え?こんなクエストでこんなに貰えるの!?   作:脇役のまま終わりたい

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学校/冒険者/Sランク

「わあ、ここが王都」

 

私が何故王都の有名な魔法学校の前にいるのか、その理由は一週間程前にまで遡る。私は領主様に二つの条件を出していた。一つ目は両親に二度と手出しをしないこと。もう一つは私を王都の魔法学校に推薦してもらうことだった。勿論学費は領主様もちだ。1年間は。そう、なんでも二年目からは自分で働いて学費を支払うか特待生になり無料で通えるようになれと言うことらしい。その程度の実力はあると思われているようだ。まあ実技に関しては問題ないだろう、たぶん。問題は雑学である。勉強なんて嫌い過ぎて算数すらまともにやってこなかった私である馬鹿な特待生とか絶対無理である。

 

なので今日私は魔法学校の入学試験を受けた後に就職場所も決めなければいけなかった。両親も綾人なら心配いらないな!とか言ってたけど貴方達の娘、いや息子は馬鹿ですからね!?そんな幸せそうな表情で送り出されたら文句も言えずに笑顔で任せて!と答えていたあの頃の私を殴ってやりたい。

 

取り敢えず手持ちは領主様がくれた金貨10枚に銀貨5枚。毎月同じ額くれるようだ。調べてみたけどこの世界では銅貨、銀貨、金貨、白金貨の順に貨幣の値段も高くなっているようだった。銅貨100枚で銀貨1枚。銀貨1000枚で金貨一枚。金貨10000枚で白金貨一枚というようだ。白金貨すごって思ったけど私じゃいつまで経っても見る機会すらない貨幣だと思うからそこは気にしないことにした。

 

王都の宿が平均的に一泊銅貨500枚で、高くても銀貨100枚のようだ。ということは高い宿に100日泊まってようやく金貨10枚を使い切れるという計算になる。領主様が過剰にくれたというのは分かるがこの月に一度のお金も一年だけである。もしかしたら特待生になれなかったら余ったお金で通いなさいということなのかもしれない。意外に良い人なのかな?

 

「さて、行きますか」

 

魔法学校の門を潜るとすぐに案内人のローブを着た如何にも魔法使いの人に呼ばれ奥に連れて行かれる。奥まで来ると試験を受けに来た人だろうか?数百人くらいの同い年くらいの子が沢山いる。緊張して震えている者。自信があるのか寝てる者。友達と話している者。魔法の練習をしている者。様々だ。

だが皆共通していることがあった。

 

それは貴族の証であるイヤリングを耳に付けていることだった。

 

勿論私は貴族ではないのでイヤリングを付けていない。そのせいなのか周りから視線を感じるけど特に関係ないと時間になるまで眠ることにした。

 

どこの世界にもいるものだ。目を閉じてから数分過ぎたところで呪文の詠唱が聞こえ敵意も向けられている。何人か分からないけど数人である。ただ魔力もいまいちなので特に避ける必要もないとシールドの魔法だけ念の為に使っておき眠りについた。

 

30分程経過して目を開けると講師の先生が数字を呼んでいた。どうやら待っていた生徒に自動で数字の書かれた紙がなんらかの方法で届いているようだ。腕や頬に刻まれている者が多くおり、部屋に特殊な魔法が施されているのだろう。シールドの魔法を解くと腕に57という数字が浮かび上がってきた。そこで講師の人に57番が呼ばれたのでついていくとコロシアムの様な広々とした場所についた。真ん中には氷牢獄により動けなくなった状態の狐が1匹。あれ?どこかで見覚えがあるような?

 

「この狐の名は焔!かの魔法騎士団元副団長殿の相棒である。その焔が魔法により閉じ込められてしまったという報告を我々学園は受けちょうどい、ごほん。焔を助ける為にこうして試験に取り組むことにした。それではNo.57あの氷を壊して見せなさい。勿論壊せなくても合否には響きません」

 

その氷、私が作ったので指パッチン一つで壊れるんですよ?とは言いにくい。この講師の人、ちょうどいいとか言いそうになってたし。

 

さて壊す方法は簡単である。指パッチンすれば良い。だがそれじゃ納得してくれないだろうし、私が凍らした犯人だとバレれば最悪どうなるか分かったもんじゃない。ここは壊れなかった事にしておこうか。本気でそんな事を考えていると氷の中から狐の思念が直接送り込まれてくる。なんとも言葉では形容しづらい程哀れなその言葉に出してあげる事にする。

 

「ファイヤーボール」

 

「え、詠唱破棄!?それにこの威力は!?」

 

1メートル程の火球を氷牢獄に向かって打ち出す。勿論この程度の魔法では氷牢獄が溶けるなんてあり得ないので火球が当たった瞬間蒸気が起こり何も見えなくなるその間に指パッチンである。これで狐も無事に出れる筈だけど何か忘れてる気がする。

 

「キュユユユ」

 

蒸気が晴れて狐が見えてくる。目が合った瞬間に狐は逃げ出した。そりゃもう潔く最高速で逃げていった。講師の先生も口を開けて途方に暮れている。まあ氷は溶けて生きてたし良いよね?

 

「えーと、次の試験に行っても良いですか?」

 

「あ、どうぞ」

 

お礼をすませて次の試験会場に向かう。向かうと言っても階段を登ってすぐの場所にあるからもう着いたんだけどね。教室の扉を開けると数人の生徒がおり此方を見てくる。

 

試験ぽい試験はやっていないけど自分の番号は57番だ。でも教室には10名くらいしかいなかった。恐らくだけど人数が多い為教室を分けたのかな?そんな事を思ってると教室にいたthe貴族です。みたいな男の子に声をかけられる。

 

「やあ、僕はアグルスト=アルビン。アグルスト家の長男だ。主に水魔法を得意としている。君は見たところ貴族じゃ無いみたいだけど魔法を使えるのかい?」

 

この国には貴族以外が魔法を使うのはおかしいのだろうか?確かに皆貴族みたいだけど。

 

「えーと。はい、わた、僕の名前は綾人。得意魔法は特に無いですけど使いますね」

 

前の世界の魔法は威力により分けられていた。

 

ファイヤーボールやアイスボール等威力が低く扱いやすい魔法が簡位魔法。氷に変化をさせて威力を高める魔法アイスニードル等は中位魔法。獄炎の炎を操る上位魔法。火炎地獄〔インフェルノ〕。他にも超位魔法に最上位魔法に天体魔法。それに付与魔法と回復魔法、防御魔法、時魔法、重力魔法等。あるがこの世界ではどうなってるのか分からない。

 

「得意魔法が無いのかい?それなのに何故魔法学校に?」

 

「ちょっと気になったので」

 

「...そうかい」

 

それだけ言葉を残して離れていく。気のせいか周りの目が痛い。何かおかしなことを言っただろうか?

 

 

それから一時間ほど経過して先生が入ってくる。緑色のローブを着ており小枝のような杖を持っており見た目が優しいおばあさんなので魔女ぽい。いや魔法使うから魔女なのだが。

 

「はい、それでは皆さんには試験会場に移動してもらいます」

 

案内された場所は闘技場のような広い空間だった。ただし全て白い壁で囲まれていた。

 

「ここは魔法実技練習場です。好きに魔法の練習をするように何重にも壁に防御魔法が付与されています。なので安心して魔法を使ってください。今から呼ぶ番号の者は前に出なさい。No.1とNo.57」

 

返事をして前に出る。今から何をするのだろうか?No.1の人は不敵に笑いながら杖を出す。ローブの中に入れておいたのか結構小さいサイズの杖だった。私は杖なんて使わないのでフリーだが。

 

「貴方も杖を出していいのですよ?」

 

先生が言ってくるがそもそも杖なんて持っていない。そんな物を買うお金が無いし必要もないし。だから正直に答えることにした。というか元副団長も杖使ってなかったような?

 

「杖は持ってません」

 

周囲からどよめきが生まれる。目の前の男からは微笑が先生からは呆れが見て取れるけど私また変なこと言いました?

 

「はあ、貴方はこの試験で何をするのか分かっていますか?」

 

知りませんが?いや聞かされてないですしテストの内容なんて。

 

「まあ、だいたいは」

 

でも知らないと答えたら不合格になりそうだったので成り行きに任せることにした。

 

「そうですか...では始めますがお互い準備はよろしいですか?」

 

No.1の男の子が少し下がって距離を取るので私もそれに習って距離を取る。ここまでくればなんとなく分かった。要するにこれは。

 

「はじめっ!」

 

魔法力のテストか。

 

「我が問いに答えよ!神聖な森の女神よ!美しく!その気高き色香に我を誘え!!」

 

詠唱長っ!え?何これ、待ってればいいの?それを防げばいいんだよね?魔力テストだから交代ずつでやるんだろうし。うん待ってるか。

 

「敵を切り刻め!大いなる力!全てを無き者にせよ!!ブレードカッター!!」

 

ようやく完成した魔法は鎌鼬の弱いバージョンだった。というか何もしなくても擦り傷くらいしかつかなそう。でも防がないとだしなぁ。

 

「えーと。シールド」

 

適当な防御魔法で防いでおく。ファサという音とともに相手の魔法はシールドのまえに消えていく。男の子は何故か驚愕してるけどこっちの番だよね?氷牢獄は使った場合にバレそうだし、なんなら氷系はやめといたほうがいいかもしれない。それなら、と。

 

「ライトニング」

 

雷魔法を使ってみる。男の子は直撃し痙攣している。周りの様子も変だし、先生も開いた口が塞がらないのかぼーっとしている。あれ?もしかしてやり過ぎた?

 

「あのー先生?」

 

「はっ!今の魔法は!?それよりも急いで保険室に!!」

 

私の相手が保健室に連れていかれ先生がいなくなってしまい一旦テストが中止になってしまった。いやなんでだし!!ライトニングなんて中位の魔法だよ?それも威力を結構落としたからね!?というか防御魔法も発動してなかったし、あれ?私がおかしいの?

 

その後に急遽他の先生がきてテストが再開になった。何故か周りから怖がられているみたいだけど、そういうテストじゃ無かったの?他の人のをみるとファイヤーボールとかアイスボールとか先程のブレードカッターとかしか使っていない。それも物凄く長い詠唱と弱い威力。もしかして簡易魔法しか使ってはいけなかったの?しかも詠唱ありでどこまで威力を落とせるとか?

 

そんな思考の渦の中一人だけ違う魔法を使った者がいた。教室に入った時に話しかけてきた貴族の人だった。全員貴族なんだけど。彼だけは中位魔法のウォーターアースという地面に水を侵食させてそのまま地面の中に引きずり込むというエグい魔法を使っていた。通常土に使うので威力が落ちたのか砂地獄みたいにゆっくりと首まで相手が落ちたところで先生から止められていた。

 

中位魔法も使って良かった事に安堵しているとテスト会場が教室に移動になった。そこからの記憶はない。真っ白の紙を渡されて真っ白のまま出したとしか覚えていない。

 

ため息交じりに王都を歩く。

 

ごめんなさいお父さん、お母さん。落ちたかもしれません。

 

合格すら出来なかった。そんな事が知られればお金も送られてこなくなる。そうすると困るのは自分だ。ここまでしてくれた両親にこれ以上迷惑はかけられない。今更家に帰る事だって恥ずかしくて出来ない。

 

なので。

 

やってきましたギルドホール。

 

落ちてしまった場合の事を考えてここでお金を稼ぐ。私はこれでも前の世界では魔法職最強と言われた英雄だ。この世界でもやっていけるはずである。たぶん。

 

ギルドの中は意外と綺麗だった。荒くれ冒険者が酒を飲んでいるイメージだが一切飲んでいない。真面目に作戦を考えている者やパーティーメンバーを確認している者。なんというか綺麗過ぎて逆に怖かったりもする。冒険者といえば自由の象徴ではないのか?そんな気もするが迷っていても仕方がないので受付に向かう。

 

ギルドの受付には綺麗なハーフエルフが担当していた。凄い男受けしそうな顔である。エルフ特有の金髪に綺麗なまつ毛、高い鼻に小さな口。胸は小さいけどすらっとした体躯は女なら嫉妬してしてしまう程に整っていた。

 

「こんにちは。初めての方ですね?本日はどのような要件でしょうか?」

 

「冒険者登録をしにきたんですが」

 

その言葉に先程まで少し聞こえてきた雑談の声も無くなり静かになる。なして?変な緊張感にかられながらも受付嬢の話は続いていく。

 

「冒険者登録ですね、承りました。冒険者になる為には試験がありますが御存知ですか?」

 

「いえ、その初めて来たもので」

 

冒険者になるには試験があるらしい。お父さん、お母さん...私早々に村に帰らなくてはいけないかもしれません。

 

「では御説明しますね。まず最初に冒険者になる為の試験を受ける為に1銀貨必要になります。試験が終わりますと面接がありそこを通過すると1銀貨と簡易的な装備が貰えます。一度の試験で受かればお金は戻ってくると思ってください。ただし落ちてしまいますと次回も同じだけお金がかかります。それに一度落ちてしまいますと一週間は受けられないのでお気をつけください。最後に能力値を測定して冒険者カードを発行してお渡しします。これで説明は以上になりますが不明な点はございますか?」

 

「試験というのは...やっぱり学的なですか?」

 

「いえ、冒険者になる試験なので戦闘面のみの試験となります」

 

お父さん、お母さん。どうやら冒険者にはなれそうです。

 

「分かりました。ありがとうごさいます、これからでも試験は受けられますか?」

 

「はい、問題ありません。それでは此方の紙に名前と歳をご記入下さい」

 

「書き終わりました」

 

「では先払いになりますが銀貨1枚になります」

 

袋から銀貨1枚を出してお姉さんに渡す。試験会場はギルドの中にあるのか此方です、と奥に行くお姉さんに着いて行く。

 

何故かギルドの中にも学園と同じような魔法実技練習場が。にしても何もなさ過ぎて長い時間いたら発狂する人が出てきそうな作りだ。

 

「では今から試験を始めます。今から出てくる敵を倒していってください。倒す方法はお任せします。魔法でも剣でも何でもいいです。ただし、倒せないと思ったら言ってくださいね。普通に死にますから」

 

遠慮の無い言葉をもらい奥から狸が歩いてきた。可愛い。じゃないな、馬鹿にしてるのかな?いや、めっちゃ真面目な顔してるわ。

 

狸を殺す趣味は無いのだが...心の中で謝りながら狸にファイヤーボールを放ち一撃で命を刈り取る。

 

「詠唱破棄!..それにこの威力は..次に進みます」

 

次に出てきたのは狐だった。

この世界に動物愛護法は無いようだ。

狸と同じように一撃で命を刈り取る。

 

その次に出てきたのは鹿だった。倒し方は同じなので省略。その次はキジ、その次は鷹、その次は猪。その次は熊ときてようやくゴブリンが出てきた。

 

ようやく敵っぽいのが出てきた。

 

「ゴブリンは棍棒を持っているので気をつけてください」

 

受付のお姉さんからの注意をよそにファイヤーボールで沈める。

 

「ここまで倒したのは私が担当をしてから初めてです。何者ですか?」

 

未だにファイヤーボールしか使って無いんですが?むしろ皆さんは何していたのかと気になる。

 

「別にちょっと腕に覚えがある魔法使いですよ」

 

「そうですか...次で最後になります」

 

最後に出てきたのはハイグレウルフというモンスターだった。見た目は狼だがれっきとした魔物の類である。足が普通の狼よりかなり早くて力も強いが雑魚である。だがこのハイグレウルフの毛は炎耐性を持っている。流石にファイヤーボールでは仕留めきれないだろう。たぶん。行けそうな気もするけど。足の速さだけは速いので遅い魔法なら避けられてしまうかもしれない。

 

「天雷」

 

右手を上げて振り下ろす。雷が垂直にハイグレウルフの頭上に落ちて胴体を貫通する。胴体には穴が空いており少しだけ焦げた匂いがただよっている。因みに天雷は雷の上位魔法だったりする。人の目では終えない速度で落ちた落雷は足に自信があるハイグレウルフでも気付くことさえ出来ずに即死するだろう。前の世界では得意でよく使っていた魔法でもある。前の世界では威力不足で雷を発生させてから落としていたけどこの程度なら発生させる必要も無いだろう。

 

受付のお姉さんは口をパクパクさせながら固まってるけど、これで不合格なんてことにはならないだろう。最後って言ってたし。後は面接だけ!

 

気合いを入れ直していざ面接!だがいざ面接が始まると雰囲気にのまれてしまったのか少し固くなる。一般的な部屋に連れてこられた私を待っていたのはギルド長と不夜城の女神と言われている二つ名持ちの冒険者だった。

 

「...ハイグレウルフ。倒したってほんと?」

 

のんびりした声がそれでもはっきりと部屋に響く。受付のお姉さんが無言のまま首を縦にふる。

 

「そう...」

 

「にわかには信じがたいな。だがアスフィが言うのなら嘘では無いだろう」

 

ギルド長は人ではなく耳が尖っていることからエルフであることが分かる。それにしてもあの狼ってそんなに強いのかな?中位魔法でも充分だと思うけど。下手に上位魔法使ったのがダメだったのかな?でも外れたらめんどくさいし確実に当てるなら天雷が一番良かったと思う。

 

「はい。それに魔法を詠唱破棄で発動していました。それに威力も桁違いです」

 

その言葉に二人とも驚いている。詠唱破棄は魔力の足りない分を補うだけであり足りているなら少し燃費が悪くなるけど誰でも出来る技術の筈だ。詠唱をどれだけ長くしようが最終的な威力はさほど変わらない。魔力量が増え過ぎれば暴走してしまうし。だから魔力の濃度を上げるしか魔法の威力を上げる方法は無い。分かりやすく言えば魔法の練度である。これを上げなければ例え相手が中位の魔法でも簡易魔法で破ることが出来る。それを補うために魔法の重ね掛けや工夫等あるのだが一般的には練度が大切である。勿論魔力量が少なければ発動できる魔法も限られてしまうため魔力量が多いに越したことはない。魔法を連発する為には、いかに練度が高くても魔力量が少なければ発動出来ずに枯渇してしまう。

 

「詠唱破棄だと!?エルフでもない人族が?そんな事が出来るのはごく一部な筈。それに威力も落とさないでとなると...」

 

不夜城の女神が何を思ったのか少し考えるそぶりを見せてから此方に掌を向けてきた。

 

「アイスボール」

 

簡易魔法を放ってきた。威力も中々の威力だ。少なくともゴブリンくらいなら倒せるだろう。スピードは40キロくらいか?少し物足りないけどこの世界に来てから一番早い魔法だ。

 

「シールド」

 

簡易魔法のシールドを発動させて防ぐ。シールドにアイスボールが当たると当たった場所が少し氷っていた。すぐに溶けたけど威力はそれなりである。

 

「なっ!アリス殿何を!それにアリス殿の魔法を防いだ!?あーもう!どちらを言えばいいのだ!」

 

いや知らないけど。というか不夜城の女神の名前はアリスというらしい。

 

「突然の魔法ごめんなさい」

 

素直に謝られたので問題ありませんと返しておく。簡易魔法だったし。

 

「貴方の力が知りたくて...わたしのパーティーに入って欲しい」

 

突然の勧誘に困惑する私。パーティーに入るにしても

まだ冒険者に合格すらしてないんですけど。

 

「ほ、本気ですか!?アリス殿なら一流冒険者から引く手数多ですのに、それに貴方はあれ程パーティーメンバーを集めなかったではありませんか」

 

「わたしはひとりが好き。...でもカオスドラゴン倒せなかったから...仲間必要」

 

「カオスドラゴンなら我々も討伐するべく動いております。Aランク以上の冒険者のみを集めてます。その中に彼も入れると言うのですか?」

 

「違う。彼とわたし二人で行く。他は...邪魔」

 

顔に似合わずエグい。そもそも話の中に出てきているカオスドラゴンだがおそらくあいつだ。そう、私の村に来る前に燃やし尽くした。討伐隊が組まれているなんて知らなかった。

 

「お、お待ちください!!いくら世界に10人しかいないSランク冒険者であろうとそんな勝手は許されません!貴女の力はそれほど貴重なのです」

 

「だからこそ。雑魚はいらない」

 

ギルド長の額に汗が浮かぶ。受付のお姉さんなんて先程からあわあわしてるし、あれ?これって私の冒険者になる為の試験だよね?合格か不合格か決める為のものだよね?あれ?なしてこんな殺伐とした雰囲気に?

 

「取り消していただきたい。我が冒険者ギルドのAランクを雑魚と呼ぶ事を私は看過出来ません」

 

「事実」

 

「そうですか...綾人さん」

 

ここで私にフりますか?嫌な予感しかしないのですが?

 

「貴方にやっていただきたいことがあります。申し訳ありませんが拒否権はありません」

 

そう言って部屋を出て行くギルド長。

 

「ごめんなさい」

 

頭を下げる元凶の女の子。反省しているのだろうか?黒髪ロングで一見大人しそうな小柄な女の子。見た目は13歳くらいに見える。歳下なのだし歳上の私が大人になり許してあげよう。そう思うことにした。

 

「でも貴方もAランクの冒険者を見れば同じことを思う」

 

反省してるのかな?ぺしっと軽く頭にチョップする。うう、と涙を流しながら何かを訴えている目で此方を見てくるが無視することにした。

 

「うう...お姉さんをぶった。わたしの方が歳上なのに」

 

「は?」

 

「アリス様は今年で18歳になられます。よく歳を間違えられますが綾人様より歳上です」

 

今まで慌てていた受付のお姉さんが復活したのかアリスの説明をしてくれた。というか18?全然見えない。

 

歳上ということなのでもう一発チョップを入れておくことにした。歳上なら駄目なことも理解してる筈だもんね。

 

「ううっ、またぶたれた...アイスニードル」

 

「イージス」

 

涙目のまま魔法を詠唱破棄して放ってくるのでイージスで防いでおいた。その場面を受付のお姉さんが見ながら、またあわあわしてるけどほんと前途多難なのかもしれない。


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