等身大の愛し方   作:桐谷 アキラ

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第6話 見慣れぬ景色

 自分の眼前(がんぜん)に広がっている光景は見慣れないものだった。

 部屋だろうか ? 見渡しても不自然だと思う程何もない。たまたま物がないというよりは、意図的な何かを感じた。

 思考を重ねていくと俺の本能が『逃げろ』と告げる。その本能に従うように体を動かすと―――ガシャン。鉄と鉄とが当たるような音。音のする方向に顔を向ける。

 手足で視線が止まる。俺の視線の先にあったのは―――手錠。両手両足を拘束しているその手錠をダメ元で壊そうとしてみる……が、その堅牢な手錠からは壊れる気配が微塵(みじん)も感じられない。

 

 「先輩、起きましたか ? 」

 

 ガチャリと扉が開かれる。入って来たのは部活の後輩―――朝倉薫(あさくらかおる)だった。ご機嫌なのか満面の笑みでこちらに近づいてくる。その濁った瞳は―――『狂喜』と『狂愛』のコントラスト。

 

 「おい、これはどういうこ―――すごく嬉しいよ ! 」

 

 どういうことだ、その言葉を最後まで言うことは出来なかった。本能に警報が鳴り響き、口が勝手に生存ルートへと突っ走る。

 

 「や、やっぱりですか ! ? そ、そうですよね ! やっぱり両想いだったんですね ! ? 」

 

 絶美(ぜつび)の顔立ちを紅潮(こうちょう)させ興奮を表す。

 

 何でそうなる、と思いながらも生き残りをかけたデスゲームを攻略するため、思考を巡らせる。

 

 「勿論だよ。俺も君が好きだ」

 

 紛い物の愛を囁く(ささやく)

 

 「あ、あ、あ、ああっ ! せ、せん、せんぱいが……わたしをしゅ、しゅき……しゅきだって…… 」

 

 恍惚(こうこつ)とした表情にとろけきった声はBBTのマスコットキャラクター(ビーちゃん)を連想させた。目がな……ラリってるんだよなぁ……。

 

 「これ、取ってくれない ? 」

 

 俺は(あご)で手錠を示す。

 

 「どうしてですか ? 」

 

 はい ! 来ました疑問 ! 本日、2回目 ! やべぇトラウマになりそう。

 

 「これがあると朝倉(あさくら)を愛でられないだろ ? 」

 

 どうだ ? ここまで俺のメンタルを削ったからにはこうかはばつぐんだろう。俺が心の中で優越感にしたっていると―――

 

 「(かおる)

 

 朝倉がボソッと呟く。

 

 「え ? 」

 

 俺が聞き返すと―――

 

 「(かおる)と呼んでください」

 

 変わらずニコニコとしていたが、やはり俺の大好きなハイライトさんはニートだった。良い就職先紹介しようか ? というかあれだな……ハイライトじゃなくてタイラントで良いんじゃね ? 危険なの一緒だし。五感も似てるし。

 

 「……ああ、(かおる)。これで良いか ? 」

 

 朝倉は得心(とくしん)したように頷く。

 

 「ほら、(かおる)

 

 「ああ、すいません。すぐ外します」

 

 あれだけの強度を誇っていた手錠があっさりと外れる。自由になった手足に一先ず安堵しながらも次の行動を探る―――ピンポーン。間延びのした音が部屋に響く。

 

 「誰だ ! ? 私と先輩の愛を邪魔するのは ! ? 」

 

 彼女は血走った目でインターホンに映った人を睨めつける。宅配便のお兄さんかもしれないじゃない……というか、俺は愛してねぇよ。

 インターホンに映っていたのは―――正真正銘我が妹だった。

 

 「なんで甲斐(かい)がここに ? 」

 

 

 

 

 

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