☆9 鬼哭王様
☆4 笹ピー様
☆1 ヨグ=ソトース様
ありがとうございます!
「正直序盤でここまで多くの評価を付けられるとは……僕の治療行為がこの世界に普及してきたという事だな。さて……まだまだ見なければならない患者がいるからな。僕はここで失礼しよう」
※と、オリ主は言っていますが、今から行くところは戦闘行為が起こっている地域であり、もはや治療行為でも何でもありません……
軽症だったエーデルガルトの経過観察は良好。体調もだいぶ良くなっている。もうそろそろこちらでピックアップしている引き取り人に預けても良い頃だろう。
エーデルガルトの残り9人の兄弟姉妹については、こちらも日毎に体調が良くなっている。重症患者は意識を取り戻していっているし、衰弱している子達も血色が良くなってきた。正気を失っている子達に関しては……どうにか落ち着きを取り戻してはいるが、やはりトラウマが大きい様で思い出す度に取り乱している。経過観察とカウンセリングがまだまだ必要になりそうだ。
(だが明らかに良くなっている。この調子でいけば問題はなさそうだ)
時折僕はエーデルガルトや他の子達と直接語らったりしている。他の子達……意思疎通が出来るまでに回復した子達はこの環境に安堵を示していて、もうあんな暗い所に戻るのは嫌だと言っていた。
正直僕は、ここもあの牢と同じく真っ暗闇の空間だが? と返したが、ここは優しい人達がいっぱいいてずっといたいくらいとその子達は言っている。
(まぁ……そう思いたいのならそう思わせておこう)
その子達の将来は……その子達が自由に決める事だ。僕は別に口出しする気は無い。
そしてエーデルガルトについては……
「また来てくれてありがとう。嬉しい」
僕が行く度に満面の笑みで迎えてくれる。最初の印象と全く違っていたな。最初会った時は……当然ながら怯えの表情が見て取れた。まぁ周りがあんな貴族連中とその取り巻きなのならば尚更だ。大人にいい感情は持たない事だろう。
だが僕に対しては……何故か好印象に思える。これが僕の自己中心的な考えにならない事を祈ろう。
「それで、今日はどんなお話をしてくれるの?」
「そうだな……ならば僕が行なっている医療の話を「それは昨日聞いたわ。それよりも、もっと貴方の事に関する話を聞かせて?」……自分の事を話すのは苦手だな」
「それでもいいの。じゃあこうしましょう? 私が貴方に対して質問するから、貴方はそれに答えるの」
「……まぁ、それなら話せそうだ」
「じゃあ決まりね。まずは……」
そこからエーデルガルトと会話をした。まぁ普通の会話と言うよりも、彼女が僕に質問して、それに対して僕が答えるというものだ。
僕としては……僕と会話をしている相手はさぞつまらないだろうと思う。だが彼女は、こんな形式上での会話も楽しく笑いながらしていた。僕としては、僕が逆の立場ならそんな風に笑えない。だが目の前の彼女は……それを諸共せず楽しそうだ。
(あぁ……なんだか眩しく感じるな)
それは僕には無いものだからか……その時の僕はそう感じた。
そんな日常を送りながらも僕が医療の進歩について動いている時……
『6Oよりソーマさんへ。今大丈夫ですか?』
「あぁ、問題ない。どうかしたか?」
『外の世界でまた紋章絡みの様です……しかも命に関わるほどの……』
「……詳しく話をして欲しい」
そして僕は6Oから詳細な話を聞き、現地へと向かった。
(彼女とまた話す時の土産話になれば良いのだが……)
side ???
帝国歴1175年
本来紋章は1人につき1つだ。大きさは大小あるが、それでも発言する時は1人につき必ず1つと決まっていると……私は独学で学んだ。
ただそんな時……私は思いもよらない事に加担させられた。
それは……1人の人間に2つの紋章を入れようとする実験だ。その実験に選ばれたのは……私だった。
既に私は1つ紋章を手に入れていたけれど、その実験をしようとした輩は私に無理矢理紋章を埋め込んだのだ。そのために髪は白くなり、寿命もだいぶ縮んでしまった。
この事で自分の親には苦労をさせてしまった。まだ10にも満たないけれども、早く大人になって独立しないと……
「グッ⁉︎ ゴホッゴホッ……」
だけど無理矢理紋章を入れられたせいで体力もない……それに最近激しい咳も出る。
(私……大人になりきれずに死んじゃうの?)
最悪の考えが頭をよぎった。でも……周りには親しい友達もいないし……話したところで……誰も信じてもらえない。
(苦しい……苦しいよ……誰か……)
少女の思考が絶望に染まりきろうとしていた時……
「ふむ……これは確かに珍しい症例だ」
いきなり自室で響いた誰かの声に少女は反応し、俯かせていた顔を上げると、そこには……
「おっと、これは急で驚かせてしまったか。それならば謝ろう。それとまずは自己紹介だ。僕の名前はアスクレピオス……ただのしがない医師だ。さぁ……君の症例をもっと詳しく見せてくれ」
黒ずくめの衣装を着た何かが……少女の目の前に立っていた。
side out
「な、何なんですかあなたは⁉︎」
「ん? 聞いていなかったか? ならばもう1回言おう。僕はただのしがない医師だ。さぁこれでちゃんと名乗ったのだから今度は君の症状を見せてくれ」
「そ、そんな事を聞いているんじゃないんです‼︎ どこから湧いて出たんですかって聞きたいんです‼︎」
「……質問の意図が違っていると思うが。だがその質問に答えなければ君を診る事が出来ないのなら素直に答えよう。僕が作り出したこの扉を通って来た」
ソーマは少女の目の前で真っ黒な扉を作り出して開ける。その扉の先は……どこまでも真っ暗だった。
「さて……これで僕がどうやって来たか分かったな。次は君の番だ。僕に症状を見せてくれ」
「うっ……きょ、拒否します!」
「何故だ? 僕は君の質問には答えたんだ。ならばその見返りを求めるのは当たり前の事だろ? それになにも僕の目の前に裸になれとは言っていない。ただそこに座ってじっとしていれば診断は済む。どうだ?簡単な事だろう?」
「で、でもあなたも……私の事をまじまじと見ては笑うんでしょ! 無理矢理私に紋章を埋め込んだ奴も下卑た笑いを浮かべて笑っていたわ! 私の体を見て……あられもない姿を見て笑っていたわ‼︎ どうせアンタも同じなんだから‼︎」
少女はそう叫びながら泣いた。目の前に立つこの黒ずくめの男も……自分に紋章を埋め込んだあの男の様に笑いながら自分を見るのだと……
「僕をそんな輩と一緒にされては困る」
「えっ?」
少女は目の前に立つ男の凛とした声を聞いた。紋章を無理矢理埋め込んだあの男の下卑た声とは全く比べ物にならないほど……その男の声は、何故だか自然と自分の身体に入り込んで来た。
「僕は……苦しんでいる者を笑わない。助けを求めている者を笑わない。心の奥底で必死に耐え忍んでいる君を見て……笑わない」
「だって君は……そんな身体にされながらも必死に生きようとしている。誰にも頼れない中……そんな小さな身体で必死に生にしがみついている。僕はそんな人を……笑う事なんて出来ないさ」
「……本当?」
「あぁ、その事について僕は嘘をつかない。何しろ僕は君に対して敬意さえ少なからず抱いている。僕はそんな君の……少しでもいいから支えになろうと考えている。だから……僕に君の症状を見せてくれ。治すまでとはいかないかもしれないが……それでも君の力になれるはずだから」
「……分かった。それなら……見て」
ソーマの言葉に……少女は応えた。怖さから未だに身体は震えていたが……それでも耐え忍んでいた。
「良い子だ。スキャン……」
ソーマの瞳が水色に灯る。その様子を見ていた少女は、その現象に驚いていた。それから数秒でソーマのスキャンは終了した。
「ふむ……確かに君には2つの紋章があるな。本来ならば小さい方の紋章を元から持っていた様だが、後から大きな紋章を入れられた痕跡がある。それに君が言った様に無理矢理入れられた形跡もあるな」
「そうよ。私はそのせいで……髪も白くなったし寿命も大分削られたわ……」
「……よく頑張った」
「えっ?」
「君は……よく頑張っている。紋章は1人に1つ……詰まる所1人1つの別の命を背負っていると例えてもおかしくない。だが君は……そんな小さな身体で2つ目の大きな命をも背負っている。本来ならばいつ君の体が壊れてもおかしくない」
「だが君は……それでも生を諦めようとしていない。それどころか君は親の事にも気を配っているのだろう? だから君は……」
ソーマは少女の頭に手を乗せて優しく撫でる。
「君は……よく頑張っているよ」
「うっ……うぅ……うわぁぁぁぁんっ‼︎」
大粒の涙を流しながらソーマに抱きつく少女を、ソーマは顔色変えず、ただただ穏やかな笑みを浮かべて少女の頭を撫でていた。
それから数分後、目の当たりを赤く腫らしてはいるが落ち着きを取り戻した少女と、対面するソーマの姿があった。
「ご、ごめんなさい……少し取り乱してしまって……」
「気にすることはない。まだ10にも満たない子供だ。まだ両親や大人に甘えたとしても文句は言われないだろう」
「わ、私を子供扱いしないでください!」
「そうか。それはすまなかった。さて、それでは君に渡す処方箋だが……」
「しょ、処方箋?」
「あぁ、少し言葉が難しかったな。君の症状を和らげる薬の事だ。その大きな紋章が君の体に対して作用している効果を打ち消し、紋章が君の体に与える負担を抑える物だ。取り敢えずは朝晩の食後すぐの1日2回を一節分用意して経過を見よう」
「お、お金は……」
「お金? そんなものは既にもらっている。君の身体を診察した事がその代わりさ」
「そ、そんな! だ、だって風邪をひいた時に貰うお薬もそれなりにするのに……」
「僕をそこらの三流の医者と一緒にするな。僕は医療の進歩と患者達のために僕の医療を振るっているんだ。そこらにいる様な……効力が低い癖に高いお金でぼったくる医者達と一色単にされるのは心外だ」
「……クスッ、おかしな人」
少女は初めてソーマの目の前で笑った。
「僕のさっきの台詞で少し笑えるくらいには楽になったか」
「えぇ、どうやらその様です」
「そうか。では僕はもう行く」
「もう……行ってしまうんですか?」
「あぁ……僕には、まだ助けを求めている患者がいるからな。また1ヶ月後に遣いをここに送って薬を渡そう。それと……薬の用法と容量はしっかりと守れ? 僕はそこを蔑ろにする患者は嫌いだからな」
「分かりました。あなたからもらったお薬……ちゃんと守って使います」
「宜しい……では、また会った時は……その時は僕の医療について話そう。気が向いたらな」
そう言ってソーマは扉を作ってドアノブを回し中に入る。ドアが閉められると、扉は光を放ちながら少女の前から消えた。
「はい……また貴方に会える事を待っています。アスクレピオス先生」
彼女……リシテア=ファン=コーデリアは頰を少し赤らめながらそう言った。
一方のソーマは……
「はぁ……やはりカウンセリングは嫌いだ」
凄く疲れた顔でトボトボ帰り道を歩いていた。