【一発ネタ】FGO4周年で実装された英霊たちで聖杯戦争【最後までやるよ】   作:天城黒猫

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遅くなってすまない……
レクエイムとFGO、コラボするようですね。そして、恐らくそのコラボをプレイするには、ギリシャ異聞帯をクリアしなければならない……
そして、作者がギリシャ異聞帯をプレイするには、この小説を完結させねばならない……! 分かるか、コラボが始まる前に完結させて、ギリシャやらなければならないんだ。何故ここまで遅くなった……!
あと2、3話くらいで終わります。ペース上げて投稿していきますよー!


第24話

 衛宮切嗣は、己の妻であるアイリスフィール及び、彼女を攫った間桐臓硯を見つけ出すべく、冬木市の至る所を必死に捜索していた。それこそ寝る暇もなく、あちこち駆け回っていた。気が付けば太陽は沈み、月が昇り、そして再び太陽が昇っていた。

 

 一日が経過しても、衛宮切嗣は間桐臓硯の姿を見つけだすことは出来なかった。これは切嗣が無能というわけではない。彼は今までに身に着けた傭兵、魔術師、魔術師殺しとしてのあらゆる経験と技術とを十全に発揮して、アイリスフィールを捜索したのだ。

 それでもなお、間桐臓硯が衛宮切嗣という猟犬の追跡から逃れることができているのは、偏に彼が持つ隠蔽力が凄まじいということであろう。いくら東の辺境とはいえども、聖杯戦争という第三魔法へとつながる儀式を行っていても、魔術協会に手出しをさせないほどの手腕を持つのだ。

 

 しかし、それでも手がかりを得ることはできている。昨夜、冬木市の数件の家で連続殺人が行われたというニュースが報道されている。一般的には殺人犯が押し入り、一家を皆殺しにしたという認識である。しかし、魔術に属するものがその情報を少しばかり調べれば、どのようなことがあったのかを推察することはいたって容易であった。

 発見された死体はいずれも酷い有様であった。あるものは頭を強力に押しつぶされ、あるものは胴体を切断され、あるものは肉体そのものを団子のように丸められていた。これらの行為は皆人の手によって行われた痕跡がある。しかし、人間の肉体をこのように傷つけることができるのは、サーヴァントという凄まじい力を持つモノしかできないであろう。

 それに、もう一つ。発見された死体は皆、()()()()()()()()()()()。この心臓をくりぬくという恐ろしい行為に、一般の人々は震えあがったが、魔術に関わる者達は、サーヴァントに魂喰いをさせていると予測した。

 そしてもう一つ。現場を調べれば、わざとらしく間桐臓硯が操る蟲の痕跡があったのだ。これは恐らく意図的に残されたものなのだろう。

 

「だが、何故?」

 

 衛宮切嗣はそう疑問に思った。

 犯人は間違いなく間桐臓硯であるだろう。しかし、間桐陣営、即ち間桐雁夜は死亡しているし、彼が従えているバーサーカーも消滅したことは、間桐家に侵入した際に居た間桐鶴野を尋問したことによって分かっている。恐らく、他の魔術師からサーヴァントを奪ったとしても、彼が態々魂喰いをさせる理由が分からないのだ。

 間桐は確かに衰退の道を辿っているであろう。聞けば間桐雁夜や間桐慎二には魔術師としての才能がないと聞いている。しかし、それでも間桐の当主である臓硯の魔術師としての実力は衰えてはいないだろう。彼がサーヴァントを従えるのならば、魂喰いによって魔力を補強する必要は無いのだ。

 

 例えサーヴァントが従わないというのならば、令呪を使って意思を奪うなりすればいい。

 もちろんサーヴァントの意思にそぐわぬ命令及び長期的な効果を持つ命令を令呪で行えば、その効果は薄れるだろうが──

 

「……いや、だからか?」

 

 衛宮切嗣は一つの結論に辿り着いた。

 それ即ち、間桐臓硯の操るサーヴァントは彼に従わないため、望まぬ魂喰いをさせている、というものだ。しかし、彼はその考えをすぐさま否定した。

 

「だが、その考えは余りにも性急すぎる。それならば態々証拠を残すような真似をする必要は無い……これは()()()か。わざと一般人を殺し回っていると周りに知らせ、サーヴァントを引き寄せる罠か?」

 

 ──衛宮切嗣は己の思考を高速回転させた。間桐臓硯の意図を探るために。アイリスフィールを見つけ出すために。

 

 何故間桐臓硯はアイリスフィールを攫った? 

 

 何故間桐臓硯は一般人を相手に魂喰いをしている? 

 

 何故間桐臓硯は聖杯戦争のマスターとして参戦した? 

 

 そもそも、間桐臓硯は本当にサーヴァントを従えているのか? だとしたら、それは誰だ? 

 

「情報が足りない」

 

 間桐臓硯は確かに痕跡を残している。

 しかし、その痕跡を追跡することは、衛宮切嗣には不可能だ。否、彼のみがその痕跡を元に間桐臓硯へとたどり着くことができないように、微妙な塩梅に痕跡を残しているのだ。

 

「戦力が足りない」

 

 例え、間桐臓硯へとたどり着くことが出来たとしても、間桐臓硯がサーヴァントを従えているのならば、衛宮切嗣単身のみで勝利することは不可能だろう。

 

「……何もかもが足りない」

 

 ──魔術師殺しとして、聖杯戦争のマスターとして、今の衛宮切嗣という存在を構成するのに必要なピースが無いのだ。

 

 久宇舞弥という道具が無い。彼女は最早行方知れずだ。無事かどうかも分からないし、死んだと見なした方が良いだろう──情報を、武器を、戦場を。戦うために必要な物質をそろえる歯車が存在しない。

 

 サーヴァントという使い魔が無い。力が、戦力が、火力が。英霊を相手に対等に戦うことができる存在が居ない。

 

「……アイリ、君は今どこにいるんだ……? 無事なのか……?」

 

 衛宮切嗣にはあらゆるものが欠けている。しかし、それでも尚彼が一番優先するものは、己の妻であるアイリスフィールであった。なぜならば、現在の衛宮切嗣にとって何よりも重要かつ大切なものは、己の家族なのだから。しかし、アイリスフィールは間桐臓硯に連れ去られ、見つけ出すことすらもできないし、もしも間桐臓硯がサーヴァントを従えているのならば、衛宮切嗣という魔術師のみで戦闘を行うのは無謀でしかないだろう。

 

 ああ、アイリスフィールを救い出したい! しかし、それをするには何もかもが足りない! ──衛宮切嗣は苦悩し、間桐臓硯を見つけ出し、アイリスフィールを救出するにはどうすれば良いのか、思考を高速回転させた。

 そして導き出した答えが一つ──

 

「セイバー……か」

 

 衛宮切嗣は苦虫を嚙み潰したような声で、呟いた。

 成程彼のサーヴァントであるイアソンは、まだ敗北しておらず消滅もしていない。しかし、問題点が一つ。それはイアソンというサーヴァントが、衛宮切嗣の命令を聞かないということだ。彼はそもそも聖杯戦争で戦う気が無く、かといって令呪で強制的に命令をしようにも、メディアの細工によってそれすらも不可能となっている。今の衛宮切嗣の令呪は、イアソンとのパスを繋げるだけの物と化していた。

 

 衛宮切嗣とイアソンとの主従関係は、とうの昔に破綻しているといっても良いだろう。サーヴァントはマスターの指示を聞かず、マスターもまた、令呪によって命令することすらもできない。

 

「だが……」

 

 それでも、彼はイアソンの力を借りないという選択肢を捨てずにはいられなかった。それどころか、それが最善手のようにも思えてならないのだ。

 

 衛宮切嗣はサーヴァント──即ち英雄という人種を酷く嫌っている。それこそが、そもそもの発端なのだ。

 彼は世界に平和をもたらそうとしている。彼はこの世界から争いを無くそうとしている。幾多もの戦場を歩きわたり、あらゆる地獄を目にし、体験してきた。無辜の民が理不尽に死亡するのを、か弱い女性が屈強な兵士に暴行されるのを、兵士が泣き叫ぶのを、死体の山が築かれ、血で出来上がった川が流れる地獄を見てきた。そして、衛宮切嗣もまたその地獄を造り上げた一人でもある。悪を全て殺し、多数を救うために少数を捨ててきた。

 

 それは──世界を平和にするために必要な行為なのだ。

 

 争いを嫌うがために、争うものを滅ぼす。それが、衛宮切嗣という男がやってきた行為である。だからこそ、衛宮切嗣という男は争いをもたらす存在──英雄を嫌う。

 英雄というのは、戦場で数多の人を殺したが故に褒め称えられる存在だ! 英雄というのは、大虐殺をする悪しき怪物だ! 故に、英雄とは憎き存在だ! 

 だからこそ、衛宮切嗣という魔術師はサーヴァントという英雄を純粋な道具(ぶき)として見なし、使用するつもりだった。しかし、イアソンというサーヴァントをそのように扱うのは不可能であった。だからこそ、イアソンは切嗣の指示など聞かずに、好き勝手に行動しているのだ。衛宮切嗣にとっても、イアソンという英雄は不愉快な存在であった。その尊大な態度が気に入らなかった。

 しかし、今はそんなことを気にしている場合ではない、イアソンという英雄の力が無ければ、アイリスフィールを見つけ出し、救うことは不可能であろう。

 

「セイバーの力を借りるしかない──」

 

 衛宮切嗣は決断した。イアソンに頭を下げ、その力を貸して欲しいと縋ることを決意したのだ。己のプライドや嫌悪、そんなものはどうでも良い。もはや投げ捨ててしまおう。世界の平和などどうでも良い。守るのは、己家族のみだ──! 

 もちろん、イアソンが切嗣の頼みに頷くと言われれば、怪しいだろう。しかし、彼にとっては最早これしかないのだ。それほどまでに、衛宮切嗣は追い詰められていた。

 

 

 

 さて、こうして衛宮切嗣はイアソンに力を貸してもらおうと、現在イアソンが居る冬木ハイアットホテルのスイートルームまで移動した。故に、我々もスイートルームへとその視線を移動させるとしよう。

 現在、ハイアットホテルのスイートルームに向かうには、メディアが仕掛けた無数のトラップを切り抜けなければならない。しかし、それらのトラップは一切作動することはなかった。それは衛宮切嗣が、イアソンのマスターであるため、その義理であろう。そして、もう一つトラップが作動しなかった理由がある。

 

 それは、来客があったからだ。

 衛宮切嗣はスイートルームへと向かう廊下を歩いている最中、向こう側の角から現れた人物の姿を見て、驚き、構えた。

 現れたのは、言峰綺礼及び、陳宮であった。衛宮切嗣は即座に戦闘態勢に入ったが、この二人は特に驚いた様子もなく、あらかじめここで衛宮切嗣と出会うと知っていたかのような振る舞いであり、特に敵対する様子も見せなかった。それどころか、彼らは衛宮切嗣を前にしてもその歩みを止めることなく、衛宮切嗣の方へと歩き──すれ違った。

 

 すれ違う最中、言峰綺礼は衛宮切嗣に小さな声で告げた。

 

「今の私の敵は別の所にいる。ここで戦うつもりはない」

 

「それはどういう──」

 

 衛宮切嗣は振り返った。しかし、二人は彼の問いかけなど気にせず、廊下の向こうへと姿を消していった。

 

「……どういうことだ?」

 

 衛宮切嗣は思考したが、すぐさまセイバーから送られてきた念話によって遮られることとなった。

 

『どうした。私に会いに来たんじゃあないのか? そんな所でボサボサしているなら、さっさと引き返せ!』

 

「いいや、そういう訳にはいかない。セイバー、お前に会いに来たんだ」

 

『──なら、とっとと私の元に来い!』

 

 衛宮切嗣はイアソンが居るスイートルームへと進み、とうとうイアソンと対面することとなった。

 部屋の扉を開くと、イアソンはメディアとヘラクレスの二人を後ろに控え、椅子に座った状態で衛宮切嗣を出迎えた。

 イアソンは鋭い目で、衛宮切嗣を睨んで、静かな声で問いかけた。

 

「さて、用向きを聞こうじゃないか。くだらない話だったら、すぐに放り出してやろう!」

 

「頼む! ──セイバー、力を貸してくれ……! アイリを……僕の妻を助けて欲しい……!」

 

 衛宮切嗣は膝と両手を床に付き──土下座をして叫んだ。その声はどこか悲痛さが混ざっていた。彼は最早、こうするしかないのだ。令呪も通じず、イアソンとの仲も良好ではない。だからこそ、力を持たないモノが、強者へと縋るには、この方法しかないのだ。

 

「聖杯も、何も要らない……ただ、アイリを助けて欲しいんだ……僕の願いはそれだけなんだ……もう、セイバー、お前にしか頼れないんだ……」

 

 イアソンはそんな切嗣を冷ややかな目で見降ろしながら、冷たい声で問いかけた。

 

「『聖杯も何も要らない』? フン、どうだかな! 成程、今のお前は床に体を投げ出し、みっともなく私に縋っている。ああ、実に哀れだ! 実に滑稽だ! お前の願いを知っているぞ! 夢を通じて見たぞ! お前は、ずっとその願いだけを求めて来たんだろ? そのために地獄を歩いた。地獄を作り出した! 

 お前の妻とその他が天秤に乗せられれば、お前はそのその他の内容次第では、妻をも切り捨てるんじゃないか? 心のどこかで、その願いを叶えようとしている筈だ! ああ、あの口にするだけでも忌々しい願いを叶えようとしているんじゃないのか?」

 

「違う!」

 

 衛宮切嗣は叫んだ。それこそ、口を大きく開き、裂けるのではないのか、と思うほどの声で。喉と肺が潰れるほどの大声で叫んだ。

 しかし、イアソンもまた怯まずに言い返した。

 

「嘘だな! お前は世界平和を願望として抱えて居る! この私が、ギリシャ神話という箱庭(テクスチャ)の中の、私が君臨するであろう一つの国でしか叶えられないと思った、その願いを、お前は世界総てという規模で叶えようとしている! 

 ……私もまた、聖杯という万能の願望器ならば、世界の人々全てが私を褒め称え、平和で素晴らしい世界を創ることも可能だろうと思っている! 聖杯など下らないと思っているが、私ですらも、心のどこかでその願いを抱き、そして捨てずにいられない! お前もそうなんだろう!」

 

「ああ、確かにそうだ! 僕は、世界平和を願ってやまなかった! でも、違うんだ……! もう、今は、今は……もう、アイリと、イリヤが居るんだ……妻と、子供しか、家族しか……大事な家族が……彼女たちを失うのが怖いんだ……頼む……力を、力を、貸してくれ、僕の妻を救ってくれ……!」

 

 衛宮切嗣はまるで大切な物を守ろうと、なけなしの勇気を出している小さな子供のように、小刻みに震え、涙を流し、イアソンへと頭を下げ続けた。

 イアソンはそんな衛宮切嗣を静かに見下ろし続けた。先ほど衛宮切嗣が出したその言葉は、紛れもない本心であるということを、イアソンは察知した。そして、少しだけ目を閉じ、僅かに息を吐いた。

 

 そして、イアソンは目を開き、立ち上がった。

 

「──メディア、結界を解除しろ。この時化た部屋はもう不要だ。龍脈との接続は十分だな?」

 

「はい、イアソン様。今、外界からの干渉を遮断する結界及び、トラップ類など、この建物に仕掛けられた魔術は全て解除しました」

 

 それと同時に、どこか遠くの場所で轟音が響いた。衛宮切嗣はその音に驚いた素振りを見せたが、イアソンはこの音の正体を知っているため、さして驚くことは無かった。

 イアソンはメディアとヘラクレスを従え、スイートルームから外へと歩きだした。そして、茫然とする切嗣に声を掛けた。

 

「つい今しがた、キャスターとその相手との戦いの決着が付いたようだ。残りのサーヴァントは私ともう一騎のみだ。どうせ戦いは避けられないだろう! ……何をぼうっとしている。そんなに貴様の妻と子が大事なら、精々離れ離れにならないように手をきつく繋げておけばいい! 分かったな? マスター!」

 

「……ああ、ああ……!」

 

 衛宮切嗣は涙を流し、頷いた。

 

 

 

 ──さて、この時点でサーヴァントの数は残り二騎となり、残りのサーヴァントであるセイバーと、もう一騎とのサーヴァントとが戦うのみとなる。

 

 しかし、その前にサーヴァントの数が三騎から二騎となる時に行われた戦いを語らなければならない。なぜならば、その戦いで勝者となった一騎がイアソンと衛宮切嗣との敵となるのだから──

 

 

 

 

 

 




──次回、陳宮VSガレス。

言峰と陳宮がなぜ一緒にいるのか、そのあたりも説明していきます。
お楽しみに!

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