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ハルさんの回想(23)

(19)の続きで、メリオダスが何故料理を作ったのか…が分かる話。
  


ハルさんの回想(【少年時代】メリオダスの謝罪と事情)

 

「すまなかった」

 

 

城の一室で安静にしていたら、メリオダスが見舞いに来てくれた。

入ってきて、椅子に座ると開口一番に謝罪の言葉を口にした。

 

「ごめん、何か謝られるような事あったっけ?」

「…試食させた衣料理の事でだよ」

 

なんで謝ってきたのか理由を尋ねると、例の怪しい色の天ぷらを食べさせた事に

関してだった。

 

「アレの所為だろ、お前が寝込んだのは…」

 

正直、なんで一日半も熟睡していたのか理由は不明なのだが、間接的に天ぷらが

関わっていたのではないか…とは感じていた。

メリオダスは後頭部を掻きながら申し訳なさそうな顔で、こちらを見つめてくる。

 

「…まだ決まった訳じゃないよ」

 

「いや、間違いなく俺の所為だ。

慣れない事して、お前に負担をかけさせちまった…」

 

今日のメリオダスはいつになく弱気だ。

自分の料理が原因(?)で、同胞が思いの外大変な事態になってしまった事に

責任を感じているようだ。

 

「あの…訊いていいかな?」

「…なんだ?」

「料理をした理由について」

 

そもそも、メリオダスは不慣れな行動をしたのは何故か?

素朴な疑問を思わず口にすると、メリオダスは視線を逸らして唇を動かした。

 

 

「…食べさせたい人がいるんだ」

 

 

返ってきたのは予想外の回答だった。

 

「その相手は…身近にいる人?」

 

さらに質問を進めてみた。

メリオダスが、わざわざ手作りで料理を食べさせたい人物とは誰なのか?

 

…上司(魔神王)ではないと思う。

弟二人の方がまだあり得そうだ。

 

もしくは、師匠であるチャンドラーさんへの日頃の感謝を込めて、

という線も考えていたが…

 

「いいや、お前の知らない人だよ」

 

首を緩慢に振って、メリオダスは否と答えた事で頭に浮かんでいた推測は

泡となって消えてしまった。

 

 

「最近、知りあってな…時間が空いたら、そいつと会っている」

 

 

メリオダス曰く、その人物とは戦場で出会ったとの事。

ある場所で再会して、話をしてみたところ意気投合して友達になったらしい。

 

「この間、衣料理の話をしたら『食べてみたい』って言って…」

「それで練習していたと…」

「お前がつくるところを何度も見ていたから、俺でもできるかと思ったんだ」

 

腕を組んだメリオダスはきっぱりと言った。

すがすがしい位に言い切ったその理由に、俺は「あー…うん、そうなんだ」と

乾いた笑みで返事するしかなかった。

 

「ところで、メル。その友達って…もしかして女の子?」

「………」

 

(あっ、図星だ)

 

問いかけに対して、沈黙で答えた事が何よりの証拠。

メリオダスは、今まで実の弟二人や仲間以外の同胞と親しい関係を築く事がなかった。

そんな彼が、「天ぷらを食べてみたい」という友達のささやかな願いを叶えようとした。

つまり、メリオダスはその女の子を異性として意識している。

 

 

(どんな人なんだろう? メルが気になる女の子って…)

 

 

出会いが戦場だったという点から推測すると、戦闘員である可能性が高い。

メリオダスが語る情報から推測して、その人物は彼自身に恐れを抱いていない。

そうなると、メリオダスが相手に気を遣っているか、もしくは彼の気迫に動じない程の

実力者だと思われる。

 

ただ、気になる事があるのだが…

俺は敢えてそこは質問せずに、別の問題点を指摘する事にした。

 

「…メル、率直に言うけどさ、【衣料理】はプレゼントにするのはあまりお勧めできない」

「何故だ?」

 

「時間が経つにつれて、味が落ちてしまうから。

衣もしぼんでサクサク感がなくなってしまう」

 

時間が経過しても、天ぷらのサクサクカリカリした触感を失わない方法はいくつかある。

でも、今の段階では手に入らない物であったり、準備するには難しい物があるため、

その方法は使用できない。

 

「そうか…」

 

メリオダスは困った顔で、頬を人差し指で掻く。

その子に天ぷらをどうしても味わってもらいたかった…という気持ちが伝わってくる。

 

「だから、別の食べ物に変更しよう」

「…!? いいのか?」

 

「料理をする時は俺も手伝うよ

(サポートしないと、食べる相手の子が大変な事になりそうだから)」

 

 

 

こうして、俺は時間がある時にメリオダスに料理を教える事になった。

…そこで分かったのは、メリオダスは料理のスキルが驚くぐらい壊滅的だった事。

練習を重ねたりして、なんとか七品のレシピは普通に食べられるレベルにできた、のだが…

 

「メル、これ何か入れた?」

「俺なりに一味加えてみた」

 

レシピ通りに作ればいいのに、メリオダスは自己流にアレンジしたがる。

その所為で、作り慣れた七品でも味が大きく左右されてしまう。

 

「舌がびりびりする…新感覚のサンドイッチになってるよ」

「……いけると思ったんだけどなぁ」

 

それでも、俺はメリオダスの作った料理は完食するように努めている。

味はともかく、心を込めて作った物を残すのは勿体ないから。

 

「なぁ、このサンド、新味か? デザートみたいに甘いな」

「フルーツサンドイッチだよ。今度のレシピに加える予定」

 

「これなら、あいつも喜びそうだな…」

「作る時はレシピ通りにな」

 

思えば、この一連の出来事は分岐点だったのかもしれない。

メリオダスが手料理を食べさせたい相手が、同胞なのか、

それとも別の種族なのか…を質問しなかった事。

 

それが、幼馴染である彼と自分の今後を左右する事になってしまう。

  




※この連載のメリオダスはアレンジしなければ、まともな料理が七品作れます。
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