クズな男の世界征服日記   作: ASO(活動休止中)

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活躍回とか言っておきながらそこまで派手にバトルしないし後半部マドカ関連になっちった。許せ


オータムとマドカのお話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京の地下には、無数の地下鉄によるトンネル網が形成されている。縦横無尽、立体的にトンネルが地中を貫き、東京は地下すらも電車の音で喧騒的であった。

 

そんな東京の地下であるが、地下鉄の通る地下の更に下、一般的には、岩盤が張っており、地下鉄を通せない場所として知られている場所には、実際はそうではなかった。

 

そこには、俗世間とはかけ離れた、異質な地下街が形成されていた。

 

と言っても、ファンタジーの世界のように、地下街を行き交う者達が亜人であるとか、魔法による街の形成が行われているとか、そういうものではない。

例えば、宇宙戦艦ヤ○ト2199の地下都市に近い物、と言えば分かるのではないだろうか。時間○層はないが。

 

『裏東京』と呼ばれるその街は、世界の裏で暗躍する者達が集まる、歓楽街であった。

 

範囲は東京二十三区の殆ど全体の地下に形成されており、とても広い。

 

各国の諜報機関の人間、秘密組織の研究員、そう言った者達の、娯楽の街として形成された裏東京。

その全景は地上で聳え立つビル群の光景とさほど変わりはない。銀色の高層建築物が、街の中心部に密集し、そこから東西南北へと伸びる大通りには、大衆酒場や食事処が併設された雑居ビルが並び立つ。

ただ、中心付近、通称『裏霞ヶ関』と呼ばれる地域では広大な地下空間の天井からもビルが吊り下がり、SFちっくな世界を作り出していた。

 

ビルの一角では、麻雀をする髭を生やした中年の男達が見える。また、金髪を後ろで束ねたポニーテールの女性は、華人系の女性と向かい合って、お洒落なカフェでコーヒーを飲みながらのんびりと過ごしている。

 

そんなありふれた風景なのだが、本当は彼らは、それぞれ敵対組織に属している人間なのだ。

 

この街には幾つかのルールがある。

 

一つ目。

この街はどんな人間であろうと、問題を起こさなければ受け入れられる。例え店に来店した客が凶悪犯罪者でもマフィアのボスであろうと、この街の中で殺人や窃盗、強姦、街の風紀を乱すようなこと等を起こさなければ、歓迎する。なので、この街を知っている指名手配犯は、ここを潜伏場所にしている者も多い。ただ、この街のホテル代や食費代は、安い場所でも地上の三倍はする。地味にぼったくりである。

 

二つ目。

街では俗世間での身分などは全て無視出来る。つまりは、この街でもし敵組織の人間に出会ったとしても、ここでは一旦水に流して、仲良くしましょうということだ。だから、街にギスギスした雰囲気は全く感じられない。

ただ、ここでの組織間の情報のやり取りも禁止されていない。ここに来ることさえ出来れば、安全に情報を交換する事が出来る。そのため、それ目当てで集まった諜報員によって、この街は発展していった。今では様々な裏社会の住人達が集まり、この『裏東京』は、世界に知れ渡る一大都市にまで成り果てた。

 

三つ目。

ゴミのポイ捨ては禁忌である。

 

昼夜問わず建物の灯りによって明るく、人で活気溢れるこの街であるが、裏路地では息を切らして走る、少し腹の出た男がいた。幾つもの角を曲がり、追っ手を撒こうとしているが、それは追っ手の思う壺であった。

男は突き当りを右に曲がったが、そこは行き止まり。

脂汗を流しながら、後ろを振り返ると、そこには、キリッとしたスーツを着て、尚かつグラスマスな体型をしたロングヘアの女性が、腰に手を当てて立っていた。

 

「おうおう。正に袋のネズミ、って言葉が相応しいな。どうだ、今の気分は?」

 

冷やかすような口調で、男に喋りかける女性。それは、亡国機業の実働部隊『モノクローム・アバター』の構成員、そして亡国機業の総帥の恋人の一人でもある、オータムだった。

 

「ま、待て!この街には、ルールがある筈だ。身分や敵対関係は、ここでは関係ないんじゃないのか?」

 

激しく動揺しながら、それでも言葉を吐き出す。

一刻も速くこの窮地を脱したい男だったが、対するオータムは、「あ、そんなルールあったな」とでも言いたそうな口調で、とてもカラッと言い放った。

 

「そうそう。この街には、裏……というか、暗黙のルールがあるんだよ」

 

ルールには例外があった。

 

それは、()()()()()()()()亡国機業に逆らった者は、容赦なく処刑されるということ。

 

この街の中心には、建物の外観がユニオンのMSWAD基地に似た、亡国機業の本部がある。この街は、亡国機業によって隅から隅へと監視されている。それは単に治安維持のためであるのが主なのだが、やはり外敵を排除するのも重要だろう。

ここが亡国機業の本部のお膝元であることは、ここに来る者達にとっては周知の事実であり、無闇に敵対しようなど、まずあり得ないことだ。

だが、亡国機業は他の秘密組織とは違い、理念が少し異質なのもあり、()()()()逆鱗に触れてしまう組織も後を絶たない。

 

「お前ら『キシリア機関』は、『織斑計画』のデータをナチス残党に送っただろ。あれ、アウトだから」

 

オータムが放った、屈託のない笑顔。

 

男の背中に、とても寒いものが走った。

 

自然帰化を理念として掲げる亡国機業にとって、人工的に人類を作る行為は、例外なく粛清対象に入る。『織斑計画』の情報を手に入れ、それをアドヴァンスド作成に使うと知っておきながら、それを流出させた『キシリア機関』に、慈悲はない。

 

「フ、フフフ…………」

 

突然、男が笑い出した。

 

「死の間際になって正気を失ったか?」

 

「いいや、違うよ」

 

「へぇ。じゃあ、なんだ?今から私を殺そうとでも?」

 

「私が男だと思ったかい?」

 

「!」

 

ここに来て、オータムの顔が少し曇った。ジリ…と後ろに下げた右足を下げて、気を引き締める。

 

すると、男………否、男装をしていた女性は、来ていた服を破り捨て、カツラも投げ捨てる。亜麻色の髪を後ろで三つ編みお団子に丸めた、小柄な女性だった。

 

「へぇ、変装して入れ替わってたんだ。三下にしては、やるじゃん」

 

「これでも私、組織のナンバー2なんだけど、なっ!」

 

そう言って、女性は飛び出してきた。変装として出ていた中肉は、ハリボテ。中にはハンドガンとタクティカルナイフが詰まっていた。

 

(キシリア機関は戒律の厳しい組織と聞いていたが……かなりフランクそうな組織だな)

 

女性は取り出したナイフを両手で抱え込むように持ち、間近に迫ったオータムの肩に上から突き刺そうとした。

 

(そんなナイフ術で私を倒せると思ってやがる)

 

オータムは、相手の視線に注目しながら、スムーズな動きでナイフを回避する。

 

(この野郎!)

 

涼しい顔でナイフの軌道を読んでいき、右へ左へ、躱していくオータムに対して、相手の女性は苛立った。

段々、ナイフの振りもヤケクソになっていく。

 

そこを見逃すオータムではなかった。

 

ナイフを振った手首を、突き出した右手で強く掴んだ。

手首を締め上げると、ポロリとナイフを落とした。

 

「キシリア機関のナンバー2とは、この程度か?」

 

「ほざけ!」

 

次の手と言わんばかりに、腰からハンドガンを取り出す。サプレッサーのついたベレッタである。

それを額に当てると、ニヤリと笑みを浮かべた。

 

「チェックメイトだな」

 

「そう思ったかクソアマ!」

 

「なっ!?」

 

一喜一憂したのも束の間、横から大質量の物質による衝撃をモロに受けてしまう。

跳ね飛ばされた女性は、そのまま壁に背中を強打する。息も絶え絶えに咳き込むと、地面には小さな血飛沫がついた。

 

「IS………だなんて。ゴホッ」

 

「おいおい。お前らの汚ぇ血で街を汚すなよ。血を拭き取るの、意外と手間がかかるんだぜ?」

 

オータムの背中から、一本の大きな機械の腕が伸びていた。メタリックオレンジの下地に、まるで血飛沫のようなえんじ色の模様が目を引いた。

そして、腕の先には、無機質なグレーの、巨大なクローがついていた。蟹のはさみに似たそれは、女性を挑発するかのように、開いたり閉じたりを繰り返している。

 

これだけの街を作り上げる程の連中だ。ISの一個や二個は、ゆうに手に入る。女性が予期していた最悪の事態が的中してしまった。

もっとも、本当は束の後援もあるのでISの生産も可能であるが、女性は知る由もない。

 

更に、オータムのISの一部分を確認した女性は、顔を青褪めた。

世の中に出回るISのどれにも似通っていなかったからだ。

 

現在流通しているISというのは、倉持技研の『(くろがね)』、龍源社の『双竜(アルトロン)』等から分かる通り、『鎧』という概念から離れきれていない物が多い。これらのISは、第一世代と呼ばれる。

だが、オータムのISは、その概念を常軌している。

 

言うなれば、『MS(モビルスーツ)』と『MA(モビルアーマー)』の違いと言ったところか。

 

相手の技術は、世間の更に先を進んでいる。女性の腕は小刻みに震えだした。

 

「だがっ………、私にも、ISは、ある!」

 

眩い光。

 

女性は、中世の甲冑のようなアーマーを身に纏い、オータムの前に対峙した。

 

全体的に丸っこくて、しかし強者の風格を醸し出す黒いボディが目を引くIS。

 

MS―11、『アクト・ザク』。

 

キシリア機関との関係が深く、ISが発表されてすぐに開発企業に名乗りを上げた、『ジオニック社』の、第一世代型ISである。ジオニック社はこの機体を製作する以前に、『ザクⅠ』と『ザクⅡ』という、世界初の民間企業が開発したISを製作しているが、この『アクト・ザク』は、それらで見受けられた欠点を克服するために、少数生産されたものだ。

 

キシリア機関機用に黒く塗られたその機体は、そのスラスターを更かして、一気に距離を詰めた。

 

腰のヒートホークを取り出して、それを高く振りかざした。ヒートホークの刃が赤熱する。

 

ガッ。

 

甲高い金属のぶつかる音が、辺り一面に響く。

 

オータムはISを全展開して、そのクローでヒートホークを受け止めていた。

 

「なっ!?」

 

本日二度目の驚愕。

 

オータムのISは、全くと言っていい程人型を模していなかった。

例えるならば、『足の付いた棺桶』。四本の足は地面をついておらず、底面にある大型スラスターで浮遊している。

踏ん張る物も無いと言うのに、ヒートホークの振り下ろし攻撃を、たった一本の前足で防いでいるのだ。IS自体の馬力が半端ではない。

 

「オラオラ!どうした、怖気づいたか!私の第三世代型IS、『ザムザザー』によお!!」

 

オータムのIS、『ザムザザー』。

それはとある世界において、連合軍が使用した、モビルアーマーであるが、その強固性に目を付けた総帥が、束の協力を経て作り上げた、今現在において最強のISの一つ(束のお墨付き)である。

第三世代の特徴である、『イメージ・インタフェース』を実装し、その全てを、機体の馬力増強に注ぎ込んでいるため、今後登場するであろう第三世代ISにも劣らぬ出力を誇る。

防御面でもかなりの硬さを誇り、シールドエナジーを削る前に、先ずは操縦者をドーム状に覆う強化装甲を破壊しなければならないのと、更に秘密兵器がある。

 

とにかく、単純な力勝負では、アクト・ザクが勝てる筈が無かった。

 

ヒートホークが、赤熱したクロー、もとい超振動クラッシャー『ヴァシリエフ』の中で粉砕し、爆発した。

その名の通り、超振動波によって、ヒートホークを破断したのだ。

 

苦渋を浮かべながら、後退したアクト・ザクは、左腕に装備した、四連装ブルパップ・マシンガンを撃つ。パララ、パララというタイプライターの音が響く。

 

「そんなちゃちい玩具で、私から逃げられると思ったか?」

 

銃弾は全て、ザムザザーの前面に張り出された、光のシールドによって防がれてしまった。陽電子リフレクターである。

 

女性の顔は、もう恐怖でいっぱいだった。

 

ここから先は、ただの虐殺であった。

 

四本の腕でザクを何度も殴り飛ばし、執拗に弄んだ。バルカンで相手の武装を無力化し、相手の脚部をもぎ取った。

 

それぞれの足の付け根に搭載された、複列位相エネルギー砲『ガムザートフ』が火を吹き、相手のISの装甲を、ズタズタに破壊すると共に、シールドエナジーを全て削りきってしまう。

 

そのまま倒れる女性に、オータムは歩み寄る。そして、その醜態な様を上から見下ろした。

 

「お前、本当に骨がないな。世代差があるとは言え、総帥の方がよっぽど強かったぜ」

 

また血を出すと面倒なため、首を締め上げて殺害する。

 

ここまで、たった数分の出来事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こっちは完了。スコール、そっちの男は?」

 

「無事終了よ。オータム、お疲れ様」

 

暫く経って、スコールは、プライベート・チャネルで通信を行っていた。思考で会話するため、会話が漏れない優れものだ。相手は、元恋人のスコール。スコールは、マドカと共に入れ替わった男の方を追っていたが、すぐに捕まえられたそうだ。

 

「それにしても、マドカが随分喜んでいたわね」

 

「そりゃそうだろうな。総帥考案のチート装備付けて、敵無しなんだからな」

 

「そうね。マドカには織斑千冬っていう上位互換みたいな存在に、本気で勝ちたいって思ってるからね」

 

あの日、マドカが総帥によって救われてから、マドカには一つの目標が出来た。

 

忌まわしき、『織斑計画』の産物である、織斑一夏を殺害するために、織斑千冬を超えることである。

 

彼女の主たる総帥は、酷く男を嫌っている。男に掴む未来はないと考えているからだ。おまけに、女性にしか乗れないISに乗れるという事実など、言語道断。

 

彼女は総帥の敵である一夏を、同族絡みということもありマドカ自身で手を下したいと思っていた。

 

しかし、織斑一夏に危害を加えようものなら、千冬が黙ってはいない。一夏を殺すのは容易いだろうが、その後千冬が地の果てまで追い続けるような事態になったら、亡国機業全体としても面倒なことになる。

だから、マドカは千冬を超えなければならない。

 

その道が険しいことは分かっている。勿論、正面からぶつかりにいかずとも、殺害するプランはある。最悪、束をぶつける手もある。

 

だが、それはマドカのプライドが許さなかった。

彼女は、あの忌まわしき姉弟のおかげで生まれ、総帥に救われるまで地獄のような日々を送ってきたというのに、当の姉弟は一般人の中でのうのうと生きている。

 

彼女が殺意を持つには十分だった。

 

「だが、…………あんまり言いたきゃないが、マドカと千冬は、失敗作と成功作だろ?多少背伸びしたって」

 

「それはみんな分かってるわ。だから、あのIS『黒騎士』があるの」

 

総帥は、マドカの頼みを、一度は拒否した。千冬が一度殺意を向ければ、マドカの命はもうないだろうからだ。マドカは大事な家族である。これしきのことで、失っていい命ではない。

 

しかし、マドカの本気の眼差しを見て、総帥は折れた。

 

「………アイツ、一昨日やそこらに、『お前達の力、借りるぞ』とか言ってたよな」

 

総帥は、マドカに幾らかの力を貸した。マドカ一人ではどうにもならない、ISを貸し与えたのだ。

 

その時マドカは驚いたが、直ぐにその意味が分かった。

 

これは決して、彼女は千冬に勝てないから、情けで貸したものではない。

 

マドカが孤独ではない『証』。

 

戦闘の中で彼女が目の前のことしか見えなくなったとしても、彼女が決して一人ではない、仲間や家族がいるということを思い出させてくれる『お守り』であった。

 

「…………それこそ、彼女が織斑千冬を超えるために一番必要なものでしょうね」

 

「目標は、一人で叶えるものじゃないからな」

 

オータムはしみじみと頷く。

 

「さて、こんな話はこの辺りで切り上げましょ。私達もドイツへ行くわよ。総帥が心配だわ」

 

「ああ」

 

オータムは、プライベート・チャネルを切って、素早い足取りでその場を去っていく。去った後には、ただの屍が一体、そこに放られていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




オータムのISがザムザザーになったのでアラクネはクビです(無情)。
次回からはアンケートで勝利した篠ノ之箒回です。ついでに作者の最推しも出ます。

ラウラとクロエ編終了後はどっち先にやって欲しい?

  • アイリス編
  • 篠ノ之箒編
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