【一発ネタ】FGO4周年で実装された英霊たちで聖杯戦争【最後までやるよ】   作:天城黒猫

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 不意打ちの火曜日更新!!
 すまない。長い間更新してなくてすまない……でも、エタることはないから安心してほしい!!! いやホント申し訳ないです。

 理由としては、推しのVtuberの24時間生放送を見て力尽きたり、短編を書いて力尽きたり、台風が来て小説どころじゃなかったり、Vtuberになろうとして色々とやっていたんだ。
 つまり更新できなかったのは仕方のないことなんです。無罪! 作者は無罪! 
 でも、無事Vtuberになって動画投稿したから、こうして小説書く時間ができたんです。なので投稿しますよ! しばらく小説書いてなかったから違和感あるかもしれない。


第16話

「──ふ」

 

 ケイネスは目の前に立つ間桐臓硯を見下し、嘲笑を送ってみせた。

 

「つまらない戯言を垂れ流すのが得意と見えたようだ。時計塔の生徒でも、そのような虚言は口にしないぞ? 御老人」

 

「ほう、なぜそう言えるのかね?」

 

 間桐臓硯は口の端を吊り上げ、問いかけた。ケイネスは呆れたかのように、それでいてどこか得意げに言葉を続けてみせた。

 

「簡単なことだ──つい今しがたランサーから知らせがあった。我が工房にサーヴァントが侵入しており、ソラウはその敵が抱えているということも。さて、相手はアインツベルンのサーヴァントのようだが、ソラウを人質に取っている様子は見えず、ソラウを奪還して脱出することも可能だ。

 

 私からマスター権を奪い取り、我がランサーと契約をしたいというのならば、なぜこのタイミングで知らせる? 

 タイミングがあまりにも不自然すぎる。なぜランサーがアインツベルンのサーヴァントと交戦を開始したこのタイミングで、そのようなことを言うのだね? 

 御老人、仮に貴方がアインツベルンと手を組んでいるというのならば、蟲などではなくサーヴァントを使用し、ソラウを盾にするのが合理というものだし、ランサーは手出しもできないだろう。だというのに、なぜランサーは戦闘を開始している? 蟲を使用していると言うが、これもまたタイミングが不自然だ。戦闘が始まり、どちらが勝者となるか分からないこのタイミングで、ランサーの契約を寄越すように迫るのは非常に不自然だと言えるだろう。

 

 御老人、貴方は蟲を使用し、ソラウを殺せるといったが、それは全て偽りの言葉だ。貴方の目的はランサーとの契約権か? それとも与太話で私を足止めすることか?」

 

 ケイネスの言葉に、間桐臓硯は笑って見せた。

 この若きロードの言う言葉は全て本当のことであった。間桐臓硯がソラウの元に蟲を送り付けているという事実は存在せず、他の手段──例えばイアソンやメディアにソラウを殺させることも、彼には不可能であった。

 なぜならば、彼はサーヴァントを従えておらず、それどころかイアソンや衛宮切嗣と手を結んだり、契約をしたりしている訳でもないから、イアソン達の意思や行動を操ることも不可能なのだ。

 

 己の虚言を見破られた臓硯は、ただただ笑みを浮かべていた。

 

「カカカカカッ──見事。その通りよ。儂はあの女に手出しはできん。流石は若造とはいえども、時計塔のロードだけあるか。策略渦巻く時計塔のロードからすると、この問答は少しばかり簡単すぎたかのう?」

 

 ケイネスは臓硯の様子を注意深く観察していた。彼は臓硯の目的がどのようなものなのか、推理することはできても、確証を得ることはできなかった。彼の体の動きや呼吸などを細かく観察しても、この老人が現在どのようなことを考え、どのような感情を得ているのか全く見破ることができなかった。

 故に、ケイネスは警戒を最大限にし、間桐臓硯に限らず周囲に対して警戒をしてみせた。この老人は、一種の怪物なのだ。とりわけ企みとか、暗躍とか、策略とか、そういうジャンルを得意とし相手を惑わす、謀略の怪物なのだとケイネスは見破っていた。

 

「少しばかり若者と話をしたくてなあ。こうして相手をしてもらっているという訳じゃ」

 

「申し訳ないが、貴方と話をしている暇は無いのです。周りに潜んでいる蟲たちを下げてもらおうか」

 

「ふうむ、それもお見通しか。まあ、でなければロードなど務まらないじゃろうな。では次は真実を述べるとしよう。

 のう、お主は雁夜が銃を使い、遠坂を撃ったと思っているようじゃが、それは過ちじゃ。優秀な警察の監視の目があるこの日本で、銃を手に入れるような手管をあやつは持ち合わせておらぬ。雁夜は所詮凡人にすぎぬからのう」

 

「──何?」

 

 ケイネスは眉をひそめた。

 臓硯は嘘をついていないと彼の観察眼は告げていた。ケイネスは今すぐにでもここを強行突破し、ソラウの元へと駆け付けようとしていたが、彼の興味を引き、その足を止めるのには十分な話題であった。

 

「のう、アインツベルンの森を見たか? あそこには科学的な罠がいくつも仕掛けてあったであろう? ……此度の聖杯戦争、アインツベルンはその固く閉ざされた門戸を開き、外来の魔術師を雇ったようじゃ。そして、その魔術師こそが衛宮切嗣という男じゃ。あやつは『魔術師殺し』という異名を持っていてな、いくつもの戦場を渡り歩き、己の目的のためならばどのようなことでもしでかす男じゃ。

 魔術師としての誇りを不要とし、魔術使いへとその身を落とし、銃や爆弾を用い、魔術師を殺す傭兵じゃ。ここまで語れば分かるであろう? 遠坂を狙撃したのは、雁夜ではない。その衛宮切嗣という男じゃ」

 

 ケイネスは臓硯の話を耳にしながら、その脳を高速で回転させ続けていた。

 なるほど臓硯の言葉には偽りは無いのだろう。それに、アインツベルンの城を囲む森の中には魔術的な要素が存在しない、火薬や機械を用いた科学的な罠が仕掛けられていた。それだけでも証拠は十分というものだろう。

 

 しかし、ケイネスにはどうにも腑に落ちないことがあった。

 

 何故間桐臓硯は、ケイネスの前に現れるなり、ソラウを人質に取っているという戯言を口にしたのか? そして、それが全くの虚偽であることを見抜かれると、あっさりと嘘を認めた。そして、次には遠坂時臣を狙撃した真犯人である衛宮切嗣のことをケイネスへと告げた。その狙いは一体どのようなものなのであろうか? 

 ケイネスからすれば、この老人は策略とか、欺瞞とか、そうした行為に関しては時計塔の魔術師たちを凌ぐこともできる、一種の怪物なのである。そして、彼はその怪物に飲み込まれないように、その脳を高速回転させていた。そして、ケイネスは一つの答えにたどり着いたのだった。

 

「──御老人、私はあなたの時間稼ぎにこれ以上付き合う暇は無い。そこをどいてもらおうか」

 

 ケイネスは己の礼装である月霊髄液(ヴォールメン・ハイドラグラム)を起動し、戦闘を行う姿勢を見せた。それを見るなり、臓硯はさもおかしくてたまらない、といったように笑って見せた。

 

「カカカカカ! 時間稼ぎにこれ以上付き合う暇は無い、か! ああ、確かに儂の狙いは時間を稼ぐことじゃ。お前をこの場に縫い留めることじゃ! 。

 ──じゃが、若いのう。わざわざ儂の話に付き合うとは。儂の第一の言葉が戯言だと気が付いたのは誉めてやろう。じゃが、戯言だと気が付いた時点で切り捨てておくべきじゃったのう! ほれ、やってきたぞ! セイバーのマスターが! 今、お主の妻の身を確保しているサーヴァントのマスターが! 魔術師殺し、衛宮切嗣がのう!」

 

 臓硯は己肉体を無数の蟲へと変化させると、排水溝や建物の隙間、あるいは空へと蟲たちを向かわせ、その場から立ち去った。この場にいた無数の蟲たちの気配は、ほんの一瞬にして消失し、静寂がその場を包んだ。しかし、その静けさもまた、一瞬で破壊されることとなった。

 

 ざり、と地面を踏みしめる足音を、ケイネスの耳は捉えた。その足音の主は衛宮切嗣であった。

 

「衛宮切嗣──!」

 

「ケイネス・エルメロイ・アーチボルト……!」

 

 ケイネスは眉をひそめ、憎しみの籠った声で、彼の名を口にした。

 そして、衛宮切嗣は、ケイネスと出会うのは全くの予想外の出来事だったようで、彼もまた思わずケイネスの名を口にした。

 

 

 なぜ切嗣がこの場にいるのか、少しばかり時間を遡って説明するとしよう。

 

 アインツベルンの城が、陳宮の手によって粉々に破壊された後、切嗣は意識を失ったアイリスフィールの体を抱えながら、拠点の一つとして用意していた武家屋敷へと向かった。そして、そこでアイリスフィールを看病し続けたのだ。そのかいあってか、彼女は太陽が昇るころになると目を覚ました。

 

「キリツグ……」

 

「アイリ!」

 

 目を覚ました彼女は、切嗣の顔を見るなり彼の名前を呟いた。そして、切嗣もまたアイリスフィールの名を呼び、彼女の顔を覗き込んだ。

 

「大丈夫かい? 痛みはないかい? 見たところ運よく骨は折れていないようだけれど、それでも打撲の痛みがあるはずだ。意識ははっきりしているかい?」

 

 と切嗣は心配そうな顔を浮かべながら、アイリスフィールへと問いかけた。彼女は微笑み、答えた。

 

「大丈夫よ。痛みもほとんどないわ。何だったら、もうあるけるわよ。キリツグ」

 

 彼女は布団から起き上がると、途端に立ち上がってステップを踏んだり、飛び跳ねたりして自分の体がなんともないことを切嗣に告げた。

 しかし、実際のところアイリスフィールの体は、切嗣が口にした通り打撲による損傷があり、痛みもあるのだ。しかし、彼女はホムンクルスであるため、己の痛覚を遮断して何ともないように見せていた。これは自分が重荷となり、切嗣の戦いに支障がないようにするための行為である。

 

 切嗣はほっとしたようにため息を吐いた。

 

「そうか、それなら良かった」

 

「ねえ、キリツグ」

 

 アイリスフィールは彼の正面に座り、その顔を覗き込むようにして、言葉を続けた。

 

「今、セイバーはどうなっているの? この場にはいないようだけれど」

 

「ああ……そうだね。城が破壊された後も、セイバーは無事に生きているみたいだ。僕の令呪と、セイバーとのパスはまだ繋がっているからね……」

 

 切嗣は伏し目がちになりながら答えた。

 

「セイバーはどうやら、冬木ハイアットホテルにいるみたいだ。朝から使い魔に街中を探らせていたんだ。場所は特定しているよ。……でも、僕はセイバーに何かを命じることはできない」

 

「どういうこと?」

 

 アイリスフィールは首を傾げた。

 

「令呪が機能しないんだ。おそらく、セイバーの宝具によって召喚されたサーヴァント……彼の言葉が確かなら、コルキスの女王、裏切りの魔女、メディア。彼女に細工をされて、令呪に何かしらのプロテクトをかけられている。令呪に命令権としての機能はなく、もはや魔力を送るだけのものでしかない」

 

「そんな……!」

 

 アイリスフィールは思わず絶句した。令呪というのは、サーヴァントに対する絶対命令権であり、同時にサーヴァントの反逆を防ぐような役割も存在しているのだ。しかし、命令権を失えば、サーヴァントを己の思いのままにコントロールすることは、サーヴァントとの仲が良好か、あるいはサーヴァントが召喚した主の命令を、機械的に行うような人物でもないかぎり、不可能なのである。

 そして、切嗣とイアソンとの仲は良好とは言えず、それどころかイアソンは、切嗣の令呪がまともに機能していた時でも、彼の命令を聞くことはあまりなかった。

 

 つまり、令呪による支配権を失った現在、切嗣がイアソンを思いのままに操ることは、不可能となったのだ。

 それはすなわち、実質的にサーヴァントを失った状態であり、聖杯戦争においては致命的なものとなる。

 

「……僕はもう戦えないだろう」

 

 切嗣は震える声でそう言った。

 その声には様々な感情が入り混じっていた。例えば後悔、例えば悔しさ──もう少しうまく立ち回れなかったものか、サーヴァントを失い、武器のほとんどを失い、舞弥という道具を失った状態で、聖杯戦争をこれ以上行うことはほぼ不可能だ。それは聖杯を手にする資格を失なったことを意味する。己の願望を叶える道は閉ざされたも当然だ。

 

「……サーヴァントがいなくても、マスターを狙い続ければ戦うことも可能かもしれない。それでも、サーヴァントに気付かれ、妨害なり迎撃なりされれば僕に成す術はない」

 

 それは事実だった。衛宮切嗣という人間は、これまでに数多もの戦場を渡り歩き、何人もの魔術師や人間を殺してきた。しかし、それでもサーヴァントという超常の存在と戦うことは不可能であり、戦うとなれば彼はあっという間に死亡するだろう。

 

「キリツグ……」

 

「────」

 

 キリツグはただ、ため息を吐くばかりだった。

 しかし、そのため息には彼本人が気が付いているかどうかは、不明だが安堵の感情が混じっていた。

 というのも、彼はこの世界から争いを無くし、平和にするべく今まで戦い続け、そのためならば、手段を問わない冷酷な機械として動いていた。しかし、その歯車はアイリスフィールとの出会いによって錆び付き始めたのだ。

 アイリスフィールを愛し、そして彼女と切嗣との子であるイリヤスフィールが誕生し、衛宮切嗣の機械然とした感情は、徐々に温もりと人間味を取り戻していった。

 

 ……以前の切嗣ならば、目的を果たすためならば己の妻や子であろうとも、犠牲としていただろう。しかし、現在の切嗣は違う。彼は、アイリスフィールやイリヤスフィールを失うことを恐れている。己の愛する者ができてしまい、それが彼の弱点となっているのだ。

 

 聖杯戦争に参加し、早々に舞弥という長年の相棒を失ったことにより、切嗣の感情には罅が入り始めていた。そして、その次にはアインツベルンの城が丸ごと破壊され、その内部にいたアイリスフィールの身に危害が及んだ。これによって切嗣の思考は、徐々に弱音を見せるようになっていた。

 

 己が何かを失うことに対して、恐怖を抱き始めたのだ。時には、アイリスフィールやイリヤスフィールを連れて、戦いとは無縁の、どこか遠いところに逃げてしまおうか、などと考えてしまう時もあった。とりわけ、目を覚まさないアイリスフィールの顔を見ていると、イリヤスフィールのことを連想してしまい、この一晩そのことを度々考えていた。

 

 そして、今回イアソンへの命令権を失い、実質的に己のサーヴァントを失ったことにより、衛宮切嗣は逃げ道を得ることとなった。そのため、弱気になっている彼は戦いから身を引くという思考が大きくなっていた。

 

「──アイリ、僕はこれ以上戦うことはできない。聖杯を得ることはできない。アインツベルンを裏切ることになる……逃げよう。イリヤを連れて……どこか、遠くへ」

 

「……キリツグ」

 

 アイリスフィールは、彼の顔を見た。そこには魔術師殺しとしての顔はなく、ただ怯えた気弱な一人の男性がいた。

 彼女は彼をどうにかして元気づけようとしたが、確かにこれ以上戦いを続けるのは難しいことだと、彼女自身も理解していた。そして何よりも、今の切嗣はとても危うい状態だった。舞弥を失い、サーヴァントを失った。次にアイリスフィールや、イリヤスフィールを失えば、切嗣の精神は砕け散るに違いない。

 

 ──故に、アイリスフィールは震える声で己の夫の手を握りしめた。

 

「──あなたの願いはもういいの?」

 

「……ああ」

 

「そう……分かったわ。イリヤも連れて──逃げられるの?」

 

「分からない。だけど、やってみせるよ」

 

「……」

 

 アイリスフィールは俯いた。聖杯の権限──それこそがアインツベルンの悲願だった。世界平和──それこそが衛宮切嗣の願望だった。しかし、それを叶える手段は無いのだろうか? ……少なくとも、切嗣にはこれ以上戦う意思が存在しないように見えた。

 だからこそ、アイリスフィールは己の使命を果たせなくなることと、己が切嗣の弱点となり、彼が戦いから身を引くということとの、二つの事実によって彼女は陰りを見せた。

 

「──そのように俯いてどうした? アインツベルンのホムンクルスよ」

 

 その折、間桐臓硯の声が部屋の中へと鳴り響いた。

 

「──ッ!」

 

 侵入者の存在を感知した切嗣は、即座に懐に仕舞っていた銃を抜き、アイリスフィールを守るように立ち上がった。

 臓硯は屋敷の庭に立っており、その皺だらけの顔はアイリスフィールと衛宮切嗣を嘲笑することによって、歪んでいた。

 

「戦いを辞めるか? まあ、それも良しではないか。のう、アインツベルン」

 

「マキリ……!」

 

「聖杯は儂が頂く。のうこの肉体は徐々に衰えてゆくばかり……魔術による延命にも限界がある。じゃから、儂は聖杯により不老となる。不死となる。──故に、その肉体を寄越せ。儂の願いを叶えるためにも。聖杯が必要じゃ」

 

 アイリスフィールは、臓硯を鋭い目で睨み付けた。

 

「不老不死ですって? 馬鹿馬鹿しい! マキリよ、我らの悲願を忘れたか?」

 

「忘れてはおらぬ。ことを成すには、まず肉体が必要となる。ああ、悲しや。憎しい。この時を経る度に朽ちてゆく肉体が惜しい! 故に、儂は不老不死を望む」

 

「……マキリ」

 

 アイリスフィールは臓硯の姿を見て怒りを覚え、歯ぎしりをするとともに、憐憫を見せた。願いの根本をとうに忘れ、肉体の維持を求める悲しき老人──肉体が朽ちると共に、魂が腐った生きた亡霊。それこそが間桐臓硯という老人なのだ。

 

「それ以上近づくな!」

 

 衛宮切嗣は銃口を臓硯へと向けながら警告してみせた。

 しかし、臓硯は切嗣を嘲笑しながら、一歩ずつ彼らの元へと近づいていった。

 

「カカカ、そんなもので何をするというのじゃ?」

 

 臓硯は蟲へと命令を送った。一匹の蟲が飛び跳ね、切嗣の手に持っている拳銃へと体当たりを行った。これによって、切嗣は銃を床へと落とした。これは一瞬の出来事であったが、もしも切嗣が万全の状態ならば、このような迂闊なことはしなかったであろう。しかし、今の彼はこの簡単な攻撃にも対応が遅れるほどに弱り切っていた。

 

「やれ、儂の蟲どもよ!」

 

 彼の命令により、大量の蟲が切嗣たちのいる部屋へとなだれ込んだ。切嗣はあちこちを飛び交ったり、這ったりする蟲たちを手で払いながら、アイリスフィールを守ろうとした。しかし、大量の蟲の妨害により体を思う様に動かすことはできなかった。

 

「キリツグ!」

 

「アイリ!」

 

 アイリスフィールの悲鳴が聞こえると、切嗣は叫んだ。しかし、それでも彼は何もできなかった。

 ──気が付けば臓硯と、蟲たちの姿は消えており、アイリスフィールの姿もまた、どこにもなかった。彼女は臓硯の手によって攫われたのだ。

 

「アイリ──ッ!」

 

 切嗣は悲壮な声で叫び、アイリスフィールを探そうと街中へと飛び出した。──そして、彼は街中を宛てもなく彷徨っていた。間桐の屋敷には間桐鶴野がおり、彼を拷問して間桐臓硯とアイリスフィールの居場所を聞き出したが、鶴野は何も知らず徒労となった。屋敷で臓硯の帰宅を待つにしても、臓硯が別の場所に拠点なりを確保しており、そこに移動していた場合は迎え撃つこともできない。故に、衛宮切嗣はアイリスフィールを探し出そうと、街中を駆け回るしかなかったのだ。

 

 そして、その姿を間桐臓硯は影から監視しており、彼がケイネスと出会うように、ケイネスを足止めしていたのだ。

 

 ──間桐臓硯の策略により、ケイネスと切嗣はお互いに出会ったのだ。

 

 そして、ケイネスは戦闘を選択した。己と切嗣が戦う様に、誘導していたのは臓硯の策略によるものなのだろう。しかし、ケイネスとしては彼と戦わないという選択肢は無かった。なぜならば、彼はイアソンのマスターであり、彼を殺し、イアソンへの魔力の供給を停止させれば、イアソンは消滅し、ソラウを救うことができるのだから。

 例え臓硯の策がどのようなものであろうとも、目の前の魔術師に負ける気はないし、策を打ち破ってやろうとも思っていた。

 

「──衛宮切嗣、と言ったか。私から告げることはただ一つだ。死ね。ただただ死ぬが良い。ソラウを危機から救い出すためにも」

 

「待て──! 僕は……!」

 

 衛宮切嗣はこの場でケイネスと戦う理由は存在しなかった。しかし、それでも交戦はもはや回避することはできないようだった。ケイネスはすでに戦闘態勢へと入っており、逃げることもできないだろう。であれば、ここでケイネスを倒し、アイリスフィールを探すのが手っ取り早いだろう。

 

 ケイネスは月霊髄液(ヴォールメン・ハイドラグラム)を起動し、衛宮切嗣は懐に仕舞っていた銃を手に取った。

 

 水銀は鞭のようにその形状を変化させ、衛宮切嗣へとその脅威を振るった。

 引き金が引かれ、銃口から一発の鉛玉がケイネスへと飛来した。

 

 こうして、二人の魔術師は戦闘を開始した。




 次回の更新は今週の日曜日!!! つまり11月10日までに更新!!! 大丈夫! ちゃんと予告通りに更新しますので!!!!!!

 あ、ちなみにこの話で文字数が10万文字超えます。ちょっとしたラノベ並みですね。褒めて!
 もうちょっとでこのお話も終わるので! 鬼滅の刃とFGOのクロス書きたい!!!

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