(2)の続き。
問題もとうとう最後となった。
ヴァイスは気合を入れるために、よしっと小さく呟くと問題文へ
視線を向ける。
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【問題➄】《次の長文を読んで、問題に答えてください》
東にある人間の国に、一人の少年がいました。
少年は料理が得意で、お父さんから引き継いだお店でお母さんといっしょに
たくさんの人に美味しい料理を食べてもらっていました。
ある日、とても上等な服を身に着けたご老人とお付きの人がお店にやってきました。
お付きの人は、不満でいっぱいでした。
何故なら、少年のお店に来る前にとっても立派なお店で、豪勢な食事を味わったからです。
でも、仕えているご老人がその立派なお店の出す料理の味が合わず、口直しに少年のお店の
料理を食べることになったのです。
文句を言うお付きの人に、少年は「美味しい料理を食べさせてやる!」と宣言しました。
この時点で、お付きの人はぜんぜん期待していませんでした。
何故なら、仕えている老人はその国の料理人の頂点に立つとっても偉い人物だからです。
そんな偉い人の舌を満足させる料理を、こんな小さなお店の子どもが作れるなんて
まったく考えていなかったのです。
そんなこんなで時間が過ぎて、少年の料理ができあがりました。
少年が二人に出した料理は…『カツドン』
カツドンとは、衣料理の一種でブタ肉を揚げた物とタマネギという野菜を東の国の秘伝の
ソースで煮込み、たまごと合わせて、東の国にある【ライス】に乗せた料理のことです。
カツドンは、料理人の間では難しいとされている東の国では有名な料理でもあります。
果たして、少年はうまくカツドンを作ることができるのでしょうか…?
老人とお付きの人は、恐る恐るそのカツドンを一口食べました。
「これは…何といううまさだ!!」
老人はとてもおどろきました。
少年の料理は、想像以上に非常に美味だったからです。
メインとなるカツは厚みがあり、噛むたびにサクサクとした触感と肉のうまみのエキスが
でてきて、最高級のステーキを味わっているようです。
甘い味のライスといっしょに食べると、美味しさがアップします。
さらに、トロトロの柔らかいたまごとシャキシャキのたまねぎの甘辛いソースも絡み合い、
まさに至福の味へと変化させていくのです。
あんなに文句を言っていたお付きの人さえも、夢中でカツドンを食べていました。
少年は満足していました。
二人のお客さまが、自分の料理を美味しく食べてくれた事がうれしかったのです。
食べ終わった老人は、少年に感謝の言葉を言い、自分の立場を明かしました。
老人との出会いをきっかけに、少年はさまざまな料理人と出会い、時に料理対決をして
交流を深めていく事になるのですが…
それはまた別のお話。
【問題(A)】《少年の職業はなんですか?》
【正】料理人
【問題(B)】《老人はどんな立場の人ですか? 魔神族の固有言語で答えなさい》
【正】(例)《料理人の頂点に立つ人》
【問題(C)】《老人の付き人は何故、少年のお店に不満を持っていたのでしょうか?
魔神族の固有言語で答えなさい》
【正】
(例)・《少年のお店に来る前に、上等なお店で豪勢な食事をしていたから》
・《少年が、自分や老人が満足する美味しい料理なんて作れないだろうと
高を括っていたから》……など。
【問題(D)】《少年がお客二人に作った料理はなんですか?
カタカナで答えてください。》
【正】カツドン
【問題(E)】《結果的に、少年と老人はどうなりましたか?
魔神族の固有言語で答えなさい》
【正】
(例)・《老人は美味しいカツドンに満足し、少年は自分の料理を認めてくれて
嬉しかった。老人は自らの身分を明かして、少年と仲良くなった》
*** ***** ***
(この日本語の長文は、二人がどれだけ理解できたうえで答えられるか
…がポイントだ)
文章中に漢字を普通に入れており、単語の意味も正しく分かっていないと
分かりづらい内容にしている。食べ物に関わる物語でもあるため、その辺の描写も
取り入れたのだが…メリオダスとエスタロッサは理解できただろうか?
漢字の読み方がほぼ危ういエスタロッサはともかく、メリオダスが【カツ丼】という
料理の事をちょっとでも分かってくれていたらいいな…とヴァイスは希望的観測を抱いた。
そもそも、この長文内容の制作を思いついたのは、調理中の出来事が起因している。
ブリタニアに用事があって行った際に、質の良い豚肉が手に入った。
折角なので、トンカツを作ろうと張り切っていた時に、ふと日本人だった頃に
愛読していたあの有名な漫画の話を思い出したのだ。
(学生時代に、【特製超極厚カツ丼】の再現に挑戦した時期があったなぁー
…今世でもやってみたい)
白米を含めた特定の材料を入手しないといけないため、現段階で作る事は不可能である。
でも、きっと再現してやる…という目標を掲げており、いつか東方面へ旅に出ようと
密かに画策しているというのは内緒の話だ。
(さてさて、メルとエルは…どんな回答をしたのか)
ドキドキしながら、ヴァイスは二人の回答をチェックしてみた。
【メリオダスの回答】
(A)料理人(レベルは不明)
(B)《東の国の料理王》
(C)《付き人は主人公を外見で侮り、料理を味わっていないくせに
『まずい』と独断と偏見で決めつけた。
その所為で、料理王に恥をかかせる展開になった。
少なくとも、俺だったらこんなやつを側近にはせずに雑兵にして
叩き直してやる》
(D)カツドン
(E)《料理王は主人公の味に屈服した。
主人公は料理人としての質の良さを証明した。
後に、料理王と協定を結んだ影響で、多くの敵から挑戦状をたたきつけられる
試練に立ち向かう事となった》
*** ***** ***
(おいおいおい…【レベル】って…【屈服】って、【協定】とか
どうしてそんな展開になるんだよ)
答えは大体合っているのに、メリオダスが個人的な感想と見解を加えた所為か、
内容に物騒な要素が漂っている。
仮に、メリオダスが料理界のトップだったら別の意味で深刻な問題が出てきそうだ。
確実に…付き人の男性が可哀想なポジションになるだろう。
評価に悩み、なんとか採点を終えたヴァイスはエスタロッサの回答欄へ視線を移した。
*** ***** ***
【エスタロッサの回答】
(A)りょうりがすきな子ども
(B)《料理の王様》
(C)《付き人は主人公の料理が『まずい』と決めつけた上で、他のお客さえも
混乱させて店にダメージを与える戦術に打って出た。
しかし、主人公の圧倒的な料理の味に反撃されてしまい、結果惨敗。
将来的に、付き人の座から一番下の地位へ降格される可能性が高いと思われる》
(D)カツドン
(E)《老人は主人公の料理の味に心奪われて、付き人の失敗をフォローする代わりに
主人公と友好条約を結んだ。それがきっかけで、主人公は敵対勢力と戦う事となり、
激しい戦いを繰り広げる宿命を背負う事となった》
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(えっ、ええ~…?? これって…あの長文で、この答えを書いた
エルの発想がすごくないか…)
(C)と(E)の答えを読んで、一瞬違うジャンルの小説の一文を読んでいるかのような
錯覚がした。元となったのは【グルメ漫画】なのに、彼等の回答がジャンルを【戦記】へ
フルチェンジさせてしまっている感がある。
あと、付き人に対してやけに辛辣な展開を望んでいる点が兄弟で共通している。
(戦いを経験しているから、こういう書き方になるのかな…んっ?)
答案用紙の欄外の部分に、メリオダスとエスタロッサ…それぞれコメントが書かれていた。
『カツドンって、新しいメニューなのか?
また試作品ができたら教えてくれ』
『テストを受けさせてくれてありがとう!
また新作のカツドンができたら、一番に俺に食べさせてくれよ!』
二人のコメントを見て、ヴァイスはふふっと口元が緩んだ。
(カツドンは今は無理だけど…代わりに、カツサンドをご馳走するよ)
こうして、初めてのテストの採点は終了した。
【第一回 ヴァイス語検定試験】
「二人ともお疲れ様」
テスト用紙をメリオダス達に返却して、結果を告げた。
「メルは、漢字の読み方と置き換えを重点的に練習していこうか」
「ああ、分かった」
「エルは…まずは基礎をきちんと覚えよう。漢字の正しい読み方とか、ね」
「ぶぅー、自信あったのにな…」
今後の課題と取り組みを話し合っていると、ある人物が家にいる事に気付いた。
「あっ、ゴウセルさん。いらっしゃい」
『こんにちは。お邪魔してるよ』
ヴァイスがテストの採点に集中している間に、ゴウセルは訪れたようだ。
『モンスピートに頼まれたんだ…
デリエリへメッセージを伝えるために此処に来た』
ゴウセルの目的は、モンスピートの伝言をデリエリへ伝える事だった。
「絶対、帰らねえぞ」
デリエリはぶすっと不貞腐れた顔で、ゴウセルと視線を合わそうとしない。
『ふむ、説得してモンスピートのもとへ送るのが理想だったが…
それを達成できる確率は低そうだ』
「ごめん。リリの気持ちが落ち着くまで待ってもらえないかな」
『分かった。モンスピートとラギネ(デリエリの姉の名前)には、
俺から話しておこう』
デリエリとヴァイスの意向を汲み取り、ゴウセルは二人に連絡する事を
約束してくれた。
『一応、メッセージは伝えておこう。
【デリエリは悪くないよ。自信を持っていいからね】』
モンスピートの口調を真似て、ゴウセルはその伝言を告げた。
その内容を聞くや、デリエリはハッと目を見開いて彼の方を見つめる。
彼女の反応に、ゴウセルは口元に弧を描く。
「よかったね、リリ」
「……うん」
ヴァイスが穏やかな表情で声をかけると、デリエリは神妙な面持ちで
コクリと頷いた。
『ふぅ…これで用件は終了だ。
あとは時間をおけば、懸念事項は自然と解決されるはずだ』
「ん、どういう事?」
ゴウセルの意味深げな言葉に、エスタロッサは疑問符を浮かべて聞き返す。
すると、ゴウセルは唇に人差し指を押し当てながら「ナイショ」と呟く。
「そうか…なら、こっちは何もせずに済みそうだな」
彼が言いたい事を察したのか、メリオダスだけは興味なさそうに応じていた。
その回答が分かったのは、一ヶ月後の事。
三名の魔神族が、所属している部隊から辺境の地へ飛ばされたり、
実質上の地位を降格されてしまった。
…その三名の顔ぶれに、デリエリがかなり驚いていた事。
…対象となった内の一人がモンスピートの顔を見るなり、
顔面蒼白となってそそくさと退散した事。
…その対象者の行動に対して、モンスピートが失笑していた事。
(モンさんって…リリが絡むと行動力が半端ないな)
その事から真相を理解したヴァイスは、ぎこちない笑みを浮かべてしまう。
改めて、育ての親の本気モードが如何に凄いのかを実感した出来事となった。
【おわり】
※各問題がどのジャンルのネタなのか、分かりましたか?
全部分かった方は、かなり凄いと思います(個人的意見)