【一発ネタ】FGO4周年で実装された英霊たちで聖杯戦争【最後までやるよ】 作:天城黒猫
とりあえず、アタランテを書くのはできる。余裕だ。(アタランテレベル100マスター)
アタランテ可愛いよアタランテ。彼女をヒロインにして愛でるだけのほのぼの日常もの書きたいけど、そういうゆるふわな話を書こうにも、なぜか最終的に流血やら絶叫やらが飛び交う内容になってしまうという呪いにかかっているから書けない……誰か書いて……お願い……
イアソンは水晶玉に移っている映像を見て、焦りを覚えていた。
そこには、今イアソン達が居るアインツベルンの城へと向かう陳宮達の様子が映っていた。森の中に仕掛けられた様々なトラップは、その悉くが見破られ、破壊されるか、あるいは解除されるかなりしていた。魔術的なトラップは、ケイネスがその観察眼と知識とを以て仕掛けを見破り、そして衛宮切嗣が仕掛けた火薬や機械などを使った科学的なトラップは、陳宮の手によって解体されていた。
陳宮はつい今しがた掘り起こした地雷を手に持ち、その構造や仕組みを子細に調べながら感心したように頷いた。
「ほう。これは一度踏んだらスイッチが入り、足を離した瞬間に起爆する仕組みですか。人を殺すほどの威力ではありませんが、なるほど。死体ではなく、負傷者を作ることによって移動を阻害することが目的ですね。……いやはや、時代が進めば技術も進むのは当然ですが、この時代の絡繰りは中々に面白いですね」
彼はその地雷を、大の大人ならば一人入るほどの、巨大な袋の中に仕舞い込んだ。陳宮は森の中に入る前に、バイクの荷台に乗せていたその袋を引きずるようにして、この森を歩いていた。そして仕掛けられた科学的な罠を解除すると、それを袋の中に次々としまい込んでいたのだった。
「では、先に進むとしましょう……おや? どうしましたか、ランサーのマスター。少々機嫌が悪いように見えますが」
と陳宮はケイネスの顔をのぞき込むなりそう言った。なるほど、確かに陳宮の指摘通りケイネスの額には皺が寄り、その口は堅く閉じられており、誰しもが一目見れば機嫌が悪いと分かるような表情だった。
それも仕方のないことであろう。まっとうな魔術師は、科学より魔術が一つの技術としてより優れていると信じており、科学を嫌う傾向にある。
そして、ケイネスもまたこうして科学的な罠を仕掛けているアインツベルンに、怒りと失望を覚えていたのだ。
「……長らく魔術の名門として持て囃されていたが、このようなモノに手を出すとは、地に落ちたか? アインツベルン!」
「何にせよ怒りで目を曇らせるようなことは無いように。さて、そろそろ本丸が見えてくるころでしょう。途中で敵のサーヴァントと交戦すると思ったのですが、あるのは罠ばかりでしたね。ですが、油断することはないように」
「ええ。もちろんです」とガレスは頷いた。
「警戒は巌にしていますけど、敵サーヴァントの気配はあの城ぐらいからしかしませんね。アサシンが潜んでいるというのなら、話は別ですが」
「そうですね。ですが、ここまで接近しても何もないというのならば、我々を迎撃する本命は城の内部にあると見て良いでしょう」
と陳宮は目を細めて見せた。実際、彼の口にした言葉は正解であり、城の内部にはメディアが仕掛けた数々の魔術的なトラップがあり、神代の魔術師によって仕掛けられた迎撃装置はケイネスがホテルに仕掛けられたそれよりも、威力や苛烈さを超えていた。
シャルロット・コルデーは不安げな表情を浮かべながら呟いた。
「アーチャーは大丈夫かしら。ええ、大丈夫ね。きっと」
彼女はいま現在も、ヘラクレスと戦闘を続けているパリスのことを憂いていた。しかし、彼らの戦いに参加しようものならば、彼女はあっという間に挽肉となるだろう。そのためパリスの傍にいても無駄だろうし、陳宮に言われるがままに、皆と共にアインツベルンの城へと向かうことにしていた。
彼女が森の中でやったことといえば、一度城へと向かったことがあるため、道案内をしているぐらいだった。彼女はパリスの願いを成就させるために、今何かできることは無いか、常に思考していた。城の中に気配遮断を侵入しても、メディアの魔術によってたちまちのうちに彼女の存在は暴かれるだろうし、戦闘になっても生前に何の戦闘技能も習得していない彼女では、役に立てることはないだろう。
では、何をすればよいのか──それを彼女はヘラクレスとの戦い以降、この森を歩き続けながら考え続けていた。
「おっと、とうとう本丸ですね」
という陳宮の声により、シャルロット・コルデーは俯いた顔を見上げて見せた。
途中にあった数々の罠や無人の砦を超え、森の奥深くにその姿を隠していたアインツベルンの城が、彼らの前にその姿を見せたのだった。
さて、彼らはこうして森の中を進み、城へとたどり着いた訳だが、時間を少しばかり巻き戻して再びイアソンの様子を見に戻るとしよう。
森の中に仕掛けられた罠をものとせず突き進む敵達を前に、イアソンはヘラクレスに念話を通じて叫んでいた。
「お、オイ! ヘラクレス、何をボサっとしている!? アポロン──ああ、くそ! あんな神がいるなんて聞いていないぞ! 呪いとか天罰とか、大丈夫だよな? クソ、お前ならとっとと片付けられるだろう! 神格はサーヴァントのスケールまで堕ちているんだ。アポロンといえども、お前の敵ではないだろう!」
イアソンは先ほどからこのような調子で、ヘラクレスに向かって叫んでいた。かつて神代のギリシャに生まれ、そこで活躍していたイアソンは、神の恐ろしさや強力さは嫌というほどに知っていたし、味わってもいた。しかし、それでも尚ヘラクレスならば、アポロンをも容易に斃せるのだと信じてもいた。それほどに、イアソンはヘラクレスの実力を認めていた。
これまでに何度かアポロン神の灼熱の攻撃により、ヘラクレスの体は焼かれ、あるいは貫かれたりしており、死亡している。そしてその度に、攻撃に対する耐性を取得して蘇っているのだ。こうして何度か復活したヘラクレスならば、戦いを有利に進めることはできるだろうが、敵もアポロンという一柱の神なのだ。……少なくとも、陳宮達がこのアインツベルンの城へとたどり着くまでに、ヘラクレスがアポロンを斃すことは難しいだろう。
「くそ、くそ! あいつ等は今どこにいる!?」
とイアソンは水晶玉を覗き込んだ。彼は敵が徐々に己の元へと迫っているという事実に焦りを覚えていた。サーヴァントが一騎のみならば、ヘラクレスがいなくともメディアの力によって迎え撃つことも可能だろう。しかし、敵が複数ともなると、それも難しくなることは確かだった。
「仕方がない、新たな乗員を呼び出すぞ。森の中ならばあの獣女が相応しいだろう! 来るが良い。我が栄光の船の乗員が一人! アタランテよ!」
とイアソンは、
イアソンは慌てて再び宝具の真名を開放し、アタランテを呼び出そうとしたが、やはりアタランテが召喚されるようなことはなかった。
「何をしている!? アタランテ、とっとと来ないか! ……何? 『宗教上の理由により、今回の召喚は拒否する。悪く思うな。……ひつじ、ひつじかぁ。私の信心はどうすれば……おなかいたい』ええい、知るか!」
メディアはそんなイアソンを宥めるように言った。
イアソンは怒り、この場には居ないアタランテに怒鳴った。しかし、それでこの状況が改善されることはなかった。
「落ち着いてください。この城の内部には私が仕掛けたトラップや、強化を施してあります。内部に敵を誘い入れれば、それなりに時間は稼げるでしょう。その間に、ヘラクレスが敵を撃破し、こちらに来るまで耐えきれば良いのでは?」
「ああ、そうだな。流石だ、我が妻メディアよ」
彼女の言葉によって、イアソンは落ち着きを取り戻してみせた。
「この城のホムンクルスたちが持つ魔力は、すでに私の糧となった。令呪の魔力も、この私と連動している。時間はあるのだ。ヘラクレスが来るまで耐えればいいだけのことだ。お前の魔術だというのならば、そうそう破られることもないだろう。ハハハハ、私の勝利は確定ではないか!」
「はい、イアソン様」
メディアは微笑んで頷いた。
さて、これが少し前までのイアソンの様子だ。そして、現在に時を戻すとしよう。
イアソンは、陳宮達が城の入り口のすぐ前まで来ても、慌てることは無く部屋の中でヘラクレスに激を飛ばしていた。
ガレスは皆よりも数歩ばかり前を歩き、敵の攻撃を警戒していた。そして、何もないことが分かると城の前で立ち止まり、シャルロット・コルデーに問いかけた。
「突入しますか? 城の中にも罠が仕掛けられていると思いますが……」
「えっと、そうですね。多分あると思います。私の気配遮断も通じなかったから」
「複数人の兵士がいるのならば、城攻めは難しいですが今回は城の中に立ち入るというだけならば容易ですね。問題は、中にどんな敵がいるかどうか、ですが」
ガレスの言葉にケイネスは頷いた。
「その通りだ。ランサーよ。敵は複数のサーヴァントを召喚する宝具を持っているのは確実だろう。このアサシンの話によれば、城の内部で見たサーヴァントはあのバーサーカーを抜くと、2体のみ。戦い方や宝具も不明であり、新たなサーヴァントがいるという可能性もある。少なくとも、油断はできないだろう。だが、それでも我々は進まねばならん。ランサーよ、お前の実力ならばそれも可能だろう?」
ケイネスの言葉は確かに間違ってはいなかった。現在、敵の戦力といえばイアソンとメディアのみであり、対魔力持つガレスならば、イアソン達の元へとたどり着き、戦うことも可能といえよう。しかし、陳宮は首を横に振った。
「いえ、それよりもここは私にお任せください」
「何か策が?」とガレスは問いかけた。
「はい。城を破壊してしまいましょう。ここまで来るのに、罠以外なにも無かったことを考えるに、城の中に本命があると思ってよいでしょう。それがどのようなものかは分かりません。サーヴァントなのか、あるいはより強力な罠や結界なのか……ですが、まあ。態々敵が有利となる場所に入り、戦闘する必要はありません。
少なくとも、城を破壊してしまえば罠の類は消え失せますし、運が良ければサーヴァントも仕留めることができるでしょう」
ガレスは頷いた。
「なるほど、それは確かに良い作戦ですね。では、お任せします」
「はい。では、宝具を使いますので皆さん少しばかり後ろに下がって貰えますか? ……良いですね、では──!」
陳宮は、巨大な矢を弓に番えた。彼は矢を精一杯引き絞り、それを発射した。
「これこそが我が策! 敵の戦力を削り、断つ一矢なり──『
そして、矢が城の壁へと着弾すると、巨大な爆発が発生し、強烈な炎や衝撃、閃光、振動と言ったものがアインツベルンの城を粉々に破壊してみせた。
──さて、陳宮は宝具をこうして発動してみせた訳だが、この矢を放つという姿は幻影を用いた偽りの様子である。彼の宝具の真実を見てみるとしよう。
雨竜龍之介は召喚の儀式を行い、そして己が召喚した悪魔へと話しかけた。彼の言葉を聞いた悪魔は、ため息を吐き、雨竜龍之介の腹部に拳をめり込ませることによって、彼の意識を断った。
……その後のことは、あまり良く覚えていない。気が付けばどこかの部屋に倒れており、彼はその部屋から外へ出ようとした。すると、己が召喚した陳宮が現れ、龍之介に言葉を次々と投げかけた。その言葉といったら、聞けば震えるような内容であり、こうして書くのも躊躇いを覚えてしまうほどの、連続殺人犯の龍之介を以てしても非人道的といえる恐ろしいものだった。
恐怖を覚えた彼はその場から逃げ出そうとしたが、陳宮がそれを許すはずもなく、彼の体は痛めつけられ、足の健を切断されることによって歩くことを不可能とし、令呪が宿った手首は切り取られ、陳宮が現界を行うための糧とされた。
それ以降は、魔術によって起きているとも眠っているともつかない微睡みの状態にあった。
しかし、雨竜龍之介の意識は唐突にして覚醒することとなる。
彼を覚醒させたのは、偏に痛みによるものだった。突如彼の全身を凄まじい痛みが支配したのだ。それは例えるのならば、生きたまま内臓を釘で引っかかれ、筋肉に無数のガラス片が突き刺さり、肉はペンチで捻じり千切られるような──そんな痛みが彼の全身に迸ったのだ。
「あ、あ、ァあアア゛ああァッ!」
雨竜龍之介はたまらず悲鳴を上げた。
しかし、それでも痛みが治まるようなことはなく、それどころか彼の痛覚はますます敏感なものとなり、更なる痛みが彼を襲った。
目や鼻、口からは涙や脳汁に血が混ざった体液が噴出しており、目はまるで今にも目玉が飛び出さんばかりに見開かれ、鼻は膨れ上がり、口は裂けるのも構わずに大きく開かれていた。四肢は糸が切れた操り人形のように、滅茶苦茶に空中を引っ掻くように動いていた。
「ア、ギャア! アアアアガァァッ!」
龍之介は今、自分の身に何が起きているのかは分からなかった。なぜこんなに痛いのか、それすらも理解できなかった。それでも、一つ理解できることがあった。
それは、これから自分は死ぬということだ。死の形を追い求め、いくつもの殺人を行ってきた彼にはそれが理解できた。しかし、これは違う。彼にとって死とは、グロテスクであり、芸術である。リアリティな死を追い求めてきた彼はこの死に評価を下していた──
こんなのは、死ですらない! これはただの蹂躙だ! B級スプラッタですらない! 嫌だ! 嫌だ! 死にたくない! 嫌だ! これはC級映画の怪物が、何の意味もなくシナリオも世界観もメチャクチャに破壊するだけの、意味の無い死だ──!
「チガ、ガァァッぁッウ゛ァァアャァァアッ!」
……陳宮の宝具について説明するとしよう。彼の宝具は、つまるところ魔術回路を暴走させ、爆発させるというものだ。
雨竜龍之介の魔術回路を暴走状態にし、そしてその暴走が臨界点に訪れたその時、彼の肉体と魔力は爆発四散し、周囲の物体を粉々に破壊する。それこそが、陳宮の宝具の真実である。
──陳宮が持ってきた袋の中には、彼が森で手に入れた罠だけではなく、雨竜龍之介が入っていた。そして、宝具
砂埃が晴れると、そこにはつい先ほどまで城だった瓦礫が辺り一面に転がっていた。
シャルロット・コルデーは呟いた。
「……やったのでしょうか?」
「──いえ」
とガレスはある場所を睨みつけながら首を横に振った。彼女が睨みつけている場所の瓦礫がガタガタと動き、それが放り投げられると、その下からはメディアを抱えたイアソンが現れた。
彼の体は埃や血で汚れてはいるものの、傷と言えるようなものは何一つなかった。
「なな、何が起こった!? クソ、メディア! お前の守りとやらは全く意味がないじゃないか!」
「覚悟!」
「ゲェッ!?」
とガレスはイアソンの元に跳躍すると、その槍を彼の脳天目掛けて振り下ろした。
しかし、イアソンは瓦礫から飛び出し、その槍を回避した。その後も続けてガレスの槍を、悲鳴を上げながら回避し続けた。
「うおおおおッ!? やめろ、貴様! この私を誰だと思っている!? ええい、クソ! とにかく逃げるぞ、メディア! 逃げるんだ! 魔術だよ、魔術でなんとかしろ!」
「は、はい、イアソン様!」
メディアはイアソンに抱えられたまま、目くらましの魔術を放った。
辺り一面が光に包まれ、その眩しさに陳宮やガレス、シャルロット・コルデーにケイネスたちは思わず目を閉じてしまい、再び目を開くと、その場にはイアソンの姿も、気配もなかった。
「……逃げられましたか」
陳宮はため息を吐いた。
「仕方がありませんね。敵の拠点を一つ奪ったというだけでも、上々としましょう。問題はあのバーサーカーですが……ふむ。問題はないようですね」
「どういうことですか?」
頷く陳宮に、ガレスが問いかけた。
「
陳宮の提案に、この場にいる全員が頷き、彼らは森の中から出ることにした。
そこにはパリスが立っていた。彼は全身ボロボロの状態であったが、何とか生きているという様子だった。しかし、その表情は優れず、目をよく見れば涙を流した後があった。
「あぽろんさまが……全員ッ……やられ、ちゃいました……!」
……ヘラクレスとアポロン達は激闘を繰り広げていた。その戦いの最中、ヘラクレスは何度も死に続け、それでも尚アポロンを次々と屠り、そして最後のアポロンを捻りつぶすにまで至った。
そして、残るはパリスのみとなったところで、彼はパリスにその石斧を振り下ろそうとした。アポロンと共に戦闘を行い、憔悴しきっていたパリス、その石斧を回避することはできずにただ、目を閉じていた。
しかし、いつまでたっても己が死ぬことは無く、恐る恐る目を開いてみれば、ヘラクレスの姿は消えていた。
これは、イアソンの行いによるものだった。彼は逃走する際、魔力の消費を抑えるために、ヘラクレスを現界させるのをやめたのだった。
かくしてパリスは助かったのだが、その代償としてアポロンを失った彼は深い悲しみに暮れた。
陳宮はパリスへと近づき、ボソリと彼の耳に次の言葉を囁いた。
「貴方やアサシンのマスターの居場所を知っています。詳しくは明日」
「えっ……?」
陳宮はその場を立ち去り、パリスはその言葉の真意を確かめようとしたが、すでに陳宮は背を向けていた。
──さて、戦いが始まってから二日目の夜はこれにて幕を閉じるとしよう。
続いて日付は変わり、三日目の戦いとなる。
アタランテ可愛いよアタランテ。その耳の根本とかモッフモッフしたいし、尻尾の先端を握ってむぎゅむぎゅしたいし不憫可愛いからナデナデしてあげたい。獣っぽい感じで噛みつかれたいし、仕方のないやつだなぁ、的な感じで呆れられつつも頭ナデナデされたいし子供たちと一緒に遊んで顔がにやけているのをまじまじとみつめて赤面させたいよねホント。
……え? 城にいた切嗣とかアイリとかどうなっているって? 運が良ければ生きているんじゃないのかなぁ?
ヘラクレスとアポロンの戦いの描写? ありません。カットです。シャルロット・コルデーの天使も良くわからないですし、ああいう良くわからないのはさっさと脱落させるに限る。これ真理。
次回は来週の日曜、9月15日までに投稿します。