ワンピース~俺の推しが女体化してるんだが?~   作:ジャミトフの狗

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急ぎ気味で書いた。あとで修正するかもです。


シャボンディ諸島編6

 「さすがにそこまで大立ち回りされるのは、気に食わないねぇ」

 

 黄猿の無感情な瞳が俺たちを射抜く。鉞男も追いつき、臨戦態勢に入っていた。背後は鉞の男、正面には海軍大将。たったの二人で構成された八方塞がり。状況は非常に厳しいと言わざるを得ない。

 

 「詰みだねぇ」

 

 「それはどうかしら」

 

 あくまでも、ローは不敵に努める。俺よりも見聞色の練度が高い彼女の方が、余計に絶望を感じてるはずだ。ならば俺も命を懸ける他ない。

 

 「気丈に振舞うのは勝手だけどォ、さっきの技はもう食らわないよォ」

 

 ローによるROOMの展開速度よりも黄猿がこちらに接近する速度の方が断然速い。それは彼女にも分かっているはずだ。不意を突けたからこそ黄猿を埒外に出来たのであって、一度来ると分かっていれば奴は的確な対応をしてくる事だろう。

 

 「馬鹿ね、そんな事分かってるわ」

 

 彼女の言葉と同時に、景色が変わる。何もない平地だったのが、慌てふためく烏合の衆が溢れる繁華街になっていたのだ。

 

 「まさかお前」

 

 「予めこの島全体にROOMを張っていたわ。バーソロミュー・くま擬きを相手にしていた時から」

 

 「無茶をするな」

 

 オペオペの能力は集中力と体力を多分に消耗する。強力である分、必要とする医学知識は多く、また繊細な操作も要求される。つまるところROOMという手術室に立つローは、さながらオペを執行する医者そのものである。故に島全体を覆うROOMなど、維持するだけで大変なはずだ。

 

 「だがおかげで助かった。さっさと―――」

 

 「だから言ったでしょうにぃ。もう詰みだってぇ」

 

 間の抜けた声。しかしその声が何よりも聴きたくなかった。

 

 「……嘘でしょ? いくら、何でも……早すぎる」

 

 ローの驚きはもっともだ。光速であろうが何だろうが、俺達の居場所が分からなければそれが活かされることは無い。しかし現に黄猿は俺たちの位置を何らかの手段で掴み、こうして詰めに掛かっている。

 

 「お前たちの抵抗は無駄だよォ。もうわっしが目を付けたんだからねぇ」

 

 「シャンブルズっ!!」

 

 黄猿が動くよりも先に、ローがもう一度位置交換に臨む。オペオペの実による位置交換は寸分のラグなく行われる。ある意味で言えば、オペオペの能力は光よりも速い。したがってローの体力が続く限り、逃亡は可能である。

 

 今度は73番GR(グローブ)のホテル街。人は少ない。

 

 「———っく、ハァ、ハァ」

 

 ローは既に疲労がたまっている。度重なる戦闘に加えて、超広範囲のROOM展開とその維持。聞くまでもなく、彼女の体力は残り僅かだ。

 

 「あと何回できる?」

 

 「4回。いえ……あと5回は」

 

 「悪いな」

 

 残された時間は少ない。俺はローが力尽きる前に、黄猿から逃げ切る方法を考えねばならない。

 

 なぜ黄猿は俺たちの位置を特定するのが早いのか。これは一つ仮説がある。というのも単純な話で、黄猿と海兵の間で連絡を取り合っているからだと考えられる。人が多かった先ほどの繁華街にはもちろん海兵がいたことだろう。であれば黄猿も連絡を受ければ即こちらに向かってこれるし、逆に言えばこうして人の少ない場所に移動すればほんの僅かだが時間が稼げる筈だ。

 

 それはローも気づいた事だろう。だから俺が求められているのはその先。それを踏まえてどうすれば黄猿から逃げ切れるのか、だ。

 

 「ちょっと……任せたわ」

 

 「了解だ」

 

 あてのない逃避行が今始まる。

 

 

 

 ★

 

 

 

 「全く、腹が立つねぇ」

 

 海軍の最高戦力、大将黄猿ことボルサリーノは非常に機嫌が悪かった。それは今回の騒動の主犯格である麦わらのルフィを捕らえられなかった事のみならず、同じルーキーのトラファルガー・ローを仕留めきることが出来ないでいる現状に対する苛立ちであった。むしろ、麦わらのルフィの時と違って自力で逃走している分、怒りの度合いで言えば彼らに対するモノの方が大きい。

 

 「スポッターを即座に攻撃し、わっしが向かえば蛻の殻。ひよっ子にしては考えているねぇ」

 

 業腹だが、『死の外科医』と『鳴無』は無能ではないと判断する他ないだろう。ただ隠れるだけであれば海軍の警戒網をやり過ごす事は決してない。しかし彼らは攻撃と逃走、そして隠密をうまく使い分けながら海軍の厳重な捜索から逃れている。

 

 黄猿が彼らを追い詰めても、トラファルガー・ローによる奇怪な移動法によって逃げられ、黄猿の部下が彼らを見つけたとしても『鳴無』によってすぐさま始末される。両者の連携は完璧と評価せざるを得ない。それは海軍が誇る最強の一角がたった二人の海賊に翻弄されている事実からして明白だ。

 

 しかし同時に、この逃亡劇には終わりが見えている。

 

 『ボルサリーノ大将!! 大将の仰る通り、トラファルガー・ローはもう動けないようです!! 奴らは今13番GR(グローブ)にいます!!』

 

 部下からの連絡で黄猿は確信する。トラファルガー・ロー、彼女の能力には限界があるという事を。もし彼女の操る能力が無制限に行使できるとすれば、スポッターを排除する必要はあまりない。それどころか、この島から離れたもっと別の地点に移動すればいい。

 

 しかし彼女達はそうしない。そこには理由があり、そしてそれが距離制限であると黄猿は看破した。またトラファルガー・ローが展開する島を覆うサークルが縮小しつつあるという事実も、彼は見逃さなかった。

 

 故にこの児戯に等しい逃走劇はそう遠くないうちに終わる。それが今だ。

 

 「八咫鏡」

 

 光速で向かうのは部下の報告にあった13番GR(グローブ)。そこには―――

 

 「君よりも、君の船長の首に用があるんだけどねェ」

 

 ハートの海賊団副船長、『鳴無』のツバメ()()がいた。

 

 「船長は今ちょっとお疲れでね、用件があるなら俺が伺おう」

 

 「小僧、調子に乗ると死ぬよォ」

 

 生意気にも睨みつけてくるルーキーに己の語気が強くなるのを感じる。この餓鬼はあろうことか海軍大将を相手にして時間が稼げると、そんな夢を見ているのだ。

 

 「死なないさ、そういう約束だ」

 

 「なら破って死ぬといいよォ」

 

 故に、黄猿が容赦することは無い。

 

 

 

 ★

 

 

 

 ローによる9度目のシャンブルズ。限界などとっくに超えているというのに、それでも彼女は己の能力を使い続ける。しかしその代償は己の寿命だ。

 

 彼女の心臓から、いっそ壊れてしまいそうなほど激しい警笛が伝わってくる。いつものガラの悪い瞳は朦朧としており、焦点はまるで合っていない。俺の肩なしじゃあ歩くこともできない様で、それでも彼女は「やれる」だの「まだ」だのと虚ろに宣う。

 

 「馬鹿野郎っっ!! もう無理だ!」

 

 「……ま、だ。や……る」

 

 俺の警告などまるで取り合ってくれない。いや、彼女はまだ俺を信じてくれているのだ。俺がこの状況を打開する事を。

 

 「畜生っ!!」

 

 試せることは試した。しかし全て時間稼ぎにしかならなかった。逃げようが、襲おうが、隠れようが、何をしても黄猿はこちらを捉えて逃がさない。

 

 奴は全力で俺達を追っている。否、俺達()()を狙っている。何故かは知らないが、黄猿がこの島から俺達を逃がす気がないのは明らかだ。海軍大将に狙われて逃げ延びられる海賊などどれほどいる事か。そして本当に情けない話だが、俺一人の力ではどうしようもない。

 

 ただ救いの神はいるらしい。この島には唯一、あの黄猿に対抗できる男がいる。そしてその男は今、俺の目の前にいた。

 

 「———ふむ、確か君たちは人間屋(ヒューマンショップ)にいた……」

 

 「はは、奇遇だな。()()()()

 

 彼の海賊王率いるロジャー海賊団副船長、『冥王』シルバーズ・レイリー。そういえば、ここは13番GR(グローブ)だったな。

 

 「随分と草臥れているようだが、どうした」

 

 「あんたに、ローをウチの船がある50番GR(グローブ)まで運んでもらいたい」

 

 「唐突だな」

 

 そんなの百も承知だ。海賊なもんで。

 

 「俺も、ローも、まだ弱い。だから、この様だ」

 

 「そうか、黄猿か」

 

 すべてを悟ったように、シルバーズ・レイリーは独り言ちる。話が早くて助かる。

 

 「そうだな、全てはハチを守るためにルフィ君がしでかしたのが原因だ。ちょうど今はフリーでね。手を貸すのも吝かではないが、君はどうするつもりだ」

 

 「俺は残る」

 

 「勝ち目がないのは君が一番良く分かっている事だろう」

 

 そうだな。今の俺じゃあ逆立ちしたって奴には勝てない。しかし何も、玉砕したくて残る訳ではないのだ。

 

 「アンタなら、この島にいる全ての海軍の目を出し抜いて、ローを運ぶことが出来るはずだ。だが黄猿は追ってくるだろう。どこに船が停泊してるかバレちまったら、それこそ御仕舞なんだよ」

 

 「……なるほどな」

 

 黄猿が彼を見失えば、それでいい。俺が残るのはその時間稼ぎだ。

 

 「今にも、黄猿は来る。だから頼む。急いでくれ」

 

 「なぜそこまでする。船長とは言え、所詮は他人だろう?」

 

 どうして聞くのか。そんなの決まってる。

 

 「船長をたてられない副船長なんざ、この世にいないだろうさ」

 

 「———ハハハッ!! 確かにそうだ!! 引き受けよう!」

 

 愉快そうに笑う伝説の男。面白そうで何よりだ。

 

 時間がない。俺はローを彼に引き渡そうとすると、彼女の手が俺のつなぎを掴んだ。引きはがそうとしても、どこにそんな力があるのかビクともしない。

 

 「放せ、ロー」

 

 俺たちのやり取りが聞こえていたのだろうか。なら最初から俺の言うことを聞いてほしかった。俺が不甲斐ないのは認めるが、それにしたって無茶しすぎだ。

 

 「……やめ、て。……同じこと、しないで」

 

 分かってる。今から俺はローにとって一番残酷なことをする。それが分かるとも。でも男には、引いてはいけない瞬間がある。

 

 「ワリぃな」

 

 疲れ果て、呼吸すらままならない女の身体に拳を入れる。それで彼女はぐったりと、たった一発で意識を失った。

 

 「いいのかね?」

 

 「ああ、これでいい」

 

 覚悟は出来てる。

 

 「ああ、それと。これ、あとで渡しといてくれ」

 

 そういって、俺は俺にとってかけがえのないモノを渡す。

 

 「これは……いや何も言うまい。健闘を祈る」

 

 「『冥王』に祈られたら、なんか本当にご利益ありそうだな」

 

 「軽口を叩けるのなら十分だ。ではな」

 

 「ああ」

 

 そうして、レイリーはあっと言う間に姿を消した。なるほど、こりゃあ安心して任せられる。本来であれば俺の役目だったわけだが、代打が用意できただけでも及第点だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「君よりも、君の船長の首に用があるんだけどねェ」

 

 




次回、ロー子病む。
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