ワンピース~俺の推しが女体化してるんだが?~   作:ジャミトフの狗

10 / 15
今回は書いてて楽しかったけど、しっかり文章になっているのか心配(苦笑
ワンピースの世界は甘くねぇ。


シャボンディ諸島編5

 麦わらが天竜人に手を出したことで、人間屋(ヒューマンショップ)は混乱を極めた。前代未聞の大事件の幕開けである。海軍大将がこの島に来ることは確定し、それ故に一般市民の皆様は巻き添えを食らわぬよう避難しなければならない。たった一人の友人のために大勢の人間を不幸にさせるところは、流石海賊であると言わざるを得ない。

 

 閑話休題。

 

 その後も店の奥から元海賊王のクルー*1が出てきたり、ユースタスの挑発にウチの船長と麦わらが乗って海軍を蹴散らしたり、混乱に乗じて天竜人の奴隷から新たに一人我らの仲間が出来たりと色々あったが、何とかオークション会場から抜け出すことに成功する。また追手として現れた七武海*2の一人、バーソロミュー・くまに似たサイボーグを一体、キッド海賊団とハートの海賊団の連携により撃破する。

 

 「おバカさんだって聞いたけど、想像以上だったわね」

 

 ある程度余裕ができたからか、ローは思い出したように言う。

 

 「それで俺らも巻き込まれるんだから、ホントはた迷惑な一味だ」

 

 「まぁスカッとしたけどな」

 

 げんなりした様子のシャチと爽快そうに笑うペンギン。二人の言い分はたぶんこの島にいる人々の総意であるように思う。

 

 「とはいえ、シャチの言う通り厄介なことになってる。なんせコーティングを終えるまで俺たちはこの島から出ることは出来ないからな。ロー、そこら辺どうなってる」

 

 「職人さんの話だと、あと二日は欲しいとのことよ。それまではサバイバルね」

 

 「キャプテン、俺もう疲れた」

 

 べポが手を上げながら言う。まぁさっき頑張ってたもんな。

 

 「そうね、それじゃあひとまず休みましょう。どこか―――」

 

 「船長あぶねぇ!!」

 

 ローの背後から高熱の閃光が放たれた。とっさの判断で致命傷は避けられたが、少しかすめたらしい。すぐさま彼女は怪我の処置をし、下手人の方を向く。

 

 「トラファルガー・ローおよびツバメ、発見」

 

 無機質な声でこちらに照準を定めるのは、先ほど潰した筈のバーソロミュー・くまだった。

 

 「なんでだよ!! さっき倒した筈だろ!!」

 

 「違う、あれとは別よ」

 

 残念ながら詳細は憶えていないが、あれは確か海軍の作り出した兵器だったはずだ。量産化こそされているが、一体だけでも生半可な海賊じゃあ太刀打ちできない戦力を有した、いわば格下殺しのプロだ。実際ただの刀剣や銃弾では傷一つつけることすら出来ない。だが―――

 

 「一人だけで来たのは間違いだったな。俺たちを潰したいんなら、あと五体は持ってくるべきだ」

 

 「同感ね」

 

 「お二人が強いだけなんだよなぁ」

 

 この時点で覇気*3を体得してるのは俺とロー、そしてべポのみ。そして覇気を扱うことが出来れば、あの鋼鉄の体にも十分なダメージが通る。新入りのジャンバールはどうかしらないが、持ち前の巨体と腕力で覇気がなくとも十分な戦力になるだろう。

 

 「それじゃあサバイバル開始だ」

 

 

 

 ★

 

 

 

 「ガンマナイフ!!」

 

 最後の一撃はローが持って行った。服がボロボロになり、むき出しになった機械はもはやただの鉄くずと化した状態でバーソロミュー・くまに似たサイボーグは倒れる。これで二体目だ。

 

 理屈は知らないが、あれは内臓のみをズタズタに破壊する凶悪な技だ。食らえば大抵の生き物は死んでしまうため、本来であればあまり使わないのだが。

 

 「とどめを刺すなんて珍しい」

 

 ローは殺生をしない訳ではない。しかしそれを極力最小限にとどめるのが彼女のスタンスである。言葉にこそしたことは無いが、クルーの皆は知っている。

 

 「自我もなく戦うためだけに生み出された命なんて空しいだけよ」

 

 「なるほど、せめてもの情けってやつか」

 

 「そういうこと」

 

 あたりを見渡すと随分と地形は変わっていた。あのサイボーグ、最後の方はヤケになってビームを矢鱈目ったら撃ってたからな。しかしそれだけ暴れてくれたのだ、そろそろ海兵たちがここに来てもおかしくはない。

 

 「お前ら、まだ動けるか?」

 

 「ああ、問題ねぇ。いける」

 

 「俺たちは援護しかしてねぇからな」

 

 「助かってるよ」

 

 シャチもペンギンも十年前に比べれば随分逞しくなった。少なくとも先の戦闘について行ける程度には、彼らも強くなっている。だから迅速に次の行動に移れるのだ。

 

 「どうするロー。直に海兵も来る。俺は休憩もかねて逃げることを提案したいが」

 

 「そうね、そうしましょう。職人さんの邪魔はしたくないからなるべく50番GR(グローブ)には近づかないようにしたいけれど、どこかいい場所知らないかしら?」

 

 「行くとしたら1から29番だがっ!!?」

 

 何が起きたのか分からなかった。

 

 一瞬、視界がぶれたと思ったら、俺は建物に頭から衝突していた。遅れてやってくるのは頭部ではなく腹部からの痛み。痛覚が烈しい悲鳴を上げ、その凄まじさたるや呼吸さえ許してくれない。

 

 「ツバメッ!!」

 

 「おーっとォ。無意識なのか、直前で後退してダメージを抑えたねぇ……」

 

 現れたのは長身の黄色い偉丈夫。背に正義を纏いし海兵の頂点。その名を―――

 

 「き、黄猿だぁ!!!」

 

 「懸賞金2億。『死の外科医』、トラファルガー・ローだねぇ?」

 

 黄猿と呼ばれた男はローに目をつける。対するローは息を飲み、しかし負けじと笑みを浮かべて睨み返した。

 

 「……ここで海軍大将、マズイわね」

 

 「主犯格の麦わらのルフィには逃げられてねぇ。なら共犯者の一人や二人、捕まえんとわっしらの顔が立たんのよォ」

 

 まずい、ローたちが狙われた。奴の一撃を食らってみて分かった。今の俺達では()()()()と。

 

 (……くっそ、動けっ!! 俺の身体……っ!!)

 

 蹴られたのか、殴られたのか。とにかく一撃が大きい。不意打ちなのがいけなかった。しかし泣き言は言ってられない。奴は自然(ロギア)系の能力者だ。くまの時と違って覇気が使えなければ戦いにすらならない。

 

 「よくも副キャプテンを~~~!!」

 

 べポが黄猿の背後から蹴りかかる。しかしその足先が黄猿のコートに触れるや否や、べポは黄猿に頭を()()()()()()掴まれていた。

 

 「え?」

 

 「オオォ~、覇気使い。うっとおしいねぇ」

 

 「やめなさいっ!!」

 

 静止の声は空しく、そのまま黄猿はべポを地面に叩きつける。轟音と地響き。べポはそのたった一撃で、地面に直立しピクリとも動かなくなった。

 

 「べポっ!!!」

 

 「嘘だろ……べポの奴が、あんな、あっけなく……!」

 

 「次はトラファルガー・ロー、君だねェ」

 

 今度こそローに狙いを定める黄猿。完全に回復はしていない。だが奴は俺を倒した気でいる。なら今度はこちらの番だ。

 

 「鳴燕絶(めいえんぜつ)!!」

 

 初速にして最高速度。地面を瞬時に10度蹴り、翼と揚力によって浮いた体は空気の壁をも破り、音すら超えん。その『音速』をもって居合のごとく短刀を抜き放ち、黄猿を切りつける。その筈だった。

 

 「君が『鳴無(おとなし)』だったんだねぇ、名前は知ってるよォ」

 

 完全な背後からの不意打ち、それに対応するのが海軍大将。

 

 黄猿は俺の短刀を光の剣で受け止めていた。勢いを失った以上、力で俺が勝てるはずもない。そのように悟り、後退しようとするも退避が間に合わず、黄猿の指先から出た()()()()を膝に食らう。

 

 「———ッつぅ!」

 

 「生身で音を超えたのは称賛するけどねぇ、わっしはそれよりも速い『光』。お前さんに勝ち目はないよォ」

 

 「……クソっ」

 

 やはり、勝てない。ステージが違う。系統は違うが悪魔の実の能力は俺より完全な上位である。また覇気の練度や戦いの経験、その他いかなる観点から見ても俺よりも圧倒的に上だ。一合交えて否応なしに分かるこの強さ。

 

 正直、絶望する。ここまで差があるとは思わなかった。

 

 「ROOM」

 

 「んんん?」

 

 「シャンブルズ」

 

 瞬間、黄猿がその場から消えた。代わりに黄猿がいた場所には小さな石が落ちてあった。ローの能力だ*4

 

 「……わりぃ、助かる」

 

 「気にしないで。島全体を一瞬だけROOMで覆った。今頃アレはここから一番離れた場所で混乱してるでしょうけど、稼げる時間は少ない。さっさと逃げるわよ」

 

 「「あ、アイアイキャプテン!!」」

 

 「ジャンバール。べポを担いで」

 

 「あ、ああ。分かった!!」

 

 ローの活躍により、一時的に時間を確保できた俺たちは即座に逃亡に走る。場所は決まってないが、一刻も早くこの場から逃げなければならない。それなのに、()()現れた。

 

 「おいおい。パシフィスタを2体もやった上に、オジキからも逃げ遂せようってか。億越えってのは中々歯応えあるやつが多いな」

 

 立ちはだかるのは鉞を担いだ大男。その後ろにバーソロミュー・くまの量産型もいる。

 

 「……一度しか言わないわ。どきなさい」

 

 「わいは世界一ガードの固い男、戦桃丸。ここは通さねぇよ」

 

 「そう、ならこうするわ」

 

 オペオペの能力により、彼女は俺達と眼前の奴らの位置を入れ替えた。そして、すぐさま俺たちは逃亡する。こいつらに足止めをされたら確実に黄猿が追い付く。そうなったらもうおしまいだ。

 

 「追え! PX-1!」

 

 「貴方たちは先に行きなさい! ツバメは残って!」

 

 ローの指示にシャチとペンギンは頷く。ローは振り返り鬼哭を抜いた。船長命令故、俺もその場に留まって次の指示を待つ。

 

 「私に合わせて、ROOM」

 

 彼女を中心にサークルが出現する。何をするのかは分からない。だが問題なし。

 

 「応さ」

 

 飛び掛かってくるPX-1と呼ばれた個体に、ローは鬼哭を構え、俺は獣人型に変態した。サークルにソレが侵入した時、

 

 「切断(アンピュテート)

 

 ローが妖刀を薙いだ。彼女の斬撃、その延長上にあったPX-1の首と胴体が文字通り切断された。

 

 恐らくローの能力が如何なるものであるかを予めインプット、もしくは学習していたのだろう。PX-1はその別たれた首を何とか取り戻そうと空中で胴体が藻掻くが、なんてことはない。相手が黄猿でなければ俺が一番速いのだから。

 

 「大空へ羽ばたけ!!」

 

 誰よりも早くその首を奪い取り、そのままサッカーの要領で蹴り飛ばした。くまの首は流星の如く一直線に空を飛んでいき、でかいマングローブに直撃していった。これで暫くは動けまい。

 

 「な、なぁっ、そんな馬鹿な!! PX-1ンン~~~!!」

 

 「逃げるわよ」

 

 「ああ!」

 

 「くそ、これで四体目だぞ!! 本当にパンク野郎になんて……って待ちやがれ!!」

 

 鉞を担いだ大男がこちらを追ってくるが、その巨体と武器故に俺達の方が機敏に動ける。このまま逃げ切ることが出来る。

 

 俺は獣人型から獣型に変態する。そしてローを背中に乗せ、ダメ押しに更に距離を稼ごうとする。

 

 しかし、希望を抱いたとき、不運は訪れるものだ。

 

 

 

 「さすがにそこまで大立ち回りされるのは、気に食わないねぇ」

 

 

 

 絶望が、そこにいた。

 

 

*1
『冥王』シルバーズレイリー。元ロジャー海賊団副船長

*2
世界政府に略奪行為を容認された七人の海賊

*3
意思の力とも。見聞色と武装色、覇王色の三つの覇気が存在する

*4
オペオペの実はそのサークル内にある物質を自由に操作、移動させることが出来る




・主人公
 技名を何とか「鳴」と「燕」を使ってダジャレにしたいと考えた。そしたら割と普通にかっこいい感じになって満足。厨二最高。というかこれを読んでくださる人たちのセンスが秀逸なので力を借りたい(我儘)
 覇気は扱えるが、武装色は硬化の段階には至ってない。
 あと前世ではサッカーやってた。

・ロー子
 強くて有能(確信)。覇気はどちらも使える。硬化も使えるが、範囲は小さい。

・べポ
 原作ではどうか不明だが、この時点で覇気が扱える。ただし主人公と同じく武装色硬化の領域までには達してない。

・パシフィスタの皆さま
 格下相手には無類の強さを誇るが、逆に相手が格上だとなすすべもなく負けると勝手に思ってる。ハートの海賊団は発展途上であるため苦戦するが、覇気を扱えるクルーがいるため、時間は掛かるが戦って勝てるレベル。

・黄猿
 強い(恐怖)。正直タイマンで一番強そうな気がしてならない。光ってやべぇよ。

・戦桃丸
 変換で絶対に出てこない人。打つのが微妙に面倒くさい。疲労してるとはいえルフィをいなせることから、基礎戦闘能力は間違いなく高いと思われる。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。