【一発ネタ】FGO4周年で実装された英霊たちで聖杯戦争【最後までやるよ】   作:天城黒猫

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 我慢できなかったんだ。ちょうど聖杯戦争できるメンバーがFGOで急に実装されたら、物書きとしては想像しちゃうし、我慢できなくなったら書くしかないじゃないか。

 自分なんかが書いていいのか感はあるけれど、頑張って書いていきますよ! ついでに言うのなら、同じ題材でほかの人が書いたものも見たい。

 連休中なので毎日投稿していきますよ!!


英霊召喚

 聖杯戦争──それは七騎のサーヴァントを召喚し、敗北した英霊の魔力を糧として願いを叶える魔術儀式である。

 

 聖杯自体は世界中、ありとあらゆる時代にありとあらゆる種類のものが確認されているし、聖杯戦争もまたありとあらゆる世界で行われている。

 これから我々が見るのは、そんなあらゆる世界において行われている聖杯戦争の一つである。無数のIFが存在するのならば、このような聖杯戦争もあり得るのだろう。

 

「アルゴー船の破片、か」

 

 御三家が一つ、アインツベルンが所有する城の一室で、衛宮切嗣は目の前に置かれている物体を見てつぶやいた。

 サーヴァントを召喚するための魔法陣の中心に、特定の英霊を呼び寄せるための触媒として置かれたものは、時代

 を経たことによって黒く変化した木片だった。その木片こそが、先ほど衛宮切嗣が口にしたアルゴー船の破片そのものである。

 

「不安、かしら」

 

 とアイリスフィール・フォン・アインツベルンは己の夫である衛宮切嗣に問いかけた。彼は眉を潜めて答えた。その声は確かに彼女が心配したように、どことなく自信がないようなものだった。

 

「そうだね。アルゴー船といえば、ギリシャ神話でも名だたる英雄たちが乗った船だ。有名どころでもヘラクレスにアタランテ、メディア、カストールにポリュデウケス……別に戦闘が強い弱いという問題じゃないんだ。問題は、僕とそんな英雄たちとの相性が合うかどうかだね。

 キャスターやアサシンのような、不意打ちや小細工、裏でこそこそと動き回ることを良しとする英雄ならば、別に問題はない。僕のやり方とあっているからね。でも、問題はそういう卑怯な行為を良しとしない英雄が召喚された場合だ」

 

「そうね」

 

 アイリスフィールは頷いた。

 

「英雄との相性は重要よ。……けれども、おそらく心配はいらないわ。なぜって、このような複数の英雄から一人が召喚されるような触媒なら、そのマスターと最も性格が近い英雄が召喚される可能性が高いもの。大丈夫よ」

 

「……うん、そうだね。ともかく始めて見なければわからないことだ」

 

 ──衛宮切嗣は頷き、体内の魔術回路を起動させて召喚を行うための呪文を口にした。

 

「────」

 

 

 

 ──同時刻、冬木市でもいくつかの場所で英霊召喚の儀式が行われていた。その様子を一つずつ見ていくとしよう。

 まずはこの聖杯戦争という魔術儀式を作り出した御三家が一人、遠坂時臣の屋敷の様子を伺うとしよう。

 

「そろそろ時間ですね」

 

「ああ」

 

 と言峰綺礼は遠坂時臣に声をかけた。その声を受けた時臣は頷き、触媒を陣の中心に配置した。その触媒とは、とある大英雄を貫き、殺すまでに至った矢であった。

 遠坂時臣は、その触媒を自慢げに己の弟子である言峰綺礼に解説し始めた。それは師として、魔術に疎い弟子に対して指導しなくてはならない、という感情とこれから召喚する予定である英霊を己のサーヴァントとして行使することができるという期待からくるものだった。

 

「これはアキレウスの踵を貫いた矢だ。つまり、私が召喚する英霊はアキレウスにほかならない。不死の肉体を持ち、英雄として強力な力を持つのは間違いない。強力なサーヴァントだ」

 

「そうですね──」

 

 言峰綺礼は眉一つひそめずに己の師の解説を聞き入れた。

 この際、彼の心中では一つの疑問があった。それは、その矢は確かにアキレウスの踵を貫いたのだろう。しかし、矢に貫かれたものがいるのならば、放ったものがいるのは当然の話だろう。その矢を放った人物が召喚されるという可能性もあるのだ。

 しかし、己の師である遠坂時臣は、そのようなことは思考の埒外にあった。これは、召喚するべきターゲットを確定する手段があるのか。それとも……

 

 ──その疑問を口にすることは簡単だった。しかし、言峰綺礼はどうにも口にする気分にはならなかった。それに、己の師はすでに詠唱を始めていた。

 

「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。祖には我が大師シュバインオーグ──」

 

 遠坂時臣は己の魔力を、目の前にある陣に流し始めた。

 

 

 ……次に、ウェイバー・ベルベットの様子を見るとしよう。

 彼は人目のつかない山奥にて、鶏の血液を使用して描いた魔法陣の前に立っていた。そして、触媒は血まみれの十字架だった。

 彼にはその十字架がどのような英霊を呼び寄せるのかは全く知らない。それもそうだろう。彼はその触媒をとある偶然から、入手──もとい、己の教師であるケイネス・アーチボルトから盗み取ったのだ。

 

 ウェイバー・ベルベットという人物は非常に気弱で、魔術師としての家系も短く、実力もなかった。それがコンプレックスであった。それに、己が書いた論文を教師であるケイネス・アーチボルトに提出すると、教師はその論文に目を通すこともなく破棄し、ウェイバーの考えを否定してみせたのだ。

 

 その折、ケイネス・アーチボルトが聖杯戦争という、極東にて行われる魔術儀式に参加すると耳にし、更に英霊を召喚するための触媒を手に入れたウェイバーは、その儀式に参加することによってケイネス・アーチボルトだけではなく、己を馬鹿にする周囲の人物を見返そうと単身日本へと移動し、今に至るのだ。

 

「やってやる……!」

 

 ウェイバーは高揚感に包まれていた。それは、これから行われる儀式に参加するために、重要なサーヴァントという過去の英雄を従えることができるというものか、それともこれから行われる戦争の中で活躍する己を夢見てのことか。

 

「降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ……!」

 

 ウェイバーの魔術回路によって、魔法陣に魔力が行き渡り始めた。

 

 

 次に雨生龍之介の様子を見るとしよう。

 彼はいわゆる殺人鬼と呼ばれる人種であり、警察の捜査をかいくぐりながら全国のあらゆる場所で殺人を行ってきた。

 

 龍之介が殺人を行う理由はただ一つ。ひとえに死というものを知りたいからである。映画で見るような特殊メイクやらCGによる演出で表現される血みどろの内臓や役者によって演じられる断末魔のような、嘘っぱちの死に疑問を抱き、本当に人を殺した場合どのような死が現れるのか──彼は常にそれを追いかけているのである。

 

 彼はこれまでに様々な方法でありとあらゆる人間を殺害してきた。例えば刺殺、例えば絞殺、例えば溺死、例えば衰弱死、例えば焼死、例えば──考えうるかぎりのありとあらゆる方法で人を殺しては、満足していたのだが、ある程度回数を行った今となっては、満足することなくモチベーション不足になっていた。

 しばらく悩んだのち、一度己の原点に返ろうとした彼は、実家の倉庫に帰り彼が初めて殺人を行い、木乃伊状態となった姉と再会した。しかし、それでも何も思いつかず、ため息を吐いた際その本を見つけた。

 

 ……雨生龍之介の家系は、今となっては途絶えてしまっているが当時は魔術師の家系であった。そして、龍之介が発見した本というのは、聖杯戦争について書かれた本であった。

 サーヴァントを召喚するための儀式について書かれているページを見た彼は、魔術というオカルトに首を傾げ、眉をひそめつつも儀式というワードに反応した。

 

 ──儀式殺人。その殺人行為はまだ行っておらず、殺人鬼の興味を引くには十分なものだった。

 

 冬木市に移動した龍之介は、これまでに何度か夜な夜な家に侵入しては一家を皆殺しにし、その血液で魔法陣を描いては呪文を詠唱してきた。しかし、何も起こらなかったため、彼は今回で最後にしようとしていた。

 

「ねぇ」

 

 と龍之介は友人に話しかけるような笑顔を浮かべながら、逃げられないように体を縄で固定し、叫ぶことができないようにガムテープで口をふさいだ少年に話しかけた。

 哀れな被害者である少年は、突然己の母親と父親を殺し、その血液を使って魔法陣を描き始めた男に恐怖するしかできなかった。

 

「君はさ、悪魔って信じる?」

 

 その問いかけに、少年は恐怖のあまり答える気にはなれなかった。答えようとする余裕が一切ないのだ。しかし、それを気にした様子はなく、龍之介は言葉を続けていった。

 

「これからさ、悪魔を召喚しようとするんだけれど、成功したらキミを生贄にするからね」

 

「──」

 

 生贄──その言葉に少年は体を震わせた。

 つまり、龍之介は己を殺そうとしているのだ。少年はこの場から逃れようとして、体をじたばたさせた。しかし、四肢を縛られているため、逃げることなどできず、ただ傍にあった棚にぶつかっただけだった。

 その際、棚に置かれていた、何かが書かれた竹の飾り物のようなものが、ちょうど魔法陣の真ん中に落下した。──少年にはそれがどのようなものか理解できなかったが、それは両親が中国旅行に行った知り合いからもらったものだった。なんだったか、コウダイだかなんだかが書いたものだったか。

 

 そんなどうでもいいことを少年は思い出していた。

 

「ああ、もう。あんまり暴れるなって。悪魔を召喚する前に殺しちゃうぞ?」

 

 龍之介は、自分の一言によって大人しくなった少年を見やると、本に書かれた呪文を口ずさみ始めた。

 

閉じよ(みったせー)閉じよ(みったせー)閉じよ(みったせー)閉じよ(みったせー)閉じよ(みったせー)

 繰り返す都度に五度。ええっと、ただ……破却、でいいんだよな? うんうん! ただ、満たされるトキを破却する」

 

 龍之介が描いた魔法陣は、徐々に輝きを帯び始めた。

 

「おお、すっげえ! なんだ、コレ!?」

 

 

 

 さて、次はケイネス・エルメロイ・アーチボルトについてだ。

 彼は若くして時計塔のロードにまで昇りつめた才気あふれる魔術師であった。自尊心も高く、それ故に己の名を高めるために聖杯戦争という極東にて行われる遊戯に参加を決定した。

 

 その際、召喚するサーヴァントの触媒を己の教え子に盗まれるというトラブルがあったが、彼は別段慌てるようなことはなかった。

 というのも、その盗まれた触媒というのは複数用意していたうちの一つのものであったからだ。

 

「ソラウ。これを見たまえ」

 

 とケイネスは己の目の前にある木片を自慢げに、己の婚約者であるソラウ・ヌァザレ・ソフィアリに見せびらかした。

 その木片はアルゴー船の欠片よりは新しいものではあるが、現在よりもかなり昔のものであることは明確だった。しかし、それでもなおその木片に宿る神秘は失われることはなく、かつては見事な装飾がなされていたということが分かるほどに劣化も破損もしていなかった。

 

「これはアーサー王をはじめとした騎士達が使用したといわれる円卓の欠片だ」

 

「円卓!」

 

 ソラウはケイネスの言葉に目を見開いた。

 

「かの円卓の騎士なら、きっとハズレはないわね。皆何かしらの伝説を残しているわけだから」

 

 彼女の言葉にケイネスはまずます自慢げになり、胸を張りながら言った。

 

「その通りだとも。ソラウ。誰が召喚されるのかがわからないという不安要素はあるが、君の言った通り円卓の騎士ならばまず問題はないだろう。モードレッドのような反逆の騎士でもない限りね。私や君のことを考えるに、反逆の騎士が召喚される可能性は限りなく低い、というよりは皆無だろう。

 きっと、私のことだから円卓の中で最も強い騎士とされた男か、あるいはアーサー王そのものを呼び寄せることも可能かもしれない。

 さあ、ソラウ。これから召喚を行うから、君にも手伝ってもらいたい。パスを二人で繋ぐんだ。そうすればサーヴァントに与える魔力量も増えるし、こちらの負担も減るからね」

 

「……ええ」

 

 ソラウは頷いた。

 

 彼女の目の前に立っているケイネス・エルメロイ・アーチボルトという男は、なるほど天才なのだろう。御三家が作り出したシステムに介入し、二人の魔術師による魔力供給を可能とするのは、実に容易なことではない。

 複数の触媒を用意し、その中から最善──すなわち知名度が高く、強力なサーヴァントを召喚することができるものを選択できるようにもした。

 ケイネス自身はその努力や技巧をソラウに見せびらかし、婚約者として格好つけようとしていたが、肝心の彼女の目には彼が望むような熱は宿っておらず、どこか達観したような、冷えたものがあった。

 

 しかし、ケイネスはそれに気が付くことなく、召喚の詠唱を行っていた。

 

「────告げる。

 汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

 聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ!」

 

 ケイネスの描いた魔法陣は、目を開けることができないほどの強力な光を放ち始めた。そして、部屋の中が黄金色の光によって染められ、強大な魔力を持ったものが現れようとしていた。

 

 

 

 最後にこれまでに紹介したアインツベルン、遠坂に続く最後の御三家が一つ、間桐の家の中を見てみるとしよう。

 

 四方が石で囲まれたその陰気でじめじめとした地下室では、間桐雁夜が魔力を発生させるたびに己の肉体を蝕む刻印虫による痛みに苦悶しながらも、召喚の詠唱を口にしていた。

 

「……グ、ァっ」

 

 間桐雁夜は、魔術師ではない。

 間桐という魔術の家系に生まれながら、己の家の教え、そして考え方を否定し、出奔した。それ故に、本来ならば聖杯戦争という儀式に加わることすらできないのだ。なんせ、英霊を召喚しようにも己の中にある魔術回路は存在せず、存分に魔力を扱うこともできないのだから。

 

 そんな彼が聖杯戦争に参加する理由はただ一つ。彼の思い人である遠坂葵の子──今は間桐のもとへと引き取られた間桐桜を救い出すために他ならない。

 五百年を生きる間桐の当主である間桐臓硯によって、間桐桜は蟲によってその全身を犯され間桐の魔術に適応できる体に作り替えられている。その外道ともいえる手法によって、間桐桜の心身はとっくにすり減っており、今や自らの感情すらも抱かない人形のような有様となっている。

 

 そんな彼女を間桐から救うために、間桐雁夜はその肉体を刻印蟲と呼ばれる蟲に喰らわせ、魔術回路を作り出し、一人の魔術師として聖杯戦争に参加するのだ。

 サーヴァントを召喚するための触媒は、間桐臓硯が用意したため、その詳細を雁夜は一切しらない。しかし、それでも彼は間桐桜を救うための方法がこれしかないため、その用意された触媒を用いてサーヴァントを召喚しようとしていた。

 

「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者……」

 

 間桐雁夜が召喚するサーヴァントのクラスは、バーサーカーである。

 彼は魔術師として未熟であり、魔術回路も蟲によって作られた急ごしらえのものだった。狂化によってステータスを上昇させるバーサーカーならば、たとえマスターが未熟な魔術師であり、供給できる魔力量に限りがあってもステータスが失われることはない。そのことを考えるのならば、なるほどバーサーカーを召喚するのは最善ともいえるだろう。

 しかし、魔力を使用するたびに蟲たちは、宿主の肉体を喰らい続ける。そのため表現しがたいほどの痛みが全身に走り、雁夜はもだえ苦しむこととなるだろう。しかし、それでも彼はそのような痛みにくじけることはなく、己の目的のために激痛に耐えながら詠唱を続けた。

 

「されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者──!」

 

 

 さて、ここまで6人の召喚の様子を見てきた。

 聖杯戦争にて召喚されるサーヴァントは合計で7体である。しかし、残り一体のサーヴァントはすでに召喚されており、言峰綺礼がマスターとなっているためこの場では省略するとしよう。

 

 魔術師たちは詠唱を続ける。──そして、とうとう最後の一句が放たれた。

 

「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ──!」

 

 ──召喚されるサーヴァントはそれぞれセイバー、ランサー、アーチャー、ライダー、アサシン、キャスター、バーサーカーの異なるクラスをあてはめられ、召喚される。

 

 衛宮切嗣はセイバーのサーヴァントを。

 遠坂時臣はアーチャーのサーヴァントを。

 ウェイバー・ベルベットはライダーのサーヴァントを。

 雨生龍之介はキャスターのサーヴァントを。

 ケイネス・エルメロイ・アーチボルトはランサーのサーヴァントを。

 間桐雁夜はバーサーカーのサーヴァントを。

 そして言峰綺礼はアサシンのサーヴァントを召喚していた。

 

「──問おう」

 

 魔術師たちの前に現れるは、人類史にその名を刻みし英霊たちである。

 

 これから行われるは英霊たちによる常人離れした戦争──すなわち聖杯戦争である。

 

 さあ、これはIFの世界にて行われる聖杯戦争だ。その結末を知りたいというのならば、英雄たち、そして魔術師たちが繰り広げる一つの物語を最後まで見届けるとしようではないか!

 

「貴方が私のマスターか?」

 

 

 




 次回は8月11日に投稿します。
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