「あっづいぃ……」
愛すべき我が家には空調設備といえば扇風機くらいのものしかなく、地球温暖化によって年々上昇する気温に対応することが出来ていない。
夏季休暇に入っているため、私立が故の潤沢なお金によってクーラーが取り付けられている我が校に行くこともない。何か涼しくなるようなものがないものか。
ピリリリリリリリ
不意に携帯の受信音が部屋に鳴り響いた。
察している人もいるかもしれないが、我が家にはお金が無い。携帯は今の時代、私の世代としては珍しくガラパゴスケータイである。
中学の頃より使っている相棒に表示されているのは、オカルト研究部部長、2年の
「……もしもし。おはようございます。秋元です……」
『やあ、おはよう。今にも溶けそうな様子だね』
「比喩抜きで溶けそうでぇす……」
はっはっは、と元気な声で笑う部長になんでこんなに元気なのかと不思議に思った。
そこで、ふと思いついた可能性を口にした。
「部長、もしかして学校にいます?」
『よくわかったね』
ずるい、と思うと同時に、なぜ学校へ?とも思った。しかしその答えは質問する前に告げられた。
『実は今日、部の全員で、ある企画をしようと思ってね。その準備をしてたのさ』
「へぇ……」
企画。オカルト研究部はその活動内容から、ほとんどそういったものは無い。それ故、その内容に興味を惹かれた。
「して、その内容は……」
『来てからのお楽しみさ』
知ってた。
『待ってるよ』
それだけ言うと部長は通話を切った。
「これは行くしかないでしょ!」
私は居間で刑事ドラマを見て手に汗を握る母に一言声をかけて、使い古して怪しい音のする自転車で学校へ向かった。
■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□
山の上にある学校の坂道の中腹あたりで、正門で手を振る部員の皆が見えた。
手を振りながら自転車を漕いでいると、地面にあった石ころで車輪が弾んで派手にこけてしまった。
自転車を押しながら皆の下まで行くと、同じクラスで双子の
「あやちー大丈夫?」
「あやにゃんケガしてない?」
あやちーと呼ぶのは利恵で、あやにゃんと呼ぶのは千恵である。ちー呼びまだわかるものの、なぜにゃん付けで呼ぶのかは中学校以来の謎だ。
「うん。大丈夫だよ。ありがとう」
「片手運転なんかするからだ」
「うっ……」
そう言うのは2年の先輩部員、
何かと言えば私をからかうのだ。
「まあまあ、シン先輩。そのくらいにして早く行きましょうよ」
晋助先輩を宥なだめているのは同級生の
「さ、行きましょう。部長が首を長くして待ってるわ」
最後の部員、2年生、副部長の
■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□
「待ってたよ!」
犬飼部長が黒縁のメガネをクイッとあげてニコニコしながら言った。
「部長、おはようございます」
「ああ、おはよう!早速なんだけど本題に入るよ?今日は皆暑い思いをしているだろうと思って涼しくなれる企画を思いついたんだ」
「「そ、それは……!?」」
古宮姉妹がノリに乗って先を促す。
「夏、涼しいと言えばこれ!肝試しだ!」
「「いえーい!!」」
3人が拳を突き上げてはしゃぐ。
「ただの肝試しじゃない。我が部らしく、こっくりさんをしてからの肝試しだ!」
それはなんというか……個性的な。
「……俺、帰ろうかな」
私はいつもからかってくる晋助先輩に、仕返しをした。
「あれ?晋助先輩、もしかして怖いんですか?」
「は、いや、別に怖くねぇし!」
そんなあからさまな態度に神原先輩が笑った。
「ふふっ。素晴らしく模範的な回答ね」
「……うるせえな」
晋助先輩は耳まで赤くしてそっぽを向いた。
それを見て部員の皆が笑った。
ひとしきり笑った後、優樹が質問した。
「部長、肝試しって夜にしますよね?まだ早いと思うんですが」
「もちろんさ。色々買ってあるから夜までに英気を養おう!」
戦士じゃないんだから……。
私達は、食べたり飲んだりながら談笑して、夜まで過ごした。
そしてついに、肝試しの前哨戦、こっくりさんを始めることとなった。
学園ホラー、開始!