ワンピース~俺の推しが女体化してるんだが?~   作:ジャミトフの狗

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ちょっと某サバイバルFPSゲーや剣戟音ゲーで遊んで目を放してたら、伸びすぎぃ!!(大歓喜
本当にうれしい、日間ランキング1位ありがとうございます!!
まだまだ未熟なところ多いかと思いますが、これからもお願いします!


シャボンディ諸島編3

 時刻は午後の九時、ポーラータング号にて。皆が皆思い思いに、騒がしく夕食をとっていた時の話である。

 

 「という事は、職人はもう見つけたのか?」

 

 「ええ。相当な腕利きだそうよ」

 

 「そうか、ならよかった」

 

 俺がユースタスといざこざを起こしている間に、ローはきっちりコーティング職人を見つけたらしい。彼女が信用した人物なら信用できる。俺も異論はない。となると今日の一連の騒動は骨折り損のくたびれ儲けってことになる訳だが、あれは半ば自業自得なところもあるから何とも言えない。

 

 「ところでツバメ。貴方、謝る事があるんじゃない?」

 

 ローの一声で、船内は一瞬にして張り詰めた空気になる。気づくと船内のクルーたちは背筋を規則正しく伸ばして正座していた。因みにべポは口を開けて大の字で寝ている。かわいい。

 

 心当たりはある。もちろん、ユースタスとの喧嘩だ。間違いなくあの時は心拍数が上がっていたから、それでバレたのだろう。

 

 「あーなんだ。そんな大したことじゃない。ちょっとユースタスの阿呆と喧嘩しただけだ」

 

 実際、あれほどバカバカしい喧嘩はないだろう。俺が舐められたのが発端な訳だし。しかしそれでウチの船長が侮られるのだから、これからは俺自身の立ち振る舞いも考えた方がいいのだろう。仮にも一船の副船長だってのに、どうも頭が日和っていけない。

 

 しかし今思えばあの野郎、ただ煽って怒った俺とやり合いたかっただけなんじゃあないかなって。だからドレークの仲裁が面白くなく、不貞腐れたように帰ったのではないか。まぁ何にせよ、はた迷惑な奴である。

 

 「は?」

 

 と、一人で納得していると、ローの表情から色が消えていた。

 

 「え? ちょっと待って。一応聞くけれど、どちらが先に手を出したの?」

 

 「俺だ」

 

 「大丈夫って、貴方自分で言ったわよね?」

 

 今度は目から感情が消えていた。幽鬼的な瞳でこちらを見据える様は異名通りの死の外科医。正直こわい。こんだけ怒らせたの久々かも。

 

 「……キャプテンめちゃくちゃ怒ってるぞ」

 「しっ! 静かにしろって! こっちに飛び火したらたまんないぞ!」

 「早く副キャプテンおさめてくれ~」

 

 小声で話してるつもりなのだろうが全部聞こえてるっていう。

 

 「ま、まぁ落ち着いてくれよ。御覧の通り怪我もしてないし?」

 

 「そうね。でも脳の治療はした方がいいみたい」

 

 何を真顔でおっそろしいことを。

 

 「いいこと? 分かってないようだからもう一度言うけれど、ここは海軍のご立派なお膝下よ。何か揉め事を起こせば大将が出張っても何ら不思議ではないの。それで一味が壊滅したら笑い話にもならない」

 

 もっともな話である。耳が痛い。まったくもって恥じ入るばかりだ。

 

 「それでも言い分があるのなら言ってごらんなさい? 長い付き合いだもの、何か理由があるんでしょう?」

 

 どんなに怒ってても、公平な心をもって話を聞いてくれる。流石としか言いようがない。器が違う。あと自分が古参組であることに感謝だ。

 

 「まぁあれだ。奴さんが俺を腰抜けと煽ったんで、ちょっと頭にきたから蹴り飛ばした」

 

 「ダウト。貴方は自分が侮られてもなんとも思わない。むしろそれを好都合と考える理性的な人よ」

 

 「そりゃあ買いかぶりってなもんだ。俺も怒るときは怒る」

 

 「そう。じゃあやっぱり脳みそ弄らないと」

 

 ニッコリとぶっ壊れた笑顔で、ロー子は彼女の愛刀にして妖刀である大太刀、『鬼哭』を抜く。そんでもって俺はいつの間にか鎖で巻かれており、『ROOM』の中に入っていた。ご丁寧に患者服まで着せられている。オペる気まんまんである。

 

 「お手柔らかに頼むよ」

 

 こうなると、俺にはもう乾いた笑みを浮かべる事しかできない。せめて痛くない事を願うばかりだ。

 

 

 

 ★

 

 

 

 「あーエライ目に遭った」

 

 オペの内容を具体的に語るとするとグロテスクに過ぎるため省略するが、とにかくひどい目にあった。でも脳みそのブツ切りってちょっとサイコだよな。しかもそれを見せながら部位の説明をするんだぜ、あいつ。やべぇよ。

 

 「副キャプテン大丈夫かー?」

 

 「大丈夫だ、べポは優しいな」

 

 「うんそっかー。ならよかったー」

 

 そんでもって船長より罰として『朝まで甲板で見張りの刑』を言い渡されている。だからこうしてぼーっと海とシャボンディ諸島を交互に監視している。超眠い。そしてべポはそれに付き合ってくれている。めっちゃ優しい。

 

 「でもどうして副キャプテン、こんな罰を受けてるんだ~?」

 

 「ちょっとローを怒らせちゃったからだよ」

 

 「そっか~なら仕方ないなー」

 

 「ところでべポ、眠くないのか?」

 

 「さっきたくさん寝たからなー」

 

 そういえばそうだった。こいつ、俺が人間解体ショーをされてる最中もずっと爆睡してた。本能的な部分で起きる事が危険だと悟ったのかね。さすがミンク族。

 

 「となり失礼するわ」

 

 背中越しにローの声が聞こえた。髪がわずかに湿り気を帯びており、風呂上がりであることが分かる。また彼女の手には三個のおにぎりがあり、そのうちの二つをひょいと手渡してきた。余談だが、おにぎりは彼女の大好物である。

 

 「サンキュ」

 

 「あ、キャプテン」

 

 「こんばんわ、いい夜ね」

 

 彼女は俺の隣に座ってから、おにぎりをほおばった。見た感じ具は鮭らしい。

 

 「夜食は太るらしいぞ」

 

 俺の言葉に彼女はジト目になって睨んでくる。ごめんって。

 

 「私のべポを使って暇つぶしとは考えたわね」

 

 「人聞きが悪い。べポは優しいから付き合ってくれただけだぞ」

 

 「さっき副キャプテンからかき氷もらった」

 

 「あ、ばかっ!」

 

 「へぇ?」

 

 目元をぴくぴくさせながら口角を吊り上げんでください。美人が怒ると怖いんだからさ。

 

 「……お、俺ちょっとトイレいってくる」

 

 動物の本能で危機を感じ取ったのか、べポは勢いよくおにぎりを食して急いで厠に向かっていった。逃げるの早っ。さすがクマ、でかい図体のくせして機敏である。というか爆弾落として逃げるな。

 

 「さて、それで結局なんだったの?」

 

 素面に戻ったローはそのように尋ねてきた。視線はもう暗く何も見えない海の地平線に向けられている。

 

 「なんの話だ」

 

 俺もおにぎりを食べながら聞き返す。具は梅干しだった。因みに彼女は日本食が好きな癖して梅干しが大の苦手である。だからこれはちょっとした嫌がらせのつもりなのだろうが、俺は梅干し大好きなので全く意味がないという話をしておこう。

 

 「ユースタス屋さんとの話よ」

 

 「だからあれは向こうが煽ってきたから蹴り飛ばしただけの話だって———」

 

 「私が何の意味もなく貴方の脳を弄ったと思う?」

 

 「どういう意味だ?」

 

 「貴方が嘘をついてることはお見通しって事よ」

 

 マジか、オペオペの能力ってそんな事もできるのか。何年も彼女と一緒にいるが、初めて知った。

 

 「まぁ丁度べポもいなくなったからな。話してもいいが、笑うなよ」

 

 「もちろん」

 

 「奴さんがお前も侮辱したからだよ。それでつい手が出ちまった。いやこの場合足か」

 

 「ふーん、なるほど」

 

 不意にローは顔を背けた。しばらくふんふん呟いた後、彼女はこちらに顔を向ける。その顔面は微妙にニヤケていた。

 

 「笑うなって」

 

 「ふふ、ごめんなさい。でもあれね、この船のクルーだったら皆貴方と同じことしそう」

 

 「あーそれは否定できない」

 

 皆ローの事好きだからな。心酔と言っても過言ではない。それだけ彼女に人望とカリスマがあるって事なのだが。

 

 「とはいえ、それで海軍が動いたら笑えないけどね」

 

 「分かってる。深く反省してる」

 

 「そ、じゃあこれで話はおしまい。部屋に戻っていいわよ」

 

 「割り当てられた仕事はきっちりこなしたい主義だ。遠慮しとく」

 

 俺がそう返すとローは「知ってる」と呟いて頬を綻ばせる。そして彼女は少しだけこちらの方に詰め寄った。また能力の無駄遣いをしたのか、いつの間にか彼女の手にはとっくりとお猪口があった。ちょっと悪戯っぽい顔しやがって、かわいいじゃねぇか。

 

 「マセやがって。しょうがない、付き合うよ」

 

 「知ってた? これでも私もう24よ」

 

 「そうだったな。時間は経過するのが早くていけない。気づけば俺も三十路のおっさんだ」

 

 「元が老け顔だから気にしてないけどね」

 

 「ひっでぇ」

 

 お猪口を一つもらい、お酒を注いでもらう。こうして改めて二人で飲み交わすと、なんか感慨深くなる。初めて出会った頃のローは「何がおいしいの、それ」って言ってたくらいだぜ。それが十年近く前。そりゃあ大人にもなる訳だ。

 

 「そういえばお前、酒好きなのか?」

 

 「うーん、好みで言えば普通。お米と水で作られたお酒が一番好きだけど、自分から進んで飲もうとは思わないわね」

 

 「へーじゃあ今日はどういう風の吹き回しだ?」

 

 「雰囲気に酔う事は好きなの、私」

 

 「あーなるほどな。ちょっと分かるわそれ」

 

 ぶっちゃけ俺もお酒が好きなのって酔えるからとか、料理がうまく感じるからとかそんなふわっふわした理由だ。

 

 「じゃあ、雰囲気に流されてさっそく告白するわ」

 

 「おう、やったれ」

 

 「別に頭を弄ったところで嘘なんて見抜けないわ。オペオペの実ってそんな便利じゃないの」

 

 「おうこの小娘やってくれたな」

 

 

 この後べポも参戦してカオスなことになるのだが、それを語ると締まりが悪くなるので割愛する。ハートの海賊団、その一幕であった。

 

 

 




・主人公(名前はツバメ君に決定)
 書いてて結構ポンコツな感じになってしまった、かわいそうな宿命を持つ男。基本どんなお酒も飲めるし好き。

・ロー子
 洞察力優れる幸薄、医者、タトゥー、女体化など属性てんこ盛りの二人目の主人公。日本酒が好き(独自設定)

・べポ
 とにかく可愛い。アニメの声めっちゃ癖になるんだけど、分かる人いないかな? ジュースで割ったお酒が好き(独自設定)。

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