハルさんの回想(【少年時代】フラウドリンと料理試食会 参加者増加中)

 

「プハァー…やはり仕事後の酒は格別じゃなぁー」

「そうですね…」

 

フラさんのために、貯蔵庫から酒樽を運んできた俺は戻って来るや、

部屋に見知った人物を目にして目を見張った。

 

「おー、ヴァイスハルト! 戻ってきたか~」

「じいちゃん、何故ここに…」

 

…ガランのじいさんがいた。

任務で遠出していたはずだけど…今日、帰還したのだろう。

ぐびぐびぐび、と酒樽を片手に勢いよく飲んでいくじいさん。

 

「フラさん、おかわり持ってきたよ」

「あ、あぁ…すまんな」

 

見慣れたじいさんのその姿を見ながら、フラさんに声をかけた。

フラさんは微妙な顔で、じいさんを見ている。

 

「ガラン様…禁酒されていたのでは?」

「カァーハッハッハッ! 安心せい! 今日から飲酒再開じゃ!」

 

そういえば、じいさんは数カ月前に城内にある酒を半分以上飲み干して、上司から禁酒命令を出されていた。

どうやら、今日が解禁日だったようで…じいさんは上機嫌で水を得た魚のようにワインを味わっていく。

 

 

「ぷはっ~…数カ月は長かった。

長らく飲んでいなかった所為で……ワインがもの凄く旨く感じるぞ!」

 

「よかったね、じいちゃん」

「カッカッカッ…明日は休日じゃ! 盛大に飲むぞぉおお!」

 

 

じいさんはテンションが急上昇している。

禁酒中、フラストレーションがたまっていたようだから猶更だろう。

 

「…やれやれ、私は知りませんよ」

 

フラさんは呆れ顔で溜息を吐きつつ、酒をちびちび飲んで傍観する事にしたようだ。

じいさんにやめるよう説得するのは、逆効果だと彼はよく理解しているのだ。

 

 

「ヴぁーいーす…お主も立っとらんでこっちにこい。

飯がたーんまりあるぞぉ~…食え食え」

 

「うん、そうする」

「ふぁーはっはっ!」

 

 

じいさんにも促されたので、再び味をチェックする事にしよう。

フライドポテトに手を伸ばそうとして、ふと気になった。

…隣に置いている揚げパンの数がちょっとだけ減っている。

 

「フラさん、揚げパンの味はどうだった?」

「いや…まだ手を付けてないが?」

 

返ってきた答えに、俺は首を捻る。

ガランのじいさんは…食べてはないようだ。

フラさんが首を緩慢に左右に振って、それを否定している。

…今、気付いたけれど、俺を含めた三人以外の魔力が漂っている。

 

(…この魔力は…部屋のどこにいるのかな)

 

俺は立ち上がると、部屋に隠れている魔力の主を探す。

 

「もしもーし、どーこでーすかー?」

「おい、呼んで素直に答えるのか…」

 

「…………んー!」

「って、返事きたッ!?」

 

驚くフラさんを背景に、俺は肉団子が盛られている深皿付近に目を向ける。

死角になっている部分へ回ってみると、そこには…

 

「んぐんぐ…」

「あ、リリ」

 

デリエリ…リリが、地べたに座って栗鼠のように口いっぱいに何かを頬張っていた。

両手に、食べかけの揚げパンと肉団子を持っている。

 

 

「リリ、いつからいたの?」

「んん、むぐ、んん~」

 

「さっきじゃぞー。わしがココに~…乗り込んできたんとおなじぃーく、

でりえりはやってきたぞぉー」

 

 

咀嚼して言いたい事がうまく言えないリリに代わり、ガランのじいさんが代弁してくれた。

 

「んぐ……飯の匂いがしたから来た」

「そっか、パンの味はどう?」

「…あまい、さくさく」

 

「肉団子は?」

「ふわふわ…うまい」

 

簡単な感想を言うと、リリは揚げパンにかぶりつく。

口周りに砂糖や、肉団子にかけているチーズがべったりとついているのも気にせず、

至福の顔で美味しそうに食べている少女の姿に、思わず綻んでしまう。

 

「そっか、そっか…じゃあお腹壊さない程度に食べな」

「んぐんぐ……うん!」

 

リリの頭を軽く撫でていると、じいさんとフラさんの会話が耳に入った。

 

 

「…では、女神族が妖精族と密約をしていると…」

 

「いや…そう断じるのはまだ早計じゃ。

だが…奸計を巡らす事に長けとるあの者共ならあり得るやもしれん」

 

 

さっきとは異なり、しっかりとした口調で語るじいさん。

聞いた限りだと、不穏な情報がちらほら出ている。

リリの傍でフライドポテトを食べながら、二人の話に耳を傾けていると…

部屋の外が騒がしくなってきた。

 

「おい、ガラン」

 

扉を開けてやってきたのは、カルマディオス…カルマさんだった。

 

 

「此処にいたのか」

「むむっ、バレてしまうたか!」

 

「解禁早々、またやらかすと思って貯蔵庫をマークしていたが…

とんだ隠し場所があったな」

 

 

カルマさんは額に手を当てて、盛大に溜息を漏らす。

 

 

「失礼な! 儂はまだ酒樽七つしか飲んどらんぞ!」

 

「あんた、そう言いながら毎度城にある酒をギリギリまで飲み尽くすだろうが。

数ヶ月前もそうだが、二年前も同じ事しでかしただろう」

 

「はて? そうじゃったかぁ…? 生憎、ジジイは物忘れが激しいのでな」

 

 

いい性格してるな…と苦笑してしまう。

カルマさんが苦言を呈しても、じいさんはどこ吹く風という感じで受け流している。

彼等のやり取りが続く中、扉から別の人が入ってきた。

 

「デリエリ…此処にいたんだね」

 

勿論、その人はモンさんだった。

リリがいる事を確認するや、ホッと安心した顔で小走りでこちらへやってきた。

 

 

「任務から帰って疲れて寝てるかと思ってたのに、部屋にいなかったし…」

「ハラ減ってた」

 

「なら、水浴びの時にその事言ってよ。運んだのに…って、

おやまぁ、口元が大変な事になってるよ」

 

 

リリの口の周りが、さっきよりもすごい事になっていた。

ほらほらじっとして…とモンさんが手拭いでリリの口元を丁寧に拭いていく。

 

「この肉料理、すげー柔らかいな」

「…エル、いつの間に」

 

そして、気付いたら俺の左隣に銀髪の幼馴染…エルがいた。

妙だな…だんだん、部屋に人が増えているような気がする。

 

「…気の所為かな?」

「気の所為じゃないぞ」

 

俺の言葉に、フラさんがすかさずツッコんできた。

そして…二十分後、部屋に顔見知りの人達がほぼ勢揃いする事となってしまう。

  




※結果として、試食会は宴会となりました。
  
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