王港の一族   作:鈴本恭一

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⑱百相の位。三十弐相の形。あんじょ頭。ジュデッカ。

 

 

 溶融した大地が、オレンジの炎を囂々とあげて唸った。

 

 膨大な噴煙が夜空を埋め尽くし、地上の視界を遮っている。

 

 

 

 ―――キングスポートは灰燼に帰していた。

 

 

 

 東海岸の港町は、その植民地時代を思わせる古風な建物の全てを粉砕され、あるいは炎上し、破壊の限りを尽くされていた。

 爆発の衝撃波で海面は吹き飛ばされ、表面が白く激しく泡立つ。

 街の北側にそそり立っていた巨大岸壁でさえ、上半分を大きく抉り取られていた。

 生き物の声はない。健常であれば1万1000いるはずの住民は、爆発が起きる前から皆無だった。キングスポートであってキングスポートでない街。

 

 

 

 そのキングスポート西地区に、首無しのケンタウロスが雄々しく佇立していた。

 

 

 

 核融合エネルギーを我が物とした、イヴ・アリアナ。

 白く励起して帯電する、甲冑姿の原水爆少女団だ。

 

 爆心地である彼女らの周囲は擂り鉢状の巨大なクレーターが出来ており、踏みつけていたキングスポート大連合の姿はない。

 

 イヴ・アリアナの甲冑から放たれた超高温・高圧のプラズマ火球により、エネルギー吸収皮膜を喪ったウミユリの集合体は跡形もなく蒸発した。

 241名の一族の肉体ごと。

 

 

「………おい、見てんだろ?」

 

 

 アリアナが轟々と唸りを上げる虚空に向けて声を発す。

 強い嘲りを込め、嗤う。

 

「洗礼式と同じだ。てめえらが、どっかからこっち見てんのは分かってんだよ」

 

 くかかっ、とアリアナは哄笑を上げた。

 全身の実が呼応するように白く輝く。

 

「てめえらはおしまいだ」

 

 嗤う。

 

「私達は一族を皆殺しにした。てめえらが取り憑く先はない。てめえらはもうおしまいだ」

 

 アリアナの哄笑が響く。

 轟く爆音をその哄笑が貫き、破壊の主はキングスポートに君臨する。

 瓦礫と大炎の中で、アリアナは吼えた。

 

「だから、てめえらが天の国に行く方法はひとつだ。たったひとつしかねえ」

 

 アリアナは6つの腕を妖しく揺らし、悪意をこめて告げる。

 

 

 

「――――私達に取り憑け」

 

 

 

 ………虚空のどこかが震える気配を、彼女らは感じた。

 

「取り憑けるのは1人1体だけか知らねえけど、そうじゃないってんなら、私達に取り憑くしか手立てはねえ。今の私達の力なら、てめら全員を一気に運べる。普通はそれだけのエネルギーがねえから、1人1体しか取り憑けねえんだろ?」

 

 アリアナは虚空のその気配へ一顧だにせず、さらに強い侮蔑を込め、提案を続ける。

 

「私達がてめえら全員を天の国に連れてってやる」

 

 

 

 

「条件は1つだ」

 

 アリアナは、にやりと嗤った。

 これまでで最大級の、害意を込めて。

 

 

 

「平伏しろ。私達に」

 

 

 

 黒煙に蝕まれた虚空が、明らかに揺れ動く。

 アリアナは愉快げに笑い、続けた。

 

「私達に取り憑くってことは、私達を主人として認めるってことだ。私とイヴに憑いてる、キギやウミユリや根っこみてえな連中も、王や主と思って完全に従え。そうでいないと、てめえらは1匹たりとも連れてかねえ」

 

 イヴ・アリアナを囲む空間が、少しずつ歪んでいく。

 赤炎と黒煙の中、僅かだが緑の火が混ざり始める。

 

 原水爆少女団の全身の実が、その緑火を見据えた。

 

「言うまでもねえが、屈服したかどうか、私に憑いてる奴らはすぐ分かる。同族だからな。形だけで誤魔化すとかこすっからい真似は通じねえ」

 

 そしてアリアナは、改めて言い放った。

 

 

「私達の下僕になるって言うんなら、てめえらを天の国に連れてってやる」

 

 

 ………今や緑の火は、その存在をはっきりキングスポートへ浮かび上がらせていた。

 

 破壊で発生した炎や煙とは明らかに異なる、熱を持たない不気味な緑光の鬼火。

 イヴは知らないが、アリアナの洗礼式で招来され、彼女に取り憑いたのもこの緑火だった。

 

 イヴ・アリアナを包囲する緑火は、ぐるぐると彼女らの周囲を泳ぐ。

 

 体高7メートルの原水爆少女団を超える炎の壁が、ゆっくりとその距離を縮め、近付いてくる。

 

 イヴ・アリアナの百眼めいた実が白い光を伴い、甲冑の励起を激しくさせた。

 何かあれば先ほどの大爆発を再び放つ構え。

 

 

 

 その白い烈光が、緑の炎光を押し潰す。光だけでなく、炎の壁そのものが地上に向かって流れ、縮んでいく。

 炎の全てが地面を這うように流れ、イヴ・アリアナの足元まで到達する。

 イヴ・アリアナは動かない。

 4つの太い足に纏わり付いた緑火は一気に凝縮し、その炎の中から形ある物質を顕現させた。

 

 ウミユリじみた触手と動物の内臓めいた触腕で出来た、あの20メートルの大触腕である。

 

 キングスポート大連合の大触腕。

 それが原水爆少女団の脚部から伸びている。前足に2本ずつ、後ろ足に3本ずつ。計10本。

 アリアナには分かる。

 キングスポートの一族に取り憑いていた彼らは完全に固有の意思を喪い、イヴ・アリアナの脚部の1パーツとなって軍門に降った。

 

 

 

 ――――彼らは原水爆少女団の支配下に入っていた。

 

 

 

「あはははははっ! はははははははは!!」

 

 

 アリアナは咆哮する。笑声と共に。

 

 歓喜と共に。

 

「見たかボビー! てめえを台無しにしやがった連中が、私達の足を舐めてやがるぞ! 私達を支配してると思ってやがった連中が!」

 

 

 6本の腕が、10の大触腕を叩く。嘲弄と侮蔑を込めた動きで。大触腕は何も返さない。

 

 アリアナは感じる。

 自分に最初に取り憑いたその者が、数多の同族相手へ強い優越に浸るのを。

 その傲慢を彼女は感じ取り、笑った。

 

 

「イヴ、どんな気分だ!?」

「アリーに抱かれてるのの次に良い気分」

 

 イヴはキギにくるまれる中で、微笑む。

 

 

「本当に良い気分――――本当に」

 

 

 イヴが笑う。

 

 アリアナも。

 

 

「よし、じゃあ行くぜ、天の国に!」

 

 

 イヴ・アリアナの脚部が輝く。

 

 10本の大触腕も。

 

 

 大触腕を構成する触手群からプラズマ光が連なって放たれる。大推力をもって飛翔し、セントラルヒルであった窪地へ向かった。

 

 

 夜空を舐める大火と黒煙を蹴散らして、原水爆少女団は凱旋する。

 

 

 キングスポートの中央に膨らんでいたセントラルヒルはやはり消失したままで、その窪地に流れる川は周囲の破壊や炎上と無縁の姿だった。

 川は吹き飛ばされることもなく変わらずそこを流れていた。

 まるで何事もなかったかのように、アリアナが乱入してくる前とまるで変わっていない。

 

 

 ………その川面から、小さな人影が顔を出す。

 

 

 ぼろぼろの古布のローブを被った小人。

 名代。

 衣服が元から朽ちかけていることを除けば、仮面を付けたその姿には傷ひとつない。

 

 その名代へ、高速で飛来するイヴ・アリアナが叫ぶ。

 

 

「我ら原水爆少女団! これより大いなる川を渡りて主上の御許へ参上(まいのぼ)る!」

 

 

 名代はその言葉に頷き、手にしていた古書を開く。

 

 

 そして微笑む老人の仮面の下から、あの形容しがたい声で詠う。

 

 

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 名代の足元から、あの葡萄に似た枝が伸びる。先端を仮面の前まで伸ばすと、枝は何対かの小枝を左右へ規則正しく生やす。八木宇田アンテナめいた形状。

 

 名代はそのアンテナ状の枝を、軽く一振りする。

 

 黄金の一閃。

 

 

 

 不思議な光景が、暗黒の対岸で起きる。

 

 光を返さない暗黒の空間に、金色の裂け目が生まれる。

 その裂け目はすぐに渦状に歪み、周囲の暗黒を巻き込んで金と黒の螺旋を作る。

 そして歪む空間の範囲はどんどん拡大し、対岸はおろかキングスポートの東地区を全て呑み込む。

 

 そして黄金の閃光。

 

 光の波動が川面を駆け抜け、イヴ・アリアナと名代を襲う。

 

 その光は彼女らになんの影響ももたらさなかったが、川の両岸で燃え盛る炎の光と轟音の音を、届かなくさせていた。一切合切。

 無音無明の川。

 

 光は唯一輝く明星と、イヴ・アリアナのプラズマ光のみ。

 音はイヴ・アリアナの排気音と、名代の詠う声のみ。

 

 

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 名代の声に呼応し、川が波打った。

 生き物のように。

 

 原水爆少女団は大触腕と尻尾をなびかせ、川の上空を飛ぶ。

 

 名代を一瞬で飛び越える。

 

 ………イヴはその名代が、微かに手を振っていたように見えた。

 

 大加速を続けるイヴ・アリアナがあっという間に名代を置き去りにし、暗黒の対岸を目指す。

 

 が、彼女らはすぐ不思議なことに気付いた。

 ジェット戦闘機さえ上回る推力で川の上を飛行しているというのに、何秒経っても川を渡り切らない。

 イヴ・アリアナの速度を考えると、キングスポートそのものさえとっくに通過しているはずだというのに。

 距離が異常だった。

 

 飛行時間を考えると、川の幅はキングスポートの軽く10倍はあった。それでもなお川が終わる気配がない。

 

 

「アリー! なんかおかしいよ!?」

「さっき名代が変なことしやがったからな! 空間がいかれちまってんだろ!」

 

 

 アリアナは吼えながら、「川を見ろ!」とイヴに呼びかける。

 

 超音速飛行を続けるイヴ・アリアナの下で、プラズマ光に照らされた川面が映える。

 

 

 その川の下に、無数の糸が流れていた。

 

 

 

 糸は被膜に覆われている。

 

 エネルギー吸収被膜。

 

 

 

 イヴは理解する。

 

「あの糸と膜が、泳いだ人のエネルギーを吸うんだ……」

「ボビーが言ってやがったぜ、泳いでる途中で力尽きて、気付けば元の川岸に流されてるって」

「でも、私達がこんなに飛んでてまだ向こうに着けないのに、普通の一族が川を泳ぎ切れるの?」

「泳ぎ切る必要はねえよ。最後まで残った奴らが力尽きれば、そいつらを向こうの岸に流すんだろ」

「なんで泳いでる人みんなをあっちに行かせないんだろう?」

「力が足りないんだろうよ、たとえ参加者全員のを合わせても」

「なんの力?」

「天の国に行く力」

 

 

 そのときだった。

 

 

 

 イヴ・アリアナの向かう先で、光が浮かび上がった。

 

 

「………見えたぞ」

 

 

 小さな点のようだった光は、どんどんその大きさと広さを増していく。

 

 光は輪郭を持ち、形ある複数のものが密集して出来ていることにイヴは気付いた。

 

 何かが対岸にある。

 

 それが何なのか、イヴはすぐに理解した。困惑と共に。

 

 

 

 

「―――キングスポート?」

 

 

 

 

 それは街の光だった。

 

 

 しかも街灯や室内灯が漏れた光ではない。

 建物そのものがヒカリゴケで覆われたように淡く輝いている。

 

 

 旧市街の倉庫群、海辺のホテル、連なる酒場、新市街の瀟洒なビルディング、電柱や信号、舗装された道路………

 

 港町の姿は、あの古風な町並みではなくイヴの見慣れた現代、すなわち1960年代のそれであった。

 

 その光るキングスポートに、雹が降っていた。

 

 輝く白い粒。氷ではない。ダイヤモンドで出来た白い雹だ。

 よく見ればいくつか黒い雹も混ざって降っている。黒鉛の雹。ダイヤモンドと同じく炭素の塊だが構造が異なる。

 

 輝くキングスポートに炭素の雹が降り注ぐ光景を、原水爆少女団は目にしていた。

 その街からの風が彼女らのところまで届き、アリアナが異変に気付く。

 

「空気がおかしい」

「なに?」

「酸素濃度がどんどん下がってやがる。窒素もだ。代わりに炭素濃度が増えてく。しかもこいつは普通の炭素じゃねえ、炭素14だ。放射性の同位体」

「危ない感じ?」

「炭素14の放射線はベータ線、ただの電子だ。キギの装甲なら難なく遮る」

「呼吸は?」

「空気を吸う必要はねえよ。どっちみちあの街には酸素がねえ。私が水とか重水とか分解したときに貯め込んだ酸素をお前に送る」

「なんだろうね、これ」

「お前が言うのか……」

「え?」

「おい、あれ見ろ」

 

 

 イヴ・アリアナがキングスポートの波止場を通り過ぎる。

 東地区の向こう、旧市街と新市街を隔てるセントラルヒルが見えた。

 キングスポート大連合と戦ったときと異なり、中央の丘は健在だった。

 

 しかし、セントラルヒルの頂上にあるはずの教会は存在しなかった。

 

 

 代わりに、もっと巨大なものが頂きにあった。

 

 

 

 

 ――――それはマンハッタン島のクライスラービルを上回る高さだった。

 

 

 

 ウミユリめいた触手と、動物の内臓と植物の根をミックスしたような触腕。

 その2種類が無数に混じり合った奇怪な、キングスポート大連合の大触腕と同様の塊。

 

 それが円錐形の巨塔となって天を衝いていた。

 

 ………その塊のあちこちから、人間の胴体や手足が覗いている。やはりキングスポート大連合と同様に。

 

「歴代の勝者だ」

 

 アリアナが呟く。

 

「………ロビンが言ってた。その生き物は熱を集めて、天に羽ばたこうとしてるって」

 

 イヴはこぼす。

 

「みんな、あそこに集められたんだ。天の国に行かせてもらえないまま」

「出発時間まで、あそこでずっと待機してるんだろうな。何百年か、もっと長い間かは知らねえけ――――」

「ねえ、あれ!」

 

 イヴはアリアナの言葉を遮り、肉塔の根元を示す。

 

 

 巨塔の根元には、無数の葡萄に似た木が生えていた。

 黄色く輝くY字の実を数多に実らせ、セントラルヒルのほぼ全てを枝葉で覆っている。

 

 

 そんな葡萄畑めいた林の中に、折れた一本の樹木が混じっていた。ナンテンに似た赤い実をつけている。

 

 

 イヴは瞠った。

 

「キギ……?」

 

 

 赤く実らせる樹木の周囲を、黒いつる草が取り囲んでいる。

 つる草の先端には刀剣のような硬く鋭い突起が備わり、その突起の長さは人間の身長ほどもある。

 

 

 サイズこそ違えど、その姿は明らかにキギと同一のものだった。

 

 

「キギ」

 

 イヴは友に呼びかける。

 

 原水爆少女団を構成するつる草が震えていた。歓びに。しかしイヴは分かる。

 

 まだ、キギの求めているものではない。ここではない。キギの目指す場所は………

 

 

 

「星だ」

 

 

 アリアナが告げる。

 

 イヴも天を仰いだ。

 

 

 白と黒の雹を浴びる肉塔の、さらにその上。

 

 日本の東京タワーより僅かに高い頂点が指す先は、黒い夜空だった。

 

 

 

 

 

 

 夜空に輝く光。唯一の星。明星。

 

 

 

 

 ギエラウシュケシミュチャリゥチャシュシ! ピミァユゥケィシェカカ!!

 

 

 肉塔が怪奇な声で啼く。

 

 

----^^^^--~^~~~--^~^^^--~^~^~----^^^^--~^~~~--^~^^^--~^~^~

 

 

 黄色い葡萄畑からの、詠う声。

 

 

 

 

 

 ミュチャリゥシュ! ギエラウケシ! チャシュシキュシユゥケィリリ!!

 

^~^^^--~^~-^^~----^^^^--~^~~~~~--^~^^^--~^~--^^--~^~^~

 

 リリキュミァキュシエラウシュゥチャシュシ! ピェカカケシミュチャリギピェカカケシ!!

 

 

 

 

 

 異形が詠う。

 

 

 

 2種類の異常音が輝くキングスポートに木霊する。

 

 

 そして。

 

 夜空が震える。

 

 

 黒い水面のように。

 

 

 空が沸騰した。

 

 

 金色の泡を吹きながら。

 

 

「………来るぞ」

 

 

 空に金色の罅が走り始める。

 

 固体のように割れていき、液体のように泡立つ夜空。

 

 

 罅割れながら沸騰する不可思議な天空の中で。

 

 

 唯一の明星は不動。

 

 

^~^^^--~^~ミァキ-^^~----^^チャシュ^^--~^リキュリ~~~ケシミュチャ~~--^~^^^--~^~-ェカカケ-^^--~^~^~シエラウシュゥ~^~-^^~----^^^^--~^~ピシピェカカリギ!!

 

 

 2つの怪音がひとつに重なる。

 

 

 空の振動はますます激しくなり、黄蘗に輝く亀裂が蜘蛛の巣のように無数に広がる。

 金の断面は激しく光を放ち、木漏れ陽をキングスポートへ撒き散らす。

 

 光を浴びた夜気から雹が落ちる。

 窒素が炭素に変異した。酸素も窒素へ。

 

 

 そして。

 そして。

 

 

 

 空が―――――――――――破裂した。

 

 

 一面の、金。

 

 

 

「!!」

 

 膨大な黄金の光が垂れ流される。

 黒い夜空の向こうから、黄金色の光が無指向で注がれた。

 

 光を浴びた物質は変異し、陽電子を生む。

 陽電子は電子と対消滅してガンマ線を放ち、周囲の物体を励起させた。

 

 光の洗礼はイヴ・アリアナにも浴びせられる。

 

 

「イヴ! 光れ!」

 

 アリアナは吼える。イヴは応える。

 6つの腕の先から黄色い光を全方向に放射。天からの光へ干渉させる。

 

 金の光同士は互いに反発し、あらぬ方向へ拡散した。

 

 

「跳ね返せた?」

「同じだよ。光の源が同じなんだ」

 

 

 イヴ・アリアナがキングスポート大連合に放った荷電粒子ビームと異なり、天空から撒かれた金光は密度が薄い。

 また光の大部分は上空の大気を変質させるに留まり、地上の市街にさほどの影響を与えなかった。

 

 

 

 異様な夜空だった。

 

 

 輝き燃え盛る金色と、大小様々な斑点のような黒。

 

 規則性のないパッチワークのような、煮え滾る魔女の釜のような、静けさや穏やかさとは無縁の異常極まる空だった。

 

 

 

 その名状しがたい空のうち、金の部分が変化を見せる。

 

 

「あれは………」

 

 空一面に広がっていた金色が、一点に集約していく。金が無くなった部分は黒くなり、夜空としての形を取り戻す。

 

 金の光は集まるに従って輝度を増し、満月のサイズにまで収縮したとき、暁とほぼ変わらない明るさで世界を照らしていた。

 

 

 

 明星がいた場所に、満月の大きさの星がある。

 

 

 

 否。

 その満月こそ、明星に他ならなかった。

 

 

 

 太陽に代わって地上を照らす、明けの明星。

 

 

 

 輝き満ちる球体。

 

 

 

 

 それが。

 

 

 キングスポートへ。

 

 

 巨塔に向かって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――降臨する。

 

 

 

 

 

 

 

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