~プール~
寿「よし始めるか」
伊織「具体的には何を?」
寿「お前には基本中の基本・・・水中で目を開ける練習からだ」
ドキッ・・・
伊織「水中で目を・・・」
寿「ここは足がつく 安心してやってみろ。」
伊織「わかりました。」
すぅー
トプンッ
伊織は息を吸って水中に潜った。
ゴポ ゴポ ゴポ
伊織(大丈夫・・・ここは足がつく・・・さっさとやって終わらせよう 目を開けるなんて簡単な事じゃないか・・・軽く瞼を上げるだけだ・・・水の中で)
ゴボッ
ザバァッ!
伊織「ぶはぁっ!」
伊織は水中から顔を出す。
寿「ダメか・・・?」
伊織「す・・・すいません」
寿「ならコイツを使ってみるか」
寿は伊織にゴーグルを渡す。
寿「まずは水の中に慣れてそれからゴーグルを外せるようになればいい」
時田「よし 耕平も装備を使った練習に入るか」
耕平「はい わかりました」
グッ
伊織は寿に渡されたゴーグルを着ける。
寿「それなら恐怖感はだいぶ薄れるだろ 水の中の景色を眺めてみるんだ。」
伊織「・・・はい」
ドプンッ
伊織は再び水中へ潜る。
伊織(聞き慣れない音がする・・・呼吸が出来ないし動きづらい・・・でも目は圧迫されていない・・・水が入る気配もない・・・これなら目を開ける事も・・・!)
伊織は目を開けた時に見た光景は時田が水中で耕平の穿いてた水着を脱がそうとし、耕平は必死で阻止している光景だった・・・
ザバッ!
伊織は水中から顔を出す。
伊織「時田先輩、耕平に何をしてるんですか!?」
時田「装備が外れてもパニックにならない練習だ」
耕平「いや、外すなら普通ゴーグルでしょうが!」
寿「だが伊織、水中の景色は良いモンだろ?」
伊織「水中の景色を見る事を忘れちゃいましたよ!」
寿「よし それならこうしよう」
伊織「何か妙案が?」
寿「お前 風呂は平気だろ?」
伊織「はい むしろ好きなくらいですけど・・・」
~女性用更衣室~
千紗は水着に着替えて鏡を見る。
千紗「ダイビングの時ならともかくプールで水着ってなんか・・・」
千紗はプールへ向かった。
千紗「仕方ないよね・・・皆も同じ水着なんだ・・・し・・・?」
千紗はプールサイドに水着が落ちている事に気づき、プールの方を見る。それは寿が頭の上にタオルを乗せ、全裸でプールに入ってる光景だった。
寿「とまぁ入浴してるようにして水に慣れるんだ・・・さぁ、水着を脱いでやってみろ」
伊織「出来るわけないでしょ!先輩、千紗がいる事を忘れてません!?」
耕平「古手川・・・この人達・・・本当に脱ぐの好きだな・・・(汗)」
千紗「うん・・・(汗)」
寿「何を言ってるんだ?」
時田「俺たちは露出狂じゃないぞ」
伊織・耕平・千紗「「「立派な露出狂ですよ!!」」」
寿「じゃあ、別の方法を考えるか・・・」
時田「水の中を楽しむ為に頑張ろうぜ」
伊織「頑張りますけど まず寿先輩は水着を穿いてくださいよ。」
耕平「古手川、何かいい方法はあるか?」
千紗「やっぱり水の中に興味を持てばマシになると思うけど・・・・っ!伊織、今日の夕方空いてる?」
伊織「ああ・・・特に用事はないけど・・・」
千紗「私は夕方からお店の仕事があるから・・・お姉ちゃんにある所に連れてってもらうように頼んでおくね。」
伊織「ある所?」
そして夕方・・・
奈々華「じゃあ行こっか伊織君」
伊織「はい・・・どこへ行くんです?」
奈々華「行ってからのお楽しみ♪」
伊織「・・・?」
~水族館~
伊織「おおー!!」
奈々華が伊織を連れて来た場所は水族館だ。
奈々華「ふふっ夜の水族館って素敵でしょ?」
伊織「何か神秘的な感じですね」
伊織はパンフレットに書いてる営業時間を見る。
営業時間(10時~17時30分)
伊織「閉館時間過ぎてるのにどうして入れて貰えたんです?」
奈々華「千紗ちゃんがたまにお手伝いに来るよしみでね」
伊織「手伝い?」
奈々華「ああいうの」
伊織は奈々華が指を指した方向を見る。それはダイバーが魚に餌を与えてる映像だ。
伊織「へぇ・・・こういうのやってるんだ」
奈々華「病欠の人が出た時とかに臨時でね。それに・・・千紗ちゃんすごい人気者なんだからお客さんからお手紙を貰った事もあるのよ」
伊織「ファンレターって奴ですか・・・」(多分、その中にはラブレターもあるんだろうな)
奈々華「千紗ちゃんは良い子よ ちょっと素直じゃなくて不器用だけど海が大好きで凄く詳しいし・・・」
伊織「ふむふむ」
奈々華「可愛いし 優しいし 柔らかいし 良い匂いがするし」
伊織(本当に千紗をめちゃくちゃ愛してるんだな・・・(汗))
伊織「俺の知らないところばかりです。」
奈々華「こんな短時間で全部わかってたら私もびっくりだよ」
そして奈々華は伊織に水族館を案内する。
奈々華「あれがヒトデヤドリエビ あんなに小っちゃいのによく見るとちゃんと爪がついてるのよ。あっちに寝そべってるのはネムリブカ サメだけど凄く温厚よ。岩場の陰でのんびり寝てたりして可愛いの。あっちは映画とかで有名になったクマノミ イソギンチャクとセットでいるのが愛らしいのよね。」
伊織「さすがプロ詳しいですね。」
奈々華「あはは どうもありがとう」
伊織「俺も少し魚の種類でも勉強してみようかな」
奈々華「気に入ったの?」
伊織「いえ 俺も泳げるようになって急に詳しくなれば水の中が楽しいものになるかと」
奈々華「あ、そういう事・・・う~ん」
伊織「?」
奈々華「伊織君は難しく考えすぎだと思うよ」
伊織「そうですかね?」
奈々華「うん、そんなの私も千紗ちゃんも考えた事ないもの」
伊織「それは二人とも泳げて魚に詳しいからで・・・」
奈々華「違うよ伊織君 誰だって最初は泳げないし魚に詳しくないもの だからまずは単純に感じ取って欲しいな」
伊織「感じ取る?何を?」
奈々華「な~んにも難しい事なんて考えないで頭を空っぽにして・・・こういう水の中の世界を」
伊織と奈々華がたどり着いた場所は巨大な水槽トンネルだった。
伊織「うお・・・!」
奈々華「凄いでしょ 横だけじゃなくて頭の上にも水の世界が広がってるなんて幻想的だと思わない?」
伊織「これが水の中の世界・・・」
奈々華「ううん 違うわ伊織君、これでもまだ『水の中に近い世界』なのよ。世界にはここよりもっと凄い景色を全身で感じられる場所があるんだから」
伊織「ここよりもっと・・・千紗は俺にコレを見せたかったんですか?」
奈々華「うん・・・伊織にダイビングを好きになって貰いたいからじゃない?」
伊織「?なんでそんな事を?」
奈々華「それは知ってもらいたいから・・・伊織君が苦手な水の中にはこんなにも綺麗な世界があるんだって・・・千紗ちゃんだけじゃなくて時田君も寿君もそう・・・だからあんなに一生懸命ダイビングを勧めているの」
伊織(・・・そうか・・・誰だって自分が好きなものは他の人に否定されたくない・・・感動を共有したいと思う。面白かった映画の感想を語り合うように、楽しかった野球の試合を振り返るようにダイバーは海から上がって仲間たちと水の中の話をするのだろう。そういう仲間は一人でも多い方がいい。自分も楽しいし相手も楽しいし。)
奈々華「私も伊織君に水は怖いものだけどそれだけじゃないってわかって欲しいな」
伊織「そうですね・・・少し、興味沸いてきました。」
奈々華「そっか・・・それは私も嬉しいな。」
そして伊織と奈々華は『Grand Blue』へ帰る。
~Grand Blue~
伊織「千紗!」
千紗「おかえり」
伊織「ああ、はい これお土産、感謝の気持ちだ。」
伊織が取り出したのはタコのキーホルダーだ。それを千紗に渡す。
千紗「・・・感謝?」
伊織「おう、凄かったな・・・あの水槽トンネル!」
千紗「あそこは私のお気に入りの場所だからね・・・どうだった水の中?」
伊織「そうだな・・・苦手意識は変わらないけど・・・次はもっと近くで見てみたいな」
千紗「そっか・・・」
伊織「そういや耕平と先輩達は?」
千紗「今村君・・・先輩達に離れの部屋へ連れてかれた・・・(汗)」
伊織「・・・耕平の奴逃げられるかな・・・?(汗)」
千紗「無理じゃない?(汗)」
耕平は寿と時田に無理矢理 酒を飲まされそうになったが偶然 部屋の前に通りがかった奈々華に助けられ、酒を飲まずにすんだ。
時間かかった~!