ワンピース~俺の推しが女体化してるんだが?~ 作:ジャミトフの狗
今回はロー視点です。
目が覚めた時、私は温かい毛布に包まっていた。上体を起こすと、丁度こちらに背を向ける形で座っている男がいる。後ろ姿だけでも、その男が私よりも一回りも二回りも大きい偉丈夫だという事が分かる。男は囲炉裏の火加減を気にしているのか、頭を掻きながら何やら突いていた。
私は暫くそれを眺めていると、
「あと少しで飯が出来る」
と、男はこちらを見ることなく言った。
また暫くすると、男が盆を持ってきて私の前に置いた。その上には焼き魚とお味噌汁、お新香、そして白飯とおよそシンプルな料理があった。私がそれらを認めると、彼はそそくさとまた囲炉裏の方に戻り、恐らくは自分の分をよそい始める。
目の前のご馳走を食べるか否か。それはとても難しい問題だ。三日間何も腹に入れず、雪が降る中ずっと歩き続けた体は深刻な空腹を訴え、今にも箸をもってそれらを食さんとしている。しかし―――
「毒は入ってない。それでも嫌なら食うな」
男はそう言って豪快に魚を食らった。それがあまりに食いっぷりがよくて、どうしようもない私の食欲を刺激してしまった。
「……もっと落ち着いて食えよ。ほら、水だ」
男が差し出してきた水を一気に飲み干す。そうしてまた食らう。頬に涙が伝った。
「おかわり、まだあるぞ。食うか?」
茶碗を突き出す。男は茶碗一杯にご飯を載せてくれた。おいしいのだ。たまらなく。
ここがどこだとか、彼が何者かとか、今はとにかく本当にどうでもよかった。
ただ、ここには温かさがある。それだけでお腹がいっぱいになる。すると今度は行き場を失った悲しみが私を襲った。
もし私が間違えなければ、コラさんは死ななかったのだろうか。もしもっと私がしっかりしていれば、彼と一緒にこうして温かいご飯を共に食べることが出来たのだろうか。
『もしも』の話に意味がなくとも、考えずにはいられなかった。
★
「で、そろそろ聞かせてもらってもいいかしら? どうして助けてくれたのか」
意識を失ったのはオペオペの能力で肝臓に溜まった鉛を抜き取った後。洞窟の中での話だ。なら、状況的に彼が私をこの山小屋まで連れてきたのだろう。
男はお猪口に入ったお酒をあおった。そうしてこちらの顔を見つめながら彼は思案に耽っているのか、顎に手をやった。暫く待っていても男が思考をやめる気配がなく、それが気に入らなくて、
「……話しかけているのだから、返事をするのが礼儀でしょう」
と、自分でもびっくりするくらい不機嫌に返事を催促した。すると彼はお猪口にお酒を注ぎながら答える。
「野良犬に死体かどうかも分からない物をくれてやる必要もないだろうさ」
それは、なんともひねくれた答えだった。しかし、そのひねくれた言葉と態度の裏に確かな優しさが見えた気がした。そう、まるでコラさんが私をクズ山に投げ飛ばした時のように。でもそれを確認するのも何か違うような気がして、私はただ単に「そう」と返事をする。
「こちらからも聞かせてほしい。何故洞窟で倒れてたんだ」
「成り行きよ」
私が食い気味に答えても、彼がそれ以上追及することはなかった。自分でも苦しい言い分だと思っただけに、意外だった。
「……帰る場所はあるのか」
帰る場所。生まれ故郷なら世界政府に焼かれた。ドン・キホーテファミリーにも戻ることは出来ない。大事な人は失ったばかりだ。返事は決まっていた。
「いいえ」
ただ、コラさんはもう自由だと言ってくれた。それで十分だ。
「そうか、なら暫くここを使うといい。嫌だったら別にいい、好きにしろ」
でも、どうしてだろう。今はこの男の世話になるべきだと、己の頭の中で囁いている。あるいはこの男があの何故かいつもドジを踏んでしまう彼と雰囲気が似ているからだろうか。
「い、いいの?」
「好きにするといいさ。食い物も当分は出してやる」
ただ単に寛容だからなのか。それとも何か別に狙いがあるのか。いっそ不気味なほどに話が進んでしまうことに危機感を覚える。でも、この目の前の偉丈夫を見極めるのは今すぐでなくてもいいような気がした。
「それじゃあ、お言葉に甘えて。暫く厄介になるわ」
★
町の人の話を聞く限り、彼が山籠もりの武術家であるという認識に間違いはないらしい。そして口数が少なく、不器用だがお人よし。年齢は意外と若く、まだ18歳らしい。あと彼の作るご飯は質素だがおいしい。たびたび飽きてしまうが。
彼の特徴として、基本的にこちらに選択肢を与えてくれるという物がある。彼の口癖なのか、よく「好きにしろ」と言うのだ。自主性を重んじるのが彼のスタンスという事だろうか。
武術家としての腕は申し分なく、曰く「熊殺し」であるという。また悪魔の実の能力者とも。
いつかは海に出る身の上。そのために力をつけたい。だから彼を利用するという考えが頭をよぎった。住む場所をもらい、食事も与えてもらったその上に、更に追加で要求することに気が引けないといえば嘘になってしまう。しかし手段を選んでいては強くなれないと、癪だがあのドフラミンゴ達と過ごして実感した。
故に、忌まわしい過去を打ち明けることも吝かではなかった。
それに彼は信用するに値する人物である。それはこの一年間共に過ごして十分に分かった。案の定、驚くこともなく、同情することもなく、彼はただ真っすぐ真剣に受け止めた上で師事することを許してくれた。
「動きが鈍いぞ。下手に技術を盛り込もうとするからチグハグになる。聞きかじっただけの技を扱うよりも、まずは基本を押さえてみろ」
早速立ち会ってみた結果、彼は想像以上に強いという事が分かった。あのドフラミンゴの幹部連中に勝るとも劣らないほどの強さを感じる。実際手も足も出ずコテンパンにされて、それでも食らいついてみたけれど結局一撃も浴びせることは出来なかった。しかも彼は能力を使用した気配がない。
「素晴らしいガッツだ。筋も良い。たぶんな」
「……これだけぼこぼこにされたら、嫌みにしか聞こえないわよ。まったく」
日が暮れ、疲労のあまり大の字になって倒れた。すると彼も私の隣に座って胡坐をかいた。ついでと言わんばかりに瓢箪を私の前に置いた。とぷんと音がする。スキャンしてみたら、どうやらほんの僅かに塩分を含んだ水が入っていることが分かった。配慮が行き届きすぎてて笑ってしまう。
「まぁ、あれだ。ローの能力は本来戦闘向きじゃないのかもしれないな」
「ええ、そうかもね」
オペオペだもの。本来は手術に使う、言うなれば人を助ける力だ。それを畑違いの戦いの場で扱おうというのだから、難易度が高いのも致し方ない。
「でもどんな能力も使い方で凶悪になる。知ってるか? 世の中には肉球で地形を変える奴がいるんだぜ」
「何よそれ」
「例えばだ、お前はさっきまでずっと移動手段としてしか能力を行使してなかったが、逆に俺を移動させるって使い方もあるんじゃないか? 手前にとって都合のいい場所に敵を瞬間的に移動させることができたら、そりゃあ強いだろうさ」
不覚にも、なるほどと思ってしまった。彼の強さには鋭い観察眼も含まれているのかもしれない。やはり教えを乞うて正解だったと分かる。
「あとあれだな。あまり言いたくはないが、お前は女だ。ロー」
「力がないって言うんでしょう?」
それは、言われるまでもなく前々から感じてたことだし言われてきたことだ。もしも私が男だったら、こんな事考える必要もなかったのだろうか。
「ああ。それに体力もない。長年難病に苛まれてたお前には酷かもしれんが、まずはそこらへんを埋めるところから始めるべきだな」
「これでも筋トレとランニング、頑張っていたつもりだったけれど。もう少し増やした方がいいかしら」
「いや、その必要はない。効率を良くしよう。というかお前、ガッツがスゴイから今まで無理に無理を重ねてたんじゃあないのか?」
「そんな事ないわ。体調には細心の注意を払ってるもの」
「ああ、そういえば医者の卵だっけか? なら能力の使い方も俺より思いつきそうなもんだが」
「理論だけなのよ。そうね、例えば生体電気を利用して―――」
こうして、彼による特訓の日々が始まった。数日後、べポとペンギン、そしてシャチがこの特訓に混ざってくるのはまた別の話である。
・主人公(名前はまだ決めてない)
実は結構そこそこそれなりに強い。現段階で修行前ルフィと殴り合える程度。実は幼少期の名残でナイフの扱いもお上手だったりする。一応ナイフ片手に格闘戦を仕掛けるのが正規の戦闘スタイル。覇気は未収得。
因みに口調はローと過ごすうちに柔らかくなってる。
・ロー子
女体化により全体的に基礎能力が落ち気味。ただ主人公の存在により能力の習熟度が原作よりも早いかも。あと徒手空拳も原作よりわずかに良きかも。刃物の扱い方も主人公に教わったり、ディアマンテに教わった剣技を思い出しながら特訓を積むので、原作よりも技量が上になったらいいね。
因みに主人公の事はそこそこ信頼してる。
・べポ、シャチ、ペンギン
正直原作でどれだけ強いのかいまいちわからない彼ら。ただ三人ともホーキンスにつかまってたあたり、滅茶苦茶強いわけではなさそう。
設定つらつら載せるのなんか恥ずかしい。でも楽しい。