「ちょっと待ってくれ飯田。おまえ、結婚したん?」
早くもこのプチ同窓会が始まってから2時間が経過し、お互いの変化をしみじみと感じながらも、一番の変化を気づかれてしまったことに対して遅かれ早かれこいつらにも報告するつもりだったから観念して報告することにしたのだ。
「それにしてもお前が早くも結婚なんてなぁ・・・。さっきは恋愛に現を抜かしている暇なんてないとか言ってたのになwww」
「くっそーこんなかで飯田が一番結婚遅いと思ってたのにぃ!」
「お前が一番晩婚になりそうだなww。そんなことよりさ、奥さんってどんな人なんだ?写真とかないのかよ~」
「うるせぇ!晩婚とかいってくるお前だって彼女いねぇだろ!?」
「残念だったな。ご両親にも挨拶済みだ」
「・・・(ºДº)!」
こいつらもなんだかんだで順調のようだが、ここで俺から話題がそれればいいのだがそういうわけにもいかないのだが、いかんせん話したくない理由があるのだ。
「それで?奥さんはどんな人なんだよ。もしかして俺たちの知ってる人じゃねぇだろうな」
もうこいつわかりきってんじゃね?と思いながらこいつらからの追及を逃れるためにはずしていた結婚指輪をチェーンから取り外し左手の薬指にはめ込む。
近くの席で同じく大学の同級生とプチ同窓会をしている嫁にラインを送りこっちの席に来てもらうように連絡する。
「嫁呼んだけど、驚きすぎて大声上げんじゃねぇぞ?」
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「親がいないってどういうことだよ・・・」
俺と斎藤しかいない病室に搾り出したかのような俺の声が静かに響く。
「ちょっと誤解しやすいかな?いないって言っても死んだとかじゃなくて、私が幼稚園に上がる頃だったんだけど両親が離婚することになって、でも再婚することになれば私の存在はお互いに邪魔ってことになったみたいでね。お父さんの弟夫婦のところに預けれることになったの」
聞いてるだけでもつらいのに。つらかったのだろうと思ってしまうのに。
「だけど、弟夫婦のところには子供がいてそこに私が住み込むようになったから金銭的に厳しくなっちゃったからかな?私の食事は基本的にカップめんとか冷凍食品ばっかりで、家族旅行も私を留守番にして私以外で出かけたりしてたの」
物語の中であればありふれた話なのかもしれない。でも、これは現実だ。
「中学生までは普通に学校にも行かせてくれてたんだけど、高校からはバイトもできるようになるし授業料も出てくるでしょ?自分でバイトすれば生活できるだろ?って言われてぼろいアパートの一部屋の最初の2か月分の支払いだけして追い出されてさ」
なのになんで、何で。
「必要なものは事情を知ったお隣のおばあちゃんとか大家さんが買ってくれたりしたんだ。でも、高校生のバイト代ってたかが知れてるじゃん?生活費とか学費を払うにはかなりバイトを入れないといけなかったの・・・。まぁ無理しすぎちゃったのかな?その結果がこれなんだけどねwww」
君は。
「・・・なんでそんなつらい目にあってるのに笑っているんだ」
「簡単なことだよ」
彼女は一瞬驚いたような顔をしながらまた、今度は微笑むように言った。
「幸せだから。今幸せだから、私は今笑ってるんだよ」
わからない。彼女は今幸せといったが、それは心からそう思っているのだろうか。彼女の顔にはどこか悲しい雰囲気が漂っている。
「でも、今幸せなのは君のおかげでもあるんだよ?」
いつものいたずらが成功したときのような笑顔で君は言う。
「初めてバイトのシフトが同じになったときから、君と過ごすのはすごく楽しいの」
ならどうしてそんなに悲しそうなんだ。
「でもね、怖いの。いままでこんなにつらいことばかりだったのに、こんなにいろんな人に親切にしてもらって、急に倒れてもお見舞いに来てくれるような人がいる。こんなに幸せでいいのかなって思っちゃうの。すごく、すごくすごく不安になって怖いの・・・」
ああ。大丈夫、大丈夫だよって言いたい。でも、そんな言葉は彼女にとって偽善的な言葉として受け取られるんじゃないかと思ったら不安になってしまう。
「ねぇ、飯田君。私はこんなに幸せでもいいのかな?」
今まで、バイトを始めてからは自分のお小遣いがもらえる程度にしか考えていなかったが、斎藤は自分の生活のために必死にやっていたのだ。それこそ、勉強時間を削ってまで。短い時間しか一緒に過ごしていないが、こんな俺にできることは何だろう・・・。
「・・・・飯田君?」
「斎藤、俺にお前のことを支えさせてくれないか?」
ん?
「えっと、それは告白?それともプロポーズ?」
あ、やっべ。