青春は恒星のように輝いて 作:orchid
UA20……読んで下さった人、誠に感謝しています。
「えっと……」
私は今、猛烈に焦っています。何故かって?私がこの学校に入学してから、初めて声を掛けられたから。さっきも遅刻しそうで焦ったのに、今はそれ以上に焦ってると思う。でも、我ながらこればっかりは仕方ないと思うんです。
正直言って、ここ数ヶ月の間、琥珀さん以外の他人と会話を交わした記憶が無いので、こういう時、とっさにどうやって対応すればいいのか分からないのです。
……私って
いや、私についてはどうでも良い。それより今は、この人に対してどう対応するかです。確か、私がこの1ヶ月、周囲の観察をしてきた限り(それしかやることが無かったんです。決して他人が気になってたとかではry)、この人は雰囲気陰キャ(限りなく失礼だし、私も人の事は言えない)であるにも関わらず、全く友達がいない訳でもなさそうだった。
決して自分から周りにアクションを起こす事は無いけど、話し掛けられたら話す。そんな感じで、上手く環境に溶け込んでいるタイプの人間だと思う。器用なのかな。そのスキルが私にも有ったらなぁ、と考えてしまう。まぁ、でも、有ったら有ったで活かせそうもないけどね。
取り敢えず、そんな彼女に、間違った対応をしてしまったら、私は多分クラスで浮いてしまうだろう。
……今でも充分に浮きかけてるけどね☆()。
さて、どうやって返事をしようか。幾つか案を挙げてみよう。
①陽キャ風に「おっはよー!今日もいい天気だね!私に何か用事かな?」
②クールに「おはようございます、どうかしましたか?」
③ぶりっ子風に「おはよ、どーしたの?」(首かしげ)
……私にはどの選択肢もハードルが高過ぎるよ!無理だよ!?こんな事言えたら、今頃陰キャコミュ障なんかになってないよ!①は却下だし、②はそんなキャラじゃないし、しかも③に関しては大して可愛くもない私がやったところで気持ち悪いだけだよ!
と、いう訳で、私の選んだ最終的な選択肢としては。
「え……えと……私……ですか……?」
④陰 キ ャ 全 開
物凄いどもった。私らしいと言えば私らしいけどね!(開き直り)。
ごめんなさい。今の私にはこれが限界だったんです。お願いします、許して下さい。何でもしますから!(何でもとは言ってない)。
そんな、下らない思考を脳内で繰り広げていると、向こうが口を開いた。
「えっと、これ……多分スピカさんの落とし物だと思ったんですけど……」
「ふぇ?……あっ!」
彼女が手にしていたのは、黒い、猫のキーホルダー。それは紛れもなく、私の物だった。いつの間に落としちゃってたんだろう……全然気付かなかった。
琥珀さんが作ってくれた世界で1つのキーホルダー。
ハンドメイドの限定品。
琥珀さんは家事全般に加えて裁縫、手芸までお手の物なんだから、本当に底が知れない。私が男だったら、絶対に『お嫁さんに欲しいランキング』で堂々の1位ぶっちぎりだよ。私が
「ありがとうございます。私の大切な物だったので、見付けて頂き、助かりました」
深々とお辞儀。礼儀は欠かせない。今の私から礼儀を取り外したら何が残るのか。……ただの陰キャ女子。誰得ですか。
「いえいえ、そんなお気になさらず……その猫ちゃん可愛いですね」
彼女は微笑んだ。
えぇ……何この人、可愛い過ぎる……。私の錯覚じゃなければ、後光が差している気がする(実際視点的には窓から太陽の光が差し込んでいるので、神々しさもこれ極まれり)。それと同時に、自分のお気に入りの宝物を良く言われた事で、純粋に嬉しかった。
「えへへ……ありがとう……」
鏡を見てないから何とも言えないが、この時の私は確実に喜色満面。表情筋は緩んでいたと思う。だらしのない顔だったんじゃないかな。やってから後悔。しかし、その上に重大なミスを犯してしまった事に気がつく。
(しまった!ため口きいちゃった……)
この人と私は、ほぼ初対面なのに、ため口なんてきいてしまったら、嫌われちゃうんじゃないか……。さっきまで礼儀がどうとかこうとか言っていた私はどこに行ってしまったんだ……。なんて思っていると。
「……ふふっ……、スピカさんって可愛いんですね」
「えっ……ふぇぇ?///」
キキマチガイカナ?私が可愛いって言われた?私が?そんなの世界がひっくり返り返り返ったって有り得ないよ(錯乱)。そういえば、今思ったけど私の名前覚えられてる?!何かしたっけ私!?
……気になる事は聞かなくちゃ。私はそういう性分です。……心当たりは無い。うん。無いんだよ。
「な、何で私の名前を覚えていらっしゃられるのですか……?」
思いっきりめちゃくちゃな日本語になっちゃった。若干、
「え……えっと、自己紹介の時、あまりに印象的だったから……」
「ああああああああああああ!やっぱりあの時やらかしてたぁああぁぁぁぁ!!!」
無理でした☆
心当たり、当たってた☆。
あぁ、もう二度と思い出したくないあの日。新学年になって、クラス替えがあり、必ず最初に行われるであろう自己紹介。その時のスピーチによって、その人の第一印象は大体確定すると言っても過言ではないレベルの大事な行事。よりにもよって、私はそこで大ポカをやってしまった。
絶対に私から回想はしない。絶対にだ。もう、さっさと記憶から抹消して無かったことにしたい。あぁ、私に『
「あ、スピカさん。そろそろ次の時間始まりますよ」
「あ……本当だ」
時計を見ると、間もなく数分で鐘が鳴る頃だった。では、そろそろ切り上げるとしますか……名残惜しいけど。
「それでは、ありがとうございました。……来夢さん」
「 、こちらこそ♪」
この時私は気付けなかった。
気付く由も無かった。
私が名前で呼んだ時に、
彼女がほんの僅かに、
表情を曇らせた事を。
『キーンコーンカーンコーン』
無機質な鐘が、何事も無いように、鳴り響く。