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ハルさんの回想(21)

少年時代のハルさんと幼いデリエリとの昔話。
※作中にモンデリ要素があります。
  


ハルさんの回想(【少年時代】俺とリリ、ちょこっとモンさん)

 

その日は、例年よりも著しく寒かった。

任務を終えてから、住まいに帰宅した俺は暖炉に薪をくべようとしたら…

 

「リリ、起きなよ」

「うーん…」

 

 

…例の如く、不法侵入者がいた。

橙色の癖のあるショートヘアーの少女…デリエリが、ベッドの上で猫のように

身体を丸くして眠っていたのだ。

 

「どうしたの?」

 

俺の声で、目覚めたリリは眠たそうな目でぼぉーとしている。

徐々に意識が覚醒しだすと、ぽつりぽつりと此処に来た理由を話し出した。

 

「お姉さんとケンカしたの?」

「……ちがう」

 

リリには姉が一人いる。

たまーに喧嘩をしてしまって、実家に戻らずに城で寝泊まりしているところを

見た事がある。だが、今回の相手は違っていた。

 

「えっ、モンさんと…?」

「………うん」

 

リリは眉を顰めて小さく頷いた。

…モンさんと喧嘩するのは珍しい。

 

 

「モンスピートのヤツ…あたしのやり方にケチつけてくる」

 

 

事情を訊いてみると…このところ、モンさんが事ある毎に意見してくる。

最初は相方だからと聞いていたけれど、それらが積み重なっていき、

鬱陶しくて苛立ちが募っていった。

 

つい数時間前も任務が終わって、一休みしようとした矢先にモンさんから

注意を受けた。

 

『もうちょっと戦い方を考えなよ』

 

その言葉が引き金となってしまい、リリの中で蓄積された負の感情が爆発してしまった。

数発腹部を殴って、怒鳴り声で文句を言って衝動的に城から出てしまったようだ。

 

「リリ、辛かったんだね」

「……ん」

 

一通りの説明を終えると、胡坐をかいていたリリは顔を俯かせた。

リリにとって、モンさんは十戒の中で一番信頼しているパートナーだ。

信頼しているからこそ、自分のやり方を否定されてしまったのが悲しかった。

 

多分、モンさんもリリのためを思って忠告していたのだろう

…それが裏目に出てしまったのだ。

 

「リリは、どうしたい?」

「…しばらく、あいつと会いたくない」

「モンさんの事、嫌いになっちゃった?」

 

試しにそう問いかけると、リリは首を左右に振った。

 

「…また会ったら、今度は…顔も……コンボりそうだから」

「だから、気持ちを落ち着かせてからにしたいんだね?」

「…ッ……うん…」

 

リリは、消え入りそうな声で途切れ途切れに答えていく。

ぽたぽたといくつもの雫が…彼女の足元に落ちていくのが見えた。

 

「リリは辛抱強いね…

すぐに怒らずにモンさんの言う事を聞いてあげていたんだから」

 

「…そんなんじゃない……だって…」

「うんうん」

 

それから二時間ほど、リリの話に耳を傾けた。

モンさんの前では、なかなか言えない本音を語ってくれた。

 

「モンスピート…あたしのこと…イヤになったかな…」

「モンさんが、リリの事を嫌いになるなんてありえないよ」

 

いつになく弱気になっているリリに、俺はそう断言した。

些細なすれ違い程度で、モンさんはリリの事を見捨てるなんて選択は絶対にしない。

それだけ…モンさんは彼女を大事に思っている。

 

「モンさんも、きっとリリの事を心配しているよ」

「でも…」

「うん、会いに行く自信がつくまで此処を仮宿にして構わないから」

 

謝る時は俺もついていく…と告げると、リリは手の甲でゴシゴシと目元を拭って

顔をあげた。

 

「ありがと……そうする」

 

「どういたしまして。ところでお腹空いてる?

何か食べたい物はない?」

 

言いたい事を言えてスッキリして余裕ができたのか、リリは腹部を擦りながら

口を開いた。

 

「……肉、食いたい」

「分かった。お肉を使ったあったかい物にしよう」

 

 

 

 

 

 

 

それから、リリのリクエストに答える形で【肉団子と葉野菜のスープ】を作った。

 

「どう?」

「…んっ……うまい…」

 

時折、シュンッと鼻を啜りながらリリはゆっくりスープを食べ進めていく。

出汁が染みた白菜に似た野菜は、とても食べやすくなっている。

リリは野菜はあんまり好きではないけれど、スープが染みたこの野菜は食べられるようだ。

 

「ヴァイス…おかわり」

「はい、少々お待ちを」

 

スープのおかげで、リリは調子を取り戻してきた。

 

「…これいいな。ぽかぽかしてくる」

 

「よかった。そうだ、暫くここで寝泊まりするなら…

料理の味見してくれるかな?」

 

「うん!」

 

俺の提案に、リリは二つ返事で了承してくれた。

 

 

 

 

 

 

 

「寒さが増してきたな…」

 

あの後、リリは空腹が満たされて眠気がきたようで…

今はベッドで静かに寝息を立てている。

 

彼女の様子を見ながら、義理母からもらった図鑑を読んでいた時、

玄関の扉を叩く音が聞こえた。

 

(…五時間か、意外と早く来たかも…)

 

図鑑を一旦閉じて、玄関へ向かうと…

 

『ヴァイス、いるかい?』

 

聞き覚えのある声、馴染みのある魔力…俺はゆっくりと扉を開けた。

 

「いらっしゃい、モンさん」

「デリエリは…!?」

「今は眠ってるよ」

 

そう言って、俺はベッドの方を指さした。

熟睡しているリリを目にして、モンさんはほっ…と安心した顔を浮かべた。

 

「…モンさん、ずっと探してたんだね」

 

その証拠に、彼の顔が赤くなっている

…寒い中、長時間動き回っていたのだろう。

 

「本当はすぐに追いかけたかったんだが…同族同士の喧嘩に巻き込まれた。

仲裁するのに時間がかかってしまった…すまないね」

 

「どうして、此処にいるって分かったの?」

 

「デリエリが城以外で安心して身を寄せる場所は実家か、

ヴァイスの住処ぐらいだよ」

 

そう言いながら、モンさんは眠るリリに視線を向ける。

 

「ごめんよ…心配だからついつい言いすぎてしまった」

 

モンさん自身も、やりすぎたと思っていたようで…

リリの頬を指先で撫でながら謝った。

 

「リリも最初は怒っていたけれど…

モンさんに『申し訳ない事した』って反省していたよ」

 

「…そうか」

 

「『きちんと謝るのは、時間がかかるかも』って言ってた。

モンさん…待てる?」

 

「構わない。この子が納得するまで…気長に待つよ」

 

でも、できるだけ早めに仲直りしたいな…とモンさんは本音を小さく呟いた。

 

「はい、これどうぞ」

 

リリの傍にいたいようなので、俺は簡易椅子を準備してモンさんに座るよう促した。

 

「お腹空いてない? スープ、あるよ」

「…うん、いただくよ」

 

…朝御飯は多めに作っておこうか。

スープを温め直しながら、俺は次の日の献立を何にしようかと考える。

 

早ければ、明日辺りに二人が元通りになっているかも

…という希望的観測もしながら。

  

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