僕は医療行為をしたいだけなのだが……   作:橆諳髃

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9話〜10話の間で評価を付けてくださった読者の方々

☆9 川崎ノラネコ 様

評価してくださってありがとうございます!

少し期間が空きましたが、いよいよ本章に近づいて参りました!

本章が始まるまで物語に関連する全てを事細かには書けないので、今回含めて2話に渡って書き、それが終わったらいよいよ本章に突入したいと思います!

それではご覧下さい!


10話 本拠を移して約10年、いつの間にか知らぬ間に黒歴史を作られる……が本人はまだ知らぬ

帝国歴1169年

 

 

 

 

 僕が本拠地を移してからの時間はとてつも早く、10年の歳月は経った。最初は全く知られていない土地の為に、病気や体調不良で来る人ときたら近くの村の人々が殆どだった。今では人口も増加し、少しは活気ある村になったとは思うが、僕がこちらに本拠地を移した10年前は人口にして60人いるくらいの小さな村であり、主にジャガイモなどの野菜を作っていたな。

 

しかしながら、村から来る患者などに話を聞くと、数年前から土壌が悪くなってしまったのか小さな物しか育たない。不揃いでもあるし不作続きだと嘆いていたな……

 

(十中八九あの魔物がここいらの土地の養分を吸っていたからだろうな)

 

 ん? そういえばあの花の魔物の核はどうしたか? あぁ、あれについては久々に胸が躍ったな。まぁシトリーから出てきた白い龍程ではないが……どうやらこの過酷な環境をどうにかして生き抜こうとして魔物が異常発達した痕跡が見て取れた。言うなれば紋章の暴走……みたいなものだな。

 

 何故そう分かったかについては、元であるDNAの配列などが今まで見てきた魔物と同じパターンだったからだ。ただそれだけ……他の理由は面倒だからこの場では語らない。

 

 ともかくとして、これでまた一歩紋章についての研究が進んだ。一昔前にも紋章が暴走して人から魔物になってしまった英雄がいたが、それについては僕が無理やり力でねじ伏せてなんとか人に戻したが、あの時はただ魔物になった英雄が半端ない程の耐久力を持っていたからこそ出来た芸当であり、今の時代にそこまでの力を宿した奴はいないだろう。

 

 だからこそ、もし現代でもそうなってしまった、或いはリシテアの様に無理やり紋章を埋め込まれて被害に遭っている人たちがいるのなら、出来るだけ苦しまない方法で救いたいと思っている。

 

 しかしながら僕が花の魔物を倒してからというもの、徐々に土壌が元に戻ってきたのか、村人達がそう言っていた1年後には不作ではなく、形も元の大きさに戻ったと言っていた。僕も拠点を移してからというもの、研究だけではなく積極的に外へと出て村人達と交流をし、信頼関係を築いて来た。いつも同じ畑を耕して農耕をしている様だったから、いくら土壌が元に戻ってしまったとしても、それではいつか枯れてしまう。

 

 だから僕は村人達にこの様な提案をした。それが放牧をした二毛作、或いは三毛作である。例を挙げるのならば、同じ面積の畑を4つ用意する。そのうちの2つはジャガイモ、その後にまた違った作物を植えて収穫して行く。その他は何も植えずに雑草が生えるのを待つ。ある程度雑草が生えるのを待ったら、後は家畜を導入して簡易的な策を作り放逐をする。

 

 まぁこの方法にしてもとあるアニメを見ていたから覚えていた、というのが正しいのだが、まずはこれで村をいくらか裕福にしていこう。そしてこの方法が良いものならば他の村でも実施して貰う。そうしたならばこの村だけでなく、他のところでも貧しい思いはしないで済むだろう。

 

 そして提案した1年後、この村で貧しい思いをしたもの、餓死したものは出なかった。無事に冬を超えることが出来たのだ。これにより畑を拡張、この村をまずは豊かにしていく。その後はファーガス全土にこの方法を広めていこう。といっても向き不向きあるだろうが……

 

(……ん? 何故僕はこんな事をしている?)

 

 農耕など興味がなかった筈だが……真っ暗闇の空間では確かにアンドロイドで興味のあるものがやっていた。しかしながら僕は作業を手伝ったことなどないし、寧ろ作業している姿を見たことが無い。なのに何故僕はこんな事をしているのか……

 

(まぁ……後でどうとでもなるか)

 

 この考えをほぼ1年間後回しにしながらソーマは村人達との交流をしていったという。

 

 因みにソーマの生み出した三毛作などは、すぐ様近くの村々へと伝播していき、ソーマが本拠地を移した周辺の村々は数年前とは比べ物にならない程活気付き、人口も増えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、ここからは10年の間に起きた事を話しておこうと思う。本拠地を移して1年目からはさっき言った様に、近くの村人達との交流をはかっていた。まぁその合間に起きた事と言ったら、近くの大修道院で火災が発生した。本来結構な距離があるのだが……アスクレピオスの能力、つまりサーヴァントの肉体としての能力もあってか確認ができた。

 

 なので僕はすぐ様現地へと向かった。そして救出活動と火災の消火活動に尽力したと記しておこう。被害者は出ていたが、死人が出ていなかった事が救いだ。重傷を負ったものがチラホラといたが、正直言ってリシテアが抱えている様な大事では無いため処置は簡単にできた。

 

 ただそんな事をしている間に久方振りに会う人物もいたな。まず最初に会ったのはジェラルドとシトリーだ。ジェラルドの名前についてはその時に初めて聞いたが……どうやらあれから元気に過ごしていた様で安心だ。本来ならば問診の必要もあるのだが……その時は他に救うべきもの達がいたからな。申し訳ないが後回しにさせてもらった。

 

(まぁ、後でちゃんと問診はしたがな)

 

 それが終わって本拠地に帰ろうとした。しかしながらその途中で意気消沈した女性がいた。どこか怪我をしたのだろうかと思って近づいたのだが、まさかの知人だった。

 

 正直忌まわしい僕の黒歴史の大本を作った張本人の1人であるセイロスだ。ここまで近づかなければ容易に気付きはしなかった。そういえばシトリーを助けた時も会っていたと今更ながらに思うが、あの時はセイロスが抱いていた子供を助けるのが最優先だったから気にも留めなかった。

 

 で、なんで意気消沈したかを聞くと、どうやら火災があった施設はセイロスにとってとても大事な施設だった様だ。話を聞くと……お母様の魂を蘇らせたいとかなんとか……そのために人の子を実験に使っていたと。そして失敗したのならば捨てるか亡き者にしようと考えていた様だが……どうやら僕と関わっていた事が理由で思い留まり、例え実験に失敗したとしてもそのまま育てていた様だ。

 

 正直途中までは胸糞悪い話であったが……医術も正直なところ似た様なところがあるし、僕も最近新薬を患者に試したばかりだ。だから滑稽な事に……僕が人の命をそんな風に使うな! 等とどうこう言える立場ではない。

 

 しかしながら、実験に失敗してもそのままその子達に慈愛が生まれたとセイロスが語った時は……少なくとも僕が関わっていて良かったのだろうと思う。何故なら本来消える定めの命が、僕が何らかで介入した事で救われているのだから。ま、偽善と言われればそれまでだが……

 

 そんな理由もあり、放火の被害に遭った施設はその子達を育て、そしてこの大修道院でシスターとして勤務させていたからこそ、その子達を火事で失ってしまったと思っていた様だ。

 

 だがそのことについては、僕が先ほど救って来たし、重傷者も治して来たと言うと、セイロスは涙を流しながら僕に礼を言ってきた。そして今待ち合わせていたであろうお金を渡そうとしてきたが、僕は断ってその場を後にした。といっても本拠地に帰っただけだが……

 

 それと今セイロスはレアと名乗っているらしい。まぁ、また会う機会があるのならそう呼ぶ事にしよう。

 

 

 

 

 

 それから数節後の事だが……近くの村の人達に農作業の指導をしていたらいきなり呼ばれた感覚がした。これは僕がジェラルドに渡した物の効果だな。村人達に急に仕事が出来たことを伝えると、急いで僕は駆け出す。村人達に見えないところまで来たら、ジェラルドに渡した装置の居場所を把握、すぐさまそこに扉を作って合流した。

 

 因みにこの頃には少なくとも村人達と良好な関係を作っており、これからの農作業で人手が足りないだろうと思ったから、真っ暗闇に所属しているアンドロイド部隊農耕課(僕がいなくなった後本格的に出来たと聞いている)の所から派遣要請をして手伝わせている。だから僕が指導しなくとも上手くやってくれることだろう。

 

(それにしても、やはり運営を司令官に任せて正解だったな)

 

 この世界では、司令官達がいた頃の世界と違って感情を捨てなくても良いからな。だから皆思い思いにやっているのだろうし、司令官も前の所よりも羽を伸ばせている事だろう。

 

 (しかしながら何かを創設するのなら一言相談して欲しかったな……)

 

 当初そんな課が出来たことを定時報告で知ったソーマさんの顔は、少し寂しさを窺わせていたと近くのアンドロイド隊の皆さんは言っていたようです……

 

 その証拠に……

 

「あんな顔のソーマさん……可哀想ですけど凄く可愛いって思ったのは私だけですかね? あぁ〜……唐突に抱きしめたいって思いました‼︎」by6O

 

「フンッ……ソーマも少し軟弱な所があるって事だろ? ……あ、後で慰めにでも行こうかな」byA2

 

 と、こんな声が多数寄せられたのだとか……

 

 

閑話休題

 

 

 それで扉を潜った先には、なんかあたふたしている人数名……そして

 

「おぉ! 来てくれたか‼︎」

 

 ジェラルドが、僕がこれまで見た事ない形相をしながら凄まじい速度で近寄ってきた。

 

「な、なんだ? まずはなんで呼んだかを簡潔に話せ」

 

「そ、そうだな。お前に渡されたこれが本当に使えるか半信半疑だったんでな……本当に来なかったらどうしようかと思っていた。そ、それよりもだ! うちの子供を見てくれて‼︎」

 

 と言われて案内されたのが、ジェラルドの子供のところだった。その子供はベレスといったか。ともかくベレスは簡易的な子供ベットに横たわり、その傍らでシトリーが心配そうに見守っていた。朝起きたらベレスがこうなっていた様だ。そこで僕を呼んだと……呼ばれたからには診察するか。

 

 診察の結果はただ少し風邪をひいているだけだった。だけだったが……

 

「この子はまだ生まれて数ヶ月程しか経っていないはずだが……何故外に連れ出している?」

 

「あぁ、それはだな……」

 

 それで訳を聞くと……シトリーが生まれてこの方修道院以外を知らないというのもあり、子育ても自分の手でしたいから現在この状況という訳らしい。外出許可みたいな物はレアに出した。それも無期限のものらしく、出すのに結構無茶苦茶な事を言った様だ。代わりに毎月、それと何かあった際は必ず手紙を出す様にと……

 

「……全く、許可を出した方もそうだが、ジェラルド……君も馬鹿な類か? 戦えない子供と自分の妻を伴って、しかも話を聞く限り傭兵家業もしてると? 君は頭がおかしいのか?」

 

「最初は何とかなると思ったんだよ! だが俺達は……我が子が熱を出しただけでこの始末だと思い知らされた。そこで何だが……」

 

(……何か面倒ごとの予感が)

 

「俺達の旅に同行してくれないか? 給金は毎月出すぞ! まぁその時の依頼料にもよるがな?」

 

(はぁ……やはり面倒ごとだったか……)

 

「僕には住んでいる所がある。それに近くの村人とも友好を結んでいるし、今回は緊急だと思って駆け付けたんだ。そもそもお金などで僕はなびかんぞ?」

 

「そ、そうか……な、なら毎日じゃなくてもいい! 後……これも頼みたいんだが、ベレスの教育もして欲しいいんだが……」

 

「おい待て、僕は了承してないぞ? それに何故頼み事が増えているんだ?」

 

「そ、そこを何とか頼む! お前にもしもなんかあったら俺達が力の限り助けるのも吝かではない‼︎」

 

「万が一にも無い状態だな……そもそも僕1人でも魔物は簡単に倒せるというのに」

 

「そ、それでもだ! 頼む‼︎ どうか頼む‼︎」

 

「だから……はぁ……断っても無駄な様だな。ホント僕でもどうかしてると思うが、このままだと何も進展がなさそうだからな。その話、受ける事にしよう」

 

「本当か⁉︎ なら、これから宜しく頼むぞ‼︎ えぇっと……名前は何って言うんだったか?」

 

「今更だな。僕の名前はアスクレピオスだ。言いにくかったら別にアスレイと言ってくれて構わない。ほとんどの者が僕の事をそう呼ぶからな」

 

「そうか! ならこれから宜しくな、アスレイ!」

 

 こうして僕は……全く医術とは関係ない事にも首を突っ込む羽目になってしまった……

 

(はぁ……僕はただ医療行為や医術の進歩に貢献したかっただけなのだがな……)

 

「まぁ……ジェラルドにあの装置を渡した時点で遅かれ早かれだったか」

 

「ん? 何か言ったか?」

 

「いぃや。何も言っていないさ。それよりもだ……今からベレスの風邪に効く薬を投薬する。後……僕がベレスに教育云々は少しばかし施すのは承知だが、僕にも仕事がある。僕がいない時のベレスに対する接し方や何かあった時の対処法は、君にみっちりと教えるつもりだ。僕の教えは他の者より厳しめに行うから……覚悟しろよ?」

 

「あ、あぁ……お手柔らかに頼む」

 

 

 

 そんなこんなでソーマはジェラルドと変な関係を結んでしまった。そこからの約10年、これと言った大きな事件は何事もなかったが、小さな小競り合いにはソーマもいつの間にか介入して流れる流血を最小限に留め、紋章によって苦しい思いをしている子供達との対話をしたりなど、どれも表立った行動ではないがソーマに相談した子供達は幾分かスッキリした表情でソーマの元から立ち去り、以後紋章の影響などに負けず前向きな気持ちで未来に向かう子供達が多かったという。

 

 ジェラルドとともに小競り合いに参加する際、何も持たず特攻……他の者の攻撃全てをいなし、防御を突き破る掌底などは一撃でも喰らえば殆どの者が意識を手放す。そして戦いが終われば敵味方関係なく治療行為をしている姿も多く見られた。その姿を見た者は、敵味方関係なく彼の事をこう称賛した。

 

 神掌(しんしょう)……古代、約千年前にあったとされるセイロスとネメシスが多くを巻き込み起こした戦乱を、たった1人で介入して鎮めたとされるソーマ・アスクレイの再来……治らないとみなされた者達をも瞬く間に治す神の手、戦があれば身を挺して止め、怪我や病を負った者達を親身に捧げて癒す姿はまさしくそうであったと見た人々は語る。

 

 そしてこれは本人の意図する事なく独り歩きし、やがて尾ひれはひれがついて後々の黒歴史になってしまう事を……この時ソーマはまだ知らない。

 

 因みにジェラルドにベレスの教育係を任されてしまったソーマは、比較的ベレスと接する機会がジェラルドよりも長かった為に、当の親よりも名前を早く覚えられ、ジェラルドに物凄い嫉妬を買ったとか……

 

 




おまけ ジェラルドに嫉妬されたアスレイ

ジェ「おいアスレイィッ! うちのベレスに何を吹き込んだぁっ⁉︎」

ソーマ「何をって……君が頼んできた通りベレスの教育係をしただけだが?」

ジェ「そんな事を言っているんじゃない!」

ソーマ「一旦落ち着け。何があったんだ?」

ジェ「こんなの落ち着いていられるか⁉︎ どうして親の俺よりも教育係のアスレイの名前を覚えてるんだ⁉︎」

ソーマ「……」

ジェ「『何言ってんだこいつ?』みたいな顔をするなぁ! 俺だってお前が帰った後ベレスと遊んだり寝かしつけているというのにこの差はなんだ⁉︎」

ソーマ「なんだと言われてもな……比較的に僕といる時間の方が総合的に長いからじゃないのか?」

ジェ「なっ……たったそれだけなのか⁉︎」

ソーマ「もし自分の娘に名前を覚えて欲しいのなら、毎晩食事処で仲間と酒を飲む機会を減らす事だな」

ジェ「ぐっは⁉︎ 何故それを⁉︎」

ソーマ「次の日来たら頭が痛いだのなんだの言ってるからだろ? 僕は医者だ。昨日に患者がアルコールを摂取したかどうかなど一目瞭然で分かる。それにリアからも釘を刺す様に言われているからな。分かったのなら生活態度を改める事だ。そして僕よりも自分の娘に時間を割け。それが親の仕事だ」

ジェ「せ、正論かどうかは置いておいて何も反論出来ねぇ……」

 これをソーマに言われたジェラルドは、その日からお酒を控えて娘や嫁に割く時間を増やし、やがてベレスから自分の名前を呼ばれた。その時物凄く泣きながらベレスに抱きついていたと、仲間の傭兵達が証言した。またこの事を機にジェラルドは親バカになってしまったのだとか……

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