第0話:さらわれた一夏
「くそぉ、離せ!」
「悪いなぁ、坊主‥‥‥織斑千冬を優勝させるなって、依頼が来たもんでね。金もらった以上、仕事はやらなきゃいかんのよ」
彼、織斑一夏は、今、縛られ、ある部屋に閉じ込められている。彼が誘拐された理由は、織斑千冬、彼の姉に、第2回モンドグロッソを棄権させるためである。それを依頼したのは、ある女性なのだが、そんなことはどうでもいい。
「まぁ安心しろよ坊主。俺たちはお前を殺す気はないし、少しすれば織斑千冬は、すっ飛んで来るだろう。そうなったら、ちゃーんと帰してやるさ」
そう、男たちは、特に織斑一夏を殺す気はない、依頼をこなすために誘拐はしたが。
「か、頭ぁ!大変です!織斑千冬がモンドグロッソ決勝戦に出てますぜぇ!」
「何っ!?本当か!?」
「は、はい!これを見てくだせぇ!」
そう言って、部下が端末を見せる。モンドグロッソ決勝戦の生中継が行われており、今、織斑千冬が入場して来たところだった。
「まずい、このままだと、俺たちは始末される‥‥‥」
「ど、どうしましょう!?」
「‥‥‥ガキだけ逃がせ、俺たちはすぐにでも見つかって死ぬだろう」
「え、いいんですかい?そりゃ、俺たちはすぐに殺されるでしょうけど‥‥‥」
「まぁ、俺は、あいつを殺す気はないしな。多分、依頼人もあいつはどうでもいいだろう。依頼人の正体は話してないしな」
「なるほど‥‥‥まぁ、頭がこうするって言うなら俺たちは文句ありませんよ」
「そうか、すまんな‥‥‥おい、ガキ」
「何だよ!」
「お前は、解放する。多分、ここはすぐにでも荒れ地になるさ」
「え、何言ってるんだよ?千冬姉は!?」
「‥‥‥モンドグロッソさ。何故かは知らんが、織斑千冬は決勝戦に出ている。恐らく、情報が回っていないんだろう、そうでなきゃシスコンで有名で織斑千冬がここに来ないなんてあり得ねぇ‥‥‥」
それを聞いた一夏は、項垂れてしまう。当たり前だ、信じていた姉が来なかったのだから。
「まぁ、織斑千冬にも何かがあるんだろう」
「‥‥‥」
「そう、気を落とすな。ほれ、縄は解いたぞ。どこにでも行けばいいさ」
「‥‥‥何でこうまでするんだよ?」
「さぁ?まぁ、お節介さ、ほれ、行った行った」
そう言うと、一夏は立ち上がり、さっさと走って行く‥‥‥前にこう言った。
「‥‥‥誘拐された奴に言うのもあれだけど、ありがとう」
それだけ言うと、一夏は走って行った。その数分後、一夏たちがいたところは、ペンペン草一本もない荒れ地になったのだった‥‥‥
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あれから、どれだけ走った?足が悲鳴をあげ、肉体は水を求める。
一夏は、あの誘拐犯に言われたように、ひたすら走った。あそこから逃げ、恐らく、2日は走ったか。時間感覚もおかしくなり、目は霞み、頭は痛む。そして、ついには倒れてしまった。あと少しで町に行けるのに、もう指1本動かせない。一夏は、死を覚悟し、まぶたを閉じた。
「子供?何故こんなところに‥‥‥おい、この子を運ぶぞ」
「かしこまりました」
千冬さんは、何故一夏を助けに来なかったのか?ヒントは、彼女は第1回モンドグロッソで優勝しています。ということは、スポンサーなんかも着くでしょうね。さて、世界最強が弟1人のためだけに試合放棄するのを、スポンサーなどが許すでしょうか?