僕は医療行為をしたいだけなのだが……   作:橆諳髃

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新しく評価を付けてくださった読者様

☆10 clover of bookmaker 様
☆9 陸羽値音 様 ボンボン 様 たんぽぽ太郎 様
☆6 Vezasu 様
☆1 逆流王子 様
☆0 Mマキナ 様

評価を付けてくださってありがとうございます! 評価0が付いてしまったのは少々残念ではありますが、やはりそこはそれぞれで好き嫌いはあるでしょうし、私の書き方がワンパターンすぎるのもあってつまらないと思われる方もいると思います。

しかしながらそれでも評価を辛口で付けてくださったということは、幾らかの期待を持ってのことだと思いますので、これからも無理しない程度でやらせていただこうと思います!

では、今回の物語も宜しくお願い致します‼︎

※作者は前向きに捉えてはいるものの……正直ガラスのハートである……


第3話 僕は君の味方でいよう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの少女を訪ねて幾らかたった。初めて会った時名前を聞きそびれてしまったために、次の節薬を届ける時は僕がまた直接向かった。患者の顔と名前を覚える事は、僕にとっては大事な事でもあるからな。それで少女にまた会いに行った。その際少女は喜んでいたが……

 

名前を聞いて幾らか世間話に興じ、キリのいいところで薬を渡して帰ろうと思っていた。僕の中ではそのペースで予定を組んでいたのだが……少女に先手を打たれてしまった。

 

少女の名前はリシテアといって……薬を渡しにいった際あちらから名乗ってきた。そこからは彼女のペースでお茶に誘われ、お菓子も準備されていた。

 

(……準備が良すぎる気がするが)

 

そして彼女に強引に椅子へと座らされ、そこから世間話をした。彼女はどうやら甘党の様で、用意されていた紅茶も果汁入りで苦味よりも甘味が強かった。用意されたお菓子も甘味一色ではあったし……

 

「もしかして……甘い物は苦手でしたか?」

 

リシテアは申し訳なさそうな顔で僕にそう言ってくる。どうやら少し考え事に没頭して手が動いてないところを見て彼女は、僕が甘味が苦手と思ったらしい。

 

確かにこの甘味尽くしは……甘味が苦手な者にとっては地獄だろう。僕も甘味が嫌いなら、今回のお茶会は断ってすぐに薬を渡し去っていたと思う。

 

だが生憎僕は……

 

「いや、甘味は嫌いではない。それに甘い物は脳の働きを良くする効果がある。だから医療に携わる僕にとっては甘味は……大好物でしかない。ただあまりにも一度に多く摂取する事はしないしお勧めもしない。何せそれは薬とかと一緒で、どんなに良い薬でも容量を守らなければ逆に毒になりかねんからな」

 

「そ、そうですか! それなら安心しました。それにしてもやっぱり先生は物知りですね。何でも知っていそうです」

 

「何でもは知らない。それに僕は医療の事ぐらいにしか頭にはないし、世俗の事はからっきし分からない。何なら今何年かも分からないな……ん? 先生? 僕がか?」

 

「今更ですか? 私さっきからずっと先生って呼んでますよ?」

 

「そうか。それは気付かなかったな。それで……何故君は僕の事を先生と呼ぶ?」

 

「そんなの当然です。だって私の事を……助けてくれたんですから」

 

「助けた? 僕はまだ君の症状を完治させてはいない。だからまだ君を完全に助けた訳じゃあないが?」

 

「そ、それでもです! 私がそう思っているんですから!」

 

「そういうものか?」

 

「そういうものです‼︎ 全く……先生はどこか抜けていますね」

 

「まぁ……自分でも医療に現を抜かし過ぎて抜けていると自覚はしているが」

 

「自分でも自覚はしているんですね……まぁでも、そんな先生との会話は楽しいですよ」

 

「そうか……僕は自分で、相手を退屈させているものだとばかり思っているのだが……」

 

「……先生って意外と自分の評価を下に見ているんですね。もうちょっと自分に対しての評価を甘くしても良いんじゃないですかね?」

 

「そうか?」

 

「そうです。だって、この私が先生の事を高く見ているんですよ? だから、先生も自分の事をもっと大事に見た方がいいと思いますよ?」

 

「……まぁ、前向きに考えておくか」

 

「そこは、分かった、の返事が欲しかったですけどね。ふふっ……」

 

とまぁ、彼女との雑談はこんな感じだったな。一節前までと比べて明らかに元気になっているし、最近の体調も良くなったと聞いてる。そして僕は聞く事を大体聞いて薬をまた一節分渡した。

 

彼女の宿す無理矢理埋め込まれた紋章は……今の僕の医療で完全に無くすのは難しい。だが後数年経てば……どうにかなるかもしれない。

 

それにしても……

 

(甘味をいつのまにか取り過ぎていたか……先程偉そうに口に出していたものの、情けない……)

 

リシテアが言っていた様に……ソーマはどこか抜けている様だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

次はエーデルガルトの経過観察についてだが、ここ一節ほど機嫌が悪い。どこか体調が悪いわけではないのだが……

 

確か……僕がリシテアの所に行き、その事を土産話として話した時からだろうか? それまで彼女は僕の下らない話を笑顔で聞いていたのだが……その少女の事を話すと急に機嫌が悪くなった。「もうその子の話をするのはやめて!」と怒られた。

 

ただ僕は、いつも僕の下らない話よりかはマシな土産話ができると思っての事でそうしたまでなのだが……

 

その後に6Oからも、「ソーマさんってデリカシーないですよねぇ……気を付けた方が良いですよ?」と言われる始末。6Oの言葉に他のアンドロイド隊の面々からも頷かれる始末……少しでも僕の患者の為を思ってのことだったが……解せぬ。

 

しかしながらエーデルガルトの体調は良好だ。そろそろ外の世界へと返す時が近づいているな。

 

 

 

 

 

 

そんなこんなでエーデルガルトを外の世界へと戻す為の準備を始めている時(僕は勿論医術の進歩のための研究をしているが)着信が入った。

 

『こちら21Oよりソーマへ。今は大丈夫でしょうか?』

 

「あぁ、丁度キリのいい所だ。どうかしたか?」

 

『実は……少々面倒な事が起きてしまって……』

 

「面倒な事? エーデルガルトの体調が急変したのか? もしくはリシテアの方でトラブルか? はたまた……また性懲りも無くどこかで大規模な争い事か?」

 

『いえ、そうではないのですが……』

 

「ふむ。いつもの君ならばすぐ用件を簡単に言ってくるはずだ。確かに僕は医療の進歩とか患者の事以外に関わるなんて事は御免被りたいが、それでも今の面倒ごとをそのままにしてしまった方が更に大変な事が起こる。症状を見過ごして悪化する様にな……。だから僕の事は今気にしなくても良い。早く用件を言って欲しい」

 

『実は……迷い人を発見しまして……』

 

「……迷い人?」

 

『はい……どうやら外の世界からこちらへと迷い込んでしまった様で……今アンドロイド隊に保護する様指示を出しているのですが……』

 

(……面倒な事だったな)

 

それを聞いてソーマは少しうなだれた……

 

 

 

 

 

21Oから迷い人を無事保護したとの報告を受けたソーマは、保護された迷い人のところに向かった。そして保護されている部屋の前に21Oがいた。

 

「こちらに保護された迷い人がいます。男女のペアで所々擦り傷はあります。後は……全体的に覇気がないというか」

 

「分かった。後はこちらでやっておく。仕事に戻ってくれ。また何かあったらすぐ連絡を」

 

「分かりました」

 

僕は迷い人が保護された部屋に入った。部屋の中は少々豪華な応接室と言ったところだ。その応接室の2人がけのソファーに、21Oがさっき報告してくれた様に男女のペアがいた。所々擦り傷が付いていて、纏っている服もどこかボロボロだ。そして2人とも痩せこけていて、ここ何日も食べていない様だ。

 

「待たせた様で申し訳ない。僕はここの管理人をしているアスクレピオスという。そしてただのしがない医者でもある。まぁまずは……あまり症例としては珍しくもなんともなさそうだがその傷の手当てをしよう」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

僕は手早く2人の体をスキャンして怪我をしているところの把握した。擦り傷多数と、男の方が左足首を捻挫しているな。僕は把握して手早く処置をした。

 

「よし、これで処置は終わった」

 

「ほ、本当になんとお礼を申し上げたら良いか……」

 

「お礼は今は良い。僕は当然の事をしたとしか思っていないからな」

 

「それでだ……単刀直入で質問させてもらうが、何故ここに来た? そしてどうやって迷い込んできた?」

 

そこで僕は男女のペアから話を聞いた。元は貴族で紋章持ち。そして1人娘もいる様だ。そして今はその1人娘もとある遠縁の貴族に預けてあると……しかし疑問に思う。

 

「何故君達は1人娘を他の貴族に預けてここにいる? その1人娘が君達に対して何かしたのか?」

 

「……その事情についてもお話しします」

 

そして僕は事情を聞いた。どうやら彼らは抹消された英雄とやらの子孫らしい。

 

英雄というのは、過去の大戦で名前を残した紋章持ちの事だ。伝記で語られている人物は合計11名で、炎の紋章を持っているとされる解放王ネメシスから後の十傑が今語られてる英雄だ。

 

だが英雄は……その伝記などに載っていないだけで後もう1人いたという。それが彼らの末裔だ。

 

(……あぁ、確かもう1人いたな。それらしい奴が)

 

僕はその英雄に心当たりがある。何故か? そいつを治療した事があるからに決まっているだろう? 名前は随分前のことで忘れてしまったが……

 

それで何故その英雄が抹消されたかについては……その紋章が暴走してしまい怪物となってしまったからだ。その怪物は理性を無くし、人々を襲った。だからこそ本来いるはずだった12の英雄は、怪物と化したその英雄を除いて11人となった。まぁ簡単にまとめるとこんな感じだ。

 

そして娘1人を置いて逃げた理由が、彼らはとある紋章学者の標的にされて散々嫌がらせ行為を受けてきた様だ。それが娘の方にも来そうだったから、自分達は失踪扱いにしてとある遠縁の貴族に養子として送り出したと……その様に聞いた。そして失踪中に魔物に襲われて洞窟に逃げ込んだ所ここに来た……と。

 

「なるほど。確かにあなた方はこれまでに散々な目にあってきた様だ。それも途轍もなくしつこく、最早自分達が不幸に陥っているかの様な……そこまで行くのなら、それは確かに同情するに値しようものだ……あぁ、十分同情に値するものだ……

 

 

 

 

 

 

 

だが、解せない点が1つだけある……

 

彼らにとってソーマは温厚な性格に見えていたのだろう。先程まで静かに聞き、そして静かに口を開いていたのが急に一変した。そのソーマの様子に彼らは驚きを隠せない。

 

「僕がどうして解せないと言ったか……分かるか?」

 

「ま、全く……」

 

「そうか。ならば説明してやろう。先に言っておくが……僕は命を蔑ろにする輩を許さない。そして今僕の目の前に、人の命を蔑ろにする存在がいる」

 

「なっ、わ、私達が⁉︎」

 

「そもそも……何故1人娘を1人残して失踪した? その子だってあなた方の辛さは理解している事だろう。間近で見ていたのなら尚更だ。だが……」

 

「話を聞く限りその1人娘も紋章を引き継いでいる事だろう。だからこれはあくまでも予想だが……その子は一生、自分が紋章を持って生まれた事を後悔しながら生きる筈だ。そしてこうも思うだろう……」

 

 

 

 

 

 

自分はこの紋章を持ったが故に不幸なのだと

 

「「っ⁉︎」」

 

「それに……あなた方が行った事は娘を助ける行動でも何でもない。ただの現実逃避だ。そして全ての責任をその子に押し付けただけだ。これで分かっただろう……僕がここまで憤っている理由が。あなた方を解せない理由が」

 

「わ、私達は何てことを……っ⁉︎」

 

「我が愛娘に……責任を全て押し付けて……」

 

「まぁ今更そう思ったところで遅い。賽は投げられたのだから。しかしながらそう悲観することも無い。あなた方は運が良い方だ」

 

「それは……どういう?」

 

「あなた方が途中魔物に殺されていたのならば……この事は誰も知る事なく、その1人娘も生きる事に疲れていた事だろう。最悪の場合自殺を選んでしまうかもしれない」

 

「だが……あなた方は不幸と言いながらも幸運で僕に会った。そしてあなた方の目の前にいる僕は……本当の意味で助けを求めている人達の味方だ。だからここは僕に任せて欲しい」

 

ソーマはそう言って立ち上がると懐からトランシーバーを取り出し、何かを指示していた。

 

「あなた方の体調が戻るまではここに留めておく。その後の衣食住も、あなた方が住んでいた土地から大分離れてしまうかもしれないがこちらで用意の手はずを整えておこう」

 

「よ、宜しいのですか⁉︎」

 

「あなたは私達を嫌っているのではないのですか?」

 

「あぁ、確かに嫌いだ。平気で人の命を蔑ろにしようとしたのだから」

 

「だがそれはそれだ。あなた方はその代わりとして僕に新しい患者を知らせてくれたんだ。それで先程の嫌悪はチャラにしてやるさ。さて……僕にはまだやらなくてはいけない事が山ほどあるのでな。ここで失礼しよう」

 

ソーマは応接室から出る。すると着信が鳴った。

 

『21Oよりソーマへ。ソーマに言われた通り調べ上げました。資料を送ります』

 

着信が鳴り、それを確認するソーマ。ふむ、と頷くと扉の向かい側に飾られてある花瓶から一輪の花を手に取った。

 

「生まれろ……生命よ」

 

すると一輪の花はみるみるうちに姿を変え、1匹の白い蛇になった。

 

「これを……とある少女に送ってくれ」

 

「きゅる!」

 

白い蛇は可愛い声で返事をすると、ソーマから手渡された物をくわえて暗闇の中に消えた。

 

「さて……僕は僕で治療しに行くか」

 

そしてソーマも白い蛇の後を追うように暗闇の中に消えた。

 

 

 

 

 

 

 

side ???

 

 

 

帝国歴1175年

 

 

 

 

とある日……両親は私を遠縁の貴族に預けた。自分達にはやらなくてはいけない事があって、その間私に構う事が出来ないからだと、そう聞いた。

 

最初私は、数日間だけここにお世話になるのだろうとしか考えておらず、遠縁の親戚もそう思い込んで私に優しく接していた。しかし何日、何週間、そして今日で丁度1ヶ月になった。

 

そして結果的には……両親は失踪してしまった。理由は大体分かっている。何年も前から怪しい紋章学者を名乗る者につけまわされていたからだ。私も紋章を持っているのではと被害に遭いそうになった。それでも両親が何時も側にいて助けてくれたから、私はどうもなかった。

 

でも……多分その紋章絡みで私の両親は失踪したのだと思う。私からその紋章学者を遠ざけて遠縁に預ける事で……私を守ってくれたのだと思う。それには……感謝しないと……

 

 

 

(だけど……寂しい……)

 

私は……両親がいたからこそ、自分が標的にされそうだった時もまだ気丈には振る舞えていた。まだ笑顔でいる事が出来た。それに、やる事が終わったら私の事を迎えに来てくれると……そう思っていたから知らない遠縁の家でも過ごす事が出来た。

 

(でも……もう限界……)

 

遠縁の貴族……今では両親が失踪してから養子として迎えられてはいるけど……私を引き取ってくれた義父は野心家で、少しでも自分が高い位置につきたいが為に何でも利用する。私もその1つだ。数日の間ならばと優しく接してくれていたのがまるで嘘かの様に……

 

それと私には、両親から受け継いだ紋章もある。 これは義父も知っている事で公表するなと言われるくらい。そもそも間近で両親がこの紋章のせいで振り回されたのだ。自分でそんな事なんてしない。

 

「……この紋章さえ無ければ、私は」

 

もっと自由な生活ができて、両親ともこれからも楽しく生活出来たはずなのに……

 

(今の生活が……辛い。こんな紋章なんて捨てて……自由になりたい)

 

「誰か……私を……」

 

 

 

 

 

 

 

助けて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きゅるきゅる」

 

「っ⁉︎」

 

 

 

どこからか何かの鳴き声が聞こえた。当然義父も見栄のために動物は飼っているが……こんな鳴き声をした動物なんて私は知らない。

 

「きゅる! きゅる‼︎」

 

「足下から……」

 

足下を見ると、どこまでも白い蛇がいた。どこから迷い込んで来たのか……しかも何か咥え込んでいた。その白い蛇はそれをこちらに突き出してきた。

 

「受け取れ……と言っているのかしら?」

 

「きゅる!」

 

肯定している様に返事をする蛇。私は加えているものを受け取った。それは少し分厚い本だった。その本には元々羽根ペンが付いていて、小さいながらもインクの入れ物も付いていた。興味本位でそれを開くと、本の中身はどこも真っ白で何も書かれていなかった。未だに白い蛇は足下にいるけど、どうして私にこれを渡したのだろう。そう思った時だった。

 

[もうそろそろこの本を受け取った頃合いだと思い、僕は文字をしたためよう]

 

「っ⁉︎」

 

1番最初の空白のページに文字が浮かび上がった。唐突で驚いたけど、本は落とさなかった。

 

[急で驚かしてしまった事は謝ろう]

 

次に浮かび上がったのは謝罪の文字。まるでこちらの様子が見えているかの様だった。

 

[僕は……まぁどこにでもいる様なただの医者だ。それよりも君の名前を教えて欲しい]

 

「名前……でもどうやって……」

 

[この本と一緒に羽根ペンとインクを付けてある。それで空白の所に言いたい内容を書けば僕に分かる仕組みだ。簡単に言えば交換日記というものになるか]

 

「交換日記……」

 

私には……生まれた時からこの紋章を持っているが故に友達がいなかった。そして交換日記というものも……勿論やった事がない。でも興味はあった。相手がその時何を思い、何を感じて文字を綴っていくのか……私もやってみたいと思っていた。

 

私は……まさかこんな形でできるとは思っていなかったし、初めての事で何を書けば良いのか正直分からないけれども、このお医者さんが書いてくれた様に……簡単に書いてみることにした。

 

[わ、私の名前はマリアンヌ。マリアンヌ=フォン=エドマンドです]

 

[マリアンヌと言うのだな。よし、名前は覚えた。それで……何故僕が君にこの本を渡したかというと……君が病気にかかっていると思ったからだ]

 

「病気?」

 

私はこれまで……確かに何回か風邪などを引いた事はあったけれども、それも大した事ではなかったし、それ以外では大きな病気になんてかかった事なんて無かった。だから私は、私が病気にかかっていると言われて疑問に思った。

 

[君は……確かに疑問に思う事だろう。自分は病気にかかっていないと。だが僕は……君の名前を知る前に、既に君の事情は大体把握しているつもりだ]

 

(えっ……わ、私の事情って……まさか……)

 

[君が今思っている通り……僕は君にとある紋章が受け継がれている事を知っている]

 

「っ⁉︎」

 

[だが、僕はこの事を別段誰にも言う事はないし、それで君を恐れる事もない]

 

「っ⁉︎ そ、そんな事……」

 

[僕が嘘を付いていると……多分君は思っている事だろう。まぁそう思われても仕方がない。何せこのやり取りの時点で怪しまれても仕方がないのだから。だがこれだけは……難しいかもしれないが分かって欲しい]

 

[僕は……君にどんな事があったとしても味方になると]

 

「っ‼︎」

 

私の味方になる……確かあの紋章学者の人も、そう言って私の両親に近づいてきた筈だ。だからその言葉を言われても……私は簡単にこの人物を信じる事が出来ないでいた。

 

[ふむ……どうやら信じてもらえない様だ。まぁ僕も急にそう言われて信じるかと言われたら信じない方だが]

 

[まぁそうなると思って、君に少しでも信じて欲しい一心で昔話をしよう]

 

「む、昔話?」

 

[……それって、どんな話ですか?]

 

[そうだな。僕が昔……とある珍しい病を治した時の話をしよう]

 

「珍しい……病」

 

そしてこの本の持ち主であろうお医者さんは綴り出した。内容は……とある紋章を持っていた者が、力の制御が出来ずに暴走してしまって獣になったもいうお話。その獣は力を制御できず人々を襲い続けた。

 

そんな時にこのお医者様が、その獣を治療して人の姿に戻し一件落着した……簡単に纏めるとそういうものだった。

 

でもこれって……

 

(まるで……私が持っている紋章の……)

 

[それから僕は、その者が持つ武器を手放せと言った。それからはその者も獣になる事は無かった。それからというもの、その武器はどこかに大切に保管されていると聞いているな]

 

[……その、まさかその治療したというのは]

 

[気になるか? 確か名前は……凄く昔だから忘れてしまったが、今の書物でいうところの……]

 

 

 

 

 

 

[抹消された英雄……だったかな]

 

「っ⁉︎ う、うそ⁉︎ そ、そんな事って……」

 

[そ、そんな事有り得ません‼︎ だってその抹消された英雄も1000年前のお話です! あなたがもし本当に治療したとしても、あなたは寿命でとっくにこの世界からいなくなっている筈です! だからそんなのデタラメです‼︎]

 

[そう言われてもな……実際に僕は治療したし、そこに嘘などはない。だが君がそう思いたいと言うのなら……それは仕方の無い話だ]

 

(……本当にこの人は……本当の事しか話していないの?)

 

[ふむ……それにしてもその物を治療してから既に1000年も過ぎていたとは……いやはや時代の流れは僕が思っているよりも早いらしい]

 

「そ、そんな……で、でも……」

 

[あ、あなたは一体……]

 

[先も記した通り、僕はただのしがない医者だ。それ以上でもそれ以下でもない]

 

なんだか不思議な気持ちだった。私は人付き合いは、昔から避けていた事もあって苦手だった。だからこんなにすらすらと自分の思いを言えるはずがないのに……

 

(どうして……この人にだったら……)

 

[……あの、今が何年かご存知ですか?]

 

[さぁ、僕は医療にしか興味がなかったからな……だから今が何年かなんて気にしなかったな]

 

そんな答えが返ってきた。だから私は今が何年でなんの節か答えた。

 

[そうなのか……もうそんなに時期が経っていたのか]

 

[あ、あなたはその……どこに住んでいるのですか?]

 

[僕がいる場所か……そうだな。ただただ真っ暗な場所……そうとしか言えない。何せこの空間はどうなっているかも分からないからね。ただ君と話して気付いたが……どうやら僕のいる空間は君がいる空間とは時空列がとても捻じ曲がっている様だ]

 

[そ、そうなんですね……それは……退屈では有りませんか?]

 

それからも本のやり取りは続いた。気が付けば自分から話を振っていて……

 

(私……普通に他の人と話せる)

 

確かにこれは、本でのやり取りだからかもしれない。でも今までの自分だったら必要最低限のことしか話す事はしなかったし、ここまで会話をする事もなかった。

 

[そうか。君は動物と接している事が好きなんだね。なら今回送ったのは……まぁ馬とかではないけど良かったかな?]

 

そう言われて、今は机の上に移動した白い蛇を見てみる。白い蛇は突然見られたからか、「なに?」って顔で顔を傾けて私を見ていた。

 

「ふふっ……かわいい」

 

白い蛇の頭を人撫ですると、まるで擽ったいかのように目を細めていた。

 

[えぇ、あなたが送ってくれた蛇はとても可愛いです]

 

[そうか、それなら良かった。まぁともかくとしては……

 

 

 

 

僕は誰がなんと言おうと君の味方でいる]

 

[っ! はい‼︎]

 

そこからは先程やっていたような単純な会話が続いた。私はいつのまにか……この本の向こう側で話をしてくれる人と話すのが楽しくなっていた。

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ……どうやら最初から出向かずにこうしておいて正解だったようだ」

 

最初から出向くのも良かったが……それでは警戒して何も話してくれないと思った。だからこの手段を取ったわけだが……合っていたようだな。今でも相手側……マリアンヌといったな。その子から僕の持っている本に言葉を投げかけてくれるし……

 

(これなら直接対面する日も近いかもしれないな……)

 

経過観察……断じてカウンセリングではない。僕に直接会ってどれほど話せるか……僕としてはこの本に書き込んでる事と同じくらいに話すことができていたら、大体の治療はできている事になる。

 

それにしても……

 

「貴様が今回の病原の元凶だな……自分の益だけ優先して他人を苦しめるとは」

 

「なっ⁉︎ わ、私はただ抹消された英雄が持つとされていた紋章の事を調べたかっただけで……」

 

「だからと言って貴様に何もしていない無害な者達を苦しめる理由にはならない。これは……治療が必要だな」

 

「わ、私に何をするつもりだっ⁉︎」

 

「何を……そうだな。今僕の頭の中で浮かんでいる事としたら……

 

 

 

 

 

 

 

紋章を見るたびに今回の事を思い出させる……というのを治療としてはいいと思うな。よし、今回の治療はそれにしようか」

 

「ま、待ってくれ⁉︎ わ、私が悪かった‼︎ だからそれだけは「さぁ……治療しようか」やめてくれぇっ⁉︎」

 

 

 

 

この日、とある女の子は生きる事に活力を見出し、とある1人の紋章学者は、紋章を見るたび絶望で苛まれたという……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はちょっと書いていてグダグダになってしまい、着地地点もないまま書き上げてしまいました。

それで前、次で本編やりますと言ってたんですが、まだ肝心な事をやっていなかったのでそれと後もう1つくらい書いてから本編に入ろうと思います!

それでは、また次回に!
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