【一発ネタ】FGO4周年で実装された英霊たちで聖杯戦争【最後までやるよ】   作:天城黒猫

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 ぶっちゃけると、現状情報がマテリアルやマイルームボイスしかないキャラクターを主役として、こうして話を書くっていうのは割と無謀だったりするんですよ。
 強さとかもよくわからないし、細かい設定やキャラの考え方、信念、性格……いろいろと情報が不足している状態です。なので、設定の齟齬やらなんやら、後々起こってもなんらおかしくないです。

 でもまあ、そんなモンは想像で補ってしまえ。それが二次創作ってモンだ。つまり何が言いたいかというと、現状は解釈は自由自在。作者次第でどうにでもなる。強さのバランスも作者次第。書いていて超楽しい。

 あ、解釈違うわー、という場合は感想で言っていただけるとありがたいです。参考になりますので。

 あと、あとがきに自分の解釈とか、本編の補足とか載せてます。長々と申し訳ありません。本編をお楽しみください!




第3話

 魔術師たちには、魔術、あるいは神秘を一般の人に知られてはならないという掟が存在する。というのも、神秘というものは多くの人に知られれば知られるほど、その力を失うという性質を持っているため、魔術師たちは己が根源へとたどり着くために、そして魔術を行使するためにも神秘の漏洩が発生しないように、慎重に行動している。

 

 この聖杯戦争においても、そのルールは適用される。すなわち、サーヴァントという規格外の存在と、そのマスターである魔術師による争いは、激しいものとなるのは必然と言えよう。しかし、それでもなお神秘の漏洩を防ぐというのは、絶対的な条件であり、ありとあらゆる物事において優先されるものなのである。

 故に、聖杯戦争における戦いは人々が寝静まった深夜に行われることが多い。

 

 さて、現在の時刻は草木も眠る丑三つ時。

 冬木にある家やビルの明かりはどれも消え失せ、住民たちは深い夢の中にいる。明かりといったら、道を照らす街灯と、侘しい月明かりのみだった。僅かばかりの風が吹き、物さみしい夜となっていた。

 

「──遠坂時臣に、そのサーヴァントで間違いないかね?」

 

 そんな時間でありながら、遠坂の屋敷の庭には四人の人間が立っていた。

 一人はケイネス・エルメロイ・アーチボルト。一人は彼のサーヴァントであるランサー。

 一人は遠坂時臣。一人は彼のサーヴァントであるアーチャーだった。

 

 この遠坂家の屋敷には、結界が張っておりこの屋敷の敷居の内部で爆弾を爆発させようが、その音や光は外部からは一切見えないように魔術的な細工がなされている。つまり、暴れるのには絶好の場所というわけだった。

 ケイネスは、早々にして遠坂時臣へと挑戦状を叩き付けていた。これは、彼の若さとプライド、そして自信ゆえに可能とする行為であった。

 

「如何にも。そういうあなたは、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトですね。その噂は、私の耳にも届いていますよ」

 

 その大胆不敵な登場を果たした敵に、時臣は微笑みながら答えた。彼の笑みは知人に話しかけるときのように、柔らかいものだったが、その目は敵を叩き潰すという烈火のごとき意思が潜んでいた。

 

「それは結構。これ以上の言葉は必要かね?」

 

 とケイネスは時臣に問いかけた。それに彼は首を振ってみせた。

 

「いいや。立会人も居ない。そして我々の目的は明確でしょう。──故に、これよりは言葉ではなく、腕で。魔術で語り合うとしましょう」

 

「よろしい」

 

 ケイネスは頷いた。

 それが始まりの合図だった。ケイネスの背後に控えていたランサーは、その盾を構えながらアーチャー目掛けて突進した。

 屋根の上に陣取ったアーチャーは、ランサー目掛けて矢を放った。

 ケイネスは己の礼装である月霊髄液(ヴォールメン・ハイドラグラム)を操り、剣の形となった水銀が時臣へと襲い掛かった。時臣は礼装を振り、1、2節ほどの短い詠唱を唱、巨大な業火を発生させた。

 

 ──この瞬間、この聖杯戦争の初戦が始まったのだ。それを見守るは、ほかのマスターの使い魔たち。そして屋敷の窓から、彼らを見下ろす言峰とアサシン、シャルロット・コルデーの二人だった。

 

「うわわ……大丈夫ですかね。アーチャー君」

 

 シャルロット・コルデーは、不安げに呟いた。彼女が持つ優しさと普遍さからくる、自分よりも幼い者を心配するという、ごくごく当然の行為であった。

 それに言峰は、彼女を見ることなく答えた。

 

「問題はないだろう。アサシン、君はあのアーチャーを幼いが故に侮っているのだろうが、アレの真名はパリス。アキレウスという英傑を殺した人物だ。曲がりなりにも神話に名を並べる男だ」

 

「それはそうですけどねぇ」

 

「少なくとも、我々が介入する余地はないだろう。私も魔術の腕では敵わない。それに、ここで下手に出れば、私が師と手を結んでいるという事実が明らかになってしまう。それだけは避けたい。大人しく見ているとしよう」

 

「……はい」

 

 シャルロット・コルデーは頷いた。

 彼女の心配は果たして不要だった。パリスは己の体と同じほどの大きさをもつ、巨大な(ボウガン)を構え、その重量にふらつきながらも矢を放った。その矢は、ガレスの脳天へと正確に射たれた。ガレスは放たれた矢を、盾で弾き、そのままアーチャーのもとへと突進していった。

 その速度は、広い中庭をものの数秒で端から端へと移動することが可能なほどに早かった。しかし、パリスはその数秒の間、羊のような姿をとったアポロンの力を借りながらも、屋根の上から何度も矢を連射したり、アポロンを投げつけたりして、ガレスを近づけさせなかった。

 

「くっ……やりますね。ですが!」

 

 ガレスは盾を持つ手の力を強め、次々と飛来する矢と、アポロンを盾で跳ね返しながら、強引にパリスのもとへと前進していった。そして、一気に跳躍し、屋根の上に立つパリスめがけて槍を振り下ろした。

 

「わ、わっ!? 嘘!?」

 

 パリスはあたふたしながらも、屋根から飛び降りて振り下ろされる槍を回避した。獲物を逃した槍は、屋敷の天井を粉々に砕いた。

 

「わ、凄い威力……!」

 

 パリスは粉々に砕かれた屋根を見て、感心しながらもこの槍が自分に当たったら、と思うと背筋が冷たくなった。

 ガレスも地上に着地し、パリスを見つめた。

 

「アーチャーですか。接近戦は苦手と見ました!」

 

「う、確かにその通りですけど……! けれども、負けませんよ。えっと……ランサー!」

 

「それはこちらこそです。様子見はここら辺にしておきましょう。いきますよ、アーチャー!」

 

「はい! よろしくお願いします。こっちも頑張りますから!」

 

 こうして、ガレスとパリスは再び戦闘を始めた。

 パリスの肉体は、全盛期のそれではなく、アポロンによってまだ少年だったころの姿で召喚されている。それ故に彼の肉体と精神は未熟であった。しかし、それでも彼はアポロンの助けを借りながらも、ガレスの攻撃を回避しつつ、矢を懸命に放ったり、アポロンを投げつけたりして、ガレスに攻撃をしていた。

 

 一方、ガレスはそうした攻撃を盾で受け止めたり、あるいは槍でねじ伏せたり、回避したりしてみせた。そして、パリスに近づいては槍を振るって攻撃を当てようとしているが、パリスはそれを回避したり、ある時はアポロンが盾となって受け止めたりするため、中々有効打を当てられないという状態になっていた。

 

 戦況は千日手の状況となっていた。

 この二人が戦っている間に、彼らのマスターである時臣とケイネスとの様子を見てみよう。

 

 彼らは魔術師が決闘を行うときの作法に則って戦っていた。

 ケイネスは形を自在に変化させ、攻撃と防御を同時に行うことができるという恐るべき魔術礼装、月霊髄液(ヴォールメン・ハイドラグラム)を用いて、様々な種類の攻撃を時臣へと行っていた。

 しかし、時臣は磨きに磨き上げられた己の魔術を用いて、それらの攻撃に対応してみせた。彼が繰り広げる炎は、魔術によって加工された水銀であろうとも焼くほどの威力があり、その使い方も実に合理的かつ無駄のないものだった。

 その時臣の様子に、ケイネスはただただ感心するばかりだった。

 

「見事だ。基本的な魔術を土台としつつ、それを極めている」

 

「貴方のような天才に褒められるとは、光栄ですね。そのあなたの礼装も実に見事なものだ」

 

「なに、片手間に作っただけのつまらないものだよ。それでも、君を殺すには十分なものだがね」

 

「それはそれは……」

 

 時臣は不敵な笑みを浮かべてみせた。

 そして、礼装を一振りした。その瞬間、この世界の法則といえるものが変化した。それを察知したケイネスは、好戦的な笑みを浮かべてみせた。

 

「なるほど。今まではこの戦いを隠ぺいする類の効果をもつ結界しか用いてなかったというわけか」

 

「ええ、その通り。ですが今この瞬間は、私が有利となるように私自身に強化を施す効果もあります」

 

「ほう。なぜ今までそれを使わなかったのかね? よもや、全力を出さずとも私に勝利できると高をくくっていたのかね?」

 

「まさか──ただ我が家の家訓に反するから、そうしたまで。『どんな時でも余裕を持って常に優雅たれ』──あなたは正面から我が土地に立ち入ったのです。この状況はフェアではないと思っていたのですが、謝罪を。私は、全力を以てケイネス・エルメロイ・アーチボルト、貴方を殺すとしましょう」

 

「よろしい。では、そちらからかかってきたまえ!」

 

 ケイネスの言葉を合図とし、時臣は炎の魔術を発動するべく詠唱を唱えた。しかし、その詠唱は中断された。

 というのも、この遠坂の屋敷に新たなる侵入者が登場したのだ。その気配が現れた瞬間、庭のあちこちを縦横無尽に駆けながら戦うパリスとガレス、そして時臣とケイネスへと──つまりこの場にいた者たち全員に、魔術による無差別攻撃が行われた。

 

 閃光と炎が屋敷の庭に降り注ぎ、あたりはまばゆい光に包まれた。

 地面は大きく抉れ、庭のオブジェは粉々に破壊されていた。これほどの攻撃力を持つ魔術の前では、対魔力を持つサーヴァントならばともかく、通常の魔術師である時臣とケイネスは耐えることができないだろう。

 

「──無事ですか、マスター!」

 

「マスター、大丈夫ですかっ!?」

 

 しかし、それは杞憂に終わった。

 異常を察知したガレスとパリスは、それぞれ己の主を守護するために素早く行動を行っていた。パリスは、アポロンの力を借りて時臣を魔術による攻撃から遠ざけ、ガレスはその盾でケイネスへと襲い掛かった魔術を正面から受け止めてみせた。

 

「何者」

 

 それは誰が口にした言葉だろうか。

 その言葉が発された瞬間、皆は同じ方向を向いた。そこには、一人の女性が立っていた。彼女こそは、間桐雁夜が召喚したサーヴァント、バーサーカー、サロメであった。

 

 彼女は微笑みを浮かべながら、時臣のほうを見つめた。

 

「夜分遅くにごめんなさいね。私はバーサーカーよ。ねえ、トキオミという方は、そこの赤い服を着たおじさまで間違いないのかしら? 私のマスター……カリヤは貴方に執着しているの。それこそ、殺したいぐらいにね。だから、死んでくれないかしら?」

 

「バーサーカーにしてはずいぶんと饒舌なようだ」

 

 時臣はサロメを睨みつけながら口にした。

 

「雁夜が聖杯戦争に参加するというだけでも驚きだが──ふむ。わざわざサーヴァントに命じてまで、私の命を狙うとは。それは何故だ?」

 

「ふふ、知りたいのかしら? 教えてあげないわ。だって、私のマスターが貴方に執着している、理由なんてこれだけで十分でしょう? ああ、貴方を殺せばマスターは喜んでくれるかしら? サーヴァントも殺さないといけないわね。……ええ。ええ。そうね、ヨカナーン。さっさと殺しましょう。それがいいわ!」

 

 サロメは水晶の髑髏──彼女が恋したヨカナーンの頭蓋骨を撫でた。すると、いくつもの種類の魔術がパリスとガレスへと襲い掛かった。

 しかし、二人の持つ対魔力を前に、サロメの放った魔術による攻撃は通じなかった。

 

 決闘を妨害されたケイネスは不機嫌そうに、ランサーに命じた。

 

「ランサー、そのバーサーカーを殺せ。アーチャーは後回しだ。我らの戦いを邪魔した罪として、罰を与えてやりたまえ!」

 

「──いいえ。ロード、貴方の手出しは不要です。どうやら、彼女は私に用があるようですからね。申し訳ありませんが、貴方との決闘は後回しとしましょう。この不躾な来客を痛い目に合わせてやらなくては。それに、バーサーカーのマスターとは幼馴染でしてね」

 

「……いいだろう。では、さっさと済ましたまえ」

 

 ケイネスの言葉に時臣は頷いた。

 

「アーチャー! 良いかね?」

 

「は、はいっ! わかりました。バーサーカーと戦えばいいんですねっ! 未熟者ですが、頑張ります!」

 

 パリスは頷いた。それを合図として、サロメは魔術による攻撃をパリスへと放った。

 

「私の邪魔をするのかしら? いけない子ね。ねぇ、ヨカナーン」

 

 ──パリスとサロメとの戦いは、パリスが有利となっていた。

 というのも、サロメ自体は生前、魔術師でもなく、武勇に通じた英雄でもなく、ただの女性だったのだ。そのため、戦いの術というものは一切持たなかった。サーヴァントとして召喚された彼女は、魔術を使うことができるが、それはヨカナーン自身が魔術師であり、彼の首が魔術礼装として機能しているからである。

 そして、攻撃手段が魔術しかないサロメは、パリスが持つ対魔力のスキルを打ち破り、傷を負わせるほどの強力な攻撃を放つことができなかった。

 

 それ故に、パリスがサロメを追い詰める形となっていた。

 使い魔である蟲を通じて、その様子を見ていた雁夜は、サロメが魔術を使って暴れる度に、刻印虫が肉体を喰らう痛みにもだえ苦しんでいた。しかし、それでも彼は構わなかったのだ。

 

「時臣ィ……ッ! お前のせいで、桜ちゃんは酷い目に合っているんだ……! そうだ、お前が……!」

 

 間桐桜は、元々は遠坂時臣の子供だった。

 しかし、時臣は桜を間桐へと差し出したのだ。それ故に、彼女は間桐の醜悪極まりない魔術によって酷い責め苦を味わっている──それが雁夜には許せなかった。それ故に、時臣に殺意を抱いているのだった。

 

「殺せ……! バーサーカーッ! サロメ!」

 

 ──そして、この戦いを見ているのは雁夜だけではなかった。

 ウェイバーも、使い魔を通じてこの戦いを見ているし、キャスターとして召喚された陳宮もまた同様だった。そして──衛宮切嗣もまた、時臣たちがいる屋敷を見下ろせる建物の上から、スナイパーライフルのスコープ越しにその戦いを見ていた。

 

 切嗣は、ライフルのスコープを時臣の頭へと固定していた。そして、同時に彼の協力者である久宇舞弥もまた、ケイネスの頭を狙撃するべく狙いを定めていた。

 切嗣はインカムを使い、別の場所にいる舞弥と連絡を取り合っていた。

 

「舞弥、彼らはこの戦いの中で警戒している。遠坂時臣には結界があるし、ケイネスにはあの礼装がある。今狙撃しても、感づかれるだけだ」

 

「はい。だから隙が生じた瞬間に狙撃するのですね」

 

「ああ。二人同時は難しいだろう。だから、どちらか一人に当たれば良しだ」

 

 切嗣は舞弥の返答に小さく頷いた。

 

 ──そして、とうとう戦況は大きく動いた。

 パリスの放った矢は、サロメの肩へと突き刺さり彼女に大きな傷を負わせた。そして、彼女の放った魔術は、狙いがそれてあらぬ方向へと飛んで行った。

 その魔術は、時臣の近くへと着弾し、時臣は衝撃によってよろめいた。

 

「────今だ」

 

 切嗣は時臣に生じた決定的な隙を見逃さなかった。彼は引き金を静かに引き──サイレンサーがつけられた銃口から、鉄の弾丸が時臣の頭へと目掛けて放たれた。

 

 

 




 パリスの強さって、どのくらいなんでしょうね。ステータス見てると、三騎士にしては筋力と耐久が低い……
 全盛期よりも幼い姿で召喚されていて、本人も未熟者って言っているので、平均より弱いのかな……?
 神話の情報を調べても、山に捨てられる、女神にジャッジを任される、アキレウスを殺すの三つしか出てこないのも地味に判断し辛い。強そうなエピソードとかあればいいんだけれど……いや、アキレウスの踵を貫いているから、その点は凄いんだろうけど。弱点を的確に付くことができれば、ジャイアントキリングができそうですね。

 ガレスちゃんは、逆に分かりやすいですね。
 ガヴェインの妹で、才能にあふれた騎士。そのうち最も優れた騎士となる、と言われていたり、七倍パワーアップする騎士に勝ったり、ガヴェインと2時間戦い続けるとかいうエピソードがあるので、それなりに強いと思います。
 ガヴェインと渡り合えるけれど、実力はガヴェインよりも下。かといってそんなに弱くはない。みたいな解釈ですね。

 ケイネス先生は、聖杯戦争の参加者でも結構好戦的だと思います。
 昼間から街中をうろついて、敵を挑発。敵陣であるアインツベルンの城へと乗り込み、単身切嗣と戦うなど……
 だから、挑発に乗ってくる敵がいなければ、自分から攻めに行くんじゃないのかなぁ……と。

 次回の更新は8月13日です。明日ですね!

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