☆10 お茶の子さいさい 様
評価つけてくださってありがとうございます!
今回のサブタイトルについては誰の発言なのか? まぁ大体昔からのソーマの知り合いですが……
では物語のスタートです!
マリアンヌとリシテアと再会した。リシテアは数節に1度の検診で済むくらいに体調は良好だったが、マリアンヌについてはあれ以来会っていない。約5年前ではあったものの、あの時よりも大人の女性になっていた。性格も随分変わった様だし……
だがその後彼女達に色々問い詰められて意気消沈……説明し終わった後直ぐ様そこを離れてベレス達と合流した。マリアンヌ達がいた所よりもまだ随分と後ろの方にいたから、このペースで一緒に歩けばガルグ=マクに着くのは日が昇った頃だろうな。
(あぁ……しかし疲れたな……)
この時は顔にも出るくらい疲れていたと思う……精神的に。
「先生、どうかしたか?」
「顔色が悪いわ……何かあったの?」
その様子を見てかベレスとエルが僕を心配してくれる。医者がそん姿を晒してはいけないとは思うのだが……今回は彼女達の配慮が嬉しく思う。
「いやぁ〜にしてもアスクレピオスさんってモテモテだねぇ〜。両手に花なんて羨ましいなぁ〜」
それをふざけた感じの口調で言ってくるクロードという
「……」
「あなた……何が言いたいの?」
しかしながらこの2人には関係なかった様だ。言うなれば……私の邪魔をするなとでもいう様に……
「あ、あははは……ど、どうしたんだいお2人さん? 目が怖いんだけど……」
これには茶化した感じのクロードくんはタジタジになっていた。
「からかってやるなクロード。ベレスさんもエーデルガルトもただアスクレピオスさんを心配しているんだ。アスクレピオスさん、疲れている時に悪かった」
「いや、ディミトリくんは悪くはない。それにそこのツッコミ役の子も、僕の現状がそう見えてしまったから自然と口に出ただけだろう。僕はそんな事で気にはしない」
「そう言ってくれるとありがたいです」
「いやホント……俺も悪かったよ。ってツッコミ役って俺のことかっ⁉︎」
「あぁ、デッキブラシの件……即席であったが見事なツッコミだった」
「そこまだ引きずるの⁉︎ 俺だってちゃんと戦ったぞ⁉︎ なぁ⁉︎」
クロードは必死に皆を問うように見た。しかし誰もクロードに対して首を縦に振らなかったし、目を合わせようともしなかった……あぁ、悲しきかな
「なんか変な渾名を付けられた気が……」
「どうした? 幻聴待ちでも持っているのか? もしなんなら君に合わせた薬を処方しよう」
「いや、そんなもの持ってないですしいらないです……」
そんなこんなで漸くガルグ=マクに辿り着いた。そして僕達は生徒と大人で別れた。生徒達は自分達のクラスに戻り、僕とベレスはジェラルド共々セイロス教の教祖であるレアに案内されていた。
「ジェラルド、久しぶりですね。手紙で連絡は取り合っていましたが、約20年ぶりですね」
「えぇ。レア様もお変わりないようで」
「それを言うならあなたも変わっていませんね。そして隣にいるのは……あなたが毎回手紙に書いている愛娘ですか」
「そ、そうです。俺の……自慢の愛娘です」
「そうですか。シトリーはどうしていますか?」
「リアとは今別行動中で、勿論護衛は付けています。なんかベレスが大きくなると同時にアスクレイ教に入りたいって言って、今も村の近くにある教会で手伝っていると思います。まぁ俺が今ここにいるって情報を貰っている頃合いでしょうから、もう少ししたらここに来ると思います」
「分かりました。その時は彼女とゆっくり話したいわ。ベレスさんも遥々来てもらって嬉しいわ」
「私も父からあなたの事を聞いています。お会い出来て光栄です」
「ふふ、ジェラルドが父と聞いた時はどんな子に育つかと思いましたが、教養も一般以上に備わっていますね。それを教えたのは……あなたかしら?」
レアが僕の事を見る。まぁ僕もレアと20年ぶりの再会だな。
「まぁそこの酔っ払い親父に任せてはちゃんとした子に育たないからな」
「おい貴様……そこの娘よりも礼儀がなっていない様だな?」
僕が返事をすると、レアの隣についていた男がそう言ってくる。緑髪で、瞳も緑色。そして威厳のある出立だ。
「それにその格好はなんだ? 見るからに怪しい……フードとその口につけてある被り物を外せ」
「良いのですセテス。彼も……私から見れば古くからの友人ですから」
「なっ⁉︎ この者が⁉︎」
「えぇ。それにセテスも彼の事は知っているはずよ?」
そう言われたセテスは驚いていた。まぁ確かに昔と比べれば僕は変わっているだろう。まぁ衣装だけだが……
そしてジェラルドはセイロス騎士団並びにアスクレイ騎士団に本日付で復帰、そう言い渡されたジェラルドは迎えに来たアロイスと一緒に出て行った。変わりに2人の男女が入室してきた。男の方はハンネマン、女の方はマヌエラといった。どちらもあの課外活動をしていたクラスの教師をしていた様だが、その時に1人教師が逃げ出して1人足りないのだと言う。
そこで白羽の矢が立ったのがベレスで、3クラスのうち1つを指導する事になった。ふむ、教え子がとうとう人に教える立場に回るのを間近で見ると言うのは……小さい頃から教えて来たものとしては感慨深いものがあるな……
(しかしベレスと離れるとなると……寂しいものがあるな)
親の元を巣立つ子供を見送る……その時の親の気持ちがこうなのかもしれない。
(……いや、そもそも僕は医療行為をしてそれが世界に伝わって、より良い世界が築き上げられたらそれで良かったんだ。最近の僕はあまりにも多くの人と関わり過ぎて忙しくしていた。というか外から見ても僕は忙しくし過ぎだろう⁉︎)
そう考えると、それがあるべき結果だ。それこそが本来の流れなのだと勝手に思いながら話を聞いていると……
「いや……私よりも先生の方が教え方は上手だと思います。だから私ではなくてアスクレピオス先生の方が良いと思います」
とベレスが言った事で……
「まぁ! そうなのね! でもそうしたらどうしようかしら?」
「ふむ、先生役が4人もいるとな……」
「ならこうするのはどうですか? ベレスさんはさっき言った様に3クラスのうちの1クラスを、そしてアスクレピオスさんには日替わりで3クラスの副担任になって貰うのはどうですか?」
(……はっ?)
「それは良い考えね!」
「だがから1人物凄く負担がかかるのではないかね?」
「確かにそうだな……」
「だが私は先生がいた方が心強い。それに離れ離れになるのは、私は嫌です」
(ベレスよ……後半部分が本音だろ?)
「だが本人の意向も聞くべきだろう? 私は正直この者を怪しい者としか見てとれない。本人がやると言うなら……やむを得ないが尊重する……」
「私は良いと思いますよ。それでアスクレピオスさん……この話を受けてくれますか?」
ーーーーーこの選択が後の運命を分けるーーーーー
・3クラスの副担任になる
・承諾せず、挨拶を終えてこの場を去る
・第3の選択……ジェラルドが兼任しているアスクレイ騎士団の団長となる
(なんだこの3番目の答えは⁉︎ なるわけないだろう‼︎)
唐突に頭の中に浮かんだ3つの選択肢、その3つ目に対してはツッコミを入れざるを得ない。
(まぁ僕もこのままベレスと別れるのも寂しいものがあるし、そうしたとして影から援助していくのもまどろっこしいな……)
(なら答えは決まっている)
・3クラスの副担任になる
「はぁ……僕は本来医者なんだがな……分かった。いつかは多忙が原因で倒れるかもしれないが……その3クラスの副担任になろう」
「ありがとうございます! あなたならきっとそう答えてくれると思っていました!」
「そうと決まれば今日は新しく入ってきた先生方の就任パーティーね!」
「ベレス先生、それとアスクレピオス先生もよろしく頼むよ!」
「先生、これからもよろしくお願いします」
ベレス含めて3人の先生がそう言う。あぁ……僕はただ医療行為をしたかったと……最初はそう思って行動していたのに……
(今は士官学校の3クラスの副担任……か。思えば最近は慌しい毎日だが、これが本来の……人としての歩み方なんだろうな……)
ソーマは知らぬうちに少し笑みを浮かべていた。と言ってもフードと口にある被り物で、ソーマが笑っている事に誰も気付いてはいなかった。
そんな話でまとまったのだが、今僕はレア……もといセイロスとセテスと一緒に、セイロスが執務をする部屋に来ていた。
「レア……もうそろそろ彼が何者なのか教えてくれ。あの場で私も知っている人物と言われて考えたが……それに当てはまる人物が思い付かないんだ。思いついたとしても……最早この世を去っている」
「そうですね。私も最初はそう思っていました。でもそれは違った。ただの勘違いに過ぎなかったという事です」
「? それはどう言う……」
「アスクレピオス先生……もうそろそろ答え合わせをして貰えませんか? いえ、この場合はソーマさんと言うべきでしょうか?」
「なっ⁉︎ そ、ソーマだと⁉︎」
「……そうだな。辺りに怪しい気配も感じ取れないし、良いだろう」
そう言いながらソーマはフードと口元に付けてある被り物を外した。
「久しぶりだな。セイロス、それにキッホルも。まぁセイロスに至っては約20年ぶりと言うべきか」
「えぇ、お久しぶりです。こうしてまたあなたに会えた事を嬉しく思います」
セイロスはニッコリ笑ってそう返していた。そしてセテスはというと……
「そ、ソーマ・アスクレイだとぉっ⁉︎ お、お前……死んだのではなかったのかっ⁉︎」
周囲にはセイロスとキッホル、ソーマしかいないものの、大声で驚いていた。
「落ち着け。それと声が大きい。周囲に誰もいないとはいえもう少し声の音量を下げろ」
「こ、これが落ち着いてなどいられるか‼︎ わ、私はてっきりお前が死んだものだと……それで私のセスリーンがどれほど泣いたか分かっているのか⁉︎」
「セスリーン……懐かしいな。あの子は元気でしているか?」
「あぁ、たまに休眠する事はあるが大事はない。お前が施してくれた薬のおかげだ」
「そうか。それなら良いのだが……」
「いや良くない! あの子は……お前がいなくなってずっと泣いていたんだ! 最近は昔と同じ様に笑顔で振る舞っているが……お前がいなくなってからどれだけあの子が悲しんだか」
「……待て。何で僕がいなくなるだけでセスリーンがそんなに悲しむ?」
「それは……私の口からは言えん! 直接娘から聞け! 今はフレンという名前でこの修道院に住んでいる」
「……そうか。まぁ頭の片隅にでもいれt「聞け……絶対に娘から聞け!」……はぁ、分かった」
全く……キッホルは昔と同じで親バカ過ぎる。なに? 僕も親バカではなかったかだと? いや、僕はあそこまで親バカでは無いはずだ。
「ふふふっ、こうして話していると……何だか昔を思い出しますね」
「ま、まぁ……そうだな」
「僕としてはレア達と違う時間軸で過ごしていたからな……自分のやりたい事をやっていたらまぁあっという間に時は過ぎた気がするが」
「にしてもソーマ。今までどこにいたんだ? 私はお前が姿を現さなくなったから、てっきり寿命を迎えて死んでしまったのだと思ったが……それと思ったのだが、お前は本当に普通の人間か?」
「あぁ……そういえばあの時の対戦でもネメシスが僕の事を死んだと思い込んでいたな。まぁそれはさておいて、僕は昔と同じく元の場所で医学などに勤しんでいただけだが? それと前から言ってる様に僕はただの人間だ。僕がいた時間軸が外より歪んでいるからな……その影響でまだ人としての寿命は尽きていないだけだろう」
「そ、そうなのか……」
「で? 僕は改めて3クラスの副担任になる訳だが……何をすれば良いんだ?」
「そうですね。ではそれぞれのクラスの級長達に挨拶してきて下さい。次にやる事はその後で話します」
「分かった。では行ってくる」
ソーマは部屋を出て、それぞれの級長達に挨拶しに行った。
side レア
先程ソーマがクラスの級長達に挨拶するために部屋を出て行った。アロイスやジェラルドから話を聞くと、既にソーマは3人と会っているようです。その際の戦闘も間近で見たのだとか……
(……あれは本当に恐ろしいものでした)
約1000年前の戦争……私とネメシス、そしてネメシス側について十傑達との争い。あのまま行けば双方ともに被害が大きく出ていました。
ですがソーマはそこに現れて、私とネメシスを同時に相手しながら下した。私達が本気でやったにも関わらず、彼はまだどこか力を温存していた様に見えました。その後に空から落ちてきた巨大な岩も、たったの呪文2つで跡形もなく消し飛ばす始末……今思い出しただけでも恐ろしい力を秘めた男です。
ですが……
(あぁ……あの時からあの目で見つめられてしまうと……こう、感じた事のない感覚が私の胸を締め付けてしまいます)
さっきも何事もないように振る舞っていましたが、彼に見られると……
「レア? さっきからぼぉっとしてどうした?」
「っ⁉︎ いえ、少し疲れが出てしまったかもしれません」
「そうか。なら少し休むと良い。君は無理をしすぎだからな」
「分かりました。ではお言葉に甘えて」
レアはセテスに促されて少し休む事にした。
(あぁ……彼と久しぶりに会ったからでしょうか? 良い夢が見れそうな気がします)
レアは自室に入るとすぐ様ベットに横になって目を閉じる。久しぶりに良い夢が見れると……そう思いながら……
side out
3つの選択肢でもし違う選択肢を選んだとしたら……
・承諾せず、挨拶を終えてこの場を去る
ソーマが副担任にならず本拠地に帰った数日後……エルが直接会いに来てエルの親衛隊、更に婚約を結んで欲しいと迫られる。それが数年にも及んだ為、ソーマは折れて結果的にエルの親衛隊の医療部に配属、さらにエルと婚約を結んだ。その後結婚した……チャンチャン
・第3の選択……ジェラルドが兼任しているアスクレイ騎士団の団長となる
アスクレイ騎士団の団長になったものの、基本的にこの騎士団は武闘派ではなく信仰派に属する。そのため仕事といっても巡業しかない。しかしソーマが団長になったからというもの……アスクレイ教の信者はさらに増えたと言う。特に紋章絡みで苦しんでいる人達からの入団が多かった……
「ヴェァァァッ⁉︎ 俺は……鉄華団団長……オルガ・イツカだぞ……」
なお……どこかの団長の様に凶刃で命を断つ事などなく、そんな事があったとしても逆に返り討ちにしたと言います……
レア、セテス、ソーマが話している時……
(うふふ……お兄様の好きなお花が会ったから摘んできましたわ! お兄様喜んでくれるかしら?)
とある少女がそう思いながら廊下を進んでいると……
『そ、ソーマ・アスクレイだとぉっ⁉︎ お、お前……死んだのではなかったのかっ⁉︎』
「えっ?」
お兄様のその声を聞いて……私は一瞬思考が停止しましたわ。だって……だって……
「ソーマお兄様が……生きていらっしゃる?」
あの時……突然私たちの前から姿を消してしまったソーマお兄様。私は……毎日泣きました。あれだけ強くて、そして同じくらい優しかったお兄様……私の事をいつも気遣って下さったあの優しいお兄様が……突然何も別れを告げずに去ってしまって……
(でも……ソーマお兄様は生きてて下さったんですのね‼︎)
嬉しい……とても嬉しいですわ! あぁ……そう思っていると涙が出てきました。この様な姿は見せられません! すぐ部屋に戻っておめかししませんと!
とある少女はそう思いながら去っていく。自分の兄に花を渡す事も忘れて……