「千恵ー!千恵ー!どこなの?いるなら返事して!」
「千恵!私達だよ!綾と利恵だよ!お願い出てきて!みんなで帰ろう?」
私達は多少の危険は伴うが、声をかけて探すことにした。こっくりさんはそれほど速くはなかったため、遭遇したとしても最悪逃げられるだろうという結論に至ったからである。
アレが恐らくこっくりさんであるということは利恵には話している。
「はー!見つかんないなあ!我が妹ながら隠れるのが上手だね!やりおる……!」
「あはは。そうだね。一応部室からもう一度たどってみたけど、……久美先生の以外には血はなさそうだったし。生きてる可能性が大きく上がったね」
「……うん。待ってて千恵!私絶対助けるんだから!」
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なんで……?なんでなんでなんで……!?なんであの人がいるの……?!
「……きにぃ……つ……なさぁぃ……」
せっかくあの黒いのがどっか行ってくれたのに!なんで!わかんないわかんない……!利恵……助けて……!
ペタリ、と。すぐ近くで音がした。心臓の鼓動がうるさい。周りの音を拾えない。それがさらに焦りを生んでさらに鼓動がはやくなる。
静まって!静まってよ……っ!
ペタリ
先程よりも近くに音を感じてビクリと肩を震わせてしまう。それが原因で、ゴトリと音を出してしまった。距離が近づいたこの状況で。
お願い……!どっか行って……!お願い!
音がしない。声もしない。
(行った……?)
目を開けた。
「せきにぃつきなさぁいぃ」
血に濡れて目にぽっかり空いた穴が、私を見ていた。目の無い目で、私を覗き込んでいた。
殺されたはずの、久美先生が、私の目を、間近で、見ていた。
「ぃっいやああああぁぁぁぁぁぁああああっ!!」
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──────ゃ……ぁぁぁぁ……!
「あやちー!今の声!?」
「うん、千恵だ!急がなきゃ!」
声のする方へあらん限りの力で廊下を蹴って向かった。この方向なら調理実習室だと見当をつける。
「あやちー50m走5私より速かったでしょ?私は良いから先に千恵を助けに行って!」
「嫌だよ!」
「じゃあどうするの!」
喋る時間も惜しいと無言で利恵をすくい上げてお姫様抱っこを敢行する。
突然の出来事に硬直していた利恵だったが、理解が追いついて、こう言った。
「……あやちー。抱いて?」
「利恵ちょっと静かにして!」
走ること数秒で調理実習室へ到着した。そこで大人のような背格好の人影が千恵と思われる小柄な影の首を締め上げているのが見えた。
私は利恵をそこら辺に転がして体当たりした。しかし、思っていたよりも抵抗がなく、人影と一緒に部屋の奥へ突っ込んでしまった。
身体中を打撲して痛むが、取り敢えず離れて倒れたヒトカゲを見た。そして、言葉を失った。
「……な、んで……この、人が……。久美先生が、動いてるの……?」
ゆっくりと立ち上がる、変わり果てた姿の久美先生を前に、私は呆然と立ちすくむことしか出来なかった。
千恵の
不意に感じる悪寒。
「利恵、千恵!逃げるよ!」
「「うん!」」
廊下に出た私達は調理実習室の中からビチャビチャと液体が溢れ出るような音を聞いた。
瞬間。廊下と部屋を区切る壁が吹き飛び、中からこっくりさんが姿を現した。
「ひぃっ……!なんでここにアイツがいんの!?向こうに行ったじゃん!」
「千恵、今はそんなのいいでしょ!行くよ!」
完全にトラウマを植え付けられた千恵が足を止めそうになるが、利恵が腕を引いて走る。
こっくりさんは爪を床に沈めると、身体を後ろに傾けた。次に私が感じ取れたのは、
隣を見ると、ついさっき一緒に走っていた人影が消えていた。妹を救おうと奮起した、頼もしい千恵の姉が消えていた。視線を前に向ける。こっくりさんが、ジタバタと暴れる人影の頭を
「……ぅぎっ……ぁぇ……ぉ"ぇ"……っ!だ……っ"げぇ……!」
ぶつり、ゴリっ、ボキッと。命が断ち切られる音がした。
ドサリと口から
「利恵えええええええええええええええええ!!!!!」
見えなかった。救えなかった。……私のせいだ。もう嫌だ。もう何も考えられない。もう何も考えたくない。
ぼうっと床を見つめている私の視界の真ん中に、血に濡れた肉塊が吐き捨てられた。
それを見て、私の中でぷつりと何かが切れた。
気がつけば私はこっくりさんに向かって
振り下ろす前に箒を折られて何かが私の脇腹を貫いた。せめて千恵だけでも、と振り返って血を吐きながら言葉を紡ぐ。
「……に……げ、て……」
顔をくしゃくしゃにして、涙を流しながら千恵は反対方向に走っていった。
「……最後に、誰かを……助け、られたかな……?」
千恵、上手く逃げられるといいな……。
こっくりさんに放り捨てられた私は何故か最後に私の傷を舐める白い小さな狐を見た気がした。
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先程からそこかしこで悲鳴が聞こえますね。こんな時間に私以外の生徒がいるとは考えにくいですが……。
ああ、オカルト研究部が肝試しをしているんでしたね。楽しそうでなによりです。……しかしそれにしても騒がしいですね。少し注意しに行きましょう。
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走っているうちに明かりのついた部屋の前に来た。
誰かいるのだろうか。
誰でもいい、誰か助けて……。
「……ちょっと、貴女大丈夫ですか?!」
身体に力が入らない。意識も
「……綾ちゃ……を……助け……」
伝えたい意志とは裏腹に、声は上手く出てくれない。視界が黒くなっていく。
「あっ!ちょっと!」
私の言ってること、ちゃんとわかってくれたかな……?
生徒会長の