僕は医療行為をしたいだけなのだが……   作:橆諳髃

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7話〜9話までに評価を頂いた読者の方々

☆10 屍 累 様 
☆8 零桜紅雅 様 
☆7 アトリエスタ 様
☆3 チルトリノ 様
☆2 *ツバイ* 様
☆1 クドウ 様 妖識 様

沢山の方に付けて頂きました本当にありがとうございます!

最近は何かと日常生活でしたり……他の方の小説などをみたりしては参考に出来る部分を探していたりと、投稿が遅くなってしまい申し訳ありません。

また少しペースが落ちるかもしれませんが、これからもよろしくお願いいたします!



9話 R-15 一時の別れ 想いを告げる少女と医者

 

 とりあえずフォドラでの拠点は出来た。それと同時に今日やる事は、エル……もといエーデルガルトを約1ヶ月ぶりにフォドラに還し、そしてファーガス神聖王国に亡命させる事だ。

 

 因みに何故僕が彼女の事をエルと呼ぶ様になったかについては……一緒に寝た翌日にそう呼んでほしいと言われたからだ。断る理由もないから、僕は彼女の事をそう呼ぶ様になった。

 

 そして空白の1ヶ月としては、監禁状態からどうにか逃げ出して傷だらけになっている所を僕が保護した。そこから事情は省くが、後ろ盾がいた方が良いと感じた僕は亡命先を選び、勝手ながら選ばせて貰った貴族には彼女を亡命先として預かって貰いたい。そして彼女が成年近くになり、彼女を引き取りたいという関係者の人がもしいたのなら、その時はまたそちらの判断に任せる……

 

 筋書きとしてはこんな感じだ。ほぼほぼ他力本願ではあるが、これが彼女にとっても良いものだと……僕はそう思う。

 

 という訳でさっき出たばかりの暗闇空間に戻ってきた。そしてエルの元へと行く。

 

 エルの部屋に着くと、既に彼女は全ての準備を終えていた。

 

「忘れ物はないか?」

 

「えぇ。何回も確認したから大丈夫だと思うわ。でも……」

 

「……ここから離れたくない、か?」

 

「えぇ。ここは……今まで過ごしてきた中で1番過ごしやすかったから。それに……」

 

「ん? どうした?」

 

「……いえ、なんでもないの」

 

「そうか。では、行こうか」

 

「その……手を握ってくれないかしら?」

 

「手? 僕の手か?」

 

「あ、当たり前でしょう⁉︎」

 

「そうか……分かった。君を貴族のもとに送り届けるまで、握ったままエスコートしよう」

 

「あ……ありがとう///」

 

 エーデルガルトは顔を少し赤くして僕の手を握る。僕の手を握るエーデルガルトの手は……子供特有の柔らかさを持つものの、穢れを感じさせない綺麗な手だった。

 

 そしてフォドラの地に再び降り立って、貴族の元へとエスコートする。その時にもう1人付けた。そのもう1人が6Oで、理由としてはアンドロイド隊の中でエルに1番懐かれているからだ。道中で何かあった時は僕が戦闘しつつ、6Oにはエルを守ってもらう。まぁ近付く相手は、悪意が無いものを省いて問答無用で葬り去る。

 

 と思っていたものの、道中は何事も無くファーガスの王都に辿り着いた。

 

「ここが王都フェルディアか」

 

「ここが……」

 

 まぁ王都と呼ばれるだけ普通にデカい都市ではある。だがファーガスは北方の地にある為、生活などは裕福でないところが殆どだ。それに……

 

(確か北に国境を越えるとスレンなどの北方民族とも戦争が度々起こっているんだったか……)

 

 それ故にファーガスは、フォドラの中でも紋章の力を1番重要視していると見て良い。その価値観もあってか、特に貴族の子が紋章があるか無いかで家族の愛情を与えられない事もしばしばと……フォドラの風土を調べてくれたアンドロイド隊から報告があったな。

 

(紋章で苦しんでいるのはエルやリシテア、マリアンヌだけではないという事だな)

 

 全く……僕は宗教関連などは、ただでさえ勝手に黒歴史を捏造されて嫌いだというのに……

 

(だが苦しんでいるのなら放ってはおけないな)

 

 僕は医者なのだから。例えそれが僕に与えられた役目(ロール)であったとして、僕がこの世界に来て、僕と同じ人というカテゴリーで初めて出会ったソフィスよりも前……この世界を作ったとされる神がいたとして、そいつの意のままであったとしても僕は医者として生を全うするつもりだ。

 

「ソーマ、何か考え事?」

 

「ん? あぁ、今更だが僕のやる事がこれからも多そうだと思ってな。僕はただ医者として病を治し、その正しい手順と方法を世に広めたいだけなんだがな」

 

「そういえば、ソーマっていつも何かに首を突っ込んでいるイメージがあるわね。病気をただ治療したいって言ってくるくせに、困っている人がいたら放っておけない。ある意味ソーマの言ってる事から離れているわ」

 

「まぁソーマさんってそういう所があるからこそ、他の皆もついて来てくれると思いますね。私達も壊れて動けないところをソーマさんに助けてもらいましたから……私達アンドロイドにまで優しくしてくれて、人として扱ってくれて私凄く嬉しいんです!」

 

「そう……か。僕はただ……自分なりの事をしようとしたまでだ」

 

「でも、だからこそ貴方は好かれるのよね……だから私も貴方のことが大好きなのだけれど

 

「ん? どうかしたか?」

 

「何でもないわ。それより私達が向かっているところはどこかしら?」

 

「確か大まかにしか言っていなかったな。僕たちが向かっているところは、あそこだ」

 

「……えっ? あそこって……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして僕たちが来たところは、確かファーガスを取り仕切っているブレーダット家にお邪魔している。ちゃんと事前にアポイントも取っておいた。それも数週間前に遡るだろうか? とにかく帝国側で虐げられていた貴族の娘を保護していること、亡命先を探しており、こちらが調べた限りであなた方の家ならば丁重にして頂けるなどの文言と、それを受けた際の支援金もこちらで幾らか用意する、といったもう受けるだけで破格の条件で候補を選りすぐる。

 

 その中でもエルを大切に扱ってくれそうだと感じたのがブレーダット家である。そして既に細かい話も終えており、もし仮にも引き取り手が現れたのならその際はという話も行った。まぁ話が上手くいきすぎていると思われるだろうが……この事がエルの将来にいいと思ったからこその判断だ。異論は認める気がない。

 

 

 

 

 

 

 それから雑談を挟んでの話し合いも既に佳境を迎えた。別室にて待機させていたエルと6Oを呼んでもらい、エルをブレーダット家に送り出すところだ。

 

「この子が、僕が保護した子だ。名前はエーデルガルト・フォン・フレスベルグ。話を聞く限りでは帝国の皇女だが、1ヶ月前に傷だらけの状態を僕が保護した。十分なケアをしたし、それにこの子は……とても強い子だ。だが子供としてはの意味で言っている。だから……もし誰かがエーデルガルトを迎えにくるその時まで、どうか大切に接して欲しい」

 

「分かりました。アスレイ殿が大切に繋げたこの子の命……大切に致します」

 

 因みにこっちではアスレイで統一している。だから僕の事をソーマと知る人物はアンドロイド隊とエルだけだ。

 

「あぁ。それでは宜しく頼む」

 

 いよいよエルを引き渡す。しかしながらエルは僕の手を離そうとしない。

 

「エル……どうした」

 

「……離れたくない」

 

「エルちゃん……」

 

「もう少しだけ……もう少しだけで良いから……貴方のそばに居させて」

 

「アスレイ殿、私達は少し席を離れましょうか?」

 

「ブレーダット殿?」

 

「見るからにあなたはその子に対して、とてつもない愛情を注いでいた様に見える。私達にその子を引き渡すのもその子の為だという事を十分理解していますが、私達も急いでいる訳ではありません。ですのでもうしばらくその子との時間をお過ごしになられては如何ですか?」

 

「……こちらから無理を言ってしまっている形で申し訳ない。お言葉に甘えても良いだろうか?」

 

「構いません。では、また呼んで頂きたい」

 

 そう言ってブレーダット殿と護衛している人達が部屋から出て行く。

 

「ごめんなさい……また貴方にわがままを言ってしまって……」

 

「いや、良いんだ。気にする事はない。それに」

 

「子供というのは大人に対して少しわがままなくらいが良い。今日エルをここに引き渡す事に変わりはないが、今だけはまだわがままを言っても良いと思っている」

 

「……な、なら……抱き締めてもらっても、良いかしら?」

 

「あぁ。エルが良いと言うまで」

 

 そして僕はエルを抱き締めた。実の娘という訳では無いが、だがブレーダット殿が言った様に、僕もいつのまにかエルに対して愛情を注いでいたのかもしれない。今更ながらも……エルが離れて行くのが少し寂しく思える。

 

 それから何分間……多分1時間にも満たないが抱き締めあっていたが、そろそろ時間だ。部屋にブレーダット殿を呼ぶ。来た所で……いよいよ本当の意味でエルを引き渡す時が来た。

 

 僕はエルの背中を押して送り出す。エルは僕とブレーダット殿の中間辺りまで歩を進める。エルとどんどん離れて行く……距離が開く度に寂しい、そう感じた時だ。

 

「ソーマ……最後のお願い……」

 

 いつのまにかまた僕の所にエルが戻って来て、ブレーダット殿には聞こえないくらいの声で言ってきた。

 

「屈んで……口元のマスクをとってくれないかしら?」

 

 この時の僕の格好は、白いフードを真深く被り、口元も外に出た時は必ずつけている、装飾のマスクをしていた。理由は言わずもがなだが……

 

 僕はエルに言われた通り、屈んでマスクをブレーダット殿達に見えない様に外した。

 

「あ、後は……目を瞑って」

 

「……分かったよ」

 

 僕は言われた通り目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ……」

 

「っ⁉︎」

 

 

 

 頬の両側を何か温かい物に包まれ、それと同時に口元に何か柔らかい感触と……そして甘い香りがした。

 

 目を開けると、至近距離にエルの顔があり、頬が赤くなっていた。

 

「今生の別れではないけれど……どうしても伝えたかった。私は……貴方のことが好き。大好き! 私が今以上に大人になったら……貴方の想いも聞かせてもらうから。だから……」

 

「また、会いましょう!」

 

「っ……あぁ、また会おう」

 

 僕は……やはりこんな時になんと声をかければ良いのか分からない。気の利いた言葉が出てこなかった。

 

 だが僕のそんな返事にも……目の前の彼女は子供とは思えないほどの美しい笑みを浮かべながら、僕から離れていった。

 

(僕はただ……医療行為をしたかっただけなんだが……)

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんな事も……悪くはない」

 

 僕は気付きはしなかったが、後で6Oに聞くと、僕の顔は穏やかな笑みを浮かべていたらしい。

 

 

 




おまけ エルと別れた後のソーマと6Oの会話

6O「ソーマさんって……もしかしてロリコン何ですか?」

ソーマ「はっ? 一体何を言っている?」

6O「だ、だって! エルちゃんにキスされてニヤけてたじゃないですか⁉︎ しかも告白されてましたし……」

ソーマ「……確かに告白は受けた。だか、だからといって僕はロリコンではない。健全な一男子だ」

6O「だ、だったら! わ、私がもしソーマさんに告白したらOKしてくれますか⁉︎」

ソーマ「……はっ?」

6O「だ、だからっ! うぅ〜! どうしてソーマさんはこの気持ちをわかってくれないんですかーっ⁉︎」

ソーマ(そんな事言われてもな……)

 帰り道に困惑するソーマである……
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