Brand new page   作:ねことも

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多重クロスオーバー形式連載 第25.5話。

番外編で、十戒のモンスピート視点で語られるハルさんに関わる過去話。
 
※モンさんと同じく、ゴウセルの出番が多いです。
※ゴウセルは解説役として、主人公の謎を語ります。
※輪廻転生や魂等の話題に関しては、この小説のオリジナル設定が盛り込まれています。
※作中にモンデリ要素があります。



第25.5話【モンさん、語る(2)】

 

暗黒色の闇が延々と広がる封印の空間。

当初は窮屈極まりなかったが、外の世界へいく術を身に着けてからは、

なんとなく落ち着ける場所だと思えるようになった。

 

「この間、見つけた夢の領域はまずまずの味だったわ。

もうちょっと領域の主の性格が大人になれば、味がよくなる気がするの」

 

「だからといって、領域の主を無闇に刺激する行動は慎め。メラスキュラ」

 

「あら、姿は見せてないけど?

領域の主が昼寝している時に耳元でアドバイスしてるだけよ」

 

「はぁ…それを刺激していると言うんだ」

 

近くで休息をとっているメラスキュラとゼルドリスの会話を、モンスピートは聞いていた。

異世界…エレンピオスで発行されている【デイリートリグラフ】の新聞を読みながら。

 

「いっその事、領域の主と契約するのも一つの手ッスよ。

ある程度の対価を渡せば、力を分けてもらえるッスからね」

 

「グロキシニア、それは貴方のお気に入りの領域の主が他の種族と比較すれば、

親切な部類にあたるからだと思いますが…」

 

「…それもそうッスね。ま、欲深い人間よりかは大分マシな種族ッスよ。

ねこにんは…」

 

ドロールのツッコミに、グロキシニアは答える…その表情に嘲りを含む笑みを浮かべながら。

元妖精族の長にとったら、過去の深い傷跡に触れられた事で忌々しい記憶がちらついたのだろう。

 

戦友であるドロールだから、笑って済ませられたのだ。

もし、これが他の者であれば、致死性の毒すら放つやもしれない。

ペラッと新聞の頁を捲り、モンスピートはそう推測する。

 

「おい、モンスピート」

「おや…デリエリ。おかえり」

 

新聞の経済欄を読んでいる最中、相棒が‟散歩”から帰ってきた。

相棒…デリエリは生欠伸をしながらも、両手いっぱいに持っていた紙包みの一つを渡してきた。

 

「ん、やる」

「現実で入手したものかい?」

「そ」

 

デリエリは端的な言葉で返事して、他の仲間にもその包装紙に包まれた物を渡していく。

一旦、新聞を黒の地面へ置いてその紙を広げていくと、出てきたのはサンドイッチだった。

 

「ねぇ、デリエリ。コレどうしたの?」

「ケツから言って、戦利品」

 

メラスキュラの問いかけに、デリエリは即答する。

 

「戦利品…勝負事をしたようだが、何したんだ?」

「腕相撲だよ」

 

モンスピートの質問に答えたのは、当の本人ではなく…エスタロッサだった。

 

 

「腕相撲のチャンピオンとやらと勝負して勝ったら、高額の賞金をもらえるってヤツだ。

暇つぶしに俺が参加しようとしたら、デリエリがやるって言い出してな…」

 

「…で、その賞金で購入したのがこれらという訳か」

 

 

デリエリと行動を共にしていたエスタロッサもまた、ずっしりと物が詰め込まれた紙袋を

所持していた。万人なら単独では到底不可な持ち運びを、彼は軽々とこなしながら

持っていた紙袋の山をドサッと地面へ落とす。

 

「随分と買い物してきたな…」

「色々とあった方が便利だろ」

「使わなかったら、意味ないでしょ」

 

モンスピートが呆れた眼差しを、エスタロッサへ向ける。

ウツセミの能力で夢の領域の主の力を使えば、その主が住む世界の貨幣を創造できる事が

判明してから、十戒の面々はその術を使うようになった。

 

特に、エスタロッサはそれを多用している。

別に、力の源である領域の主に同情しているとかではない

…力を無駄遣いしている点が頂けないだけだ。

 

「無駄遣い? 使わずに出し惜しみする方が勿体ねえだろ」

「兄者、なら改めて訊くが…兄者が集めたあのガラクタの山はどう説明する?」

 

眉に皺を深く刻みながらゼルドリスは、別方向にある積み重なった本や器材の数々を指さす。

 

「ん、ああ…アレか。安心しろ。きちんと使ってるぞ。

……気が向いた時に」

 

「『気が向いた時』って、お前なぁ…」

「あ~に~じゃぁああアア!」

 

エスタロッサの返答と態度に、モンスピートは呆気にとられ、ゼルドリスはとうとう

堪忍袋の緒が切れたようだ。

弟からの説教を面倒くさそうに聞き流しながら、エスタロッサは買ってきた書籍の

ひとつをひょいっと掴んで、パラパラと目を通していく。

 

「ほれ、ゼルドリス。お前も読めよ」

「おい、話を逸らすな…」

 

「いいから、読んどけ」

 

先程のマイペースな態度ががらりと変化し、エスタロッサは威圧を込めた顔で

そう指示した…いや、命令したというべきか。

ゼルドリスは言いかけた言葉を中断せざる負えなかった。

 

一見、エスタロッサはサボっているように見えて、其の実、各異世界の知識を貪欲に

吸収している。自分のペースを崩す事無く、様々な情報を己のものにしようとしている。

その事を、モンスピートはいち早く気付いていた。

 

…彼だけではない。

エスタロッサの幼馴染であるメラスキュラとデリエリも、なんとなくその事を

感じ取っているようだ。

 

「…分かった」

 

兄の言わんとしている事を察したのか、ゼルドリスは書籍を受け取った。

向かい合うように腰を下ろすと、彼はぱらりと丁寧に一頁ずつ開いていき、

しっかりとその文面に目を通していく。

 

その様子を見ながら、モンスピートの頭の中でふわりと煙が出るように、

過去の出来事が再生されていく。

 

 

(そういえば……アレがきっかけだったな)

 

 

 

 

 

 

 

「それで、ゴウセル…何の用だい?」

 

あれは、ヴァイスが謎の植物に触れて、意識を失った事件から大分経過した頃だった。

任務を終えたばかりのモンスピートは、同じ【十戒】であるゴウセルに呼び出された。

 

『ふむ、よく来てくれた』

 

ゴウセルは口元を緩めて、出迎えてくれた。

外見は、中性的な顔立ちの青年。

しかし、それは仮の姿だ。

 

本来のゴウセルは、モンスピートよりも年上の男性であり、目の前にいる青年は人形。

ゴウセルは自らの戒禁により、実際の姿を見せる事ができない。

彼の背負う戒禁は、他の戒禁よりも効果が強力であり、耐性のあるモンスピートを含める

十戒以外の人々に対して、広範囲で被害が及ぶリスクが高すぎた。

 

そのため、本体の彼はある場所に隔離される事となり、人形を通して行動する選択を

取らなければならなかった。

 

『…他の者には気付かれずに来たようだな』

 

「そっちが単独で来るように指名したからね。

…できれば簡潔に終わらせてくれると有難いんだが」

 

あまり長く時間を取られると困る。

この当時、デリエリが夜遅くに起きてこっそりヴァイスのいる家へ赴き、

夜食をご馳走になってそのまま朝まで熟睡する事態が度々発生していた。

ヴァイスは注意しているようだが、デリエリは彼の作る夜食の魅力を

振り切れないようだ。

 

それゆえに、モンスピートはデリエリの夜行動を阻止すべく、見張らなくてはいけない。

デリエリの気持ちは分からなくはないが、ヴァイスに迷惑をかけては申し訳ない。

 

 

『…そうか。ならばできる限り善処しよう。

俺がお前を呼んだ理由は、まさにタイムリーな話題だ』

 

「…ヴァイスの件で?」

 

『その通り。独自で様子を見ていたが、三ヵ月前に魔神王直々に命令を下された。

…ヴァイスハルトの行動を観察し、定期的に報告するように、とな』

 

 

ゴウセルから告げられた事に、モンスピートは目を見張った。

 

『あの出来事以降、あの子を間近で見ていて何か感じた事はあるか?』

 

「感じる事って…漠然とした質問だな。

うーん…特に変わった所はない。いや…」

 

問いかけられた質問に対し、モンスピートは顎に手を添えながら思った事を言葉にしていく。

 

「あるな…今までよりも口数が増えて、明るい感じになった」

 

モンスピートも、ゴウセルも赤子時代からのヴァイスの成長をその目で見てきた。

あの事件以降、言葉が少なかったヴァイスは話し方や行動の面で著しい変化が生じた。

だが、もともとの温厚な気質は変わっておらず、モンスピート自身も「おや…?」と

首を傾げる程度で、特に問題とは思っていない。

周りも、むしろヴァイスの自発的な行動が増えた事を良い傾向だと感じている位だ。

 

「何か問題でもあるのかね?」

『ケースバイケースと言っておこうか』

「…なんとも意味深げな答えだな」

 

この男は、何が言いたいのだろう。

微妙な顔を浮かべるモンスピートの内心を読み取ったのか、ゴウセルは言葉を続けた。

 

『輪廻転生の概念を知っているな?』

「まぁね。だが、それとヴァイスとどうつながる……ッ! まさか…」

 

『死んだ魂は輪廻の流れに沿い、再び別の人として生まれ変わる。

魔神族である我らにとって、常識のひとつだ』

 

「ヴァイスの…生まれ変わる前の記憶が蘇ったと言うのか…!」

 

いきなり明かされた事実に、モンスピートは面食らった。

しかし、同時にヴァイスの不可思議な行動の謎…その原因と結びつき、胸にストンと落ちた。

 

 

『あぁ、間違いない。ヴァイスが意識不明に陥ったあの時…

魔神王が原因を突き止めるよう命令を下し、俺が魔力で診断したからな』

 

 

ゴウセルは、さらに詳細を説明していった。

 

『ヴァイスハルトには、前世の記憶がある。だが、驚くべき点はそこではない』

「…どういう事だ?」

 

『着目すべきはその回数だ。判明している転生した回数だけでも、二桁を越えている』

「二桁…だと」

 

あまりにも多い回数だ。

徐々に明かされていく情報が、モンスピートは頭の整理ができず、うまく言葉が出てこない。

 

『ヴァイスが、植物の蔓を手に取った際に意識を喪失させたのは、その植物が前世の

誰かに深い関わりがあり、封印されていた前世の記憶を引き出す鍵となったのだろう。

現に、蘇った前世の情報の影響が今のあの子の行動理念となり、つき動かしているの

だから辻褄が合う』

 

ゴウセルが話を進めていくにつれ、モンスピートの頭に想像したくない可能性が出てきた。

 

「ちょっと待ってくれ。それじゃあ、今のヴァイスは…

『私達の知っているヴァイス』ではない、という事なのか!?」

 

思わず叫んでいた。

もし、ヴァイスが知らない人物と成り代わっていたら…

いや、そんな可能性を否定したかったからだ。

 

 

『安心しろ。影響を多少は受けたみたいだが…

今のヴァイスは、間違いなく俺達が育ててきたヴァイスのままだ。

奇跡的に、前世の人格に呑まれずに済んだようだ』

 

 

その答えを聞くや、モンスピートは安堵の表情を浮かべた。

気付けば、額から汗が流れ落ちていた。

 

「…そうか、安心したよ」

 

指先でそれを拭いながら、モンスピートは心の底から「よかった」と思えた。

そんな彼を翻弄するかのように、ゴウセルはさらにある情報を口にした。

 

 

『しかし、問題はまだある。

ヴァイスはこれからも何かがきっかけで、別の前世の記憶を取り戻すやもしれない』

 

「そんな…ありうるのか?」

 

『以前、書物でヴァイスと同じ症例を発症させた同胞や別の種族の事例を見た事がある。

複数の記憶を戻した例は二件あった。

 

一件は、複数の記憶が混在した結果、その変化に耐えきれずに発狂してしまい、

自ら命を絶った。

 

もう一件は…上手く記憶を統合させる事に成功したものの、周りがその人物の事を

忌避した所為で、その者は孤独な生涯を過ごさなくてはならなかった』

 

 

どちらも痛ましい結末を迎えたようだ、とゴウセルは悲しそうな口調で感想を言った。

 

「私を呼んだのは…ヴァイスが記憶を取り戻しそうになった場合に、

何かしらの対処をさせるために?」

 

『察しが良くて助かる。

もしそうなった場合は、ヴァイスの精神が崩壊しないように支えてほしい』

 

これは、魔神王自身の願いでもある。

ゴウセルが付け加えたその言葉に、モンスピートは耳を疑った。

 

…主君が、ヴァイスの身を案じている。

その事実が、モンスピートの中で別の疑問を浮上させた。

実力があるとはいえ、ヴァイスは多数の魔神族の中の一人にしかすぎない。

…ヴァイスの両親と個人的に親しい間柄だった事が、影響しているのだろうか?

 

「それもあるが…一番の理由は、ヴァイスの【魂】にあるのだろう」

「…【魂】が?」

 

『これは、魔神王が語ってくれた話の一部だ。

すべてを話すと長くなるので、かいつまんで教えよう』

 

その昔、魔神王は世界の扉を潜り、此処とは異なる別の世界へ足を踏み入れた経験がある。

 

元の世界へ帰還するまでにさまざまな苦難があったようだが…

彼は、その過程である人物から知識を得た。

 

中には、輪廻転生に関してごく一部の神族にしか伝わっていない秘匿とされる情報もあり…

そこに興味深い一説があった。

 

 

《 幾度となく転生を重ねてきた【魂】は、万人の想像の粋を超えた力を秘めている。

その【魂】の所有者は導く者次第で、世界の運命を左右する。

創造と破壊、希望と絶望、秩序と混沌…対を為す陣営のいずれの敵味方となるか否かは、

【魂】の所有者が自ら選定する 》

 

『魔神王は、【魂】の所有者が同種族にいれば、一族の繁栄と安寧をもたらすと解釈している。

…今後次第で、ヴァイスもその力を開花させるやもしれない』

 

 

告げられた事は…衝撃な事実でもあり、モンスピートにさらなる困惑をもたらした。

 

『…気持ちは分かる。これは極めて重大な問題だ。

我々には正直、荷が重すぎると言わざる負えない』

 

「ヴァイスはこの事を…」

『知らないはずだ。いいか…時がくるまでは他言してはならない』

 

子どもであるヴァイスには、その事実を受け止めるだけの強さが足りない。

下手に喋れば、自分自身の存在意義に悩み、苦しむ事となる。

もしこちらが拒絶すれば、ヴァイスの事だ…

責める事無く、何も言わずにどこかへ消えてしまう可能性もある。

 

 

『モンスピート、二度言わせてもらおう。

ヴァイスに何かあれば、突き放してはならない。

…ありのままのあの子を受け入れてほしい』

 

 

ゴウセルの懇願に、モンスピートは暫しの間、沈黙した。

そして、ある質問をするために口を開いた。

 

「ゴウセル、正直に答えてほしい。あんたはヴァイス自身の事をどう思ってるんだい?」

『―――大事なもう一人の息子だ』

 

ゴウセルは迷う事無く、ハッキリとした口調で即答した。

よかった…それなら自分も言いたい事を返せる。

 

「前世やら魂やら、複雑な事情が絡んできてまだ頭がこんがらがってるよ。

だが…私は、そんな事を抜きにしてヴァイスを一人の仲間だと思っている。

これからもね…」

 

それが、モンスピートの出した結論だった。

ゴウセルは、微笑を浮かべて「分かった」と頷いた。

どうやら、彼にとっても満足のいく回答だったようだ。

 

「他の古参達には、もう伝達したのか?」

 

『メリオダス、アラナク、ゼノは既に周知済みだ。

ガランは性格的にまだ時期尚早。

タイミングを見計らい、魔神王が直接伝えるようだ』

 

カルマディオスには、近日中に告げる予定との事だ。

そうなると…残るは子ども達である。

 

「もう少し、大きくなってからの方がいいかね」

『それが得策だろう……ん?』

 

話の途中で、ゴウセルが首だけ後ろへ振り返る。

覚えのある魔力が漂っている事に気付き、モンスピートもハッとして急ぎ、部屋の外へ出た。

 

…慌ただしく駆け出していく銀髪の少年の後ろ姿。

モンスピートはハァ…と溜息を漏らしてしまう。

 

「よりにもよって…エスタロッサか」

 

…このままだとまずい。

すると、ゴウセルが走りだそうとしたモンスピートを手で制した。

 

『ここは俺に任せてくれ』

「…どうする気だ?」

『手荒な真似はしない。話し合うだけだ』

 

そう言うと、ゴウセルは逃げたエスタロッサの後を追いかけていった。

それから、エスタロッサは以前よりも増して積極的にヴァイスと関わるようになった。

 

…ゴウセルがあの時、彼とどうやって話をつけたのか?

今となっては、解明しようがない謎の一つである。

 

 

 

 

 

 

エスタロッサが異世界の知識を知りたがるのは、ヴァイスと同じ目線に立ちたかったからだ。

…前世の記憶を公にできなかったヴァイスは、【彼女】が現れるまでは孤独だった。

誰にも言えない、誰とも共有できない…前世の記憶の保有者にしか分からない感情。

親しい幼馴染であっても、必要以上に近づかずに線引きをして、一定の距離を

保っていた節があった。

 

エスタロッサはそれが許せなくて、ひたすら距離を縮めようとしていた事を

…モンスピートは知っている。

 

現在でもその習慣を止めないのは、ヴァイスの血を引く者達と接点を持ちたいため。

執着する対象が、ヴァイス本人から子孫へ移り替わっただけの話だ。

 

(そうでなければ、憎しみに囚われてしまう。

ヴァイスを手にかけた連中の事を思い出してしまう…それを防ぐために、か)

 

もし、エスタロッサが【慈愛】の戒禁を所持していなければ…

親友を殺した者達に容赦ない鉄槌をくだす。

それこそ、容易く死ぬ事さえ許さず全身に至るまで後悔と絶望を味合わせる気でいる。

…気持ちが分からない訳ではない。

 

だが、もしもヴァイスが生きていたら…復讐を望むだろうか?

答えは否。

 

生きていたら尚更、暴走しそうなエスタロッサに真っ先に蹴りを入れてでも

制止するはずだ。

 

(…とはいえ、ヴァイスの代わりに私がその役目を負うには無理があるな)

 

モンスピートは肩を竦めて、ふわりと浮かんだ事柄を頭から消し去る事にした。

サンドイッチで腹がくちたのか、デリエリがふぁーと生欠伸をしだした。

 

「ねむっ…」

「ほら、おいで」

 

デリエリが昼寝する時は、モンスピートは必ず自分の膝を貸す事となる。

まだ幼子だった彼女を寝かしつけるために膝枕をする習慣がついて、今もなお継続している。

 

崩した膝に頭を乗せると、デリエリはすぐに眠りについた。

寝息を立てる彼女の癖のあるオレンジ色の髪を撫でながら、モンスピートはさて…と

今後の事を思案する。

 

(数日ほどのんびりしようかね。このところ、動き回っていたし…)

 

デリエリの髪の手入れをしたり、疲れを癒すためにマッサージをしたり…と、

彼女の世話をする事しか思い浮かばない。

モンスピートにとっては、それが満足な休日の過ごし方なので至って問題はないのだ。

最近、互いに単独行動が多かったためか、接する時間が減っていた。

 

(この間、美味しいと評判の揚げパンのお店を見ていたな…買ってあげよう)

 

この場に誰もいなければ、眠るデリエリの頬に唇を落としたい気分だ。

それができない分、彼女が目覚めたらこれでもかというくらいに甘やかしてあげよう。

 

 

 

【モンさん、語る(2)】

 

 

 

「そうだ、ドロール君。例の彼はどうッスか?」

 

グロキシニアが、ドロールにある話題を話し出した。

自ずと聞こえてきたその内容に、モンスピートはハッと視線を彼等に移した。

 

…ヴァイスハルトの血族を見つけた。

…ある異世界で貸本屋を営んでいる。

…血族は、ヴァイスハルトに顔や性格などが瓜二つである。

 

そんなに大きい声量ではないが、耳を澄ませば聞き取れるレベルだ。

二人はその話に花を咲かせており、周りをあまり気に留めていない。

 

モンスピートは周囲に視線を巡らしていく。

読書中だったゼルドリスとエスタロッサ、昼寝しようとしていたガラン、

購入した電子機器を試しているメラスキュラ…

 

ほとんどの者達が、二人を凝視していた。

 

(……うわぁ、これはまずいな…)

 

モンスピートは察した。

…一波乱ありそうだと。

 

 

「ドロール君、もうちょっとそこの店長さんとフレンドリーになっていった方がいいッスよ」

「ハァ……なかなか難しい課題です」

 

「でも、聞いているとますます気になってくるッスね。

あ、そうだ! 今度、あたしも同行していいッスか?」

 

「そうですね。それでは頼みましょうか…」

 

「「「ちょっと待った(待てい)(待ちなさい)!!」」」

 

「…えっ、えっ!?」「…ん?」

 

 

見事に揃った制止の声に、グロキシニアは驚きと困惑の声を上げ、

ドロールは訝し気に目を細める。

 

(ほらね~…)

 

モンスピートの予感は的中した。

さらにこの後、八時間に及ぶ超会議が展開される事となる。

 

 

 

【つづく】




※十戒超会議の内容は、後日投稿させていただきます(ナレーション風)
  
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