死柄木弔は存在しない   作:パム太郎

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不便なんて存在しない

 

 

 その後、両親の通夜も葬式もトントン拍子で行われた。正直転弧君と警察に行こうとしたのだが、転弧君が私と離れることになるかもしれない事を拒んでそれらが済むまでの数日間共に生活をしていたのだ。曰く、「凛子ちゃんが辛そうだからもう少し一緒にいたい」とのこと。転弧君凄く優しい子だし原作ではどうしてああなっちゃってたの・・・?

 共に生活する事に関しては祖母に許可を貰っているのだが、祖母は心ここに在らずというかボーッとしているというか、きちんと葬式などの手配をしているが何処か上の空というか・・・。あまりにもあっさりと許可を出されてしまった。心がまだついて行っていないのかもしれない。それに比べて私は薄情なもので、もうまったく辛くも悲しくもなかったりする。人はいずれ死ぬものだしそもそも両親との思い出が少な過ぎた。何も知らずに死んでしまったのは悲しいが振り返ると何も無いのだ。これじゃ悲しむもくそもない。なのに私のことを考えてくれる転弧君やさしすぎ・・・!?

 

 

 通夜も終わり、葬式も終わり、一段落して息をついた数日後に予想していた事態が起こってしまった。・・・予兆はあったものの祖母の様子が変なのだ。今まではお茶菓子を食べてテレビを見たりお喋りをしたりしていたのだが、両親が死んでからというもの窓際の椅子に腰掛けて微動だにしない。ご飯の時間になると支度はしてくれるが、準備するのは4人分だ。祖母と私と両親の4人分。転弧君を数えていない、というか恐らく認識していないし両親が死んだことを分かっていないのだ。いや、両親が死んだ記憶を無意識に書き換えてしまったのかもしれない。近所付き合いなどはこれまで通り普通だから周りの人は気づいていないけど、家に入った途端おかしくなってしまう。なにより、家の外に出れば転弧君のことをきちんと認識してくれるのだ。

 そんな状態で居心地も悪いだろうし、転弧君には個性支援施設に入所することを勧めたのだけれど全力で拒否されてしまった。それどころか涙目で「僕、凛子ちゃんにとって迷惑・・・?」と聞かれてしまった。罪悪感で死にそう殺してくれ。そこはちゃんと否定させてもらったけど、やっぱり現実問題このままここで一緒に生活するのは不可能だから何とか説得した。その結果、転弧君は警察に行くしなんなら個性支援施設にも行くと言ってくれたけど私と離れるのだけは絶対に嫌、と。それならなんとかなるだろうと思って祖母を外に連れ出し、ファミレスで転弧君の身の上と一緒に暮らしたい旨を伝えた。外に出れば正常に戻る祖母は少し躊躇ったものの、転弧君の身の上を聞いて不憫に思ったのか許可をしてくれた。ちなみに養子手続きは無理だろうからただの同居だ。

 

 

 その後警察に行き、ある程度の事情聴取が終わったあとに個性事故として処理をされた。転弧君には親戚がいなかったらしく共に生活する手続きも一緒に済ませた。住民票移したりとか。そういえば遺体はどうなったんだろ?行方不明扱いってことは見つかってないんだよね?・・・まあいいか。あとは警察経由で個性支援施設に連絡をとって通いで行くことも決定し、あれよあれよという間に転弧君は西村家に腰を落ち着かせることが出来たのだ。我完全勝利S!

 

 

「転弧君転弧君!これで一緒に暮らせるよー!」

「う、うん・・・!ありがとう、凛子ちゃん」

「私がしたいからしたんだよー!そうだ、これあげる!」

「え?絆創膏?」

 

 

 ポケットを探って出てきた2枚の絆創膏を転弧君に差し出した。これの存在をさっきまですっかり忘れていた。絆創膏の裏の紙を剥がし、転弧君の両手の人差し指に巻き付けで、ドヤ顔をする。転弧君はポカン顔だ。

 

 

「転弧君って、5本指で触ったら壊れる個性だよね?それなら1本だけ何かでカバーしちゃえば大丈夫なんじゃないかなって!」

「わあ・・・!凛子ちゃん、頭良いね!凄い!」

「ふっふっふ、もっと褒めていいんだよ!」

「凄い!凄い!凛子ちゃん凄い!」

「あっごめんやっぱ待ってなんか照れる」

 

 

 転弧君が純粋な子どもすぎて申し訳ない気持ちになってきた。褒め殺しをされるとなんだかすごく照れる。でもまあ、転弧君の普通の笑顔が見れたからいいか・・・。便利なものであるはずの個性で不便を感じるなんて嫌だもんね。




もういっそ過去が分かってるヴィランキャラ全員そっち側に行かないようにしようかと思い始めてきた
でもタイトルは転弧君に焦点当てちゃってるしなぁ
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