僕は医療行為をしたいだけなのだが……   作:橆諳髃

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今作までに評価を付けてくださった読者の皆様

☆10 白霧 剣 様
☆9 れすぽん 様
☆7 有限少女 様
☆2 トゥ∽ 様
☆1 ロンゴミ星人 様 fv304 様

また短期間のうちにこれだけの評価をして下さったありがとうございます‼︎

それでこれだけ遅れた理由は……まぁ風花雪月の2週目をじっくりやってたのと、FG○のイベントをギリギリまでやっていたからですね……

それと、読者の方からの指摘で『年代を入れて欲しい』との事だったのですが……まだ修正出来てません! 申し訳ないです……

では、今回はソーマが倒れた後の事を書きます! ネタバレにはなりますが……新しいキャラクターが出てくるかも……とだけ言っておきます。

それでは、どうぞご覧下さい。


6話 この僕が……引き籠りだと……

 

 

 

 

 

 

僕が倒れて目覚めた2日後、漸く元の業務に戻った。アンドロイド隊達からはまだ休むべきだと言われたが……僕としては医療の進歩のために立ち止まるわけにはいかない。という事でまた研究に戻ったのだが……

 

 

 

 

「ソーマ、時間です。ここで休憩にしましょう」

 

「いや、まだいk「ソーマ?」……分かった」

 

「良い子ですね。後でヨシヨシしてあげましょう」

 

 

 

会話から分かると思うが、最低1人僕に見張りがついた。理由は言わずもがな、僕が研究に没頭しすぎないようにだ。

 

(にしてもヨシヨシってなに?)

 

流石に僕もA2にビンタされて、今のやり方ではまた同じ事の繰り返しになりそうだったために時間配分も自分で決めるようにしたが……

 

「これだと前と同じじゃ無いですか⁉︎ ダメです! やっぱり私達がソーマさんの事を見る体制を整えないと‼︎」

 

と、6Oに言われた翌日からこうだ。そして今は21Oが僕の側で見ている。

 

「体調はどうですか?」

 

「あまりいつもと変わらないな」

 

「そうですか。無理をしていないようで何よりです。お茶が入りましたのでこちらをどうぞ。後お菓子もありますから」

 

僕はいつのまにかセッティングされた席に座り、そこで21Oからお茶を振舞われる。

 

こんな事をいつのまに覚えたのかを聞いたら……どうやら外の世界で貴族がお茶などの作法を大事にしているからとかで、それを独学で学んで今に至ると。

 

(にしても……独学にしては美味しいな。それにお菓子も)

 

「あの……どうですか?」

 

「ん? あぁ……美味しいよ。それに用意してくれたお菓子も」

 

「そうですか。お口にあって何よりです」

 

「だが、このお菓子はどこから用意してきたものだ? 流石にこの真っ暗闇の世界に露店などないが……」

 

「お、お菓子は……私が作りました」

 

「そうなのか? しかしながら材料は無いと思うが……」

 

「それもこちらで用意したんです。アンドロイドの中には農耕が好きな者達もいますから……だから頼んで必要な分だけ準備してもらったんです」

 

「い、いつのまに……」

 

「ソーマが研究に何年も没頭している間にです。それも何十年も前から……そこまで優先事項も高くは無いので報告は今更になりましたが……勝手な事だったでしょうか?」

 

少しだけ21Oが申し訳無さそうな顔でそう言ってくる。確かに早い段階で報告して欲しいと思うが、僕もやってしまったからな。強くも言えない。それに……

 

「いや、とても良い事だと思う。僕は他の知識があるにしても、それをするだけのノウハウが無いからな。それを君達が、僕の指示なく自分達の意思で好きにやっている。それはとても喜ばしい事だと僕は思う」

 

「それに、君達がそうしてくれたおかげで僕も久し振りに……こんなゆっくりした時間を過ごせるんだ。褒めることはあれど咎めることなど何もないさ」

 

「な、なんだかホッとしました」

 

「僕がそれぐらいの事で怒るとでも思ったのか? 僕は……患者が薬の用法を間違えて使用したり、命を何も思わずただの物として……そして自分の益だけの為に他者を蔑ろにする存在に対しては怒りを覚えるが、今回の事は寧ろ喜ばしい事だ。だからこのお菓子とお茶を淹れてくれた君に感謝している。それとこの材料を用意した子達にも感謝していたと伝えて欲しい」

 

「それはソーマが直接伝えるべき事です。研究も良いですが、あの子達にも関わってあげて下さい」

 

「……そうだな」

 

「えぇ。ソーマが幾分か素直になった様で私は嬉しいです。そんなソーマにはヨシヨシしてあげます」

 

そして僕は21Oに頭を撫でられた。しかしこれには何の意味があるのだろうか? まぁ何故かこうされていて落ち着くから僕は何言わないが……

 

(それにしても……こうされていてあの時を思い出すな)

 

確か……前世で僕の両親が死んで、その後親戚に預けられて幾日か過ぎた時だったな……

 

「ソーマ? どうかしましたか?」

 

「いや……材料とか用意した子達にどう言葉を投げかけるかを考えていてな」

 

「いつも通りで私は良いと思いますよ? 何しろ皆……貴方に感謝する者達ばかりなのですから」

 

「そうか……なら普通にしようか」

 

「えぇ、そうして下さい。それと……」

 

「ん? なんだ?」

 

「その……ソーマの事を抱き締めても良いですか?」

 

どうして21Oが僕にそうしたいと急に言い出したのか……やはり僕には分からない。これだったらもっと早くに、研究に没頭するだけでなくアンドロイド達ともっと接しておくべきだったな。

 

 

そんな一幕が約数時間前で、僕はアンドロイド隊を皆集めている。理由としては、これからの事を話す為だ。まぁ魔物が最近ここに迷い込む事もあるから、哨戒中のアンドロイド隊はそのまま哨戒に出てもらっているが、後でそれも共有する。

 

「仕事の途中だと言うのに、急な呼び出しですまない。今回僕が皆を集めたのは、これからの事を話す為だ」

 

「これからの事ですか?」

 

「あぁ。僕は、医術の進歩のためにここで医学の研鑽や、それを支える機械などを作ってきたが……思うところがあってな」

 

「思うところ?」

 

「あぁ。今更ながらだが、僕は医術の進歩と言っておきながら、あまり外の世界に発信していないと思ってな。だから思い切って拠点をここから外の世界へと移そうと思っている」

 

「た、確かに今思えば……ソーマさん私達が来た時からここに引き篭もって研究してましたもんね」

 

「引き篭もり……」

 

何故だろう……その言葉を言われるだけで心にグサッとくる物があるな。

 

「そういえば引き篭もりというとこの前とある映像をみましたよ? 何でもとある貴族が自分の子供に対して英才教育をしたものの、それが返って引き篭もりになったってものが」

 

「ほぅ……その話をもう少し詳しく教えてくれて」

 

「え、えぇ。良いですよ」

 

ふむ、カウンセリングは苦手だが……これも医術の進歩のためだと思えば何とかなるだろう。それに最近は引き篭もり気味だったし……

 

(ん? 結局大事な話の途中だったはずなのにまた違う話になったな……)

 

6Oから話を聞いた後でまた大事な話に戻りました……

 

はてさて……今回は誰を治療(救い)に行くのやら……

 

 

 

 

 

side ???

 

 

 

帝国歴1172年

 

 

 

今日も日が沈んで街に明かりが灯る。煙突がある家からは煙が立ち上り、所々で賑やかな笑い声が溢れ出す。

 

そして街の中にある1番大きな屋敷も例外ではなく、各部屋ごとに明かりが灯っていた。

 

しかし他と違うとするならば……とある部屋だけぼんやりと明かりが灯る程度であった。その部屋では……

 

 

 

 

 

「ふっふふっふふーん♪ ふんふんふーん♪」

 

と、なんとも可愛らしい鼻歌を歌いながら少女がなにやらしていた。どうやら糸と針、そして布などを使って何やら作っているようだ。

 

女の子であるならば、イメージとして可愛い人形などを作ったり、そして人形を着飾るために専用の衣服を作るなど……勝手ながらそんな光景を思い浮かべてしまう。

 

「えっへへ! できたぁ〜」

 

縫っていた糸を切って針を置いた少女の手にあったもの……それはとても可愛らしい女の子のにんgy「今日も可愛い食虫花が出来たなぁ〜」……食虫花であった。

 

よくよく部屋を見渡せば、可愛い女の子の人形などどこにもなくその代わりに他の食虫花や動物の縫いぐるみがあった。少女が出来たばかりの食虫花を空いたスペースに飾ろうとした時……

 

キュルルル……

 

「あっ……」

 

多分少女のお腹が鳴ったのだろう……なんとも少女らしいと言えば少女らしいお腹の音だ。

 

(そ、そういえば今日もお昼から引き篭もって何も食べてないんだった……でも今から食べに行くのも遅いし……)

 

「何よりお父さんに会いたくないなぁ〜」

 

そう、この少女はとある問題を抱えていた。それは重度の引き籠りである。その要因になったのは彼女の父親にある。彼女も由緒ある貴族の生まれであるが、何かと父親の教育が厳しかったのもあり今に至る。

 

最初は彼女も父親の想いに応えようとするが、中々成果を出すことが出来ず……それに父親が厳しく叱咤した。時には愛の鞭として手を出したこともあっただろうが、父親としては我が子がちゃんとした貴族として振る舞えるようにである。

 

だがそれがいけなかったのだろう……彼女は引き篭もりになってしまった。そんな姿を見て父親も我が子への興味が無くなったのか、それ以来彼女に対して教育をしなくなった。

 

だからこそ彼女は父親が嫌いであり、いつのまにか人と接するのも苦手となり、数年も引き籠る状態となっていた。

 

「あぁ……でもお腹が減ったなぁ〜……明日の朝まで何も食べないのとかもたないよぉ〜」

 

「そうか。それは確かに辛いな。あまり気休めにはならないかもしれないがこのお菓子を食べると良い」

 

「あっ、それはどうもありがとうございます」

 

彼女はお菓子を受け取って口に入れた。

 

「っ! んん〜っ‼︎ おいしぃ‼︎」

 

「そうか。それは良かった。なにぶんお菓子作りは初めてだったのだが、どうやら美味しく作れていたようだな。まぁ数はまだあるから遠慮なく食べると良い」

 

「あ、あなたは神様ですか〜⁉︎ こ、こんなベルに初対面で優しくしてくれるなんてぇ〜⁉︎」

 

「ん? 神ではないが……まぁ通りすがりだな」

 

「そ、そうなんですかぁ……。でも嬉しいです! このお菓子まだ食べても良いですか?」

 

「勿論。遠慮なく食べると良い」

 

「あ、ありがとうございます‼︎」

 

そして彼女は通りすがりから貰ったお菓子をまた1つ、2つと食べていった。そして3つ目にさしかかろうとした時……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って、あなた誰ですかぁぁぁぁっ⁉︎」

 

「今更だな」

 

彼女は今の状況に漸く気付いたようだ。

 

「あ、ああああなた、ど、どどどうやってここにぃっ⁉︎ 扉も窓も締め切って誰も入らないようにしてたのにぃ〜っ⁉︎」

 

「どうやって? 普通に僕が作ったドアからだが?」

 

「そそ、そんな事を聞いているんじゃないんですぅ〜っ⁉︎ べ、ベルに何をするつもりかって話ですぅ‼︎」

 

「君がさっき言った質問の意図とまるで違うような気がするが……まぁ良い。単刀直入に言おう。君に(治療という面で)興味があってきた。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

「ど、どどどどういう事ですかぁ〜⁉︎ べ、ベルに興味を持ってどうしようっていうんですかぁ〜⁉︎ ま、まさか私のことをとって食おうとかって、そう思ってますよね? いえ、絶対そうですぅ‼︎」

 

「ん? 何故僕が君の事を食べないといけない? まだ会って初対面だろう? 何故そう行き着くんだ?」

 

「初対面だからですよぉ〜⁉︎ ベルの事を誰かから聞いて、その誰かがベルの事を邪魔だと思って消そうとしてるんですぅ〜! そ、それでその依頼を頼まれたのが、い、今ベルの目の前にいるあなたのことなんですぅ! でもベルは食べても美味しくなんてないですっ! だからやめてくださいぃ‼︎」

 

とまぁ、僕の目の前にいる彼女は壮大な早とちりをしていた。

 

(にしてもこれは重症だな……ある意味治療が必要だ)

 

だが彼女はどこか身体が悪い訳ではない。これは僕が苦手とするカウンセリング方面で、心が傷付いている状態だ。

 

(だが僕もいつまでも苦手だからといってそのままにするのはダメだな)

 

「まぁまずは落ち着いて欲しい。自己紹介からしていこうじゃあないか」

 

「じ、自己紹介……ですか?」

 

「そうとも。僕は……そうだな。アスレイ、とでも呼んでくれ」

 

「アスレイさん……ですか? でもそう呼んでくれって事は……偽名なんですか?」

 

「一身上の都合というものだな。僕も本名を名乗りたいところだが……何かとこの名前を出すと面倒だと自分で思っているからね。だが名前がなくては、こうやって会話をする時に困るだろう? だからこの場ではアスレイと、呼んでくれ」

 

「な、なんだかよく分からないけど、わ、分かりました。わ、私はベルナデッタって言いますぅ!」

 

「ベルナデッタか……よし、覚えた。それでベルナデッタ、そもそも君をとって食べるのなら態々お菓子など与えず君を襲うだろう? 現に僕は君に気付かれる事なく近くに来れたのだから」

 

「た、確かに……で、でもでも! ベルが油断したところを……」

 

「それもない。そもそも僕をなんだと思っている? 確かにいきなり現れた時点で100%怪しいと自分でも理解しているが、だが僕は君を害さうと思ってここにいるわけではない。さっきも言っただろう? ベルナデッタ、君に興味があってきたと」

 

「べ、ベルに興味を?」

 

「そうだ。君は見たところ……重度の引き籠りの様だな」

 

「っ! た、確かにそうですけど……」

 

「その原因としては……まぁ人間関係、特に君の親が関わっていると思うが、今回はそれについてをとやかく言いにきたわけじゃあない。少し僕の話でもしてみようと思ってな」

 

「あ、アスレイさんの話をですか?」

 

「あぁ。僕には……この命を賭してでも叶えたい夢があるんだ」

 

「夢……ですか?」

 

「そうだ。だが僕はそれをしようと熱心に研究していたら……いつのまにか引き籠りになっていたんだ。僕はそう信じたくはなかったが、周りの者から口々にそう言われたさ」

 

(まぁそれもさっき言われたばっかりだがな)

 

「あ、アスレイさんがベルと同じ引き籠りですか⁉︎」

 

「あぁ。昔はまだ良かったが……最近だと特別な事以外では全く外に出なくてな。それにこのままだと、ただ研究するばかりで僕の望みも叶えられないと思った」

 

「だからそろそろそんな生活もやめて、僕の夢を叶える準備をしようと考えているんだ。本格的にな」

 

「そ、そうなんですか⁉︎ で、でもそう簡単に引き籠りをやめるなんて……」

 

「僕には……既に外に飛び立つ覚悟は出来ている。後は……今の所を管理できる者を探しているところだ。まぁそれも何とかなるだろう」

 

「そ、そこまで考えているなんて……アスレイさんって凄いですね……。それに比べてベルは引き籠もってばかりで外に出ようなんて」

 

「別に引き籠りを急にやめろとか、そんな事はないと思うが? 人など、いつどのタイミングでどう変わるかなど分からんからな。だからベルナデッタも……無理して変わる必要などない。そんな事をしてしまった方が、逆に心が傷ついてしまう場合もあるからな」

 

「あ、アスレイさん……」

 

「それにベルナデッタは引き籠もってボーッとしている訳じゃあないんだろう? さっきまでそのぬいぐるみを作っていたその集中力は、誰でも真似できるものじゃあない」

 

「えぇっ⁉︎ でもこれは趣味で……」

 

「趣味でもそこまで集中力が続く者など数える程しかいないだろう。それにベルナデッタはいつからやっていたんだ?」

 

「え、えぇっとぉ……お昼過ぎからですかね?」

 

「それはハッキリ言って凄い事だ。誰にでも簡単に真似できるようなものではない。それに貴族とは、お昼を取っていくらかしたらお茶を嗜むというじゃあないか。ベルナデッタはそれをせずに今までやっていたんだろう? なら僕は君の集中力の凄さは驚嘆に値する事だと思っている」

 

「ほ、本当ですかっ⁉︎ で、でもベルはいつもぬいぐるみを作ってばかりでそれ以外の事は……」

 

「何を落ち込む必要がある? 君はもう少し、自信を持った方が良いと感じる」

 

「じ、自信ですか?」

 

「そうだ。君には……確かに不向きな事が多いと僕も思う。だがそれは他の人だって一緒で、誰にだって誰よりも苦手な事が1つ2つあるものだ。だから度々何かで気を落とす必要などないし、それを後ろ向きに考える必要もない。君は……君が思っている以上にできる事があるのだから」

 

「ベルが……思っている以上に?」

 

ベルナデッタはアスレイの言葉で思慮する。それはこれまで父から受けた英才教育についての事で……

 

『何故お前はこんな事が出来ないのだ⁉︎』

 

時には貴族としてできて当然の基礎を叩き込まれるも、何回やっても出来ず叱られ……

 

『違う! そこはこうだ! もう1回‼︎ できなければご飯抜きだ‼︎』

 

時にはとある所作が出来なければご飯抜きと言われ……

 

『何回そこで間違えたら気がすむ‼︎』

 

社交ダンスの練習では何度も同じ箇所を間違えて足や腕を叩かれたり……

 

(……ベルは何も出来ないんだ)

 

何回もそれを経験する内にベルナデッタの自信は無くなり、やがて自分の部屋に籠った。そうした方が……これ以上自分が父親から期待される事も傷つくこともないから。

 

 

 

 

 

 

 

『さっきまでそのぬいぐるみを作っていたその集中力は、誰でも真似できるものじゃあない』

 

だが、不意に現れたアスレイの言葉は……

 

『僕は君の集中力の凄さは驚嘆に値する事だと思っている』

 

初対面でありながらも彼女の傷ついた心を少しずつ癒し……

 

『何を落ち込む必要がある? 君はもう少し、自信を持った方が良いと感じる』

 

彼女の心を叱咤激励し……そして……

 

『君は……君が思っている以上にできる事があるのだから』

 

その言葉で……彼女は、父親からの暴言暴力とも取れる言葉から解放されたような気がした。

 

 

 

「本当に……本当にベルは自信を持っても良いんですか?」

 

ベルナデッタは……瞳に薄っすらと涙を浮かべながらアスレイに問う。そしてアスレイは……

 

 

 

「あぁ。君は自信を持っても良い。ベルナデッタ……君には君にしか出来ないことがあるのだから」

 

「っ⁉︎ うぅぅぅっ……そう、言ってくれるのは……あなたが初めてですよ。ベルの事を……そんな風に言ってくれる人なんて」

 

「そんな事はない。僕はただ君に会うタイミングが早かっただけだ。僕が来なくても、君にそう言ってくれる人はいただろう」

 

「いぃえ……アスレイさんの言った事が例えそうだったとしても……ベルに同じ言葉でそう言ってくれる人なんていません。アスレイさんの言葉だからこそ、ベルは今とても嬉しくて、少しだけですけど……自分に自信を持とうって思えるようになったんです」

 

「だから……ありがとうございますアスレイさん! ベル、少しだけでも変わっていきます‼︎」

 

「あぁ。でも急に変わりすぎる事はしなくても良い。自分なりの自分のペースで良いからな」

 

そう言いながらアスレイはベルナデッタの頭に手を置いて優しく撫でた。

 

「あっ///」

 

急な事でベルナデッタは赤面して俯いてしまう。

 

「どうした? どこか具合が悪いのか?」

 

「い、いぃえいぃえ⁉︎ そ、そ、そんなことないですぅ〜⁉︎」

 

「何故最後が疑問に聞こえるのかは分からないが……にしてもベルナデッタ。髪が乱れているな」

 

「あっ……こ、これは……普段はメイドの人達がやってくれていたんですけど……引き籠りになってからは誰も部屋に入れてなくて……」

 

「ふむ……分かった。ならそこに腰をかけてくれ。専門ではないが僕が髪をといてやろう」

 

「えっ? えぇぇっ⁉︎ そ、そんな! 悪いですよぉ‼︎」

 

「そう言うな。僕がやりたくてやるのだから」

 

「で、でもぉ……」

 

「とにかく、そこに座ってくれ」

 

「わ……分かりました」

 

ベルナデッタを座らせたアスレイは、どこからか取り出した櫛を手にして彼女の髪をときはじめた。しかしながら最初から櫛でとくと髪が傷んでしまう事も考慮して、手櫛で彼女の髪をほぐすようにとかした。

 

「ひっ⁉︎」

 

「どうした? 痛かったか?」

 

「い、いえ……少しくすぐったかったものですから……」

 

「そうか。だがそれもじきに慣れる。少しだけ我慢してくれ」

 

「は、はい……」

 

そして彼女はアスレイのなすがままに髪をとかされる。しかしそれが数分も経てば……

 

(あぁ……気持ちいいなぁ〜)

 

ベルナデッタは目を細めて、初めて経験する至福の時間を過ごした。後ろ髪から段々ととかされていって、最後の仕上げでアスレイは全体を優しく櫛でといていった。

 

「さぁ、これでできたぞ」

 

「あ、ありがとうございました。す、すごく気持ち良かったです///」

 

「そうか。それと鏡で今自分がどうなっているかを見てみると良い」

 

「……っ⁉︎ こ、この鏡に映っているのは本当にベルなんですか⁉︎」

 

「そうとも。これが今の君だ。髪を直しただけでこんなにも違って見えるだろう?」

 

「は、はい!」

 

「やっと……自信がこもった顔付きになったな」

 

「えっ?」

 

「外見を整えるだけでも、普段の在り方というのは変わるものだ。髪型を整えただけでも、なんだか自分に自信がついたと思わないか?」

 

「た、確かに……」

 

アスレイの言葉にベルナデッタは頷いた。

 

「ふむ……そろそろ行く時間か」

 

「えっ? どこかに行っちゃうんですか?」

 

「あぁ、僕にもやらなければいけない事があるからな。だが……」

 

アスレイは懐から何やら取り出してそれをベルナデッタち渡した。

 

「もし……君が何かで挫けそうな時は、それに念ずれば良い。そうしたら……いつでもと言うわけではないが、また君の前に現れよう」

 

「ほ、本当ですか⁉︎」

 

「あぁ。では……またな。それとそこにあるお菓子は全て食べても良いものだ。よく味わって食べると良い」

 

そう言ってアスクレイはベルナデッタの目の前で扉を作りそこに入った。そして入ったと同時にその扉もなくなった。

 

「ほ、本当に目の前に扉を作って行っちゃった……」

 

ベルナデッタは、アスクレイが嘘を言っていないと改めて思った。

 

「でも……とても優しい人だったなぁ。あっ、そうだ! 忘れないうちにアスレイさんを描こうっと‼︎」

 

そう思い立ったベルナデッタは、すぐに髪と筆を取り出して描き始めた。今日の……今まで弱気でいた自分を、少しでも変えてくれたきっかけを作った恩人と出会った記念に。

 

しかしその絵が、まさか伝記として描かれてあったソーマ・アスクレイと似ていると気付くのは……まだ先の話である。

 

 

 

 

 

 

一方のソーマは……

 

「ふむ……医療に関してしか興味のない僕が……まさか他の事も楽しいと思えるとはな」

 

(まぁカウンセリング云々はまだ苦手だが……)

 

カウンセリングは別問題であるが、他の事もたまにはやってみても良いと思ったソーマだった。

 

「ソーマさんおかえりなさい!」

 

「ただいま6O。僕がいない間に何かあったか?」

 

「いいえ、特に何もないですよ。後、巡回中のアンドロイド部隊の皆さんももうすぐ帰ってくるはずです」

 

「わかった。なら僕はそれまで少し休んでおくか」

 

「分かりました。では私がお茶を淹れてあげますね!」

 

「ん? 6Oが僕にか?」

 

「そうですよ? 私だって、見様見真似ですけどそれっぽい形になってるはずです!」

 

「そうか。なら僕は期待して待つとしよう。後は……外に本拠地を移したとしてここの管理をどうするかだな」

 

エーデルガルトについては、既にいくらか送っても大丈夫そうな貴族の有力候補を絞っている段階だ。後もう少しで結果も出てくるだろう。エーデルガルトの兄弟達もその様に手配したが……何故かそれを拒んで僕の元に居たいと言う。1回断ったが、それでもめげずに言うものだから……ならばと言う事で条件付きではあるが、彼らの申し出を承諾した。まぁその条件というのも……僕の医術を世界に広める手伝いをして欲しいというもので、元より彼らもそうするつもりだったようだ。

 

それをしてもらう前に……彼らにはしっかりとした大人になって貰いたい。ヤブ医者の様な者にはなって欲しくないからな。だからこそ、後数年したら外の世界で勉学などを学べる学校というものに通わせようと思う。

 

確かに僕達でも教養などを教える事ができるが……それではダメだ。誰か1人でも頼れる者がいないと後々困ると僕は知っているからな。だからこそこう考えている。

 

『こちら循環部隊より緊急連絡! ソーマ様聞こえますか⁉︎』

 

僕がそう思っているところに、連絡で巡回部隊のリーダーを務めている者から焦っている様な声を聞いた。

 

「どうした? 何か手に負えない様な事でも起きたか?」

 

『い、いえ……そういう訳では無いのですが……ただ』

 

「ただ?」

 

『わ、私達と同じアンドロイドを壊れた状態で発見しました。それも……これは司令官タイプのものであると……』

 

「……分かった。ならば回収次第僕のところへ運んでくれ」

 

「ソーマさん? どうかしたんですか?」

 

「あぁ、巡回中の部隊が壊れたアンドロイドを見つけたと報告してきてな。それも司令官タイプのな」

 

「えっ? そ、それって……」

 

「前の世界にいた上司の可能性がある……か。まぁそれも見たら分かることだろう。ともかくお茶はまた今度にしよう。そのアンドロイドとやらを治療せねばな」

 

ソーマは外の世界から戻った足で、緊急治療室へ歩を進めた。

 

 

 




読んでくださってありがとうございます!

まぁ結果的に風化雪月のキャラクターを出す事になりましたが、まさかこの様な形で出すとは……私自身も思ってませんでしたね。

というよりもまたなんというか……複雑な展開になってしまいました。

しかもまさかの支援関係でいうと、一切無しから支援値Aまで上がるという……会ってそこそこの会話でそんな感じになってますね。まぁ他の話もそんな事になっていると今更ながら思います。

さて、次はいよいよ本腰入れて外に拠点を移す話を書いていきたいと思います。

それではまた!
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