Brand new page   作:ねことも

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【Brand new page】の番外編(7)

※少年時代のハルさんが日本語(作中では『ヴァイス語』)のテストをする物語。

※テスト問題は、日本語と魔神族特有の言語で書かれている設定にしています。
《》の部分が魔神族特有の言語になります。

※テスト問題は全体的に別ジャンルのネタが満載です。
どの作品なのかを予想して楽しんでいただけると幸いです。

※外伝連載を含める当サイトの小説内のエスタロッサは、原作とは大きく乖離する設定
(【エスタロッサ】≠『マエル』)となります。

※作中にモンデリ要素があります。

※今回は、話が長いので分割しています。
  


第一回 ヴァイス語検定試験(1)

 

「今日はテストをしようか」

 

 

その日、すっかり恒例になった日本語講座を開いていた。

講座を受けている生徒は基本二名。

時々、入れ替わりで数名が加わる事もある。

 

その日、参加していた生徒は一名…メリオダスだけだった。

メリオダスに日本語を教え始めて早六ヶ月。

 

単語や文章なども読み書きできるようになって、その事が嬉しいのか

…最近の幼馴染の趣味は日記を書く事だ。

 

ちらりと見せてもらったが、大半は教えた料理の事や任務や上司(魔神王)への文句を

書き綴っていた。内容に関して、あれこれと言うとアレなので本人に言わないが…

今度、安全なストレス発散方法を教えてあげようと思った。

 

話を戻すと、メリオダスにどのくらい実力がついたのかを調べるために、

ヴァイスはテストをする事にした。

種類は【ペーパーテスト】で、今まで教えた知識をフル活用する形で出題する。

 

「テストか。チャンドラーの座学の時間以来だな」

「一時間後に行うから、その前にお茶の時間にしようか」

 

そう告げると、ヴァイスはキッチンの方へ向かった。

メリオダスは【十戒の統率者】という立場上、周囲からの期待や畏怖の視線が

集中してしまうためにストレスが半端ない。

 

表には出さないけれど、親しい人物が見ると「あっ、疲れてるな」と

些細な違いが分かってしまうものなのだ。

 

ある日、気分転換のために茶菓子を差し出したところ、険のある顔つきだった

メリオダスが打って変わって上機嫌になっていた。

それ以来、ヴァイスは日本語講座の始まる前と終わった後の二回に分けて、

お茶の時間を導入するようになった。

 

余談であるが、突撃訪問する形で参加してくる幼馴染三名からも好評であり、

どこで話が漏れたのか…

茶菓子目的で講座に参加したい同胞が、ちらほら出てきているようだ。

 

「本日は【ミルクティー】と【パンケーキ】でございます」

「おぉー…五段重ねか。やるな」

 

「テストの前だから、やる気を出せるように奮発したんだ。

バターや生クリーム、蜂蜜はお好みでトッピングしてくださいませ」

 

「いただきまーす」

 

メリオダスは、一番上のパンケーキにバターを塗っていき、ナイフとフォークで

一口サイズに切り分けて口の中に入れる。

 

 

「うん………いい」

 

 

咀嚼して飲み込むと、メリオダスは開口一番にその台詞を口にする。

美味い物を食べる時は、余計な言葉はいらない。

至福の表情を浮かべている時点で、味は合格点だと保障されているのだ。

 

それから、メリオダスは生クリームを乗せたり、蜂蜜をつけたりと

味の変化を楽しんで食べ進めている。

ヴァイスもミルクティーを飲んでいると…バタバタと足音が聞こえてきた。

 

「ヴァイス! いるか!?」

「あ、エル」

「今日は時間空いて…る…」

 

飛び込んできたエスタロッサが、兄であるメリオダスがいた事に目を大きく

見開いて硬直してしまった。

 

「なんだ、エルか。今日はヴァイス語講座のテストだ。

うるさくするんじゃねえぞ」

 

「えぇー、聞いてないよ!?」

 

「文句があるなら、ヴァイスの迷惑にならないように事前に予約でも入れておけ」

 

「うん、予約制にするのはいいな。

でも、こっちの都合も考えてからにしてくれよ」

 

メリオダスの言葉に乗じる形で、ヴァイスは付け足す。

突然、予約を入れられても困るからだ。

特に、エスタロッサはそんな事をする傾向があるため、念のために注意をしておいた。

 

「…分かったよ。なら、俺もテスト受ける」

 

だから、パンケーキも食べたいと懇願してきた。

 

「お前なぁ…まだヴァイス語、習い始めたばかりだろ」

「此処以外でも勉強してるんだよ!」

 

呆れた顔で「止めておけ」と勧めるメリオダスに対して、エスタロッサは

「絶対やる!」と譲らない。

 

「分かった、そういうならエルも参加していいよ。

だから喧嘩はやめてくれ」

 

見兼ねたヴァイスは、エスタロッサのテスト参加を許可する事にした。

 

「やったー!……いてっ!」

「うるさい。静かにしろ」

 

わーいとはしゃぐエスタロッサの頭をメリオダスが叩いて黙らせる。

ヴァイスはやれやれと肩を竦めると、頭を両手で擦りながら幼馴染が兄に

抗議している間に、新しくパンケーキを作る事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「制限時間は六十分。

終わりの合図を俺が告げるまでの間に答案用紙の問題を解いてください。

私語とカンニングは禁止。それでははじめ!」

 

 

それから一時間後、テストを開始した。

メリオダスとエスタロッサの二人は、カンニング防止のためにそれぞれ

一定の距離をとった席に座らせた。机に置かれたテスト用紙は合計二枚。

制限時間は、用意した砂時計の砂が完全に下に落ちるまで。

果たして、二人はどのくらい回答欄を埋める事ができるだろうか…?

 

「むぅ……」

「うぅ~…」

 

メリオダスは時々眉を寄せて考えているものの、筆は進んでいるようだ。

一方、エスタロッサは必死に思案しており、筆が途中で止まったり…

指先で文章をなぞったりと動きが鈍い。

 

(さて…俺は仕事でもしながら見守りますか)

 

ヴァイスは、ゴウセルから頼まれていた魔導書の写しを作る作業に取り掛かる。

時折、ちらりと二人の様子を見るが…問題は発生していない。

十分ほど経過した頃、外から気配を感知してテストに集中する二人の邪魔を

しないように玄関の方へ急ぐ。

 

 

「リリ、こんにちは」

 

 

扉の前に立っていたのはデリエリだった。

大いに顔を顰めて、負の感情を外へ発散させないように留めているように見えた。

「どうしたの?」と尋ねると、真一文字にしていた口を開いてこう言った。

 

「しばらく…ここ、いていい…?」

 

その言葉で、ヴァイスは察した。

…モンスピートとまた喧嘩したな、と。

 

「うん、いいよ。ほら…入ろう」

 

家の中で詳しく話を聞こうと、デリエリを連れていく。

試験会場となっている部屋に戻ると、二人は変わらず筆を動かしている。

デリエリが訪れた事に気付くも、すぐに視線をテスト用紙へ戻す。

 

「……あいつら、なにしてるんだ?」

 

「俺が(今の)人生で初めて作った言語テストを挑戦している最中。

声かけないでやってくれ」

 

デリエリに説明しつつ、彼女を窓近くの椅子に座らせる。

温かいミルクティーと今朝作っておいたクッキー二種類を用意して、持ってくると…

デリエリはクッキーを一枚とって、口の中へ入れてゆっくりと咀嚼する。

 

少々音が響くが、試験を妨げるレベルではないので好きなだけ食べさせてあげる事にした。

すると、エスタロッサがじぃーこちらを…正確にはデリエリが食べているクッキーを

凝視している。

 

「あと二十分」

 

そう忠告すると、エスタロッサは慌てた様子で筆を取る。

 

(後で食べていいから、我慢してくれよ)

 

そう念じながら、ヴァイスはデリエリの話を聞きつつ砂時計をチェックしていく。

試験中の二人を気遣って、デリエリもヴァイスに合わせて小声で話していく。

 

「うんうん、そうか…それで俺の所に来たんだね」

「………絶対に帰ってやるもんか」

 

案の定、デリエリの不機嫌の原因はモンスピートだった。

モンスピートが、たまたま同世代の同胞達と話している場面を見てしまったらしい。

その会話の中で、デリエリに関する話題があり、あまり愉快な内容ではなかった。

ソフトな言い方をすれば、「子どもの世話係で苦労していますね…お気の毒に」である。

 

それに対して、モンスピートが何も言わずに「要件はそれだけなら帰らせてもらうよ」と

さっさとその場から立ち去った。

 

デリエリはショックだった。

相棒は彼等の意見に賛同しなかったが、何も言い返さなかった。

…本当は否定してもらいたかったのだ。

 

デリエリは胸がむかむかして、突発的に飛び出してきて、ヴァイスの家へ駆けこんできた。

 

「うん、よく我慢したね。えらいえらい」

「…モンスピート、どう思ってんだろ」

「俺は、モンさんがそんな器の小さい人だとは思わないな」

 

ヴァイスは、モンスピートがデリエリの事を相棒以上の…

かけがえのない存在として見ている事を知っている。

 

人の悪口しか言わない程度の低い者達なんて、モンスピートは最初から相手にしていないはずだ。

彼からすれば、そんな嘲りにいちいち反応しても無意味だと思っての行動なのだと容易く

推測できた。

 

「モンさんは、きっとリリがそんな人達を黙らせるくらいに成長できるって

信じているはずだよ」

 

「…それって、ただぶん殴るだけじゃ意味がねえんだよな?」

 

「そう。武力も必要だけど、それと同じくらいにリリ自身の精神を磨かないといけない。

例え、嫌な事を言われても感情的にならずに心を落ち着かせて対応できる

…器量をレベルアップさせていく事。そうすれば、リリはもっと素敵な大人になれるはずだ」

 

ヴァイスの励ましに、デリエリは苛々が大分収まってきたのか口元を緩めてコクリと頷く。

 

「ヴァイスの言うこと、時々むずかしいけど…やってみる」

「うん。無理しない程度に頑張りな」

 

話に一区切りつけて、砂時計を見た。

最後の砂が落ちる間際で、頃合いだと思った。

 

 

「はい、そこまで。答案用紙をこちらへ渡してください」

 

 

そして、予定通りに【第一回 ヴァイス語検定試験】(後年、魔神族の王がその名称で

認定した)は終了した。

  

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