HK416ちゃんは聞きたい   作:屋根上猫

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お久しぶり!!(クソでか声)
ほんとにね!!
てなわけでお待たせしました第七話です。
今回はちょいと糖分は控えめですがよろしくどうぞ。


HK416は尚も聞かせて欲しい。

 酔った416にあれやこれやと殺されかけた後日。

 未だに熱を帯びる思い出に、体の奥底から溢れてやまない嬉し恥ずかしの洪水に、言葉にならない呻き声が執務室に木霊していた。

 先程から全く持って進展しない書類整理にヤキモキしたモノを抱えながら、意味を捉えることもなく字面だけを目で追っていた。

 頭の中でするすると読み捨てられる書類の一面。差し当たって急を要するものでもなければ、なんだったら無視を決め込んだって問題はないだろうと思われる書類まで様々なモノが視界端に山となって積まさっていた。

 ライター一つで片付く山なら良かったものを、一応は目を通しておかねばと良心的な側面と事務的側面が顔を出していた。淡い感情が上乗せされた疲れから溢れ出る深い溜息が字面をなぞるように消えていった。

 結局、あの日から数日と経った今でもこうして熱にうなされてるが如く頭の片隅に彼女……416のことを思い浮かべているのだから、相当にお熱なのだろう。インフルエンザもビックリだ。悲しいことにワクチンなどという高等なものもない病気ゆえに、この熱が冷めることは──。

 

「指揮官、どうしたのよそんな顔して?」

「なんでもな──って、416ッつぅ……」

「何やってるのよ……」

 

 ガタッと机から跳ね除けるように立ち上がりかけて、ものの見事に机に膝をぶつけてしまう。

 ぐぬぬと、呆れ顔の彼女を見上げるように突っ伏したまま、ふへぇと息を吐き出す。

 

「なんでもないです……」

「何でもないようには見えないのだけど?」

 

 ツンツン、と若干頬を膨らましかけた俺の輪郭に、彼女の白く細い指先が沈み込んでいく。ぷくぅと抜けていく感情が行くあてを見つける事も間に合わずに、机上の紙面へと溶け落ちていった。

 

「ふふ……」

「なんだよ416、今日はなんぞやけに上機嫌だな……」

 

 見上げれば白銀に輝く太陽があった。なんだお前可愛いなちくしょうめ。うりうり~とでも言いながら頬をほじらないで顔が緩む、緩んじゃう! ゆるキャラになっちゃう!! やめて!! 

 

「いや、ほんほにはんあよぉ(ほんとになんだよぉ)……」

「いえ、あまりこういう指揮官の姿を見たことがなかったから、少し新鮮なのよ」

「さいですか……」

 

 うりうり──。

 

「それで、指揮官はいったい何に上の空にされてたのかしら?」

「あ、続くのね……?」

「当然、気になるもの──」

 

 うりうり──。

 何が楽しいのか、未だに頬の湖へと人差し指をタプタプしてくる416に抗議の目を向けてみるも、ふふんと嬉しそうな顔が落ちてくるのみ、俺が彼女に挑める勝負など、そうそうなかったのだと認めざるを得ないほどの破壊力を持ってして、敗北を喫した俺は、渋々と恥ずかしさと共に口を開いた。

 

「いやね……?」

「なに?」

「この前、君が俺の部屋で勝手に酒瓶開けた日のことがあったじゃない?」

「うっ……」

「その時の君が、余りにも、それはもう余りにも可愛いかったものだから、思い出して仕事に手が伸びてないのよ」

「そ、そう……」

 

 ぷるぷる──。

 

「あの時の君は、それはもう可愛かった。正直未だに頭から離れないレベルで可愛かった」

「えぅ……」

「いやまぁ、君の可愛い姿どころかかっこいい姿まで忘れることなんてないのだが、それはそれとして、脳裏に焼き付いて離れやしないのよ」

「へ、へぇ……」

「一体全体、どう責任をとってくれるんだい君は?」

 

 プルプルと震える指先を辿り、彼女の顔を見上げてみれば、耳まで真っ赤にしながら顔を逸らす可愛らしい姿が見えた。

 今日も今日とて416は可愛いらしい。

 その事実は覆ることなく、唯一無二の輝きでもって一生記憶に焼きつくことだろう。

 まさか、上の空の原因が自分なのだと思ってもみなかった彼女からしてみれば藪蛇(やぶへび)もいい所だ。我は満足じゃ……と言いたいが、俺とて色々と思い出したおかげで若干や死にかけているがな。

 

「──取るわよ」

「ん……?」

 

 ポツリと呟かれた言葉。

 見上げてみれば、顔を赤くしながらも、それでいてしっかりとこちらの目を見据えてグイっと人差し指を突き刺される。

 

「ぐへっ……」

「責任なら取るわよ」

「わーお」

「感情が篭ってないわよ」

「唐突に、そんなこと言われたら誰だってそうなるさ……」

「もう一度言いましょうか?」

「恥ずかしいなら言わなくていいぞ」

「っ、は、恥ずかしくないわよ」

「はっはー! 嘘をつくなよ416。こちとらどれだけお前のことを目で追ってたと思ってんだお前──」

 

 と、口にした途端、ものの見事なまでにまるでゴミを見るかのような視線がこちらを見下ろしていた。やだ、こんな顔もするのね君、心が痛いわ。

 

「うわ、きも……」

「ねぇ、416さん……? ちょっと指先が急に冷たくなったのだけど、あと心なしか距離感を感じるのだけど、やだ死にたい……」

「死なせないわよ?」

「え、ヤダもしかして生き地獄」

「はぁ……」

 

 あらやだ。ため息疲れちゃったわ。

 けれども、依然としてグリグリと頬を付くのはやめないのね。頬が熱いったらありゃしない。

 

「それで、貴方はどうなの指揮官?」

「へ?」

「責任、貴方はとってくれるのかしら?」

「そりゃもちろん──」

 

 ──取るに決まっている。

 そう微笑みかければ、当然ねとでも言いたげに彼女は小さく、そう。と呟くのであった。

 

「ほら、これで心の憂いも晴れたでしょ? 仕事に取り掛かってちょうだい」

「あぁ、そこはキッチリしてるのね」

「当然じゃない、この完璧な私に責任を取らせるのよ? 貴方はそれでいいのかしら?」

 

 とまぁ、そんなこと言われちゃ、流石にずっと机に突っ伏しているわけにも行くまい。

 そりゃそうだわなと、起き上がりたいところなのだけど……。

 

「ほんで、この美しき人差し指は一体いつ退けてくれるので?」

「それはそれという奴よ。まだ、その……今日は、聞いてないもの……」

「ん……?」

「だから……その……」

 

 先程までのどこかキリッとした様はどこへやら、急にしどろもどろになるものだから、なんぞなんぞと再三にわたって見上げてみて、はたと気づく。あぁ、そうかと。

 

「416……」

「なに?」

 

 微笑みが見下ろす中、俺はそっと彼女の頬に人差し指を突き刺してこういった。

 

「好きだ……」

「えぇ、私も、私も好きよ……」

 

 お互いの頬を凹ます姿に、どちらからともなくはははと笑いを零して──。

 

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