僕は医療行為をしたいだけなのだが……   作:橆諳髃

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6話〜7話までの間で評価をして下さった読者様

☆9 むらさき君 様

評価して下さってありがとうございます!

それにしても今月に入ってからは少々ペースが落ちてしまっており、この物語を楽しみに待って下さっている読者の皆様には申し訳ありません。

漸く新しい話をかけましたので、どうかご覧下さい。


7話 新たな仲間(管理職) そしてエーデルガルトのお願い

 

巡回中のアンドロイド部隊が持ってきた壊れたアンドロイド。それが僕の目の前にある。しかしながら人の形を保ってはいない。手足が千切れ、胴部分も所々欠損がある。

 

これを見てしまえば、誰もが治すことは出来ないと口を揃えて言うだろう……

 

「この程度容易い……」

 

僕には医術の知識の他に、他の知識も持っている。その1つがロボットのメンテナンスが出来る知識だ。それもこの何十年……はたまた何百年と経っているかもしれないが、既にアンドロイド達を何回も診てきた。だからこそ、どれだけ壊れていようが僕には関係ない。

 

(そもそも9Sが頻繁にボロボロにされるのを診てきているからな)

 

場合によっては今の様な状態の9Sも診てきた訳で……こんなのどうって事はない。それにこちらにはデボルとポポルがいる。彼女達ほどアンドロイドなどのメンテナンスが出来る人材もいない。彼女達が補佐してくれているおかげで、僕も迷わずに治すことができる。

 

(……よく今まで9S生きてたな)

 

今更ながらそう思う僕がいるな。よくあれで生きていると思うよ。しかしA2ももう少し加減できないものか……

 

ソーマがそう思いながら目の前のアンドロイドを治していく。デボルポポルも、ソーマの次の動きが分かっているかの様にサポートしていく。そしてそこまでの時間も要さず、目の前のアンドロイドは人の形を取り戻した。

 

「そして今再び命を宿す」

 

ソーマは診察台に横たわるアンドロイドの真上で両手を掲げた。すると、ソーマの近く、台の上に置かれていた何らかの素材がソーマのかざす手に集まりだした。その中には、先日シトリーの手術をした際に捉えた白いドラゴンの血も含まれていた。それらは混ざり、やがて赤い液体ができると、その液体を覆う様に透明な丸い膜が出来た。

 

(これは確かに僕が……アスクレピオス本人が再現した様な真薬ではない。現代よりも少し性能が良いAEDみたいなものだ。そして……僕は目の前のアンドロイドに、この薬がどの程度効くかの効能を確かめる為に利用する様な……そんなクズにも見える)

 

「だが、助けられる命を……僕は見捨てたくない」

 

例えその者が死んで一定時間経っていたとしても……助かる見込みがあるのならば救いたい!

 

倣薬・不要なる冥府の悲嘆(リザレクション・フロートハデス)

 

ソーマは球体をゆっくりと横たわるアンドロイドに近付け、そして浸透させる様に入れ込む。

 

「再び芽吹け、生命よ」

 

完全に入ると、球体を入れた所から体全体にかけて赤い波紋がまるで信号を発信しているかの様にアンドロイドの体を伝わっていく。それが徐々に収まっていった。

 

しかし数秒してもアンドロイドが目覚める気配がない。

 

「し、失敗した……のか?」

 

「……分からない。理論的には……既に目覚めているはずだが」

 

だが薬を投与して既に30秒経っている……

 

(僕は……救えなかったのか)

 

「ソーマ……あまり気を落とさないで。貴方は修復不可能な状態のアンドロイドをここまで元に戻せた時点で凄いの」

 

「しかし……僕の目の前に横たわっているアンドロイドは……君達の世界では上司だと聞いている。君達を救えて、目の前のアンドロイドを救えないというのは……」

 

「私達は……まだ運が良かったのよ。私の場合は……確かに回路が焼き切れていたわ。それでも殆どの部分はまだ生きていて、パーツを取り替えたりメンテナンスを行えばそこから徐々に回復も出来ていたもの。でも司令官の場合は……直接バンカーの爆発と一緒に巻き込まれた。欠損が激しいといっても、人の形を再び取り戻せるくらい揃っているだけでも奇跡的で、さっきも言ったけどあの状態からあそこまで治せた時点で、ソーマは凄いのよ。だから……元気を出して」

 

ポポルが僕に言葉を投げかける。確かに彼女の言う通り、あそこまで壊れていた状態をここまで修復できた時点で凄い事なのかもしれない。あの状態を見た人からは、寧ろ治す方が無理で……無謀にもここまで修復した時点で誰も攻める事なんてしないのかもしれない……

 

(だけど……僕は……)

 

ソーマがポポルの言葉でも顔を上げない。倣薬をアンドロイドに投与して1分経とうとした時だ。

 

ブゥンッ

 

「っ⁉︎」

 

微かな変化に気付いたのは項垂れていたソーマだった。何かが付くような音が聞こえたのだ。ソーマがいきなり顔をあげた事に、デボルとポポルは驚く。

 

「再び……命を宿した」

 

「っ⁉︎ ほ、本当か⁉︎」

 

「な、ならっ!」

 

「彼女をメンテナンスルームへ。まだやる事はある」

 

ソーマはデボルポポルと共に彼女をメンテナンスルームへと運ぶ。彼の信条である……目の前の患者を救う為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side ???

 

 

 

 

バンカーが爆発に巻き込まれた時……私も巻き込まれて砕け散る感覚を覚えた。これが死なのだと悟ったと同時にもう意思はなくなっていた。宇宙でバンカー諸共爆発したのだから、例えパーツが残っていたとしてもそのまま宇宙を彷徨うか、はたまたどこかの惑星の重力に囚われて焼き尽くされるか。

 

(だが何故だ? 爆発して何もかも無くなったと思っていたのに……何故未だにこんな思考ができる?)

 

未だに暗い闇の中であるというのに、思考することができる。壊れたのだから本来こんな些細な事も思考出来るはずもないのに……

 

(っ⁉︎ 指が動く⁉︎)

 

そんな事……出来るはずがないのに。いや、だんだん意識も浮上している気が……

 

君はまだ……生きている。さぁ……瞳を開けてみようか

 

(誰だ? そこにいるのは? 私はこの声に聞き覚えはない。だが……)

 

不思議と私はこの声に従ってみようと思った。そして目を開けると……

 

「ふむ。起きたか……具合はどうだ?」

 

目を開けると、そこには白い長髪の男が立っていた。前髪を交差させ、髪先が目の下に来るように。瞳は黄色いが、どこか淀んでいるような感じが伺える。しかし肌は透き通るように白く、アンドロイドではあるが女性である私ですら嫉妬してしまいそうだ。そして衣服は……これはどう表現すれば良いのか、まるで神が着るような白い衣服を身に纏っていた。

 

「? 僕の声がまだ聞こえていないようだな。まだ少し調整が必要か」

 

「い、いや……聞こえて、いる」

 

「そうか。少したどたどしく聞こえるが……まぁ久し振りに発音するのなら無理はない。話していたら慣れるだろう。僕の手は握れるか?」

 

長い袖から手を出した彼の手も、同じ様に綺麗な手をしていた。私は恐る恐る彼の手を握ると……

 

(温かい……)

 

彼の顔は……見るからに冷たいと感じさせる。だかそれとは裏腹に彼の手は……これまでに感じた事がない程温かい物だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

目の前のアンドロイドが起きた。どうやら僕の声も正常に聞こえている様で、手も握れるようだ。

 

「ここ……は?」

 

「ここはメンテナンスルームだ。アンドロイド達の修理、最終調整で使う場所だ」

 

「っ⁉︎ という事は……ここは地球なのか?」

 

「地球……といえばそうなるんだろうな。君の世界では」

 

「ど、どういう事だ?」

 

「そうだな。まずはそこを踏まえて話すとしよう」

 

僕は目の前のアンドロイドに現状を説明した。この世界には人が普通に生活している謂わば人類が繁栄した世界である事を。しかし人同士で争う事も度々あり、それ以外にも魔物も跋扈している世界である事も伝えた。そして今僕たちがいるこの空間は真っ暗闇の世界であり、外との行き来は可能であるが、外の世界とこの空間とでは時間の流れ方が違うという事も。

 

また、アンドロイド達が元いた世界とは違い、文明レベルは何段階も落ちている事も補足した。

 

「成る程……私がいた世界とは随分違うのだな。つまるところ宇宙や宇宙人、それに私達アンドロイドなどの単語も知らないのだな」

 

「そうなる。だがこの空間だけは別だ。僕が一からその機材など組み立てて電気、水道、ガスが普通に通る様にしているからな。後はアンドロイド達に好きにやらせている」

 

「そうか……。どれくらいこちらに我が同胞は来ているのだ?」

 

「そうだな。A2、2B、9S、6O、21O、デボル、ポポル達は代表的か? ともかくその子達との付き合いは長い。他のアンドロイド達は、勿論君達の世界から来た者もいれば、こちらで1から僕が生命を宿した者がいるな」

 

「そんなにも我が同胞がいるのだな……ん? A2もここにいるのか?」

 

「あぁ、いるが? 因みに過去に何があったのかも本人から聞いている。僕は過去君達に何があったとしても……仲裁はしない。面倒ごとは御免だからな」

 

「そう……だな。これは……私達の問題だ。多分あなたが私を治してくれたのだろう。そこまでして貰っているのに、私達の問題を仲裁してほしいというのは烏滸がましい話だ」

 

「当然だ。だが……」

 

「もし仮に君が壊れてしまったとしても……僕が治療してやる。それが僕の仕事だからな」

 

「っ⁉︎ その時は頼りにさせてもらおう。そういえばお礼も、あなたの名前も聞いていないな。できれば名前を教えて貰いたいのだが……」

 

「あぁ……名乗っていなかったな。僕の名前はソーマ。ソーマ・アスクレイという。職業は……しがない医者だな」

 

「ソーマ・アスクレイ……と言うのだな。私は……そうだな。司令官という識別コードしかないからな。ともかくとしてありがとう。私はあなたのおかげで生きていける。にしても……私はバンカーの爆発でパーツも所々欠損したというのに、ほぼ完全体の形で生きている。あなたは優れたアンドロイドなのだな……」

 

「ん? 何を言っている? 僕はアンドロイドではないぞ」

 

「……なに?」

 

「確かに僕はアンドロイドを治せる。だがそれは治療の延長線上だ。さっきも言っただろう? 僕はしがない医者だと。そして僕は……君達が君達の世界で繁栄し守ろうとした……カテゴリー上では人類だが?」

 

「つまりソーマは……人間?」

 

「そうだ。驚いて声も出ないか?」

 

それを聞くと目の前のアンドロイド……一々言うのが面倒だから司令官と呼ぶとしよう。司令官は僕を見たまま動かなくなった。それから約数秒後……

 

「もう1度……手を握っても良いだろうか?」

 

「あぁ、構わない。ただし強く握りすぎるなよ?」

 

差し出した手を……司令官はゆっくりと握った。そして何かを確かめる様に触り始めた。

 

「あぁ……これが……この感触が、この温かさが……人間なのだな」

 

司令官は涙を流しながら呟く。

 

「私は……作られた存在だ。だが私は……私を創造してくれた人間に会ったことがない。それよりもずっと、人類を繁栄させるために地球から機械生命体を追い出すために戦う事しか出来なかった」

 

「……そうか」

 

「だが……私はそれだけだった。今まで部隊の者達にそう命じるだけ命じて……私自身は、何かをした実感がない。命じるだけで自分自身が何かと戦ったこともない」

 

「そんな私が……あなたの手を握って感触を確かめたり、温かさを感じたりする資格など……ないのかもしれない。それでも私は……心というものがあるのなら、まだ触れていたいと思ってしまう。今まで皆に心を持つなと言ってきた私が……」

 

「だから……そんなに泣いているのか?」

 

「はは……滑稽だろう? あの世界では散々に戒めを守らせていた者が……いざ目の前に人間がいて触れ合ってしまうとこうだ。私は今……周りから見たら随分と自分勝手なのだろうな」

 

「……だがそれも、もう守る必要はないだろう?」

 

「えっ……?」

 

「ここはあの世界とは違う。確かにあなたは周りのものに対して、場合によっては他者から見て許されない様な事もしてきたことだろう。それを自分で客観的に見て、今の自分が惨めに感じてる様な……そんな風に捉えているんだと思う」

 

「だが昔は昔、今は今だ。昔をどう思おうと過去が変わるわけでもない。間違いかどうかなど僕には判断が付かないが……今の自分が、それが間違いだったと認識したのなら、僕はそれでいいと思う。それにここは前の世界とは違って、誰もが自由に感情を持っても良い……そんな世界だ」

 

「だから……昔の様な硬い規律に縛られる必要もない。君が……君自身で自由な感情を持って良いのだから」

 

「っ⁉︎ あり……がとう……」

 

司令官は、今まで溜め込んでいたものを全て吐き出すかの様にソーマの目の前で泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

「すまない……恥ずかしいところを見せてしまったな」

 

「なに、気にすることはない。それに……君がそれで恥ずかしいというのなら、僕は既に一生分の恥をこの世界でかいているからな……」

 

「一生分の恥?」

 

「そうだ……思い出すだけで忌々s「失礼しまーす! ソーマさん、司令官の様子は……あっ! 司令官! お目覚めになったんですね‼︎」……」

 

「おぉ……お前は、6Oか。相変わらず元気そうだな」

 

「はい! それもこれもソーマさんに助けられたお陰ですよ! この世界でも信仰されるというのも誰もが納得するくらいです‼︎」

 

「ん? 信仰? どういう事だ?」

 

「興味ありますか司令官?」

 

「まぁ……私もこちらに来たばかりだからな。この世界の情勢について参考になる物ならば是非とも共有してほしいものだ」

 

「……6Oも司令官と積もる話がある事だろうから、僕は一旦席を外そう」

 

ソーマはそう言って立ち上がると、メンテナンスルームを後にした。

 

「急にどうしたというのだ?」

 

「あっ……」

 

「どうかしたか6O?」

 

「い、いえなんでも……」

 

「そうか。それで、その情報とやらを見せて欲しいのだが?」

 

「わ、分かりました……今から司令に送りますね」

 

(そ、そういえば……ソーマさんにとっての禁句だった……うぅ……これからソーマさんにどんな顔で会えばいいの⁉︎)

 

6Oはそう思いながら司令官にソーマの事についての情報を共有した。そして司令官は……

 

(……これがソーマの言っていた一生分の恥か)

 

正直その情報を見て司令官は、ソーマは立派に戦いを止めたと思っている。過去に人類が何回も争いあってきたことは文献にも記録されていたし、争いが終わるのもどちらが敗者になるかを決めるまで続く。

 

それをソーマは、そこまでの犠牲を出さずに争いを終結させたのだ。誰もが真似出来ることではない。

 

しかしそれがソーマにとってはとても嫌な思い出らしい。ソーマ自身は、多分間違った事をしていないと思っているのだろう。ただこれを後世に残そうとした者達が、勝手に尾ひれなどをつけて脚色し、あまつさえ本人の了承もなく宗教のトップの位置に祀り上げているのだ。

 

本人が死んで数年経った後にこの様な宗教を作るのなら……本人としてもあまり文句は無かっただろう。だが現在彼は生きているのだ。そんな彼からすればそれは……目の前で自分の黒歴史を暴露されている心情なのだろう。

 

そしてこの話題が上るだろう事を察知してソーマはメンテナンスルームから退出したのだ。

 

「……とにかくこの世界の情報は少し分かった。ソーマがこの世界での立ち位置がどんなものなのかもな」

 

「はい……」

 

「6O?」

 

「うぅ……また……また私失敗しちゃったぁぁぁぁっ‼︎ これからソーマさんとどう顔を合わせれば良いか分からないよぉぉぉっ‼︎」

 

「い、一旦落ち着くんだ6O! 多分彼も6Oに悪気があってこうなったのではないという事は理解しているはずだ。だから一旦落ち着くんだ!」

 

6Oは数分間司令官に宥められて漸く落ち着いたという……

 

 

 

 

 

 

「少しはこちらの世界がどうなっているかは分かったか?」

 

「あぁ。多少なりともな。それとソーマが言っていた事も……」

 

「そうか……別に僕がいない所でその話をするのは問題ない。6O、だからもう落ち込まなくていい。悪気がないことは、君の性格上理解しているからな」

 

「うぅ……ごめんなさい……」

 

「さて、それはそれで良いとして……体調はもう万全か?」

 

「あぁ、言語機能も十分という程回復したし、身体も動かせる。問題ない」

 

「分かった。それでは皆のところに行こう。最初はフラつくだろうからな。僕の手を握ると良い」

 

「い、良いのか? 私は……いや、私達の重さはアンドロイドでもあるから100kgは優に超えているぞ?」

 

「そんなもの、9Sで充分知っている。あまり心配するな」

 

「そ、そうか……」

 

(9S……一体この世界で何をやっているんだ?)

 

「さぁ、行くぞ」

 

「あ、あぁ……じゃあ、お言葉に甘えて」

 

司令官はソーマの手を握って立ち上がり、ソーマとともに歩き出した。自らの過去を……自分なりの形で償うと同時に、これからの未来を目の前にいるソーマ(人類)の為に使おうと……

 

 

 

 

 

 

ソーマはアンドロイド隊を呼び寄せた。それは司令官の事を紹介する為にでもあるが、これから拠点を外に移す為の事も踏まえてである。

 

「この中には久々に見る者もいるだろうが紹介しておこう。君達の上司である司令官が目を覚ました。これからは司令官も僕の医術の進歩を進める為に手伝ってもらう事になった。前の世界では上下関係はあったかもしれないが、この中では新参者だ。分からない事も多くあるだろうから、そこは皆で補って欲しい」

 

「皆……中には私が与えてきた命令で辛かった思いをした者達が大勢いると思う。正直中には私を許さない者もいる事は承知している。その上で……どうか私は仲間に入れて欲しい」

 

「司令官……」

 

司令官と初めて会うアンドロイド達は概ね歓迎的で、元の世界で上下関係だったアンドロイド達も、雰囲気が変わった司令官を見て 、司令官に対する見方は変わった者がほとんどだった。

 

しかし……

 

「裏切り者の癖に何を今更……」

 

「A2……」

 

「それは言い過ぎですよA2!」

 

A2のその反応に2Bと9Sが反応した。それをソーマは手で制した。

 

「ソーマ?」

 

「これは……2人の問題でもある。僕達はこの2人の問題に対しては、口を挟むべきではない。でなければ……心までは納得できないだろうからな」

 

「ソーマが……そう言うなら……」

 

ソーマのその一言で、A2と司令官以外は口を閉ざしてその場を見守る。

 

「そう……だな。私は、最初からインプットされていた命令に忠実に、そしてそれだけを守る為に規律を犯したものを遮断する様に命じてきた。それにA2達に下した命も……結果的にはお前達を苦しめてしまった」

 

「そうだ。だが……今更そんな言葉を投げかけた所で私の仲間が戻ってくる事はない! 今更どう言われた所で、お前を許す事などない‼︎」

 

「今更……だな。あぁ……私は、これまでに取り返しもつかないと事を、散々してきた。それも自分の手を汚さず他の者の手で。だからこそ……A2が私を許さない気持ちが、心を持った今ならよく分かる」

 

「だから……その憎悪を吐き出す場所が、私を壊す以外に無いのなら……私を壊せ。私は一切……抵抗しない」

 

司令官は目を閉じて首を垂れる。まるで死罪になった者が、執行を待つかの様に……

 

「っ⁉︎」

 

それを目の前で見ていたA2もこれには驚いた。今まで自分を苦しめていた相手が、自らの首を差し出している状況に……自らの予想を超えていたのだ。だがそれも少しの間で……

 

「なら……今までの私の苦しみを味わえ」

 

そう言ってA2は大剣を呼び出して上段に構えた。そして……

 

「ハァァァァッ‼︎」

 

大剣が司令官に振り下ろされた。その衝撃で部屋全体は衝撃の波に襲われ、土埃が舞った。そして土埃が収まると……

 

 

 

 

 

 

「何故……壊さない? 私が憎いのでは無かったのか?」

 

「……」

 

A2の振り下ろした大剣は……司令官の横の床部分を抉っていた。

 

「私は……今この瞬間でも、お前を壊してやりたいと思っている。そこに嘘偽りはない」

 

「ならば「だが……」?」

 

「私は……ソーマにこの命を救ってもらった。失った仲間に貰った命と……ソーマに宿して貰ったこの命は、今の私の中にある。だからこそ私は……仲間と私を裏切ったお前が憎い! だが私は、お前の事を恨みながらもソーマが悲しむ様なことはしたくない。お前も私と同じでソーマに再び宿してもらった命……それを奪うと言う事は、ソーマを否定してソーマを悲しませる事と同義だ」

 

「だから私は……許しはしないがお前を壊さない」

 

「……そうか。分かった」

 

A2は大剣を消すと、そのまま司令官に背を向けてもといた場所に戻った。

 

「大体の話は済んだ様だな。ではこのまま話を進めるが……僕はこの時を待って、拠点を外の世界に移したいと思う。前にもこの話をしていたとは思うが、その引越し作業とやらを今日から進める」

 

「今日から?」

 

「そうだ。しかしながらこちらも拠点としての機能はそのまま残す。こちらからでないとできないこともあるからな。そして今からこの拠点の指揮を、司令官に任せたい」

 

「わ、私か⁉︎」

 

「そうだ。病み上がりなのは分かっているが、前の世界でもアンドロイド隊の指揮を担当していた実績を持つのなら申し分ない。やってもらえるか?」

 

少し考える素振りを見せる司令官。しかしそれも数秒で……

 

「正直新参者の私がその役職に就いていいものかと思う。それに反対する者も出てくるだろう」

 

「それはないと思うが? 何せ君が考える数秒誰からも反論の声が上がらなかったし、反論があったとしても僕が説得しよう」

 

「……あなたが新参者である私を何故そこまで評価してくれるのだ? 私はまだあなたに何も見せてはいない」

 

「僕の直感だ。それで……やってくれるのか?」

 

「ふぅ……あなたは可笑しな人だ」

 

「僕は何も笑かす様な事はしていないが?」

 

「そういう意味で言ったわけではないさ。まぁ、あなたが私をその職に任命すると言うのなら、喜んで就かせてもらおう」

 

「あぁ、助かる。皆もそれで異論はないな?」

 

「「「はい!」」」

 

「よし、後は外の拠点に連れていく者達も発表しよう」

 

そこからソーマは外の拠点に連れ出す者達を指名していった。その中には勿論のことながらA2、2B、9S、6O、21O、デボル、ポポルも入っていた。

 

「以上。それでは各自準備を始めてくれ。またこちらの拠点でそれぞれ新しくなったグループのリーダーも前リーダーからの引き継ぎをしておく様に。僕からは終わりだ。質問はあるか?」

 

質問の時間を設けるも、誰からもないようだ。

 

「では今から動いて欲しい。予定としては明後日辺りだ。後で質問があるなら直接僕のもとに来て聞いて欲しい。それについては後で共有させてもらう。以上、解散」

 

ソーマはそう言って部屋から出る。それに続いて他のアンドロイド達も部屋から出て行き、各々で準備を始めた。そしてソーマが部屋を出て向かった場所は……

 

 

 

 

 

 

 

side エーデルガルト

 

 

 

 

 

ここに来て一体何年経っただろう。いいえ、多分自分でそう思っているだけで、何ヶ月も経っていないだろう。ここは時間の感覚があやふやだからとソーマが言っていたから本当のことだと思う。

 

それにしてもここにいる間は、とても良いことだらけだった。もう一緒に過ごせないと思った兄弟達ともまた元気な姿で会えたし、いくらか体調が戻った姉妹とで遊んだりもした。

 

ただそれだけして過ごした訳じゃない。勿論これからどうするのかも……他の兄弟は、ソーマに着いて行くと決めていた。彼が助けてくれなければ今ここに自分達がいなかったから、だからその恩返しに彼の手伝いをしたいと、皆そう言っていた。それに……私の事も助けたいからとも。

 

そう、私だけ外の世界に戻るのだ。外の世界では、私達があの牢屋からいなくなって1ヶ月程しか経っていないらしくて……どんな手品を使ったのか分からないけれども。

 

そしてついこの間にソーマからも直接言われた。私を預かってくれる貴族が見つかったと。多分ソーマ達は……この期間の間でフォドラ中の貴族全員を吟味して選んでくれたのだろう。私は文句を言わない事にした。

 

(本当は……私もこのままソーマの下にいたい)

 

彼自身忙しい身で、中々会えなかった。でもそんな中でも彼は時折会いに来てくれたし、私にくれたこの本で毎日会話をした。彼は……本当に自分の事は話したがらず、医療の事ばかりだった。でも私は……その日々でも楽しかった。だから……彼の下を離れたくなかった。

 

でも……そんな事をしてしまえばアドラステアの次の皇帝候補がいなくなってしまう。兄弟達は皆、皇帝は私に継いでほしいようで……この事も散々話し合った。

 

そんな事をベットの中で思い出していると、ドアがノックされた。

 

「僕だ。入っても良いか?」

 

「ソーマ⁉︎ えぇ、良いわ」

 

まさかソーマがこんな時間に来るなんて思っていなくて驚いてしまったけど、嬉しかった。だから私は彼の入室を許可した。

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

「エーデルガルト、体調は……といっても聞くまでもないか」

 

「えぇ。あなたのお陰で凄く元気になったわ。ありがとう」

 

「それが医者の仕事だ。お礼などいらぬさ」

 

「でも本心では凄く嬉しいって思ってるでしょ?」

 

「……さて、どうだかな」

 

「ふふっ、まぁ良いわ。それでこんな時間に何の用かしら? 多分直接会って話すと言う事は余程私にとって大事な事よね?」

 

「そうだ。単刀直入に言おう。3日後……僕達が君を預けても良いと判断した貴族のもとに行ってもらおうと考えている」

 

「3日後……随分と急ね」

 

「あぁ。こちらにも事情がある。僕は対してそう思っていなかったが……この前引き籠りと言われてしまってな」

 

「確か6Oも私にそんな話をしてくれていたわ。貴方が引き籠って研究ばかりしてるって」

 

「6Oめ……また余計な事を」

 

「ふふっ、そんな事を話していた時はとても面白かったわ」

 

「ま、まぁともかくだ。確かにそう言われても仕方がないと思う部分が僕にもあってな。このままでは僕の夢が叶えられないのも確かだ」

 

「だから僕は拠点をここから外に移す事にした」

 

「拠点を……外に?」

 

「そうだ。まぁこの空間は時間などの概念が物凄く捻じ曲がっているからな……外に出たとしても君を助ける前の年代に行ったとしても、何もおかしな事はないだろう」

 

「そう……ここから離れるのね。どこに行くかは決まっているの?」

 

「出来るだけ医者を必要としている地域に行こうとしている。それもお国柄にも、他に比べて貧しく病を患っても中々医者に頼らない様な……その土地に拠点を構えようと思う。まぁ既にどこら辺に行くかは決まっているが。確か北の国……ファーガス神聖王国といったか」

 

「ファーガス……」

 

「アドラステア帝国の北側にある国だったな」

 

「えぇ。元は帝国の一部ではあったけれども、ある戦争で何百年も前に独立したの。土地勘はないけれど」

 

「そうか。でも奇遇だ」

 

「奇遇?」

 

「そう、僕が君を預けたいと決めている貴族もファーガス神聖王国に属するからな」

 

「っ⁉︎ そ、それって……」

 

「亡命という形をとる。僕が傷だらけの君を保護し、それから1ヶ月後にその貴族へと預ける……上手くいけばその算段だ」

 

「……色々と考えてくれているのね」

 

「患者を健康な状態で無事に送り出す……それまでが僕の仕事だからな」

 

「結局はそこに行き着くのね……はぁ」

 

「ため息なんかついてどうした? どこか悪いのか?」

 

「いいえなんでも! 貴方が鈍感なのは今に始まった事ではないし……」

 

「鈍感? 何のことだ?」

 

「何でもないわ! ねぇ、今日ここに来てくれるのは最後なの?」

 

「君を貴族に預けるまでの同伴を除けば最後になるだろう」

 

「そう……1つお願いを言っても良いかしら?」

 

「お願い? まぁ……僕にできるものなら受けても良いが」

 

「えぇ。寧ろ貴方にしか出来ないことなの」

 

「僕にしか出来ないこと?」

 

「そうよ。その……今日は、私と一緒に寝て欲しいの」

 

「……はっ?」

 

「だ、だから! わ、私の隣で……一緒に、寝て」

 

「……ふぅ。まぁどの様な経緯でそのお願いとやらが出来たのかは、僕には見当がつかない」

 

「っ⁉︎ そ、そう……ダメ……なのね」

 

「何を早とちりしている? 僕は君のお願いについてNOと言った覚えはないが?」

 

「だ、だって……」

 

「僕は、あくまで何故君が僕と一緒に寝たいというお願いが出来たのか、考えても分からないと言っただけであって、まだ答えを言ってはいない」

 

「じゃ、じゃあ……」

 

「その……なんだ。僕は患者である君に全く構うことが出来なかったからな。だからその穴埋めという形でなら……一緒に寝ても良い」

 

「ほ、本当に? 嘘……じゃないわよね⁉︎」

 

「本当だとも。ここで下らない嘘などつかないさ。それに明日も僕には準備しないといけないことが山程ある。だから今日はもう寝るぞ」

 

「っ‼︎ うん‼︎」

 

そしてソーマとエーデルガルトは一緒のベットで眠りについた。ただ、ソーマがいつも身につけている白い衣を脱いで薄着で寝てとエーデルガルトに追加注文され、やむなくソーマもエーデルガルトに言われた通り薄着の状態だ。

 

しかしながらベットに入ったソーマは、エーデルガルトよりも早く眠りにつく。

 

「ふふっ、いつもあんなに無表情なのに……眠ってる時は凄く子供の様な寝顔なのね」

 

一緒のベットに入っているエーデルガルトはクスクス笑う。

 

「それに……普段からは全然想像つかないけど、しっかりと鍛えているのね。ふぁ……また貴方とこうして眠れる日が来ること、楽しみにしているから。おやすみなさい」

 

エーデルガルトはソーマの胸の位置に顔が持ってくる様に抱きついて眠った。

 

「……あぁ、おやすみ。エーデルガルト」

 

エーデルガルトは意識を無くす直前、そう聞こえた気がした。しかしながらあの鈍感なソーマがそんな気遣いなどをする筈が無いと思う。だが……もしそう言ってくれたのならとちょっとだけ考えて幸せな気分に浸れた

 

そんな少しの幸せに浸りながら……自分の髪をゆっくりと撫でられている感覚も感じながら眠りについた。

 

そして実際にそうしているソーマを偶々目撃した6Oは、その証拠を残した。後日他のアンドロイド達から質問されたり責められたりすることを……本人はまだ知らない。




おまけ

ソーマがエーデルガルトと寝た後日

2B「そ、ソーマ……これは一体……」

9S「これって完全にやってるんじゃあ……」

A2「どういう事だソーマ! 説明しろ‼︎」

ソーマ「普通にエーデルガルトと寝ただけだが?」

6O「そんなぁ! じゃあなんで私達とは寝てくれないんですか⁉︎ どうしてエルちゃんだけなんですか⁉︎」

21O「まさか……ソーマがロリコンになるなんて……私の指導が足りませんでした」

ソーマ「一体何を言っているんだ? 僕はエーデルガルトにお願いされて一緒に寝ただけだが?」

デボル「なら私達が頼んだら一緒に寝てくれるんだな?」

ポポル「ソーマと一緒に……ソーマ、今晩私と一緒に寝ましょう!」

デボル「んなっ⁉︎ いぃやソーマ、今日は私と寝るんだよな⁉︎」

2B「ず、ズルイッ! 私もソーマと一緒に寝たい!」

A2「何を勝手に決めている! ここは1番初めに作られた私が最初だろう‼︎」

9S「いやA2……それは関係ないんじゃ……」

A2「お前は黙ってろ‼︎」ガキンッ!

9S「どうしてぇーっ⁉︎」ヒューーン……

ワイワイガヤガヤ……

ソーマ「……」

司令官「ソーマ……お前も色々と大変だな……」

ソーマ「そう言ってくれるのは君だけだよ……はぁ」



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