【一発ネタ】FGO4周年で実装された英霊たちで聖杯戦争【最後までやるよ】   作:天城黒猫

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 正直に言えば、この話を書きたさ8割くらいでこの小説書き始めた気がする。
 故に早めの投稿! 更新ッ!


第23話

 ──走る。走る。

 

 後のことなどは一切考えずに、全力を持ってパリスは街中を駆けていた。建物の上を走り、時には飛び、柳洞寺を目指して、文字通り一直線に走っていた。

 サーヴァント故か、心臓の鼓動が激しくなることはなかった。しかし、それでもパリスは胸に痛みを覚えていた。悼む理由は何だろうか──? 決まっている! 己が騙されたことだ! 陳宮という外道の言葉に()()()と操られ、シャルロット・コルデーを失った。今回とは無関係であるバーソロミューを殺した。

 

 ……心優しく、純粋なパリスは、己の手で彼ら二人を殺したも同然だと思っていた。……バーソロミューは敵であり、殺すべき者だと理解はしている。嗚呼、しかし。それでもこのような理由で殺されるなど、報われないにも程がある! 

 そして、シャルロット・コルデーもだ! 彼女は、命を賭してバーソロミューを殺し、彼に殺された! 己のマスターを救おうとして。パリスを勝ち上がらせようとして! しかし、果たしてその死は尊いものではなく、全く意味がない無駄死にではないか! 嗚呼、これでは()()()()だ! 

 

 パリスは涙を流し、無為に死んだ二人に思いを馳せ、悲しんだ。そして、この状況を作り出した、陳宮という邪悪に怒りを覚えた。

 これは聖杯戦争。騙し騙されの戦いもあるだろう。かつて、彼が経験した戦争でも、それは同じだった。アカイアとトロイアとの戦争。あの戦いで幾多もの英雄が死んだ。その戦いの中では策略謀略も渦巻いていた。その戦いでどれだけの死があっただろうか。

 

 パリスは己の手によって戦争を巻き起こし、己もまたその戦場で戦い、アキレウスという敵を討ち取った。理解している。しかし、それは己の実力ではなく、アポロン神の力を借りたことによるものだった。

 卑劣なる策略による騙し討ち、同士討ち──戦争ならば、このようなこともあるだろう。それは理解している。理解した上で、パリスは悲しみ、怒るのだ。

 

 そして、彼が怒る理由はもう一つ。

 

 ──ごめんなさい! 僕がもう少し強かったら! 賢かったら! 

 

 己が未熟であるということだ。幼い彼ではなく、全盛期のパリスならば、あるいは──

 パリスは(かぶり)を振った。今更そのような事を考えてもどうにもならない。一度起こってしまったことは仕方がない。そうだ、あの女神の選択をした時のように。それで戦争が起こった時のように。どうすれば良かったのか、それを考えるのはまあ、いいだろう。

 しかし、それでも後悔するのはいけない。事態は進みゆくのだ。今己がすべきことはただ一つ。真実を確認し、あの卑劣なるキャスターを討つことだけだ! 

 

「キャスターッ!」

 

 柳洞寺の山門へと通じる、長い階段の途中で、パリスは立ち止まり山門を見上げた。そこに陳宮の姿は見えなかったが、気配はすぐそこに感じる。恐らくは門の裏にでもその身を隠しているのだろう。

 パリスは有らん限りの怒気を込め、涙を流しながら、純粋無垢な少年らしい顔を歪めながら叫んだ。

 

「騙したんですか! 僕たちを──マスターを攫ったのは、ライダーじゃなかった!」

 

「騒がしいですね」

 

 と陳宮はため息を吐くような声で言った。

 そして、のそり、と山門の影からその姿を現した。彼の姿を目にしたパリスは目を見開いた。というのも、陳宮は意識を失ったパリスのマスターである、遠坂時臣の襟首を掴み、彼に見せびらかすように掲げていたからだ。

 彼はパリスを見下ろしながら、目を細め、口の端を吊り上げて言った。

 

「ですが、問いには答えましょう。──そうです。アーチャー、貴方のマスターを攫った真犯人は、まさかまさかの私なのです。ええ、申し訳ありません。申し訳ないと思っていますよ。

 ですが、まあ。昨日の会話を思い返してください。私は一言も『ライダーがあなたのマスターを攫った』とは言っていません。私の言葉を、あなた方が勝手に勘違いしただけ……といっても、納得してくれないようですね」

 

 パリスは心のどこかで、自分がこれほど怒ることができるのか、というような驚愕を覚えながら有らん限りの声で叫び、弓を番えた矢を陳宮へと向けて叫んだ。

 

「よくも! アサシンは……死んだ! お前のせいで! マスターを返してください! でなければ、今すぐこの矢で殺してやる──!」

 

「それは怖いですね。ええ、私も死にたくないですし……承知しました。騙したことも悪かったと思っていますしね、返しますよ。では、ちゃんと()()()()()()()()()()?」

 

「えっ──!」

 

 パリスは呆気に取られ、先ほどまで己の内部で激しく燃え盛っていた怒りの炎はあっという間に鎮火した。その理由は何か──陳宮があっさりとパリスの要求を飲んだことか? それもあるだろう。しかし、もう一つ。陳宮は意識の無い時臣をパリス目掛けて放り投げたのだ。

 そも、時臣は頭に狙撃を受けており、少しでも動かしたら危ういといった状態である。ただでさえそんな状態であり、意識を失っているのだから、パリスが少しでも受け止めるのを失敗すれば、時臣がどうなるのかは想像に難くはないだろう。

 

 ……そうしたことをパリスが考えていたかどうかはともかく、彼は急な出来事に背筋が冷える思いで、慌てて矢と弓を放り投げて、落下する時臣の元へと駆け寄った。

 

「マスター……!」

 

 パリスは己のマスターが死んでいない、ということ。そしてその身柄がしっかりと己の元へと返却されることに喜びを抱き、時臣の体を受け止めようとした。

 そして、パリスが指し伸ばした両腕が時臣を優しく受け止める瞬間──陳宮は嗤い、己の宝具の真名を開放した。

 

「外道冷酷の策を以て、終わらせましょう。『掎角一陣(きかくいちじん)』!」

 

 掎角一陣、其れは対象の魔術回路を加速、臨界点へと到達させて膨大な爆発を起こす宝具である。そして、彼はそれを遠坂時臣へと使用したのだ。

 パリスが彼の体を抱きしめる直前に起動されたそれは、容赦なく意識を失った時臣の魔術回路を強制的に起動させ、超加速させた。

 

「え──?」

 

 それは時間にすればほんの一瞬の出来事であっただろう。パリスは何が起こったのか理解できず、気が付いた時には己の目は閃光による白い光に覆われ、凄まじい衝撃が彼の全身を叩いていた。

 

 円蔵山の木々が爆風によって揺れ、木の葉を地面にハラハラと落とした。大地は衝撃によって振動してみせた。この陳宮の宝具によって、山全体──否、円蔵山を中心とし冬木市全体が、その衝撃によって揺れたのだ。

 逆に言うならば、街を揺らすほどの威力を持つ爆発が発生したということであり、それを零距離かつ無防備な状態で喰らったパリスの状態はどのようなものであろうか? そろそろ爆発によって生じた砂埃や、煙が晴れ、爆心地が見え始めるころなので、果たしてどうなっているのかを確認するとしよう。

 

「ぅ……あ゛あ、ぅ……ッ……」

 

 柳洞寺の山門へと通じる階段は粉々に砕かれ、跡形も無くなっており、階段回りに立っていた木々や草といったもの全てが吹き飛び、さながら砂漠のような有様なっていた。その代わりに隕石が落ちたのかと思うほどの、巨大なクレーターが発生していた。そして、その中心には、呻き声を漏らしているパリスが横たわっていた。

 彼の肉体は酷く損傷していた。両足と左腕は炭化しており、その機能を果たすことは不可能となっていた。全身には打ち身や切り傷、火傷といった多数の傷が刻まれていた。パリスの肉体は見ていられない程に傷ついており、間もなく消滅するといった有様であった。

 

 陳宮はそんなパリスを見下ろしつつ、子細に観察をし、その様子を分析していた。

 

「成程、成程。そこそこ優秀な魔術師と令呪を使えば、対魔力を持っているアーチャーといえども無事では済まない様子ですね──」

 

 今のパリスは痛みに悶えているのと、突如己のマスターを抱きかかえようとしたら、このような状況となったことによる戸惑いで満ちていた。しかし、陳宮の言葉が彼の耳に入った瞬間、パリスは何が起こったのかを僅かだが、理解した。

 そして、パリスは痛みに悶えながらも、殺気の籠った目線を陳宮に送った。それを受け取った彼は、パリスを見下ろしながら言葉を続けた。

 

「おや、そのような目で睨まれると怖いですね。何が起こったのか分かりますか? ええ、簡単な事です。私の宝具は、対象の魔術回路を起点として、巨大な爆発を発生させるというものです。今回はあなたのマスターに宝具を使用しました。

 ありがとうございます、アーチャー。あなたの死は無駄にしませんよ。あなたのお蔭で、対魔力スキルを所持していても、ある程度の魔術師と令呪があれば、十分なダメージを与えられるということが分かりましたから」

 

 陳宮はニコリ、と笑った。それを見たパリスは涙を流し、憎しみと悲しみと怒りとが入り混じった感情を声に変換し、叫んだ。叫ぶだけでも、損傷した彼の肉体に激しい痛みが走るが、パリスはそんなものはお構いなしに、血の入り混じった涙を流し、血反吐を吐きながら叫んだ。

 

「あ、あ、ああぁぁ! よくも、よくも……っ! マスターを!」

 

 パリスは慟哭し、陳宮を睨み付けた。今すぐにでもいやらしい笑みを浮かべ、こちらを見下ろして嗤っている陳宮の脳天を矢で貫いてやりたいほどの怒りに駆られたが、彼の体はそうした己の意思に反して全く動かなかった。それどころか、少しでも動こうとするたびに、激しい痛みが発生して呻き声を漏らすだけの結果となった。

 

「うぁ、ぁぁぁあッ!」

 

 苦しみ──それは痛みだけではなく、己のマスターを守れなかったこと。シャルロット・コルデーの死が無駄となったこと。陳宮を仕留めることができないこと。そうした様々な理由によってパリスは苦しみ、悲しんでいるのだ。

 しかし、彼はただ苦しむだけではなかった。それで終わることは無かったのだ。このパリスというサーヴァントは幼いころの姿で召喚されており、その精神は純粋無垢といった言葉が似あうであろう。しかし、そうした彼を見ていると、到底考えられないほどの感情──すなわち、痛み辛みが復讐心へと変換され、沸き上がっていたのだ。

 

「あぁ……この……っ! 許さ、ない……! よく、もっ……!」

 

 パリスは唯一まともに動かすことのできる右腕に力を入れ、己の第二の宝具をその手に実体化させた。

 

 ──それは、黄金に光り輝く林檎だった。

 

 その宝具の名は、『不和呼びし黄金の林檎(ディスティヒア・ミリャ)

 

 かつてアテナ、アフロディーテ、ヘラの内最も美しい女神に差し出したその林檎は、トロイア戦争という幾多もの英雄が死に、血で血を洗う巨大な戦争を発生させることとなった。故に──その宝具が一度(ひとたび)発動されれば、この場に騒乱を、狂乱を、不幸を、絶望を、呪詛を撒き散らし、莫大な破壊をもたらすこととなるであろう。

 もしその宝具が発動されれば、陳宮を倒すことはできるだろう。しかし、この宝具は敵味方問わずに対象となる、凶悪な効果を持つ物である。故に、パリスも無事では済まないだろう。だが、彼は既に瀕死の状態であり、消滅寸前でもある。だからこそ──あるいは、そうした事は一切考えずに己の激情に駆られるままに、宝具を発動するであろう。

 

 しかし──『不和呼びし黄金の林檎(ディスティヒア・ミリャ)』がその効果を発動することは無かった。

 

 なぜならば、陳宮がパリスの手目掛けて矢を放ったからである。パリスの右手に矢が突き刺さり、彼の手は地面と縫い付けられ、手から離れた黄金の林檎は地面を転がるのみであった。

 

「危ない危ない……追い詰められた時の、最後っ屁が一番脅威ですからね。大人しくそのまま消えてもらいましょう」

 

 そうした陳宮の言葉も、手に走る痛みも、己の宝具の発動が阻害されたことも、パリスにはどうでも良かった。彼は、己の手に突き刺さった矢を見た。

 その矢は、あの時、あの夜、すなわち遠坂邸が粉々に破壊され、己のマスターである遠坂時臣が攫われた時に、見た物と同じ物だ! 己の頭目掛けて飛んできたあの矢と同じ物だ! それが意味するのは、あの夜陳宮がその場に居て、遠坂時臣を攫った真犯人ということである。

 

 ああ、何故早くに気が付かなかったのだ? 陳宮が真犯人であるということを! 

 

 少し考えればわかったかもしれないだろう。バーソロミューは、矢など使わず、大砲や銃によって攻撃していたのだから。ああ、ああ! もう少し早く、自力で真犯人を突き止めていれば! 

 そうすれば、遠坂時臣が死ぬことも無かっただろう! シャルロット・コルデーが、あのように無駄に死ぬことも無かっただろう! 

 

 パリスは後悔し、泣き叫んだ。しかし、そうした所でどうにもできないのだ。今、彼ができることはただ一つ。もはや己の肉体を維持するのも不可能だ。このまま消滅するのみである──

 

「う、あああ、ああぁぁぁぁァァァ──ッ!」

 

 パリスは、金色の粒子を放ち、慟哭しながら消滅した。彼が消滅したと同時に、地面を転がる黄金の林檎も消滅し、その場に残るは彼の手に突き刺さっていた矢のみであった。

 

 それを見届けた陳宮は山門から柳洞寺へと入り、その中の一室の扉を開いた。

 その部屋には、拘束され気絶した状態の、久宇舞弥と言峰綺礼との二人が閉じ込められていた。陳宮はそんな彼らを見て、笑みを浮かべた。

 

「では、そろそろ私も動き出すとしましょう」

 

 

 






 いや、ホラね? パリス君って泣かせたさあるよね? うん、泣かせたいよね! 作者は悪くない。陳宮が陳宮している所も描きたかったんだ! つまりパリス君と陳宮が悪い(暴論
 今回書いててノリノリで楽しかったです。


 あともうちょいで終わる……5話……! 多分そのくらいで……! 計算はガバガバだから、多少前後しますけど!
 あともう少しお付き合いください!
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