あー、ランキングに乗らないかなぁ。
評価、感想もっとくれよな(迫真)
いつもよりも時間をかけてショッピングセンターに到着した。しかし、嫌な気分になることはなかった。
時計に目をやると、11時半を回ったところだった。早めの昼ごはんにすべきだろうか。
「どこへ行く?時間的には昼ごはんでもいいと思うが」
「綾小路くんに任せます。しっかりエスコートしてくださいね?」
「はぁ……。分かった、じゃあ昼ごはんにしようか。これから混んでくるだろうし」
あまりpptは使いたくないと思い、エスカレーターのある方へ向かう。
上にあるフードコートで済ませよう、そう思ったのだ。だが、坂柳は裾を掴んで不服そうにオレを見上げた。
「むぅ、せっかく二人きりなんですから、お洒落なレストランにしませんか」
「任せるといいながらそれは──」
「何か文句でもありますか?」
「いや、ないが……」
「では、あちらへ行きましょうか」
結局、坂柳のわがままによってレストランが並ぶエリアに向かった。
ステーキやハンバーグをメインにした肉料理のレストランやイタリアン、フレンチ、バイキングやトルコ料理、中華、和食などさまざまな国の料理を専門にした店が、通路の奥まで続いている。
混まないうちにさっさと決めてしまいたいが、こんなにも店があると迷って決められなさそうだ。
ただ、昼ということもあって、重い食事は控えたいところだ。そうなると、肉やバイキングは真っ先に除外となる。
それに、坂柳はお洒落な店を希望していたので、イタリアンやフレンチ、トルコ料理といったヨーロッパ方面の料理を扱う店に絞られるだろう。
ショーケースに並んだサンプルと、看板などに書かれた値段、混み具合から少しずつ絞っていく。
しかし、あまり時間をかけると坂柳が拗ねるので難しいところだ。
ずっとホワイトルームの中にいたせいで、こういうのは苦手なのだ。
「綾小路くん、決まりましたか?」
「すまない、もう少し……」
「そんなに熱心に考えなくてもいいんですよ?」
「そうだが……」
こういうところに頭が回らないのが憎まれる。こうして長考している間にも、席が埋まっていく。
深く考えることをやめ、イタリアンに決定した瞬間、視界の端によく見る顔を発見した。
「あら、綾小路くんと坂柳さんじゃない」
「堀北か」
「こんにちは、堀北さん」
一人で歩いていた堀北が、オレたちを見つけるなり近づいて話しかけてきた。無視して通り過ぎるものだとばかり思っていただけに、少し意外だった。
オレと坂柳が一緒にいることを疑問に思ったのかもしれない。最近の問題の渦中にいるオレたちが昼間から堂々とショッピングセンターという人目のつくところに出歩いてきていることに疑問を抱いたのだろうか。
しかし、オレとしても好都合だ。堀北は能力はとても高く、月城に対抗するには申し分ない。
堀北を表で泳がせておいてそちらに注目を集め、裏で動きやすくすることもできる。
なんだかんだで今まで結構お世話になっているからな。
「堀北さんも一緒にどうですか?」
「……ええ、いいわよ。あなたが何を考えているのかは分からないけれど、綾小路くんに話をしたかったから」
堀北は一瞬難色を見せたが、意外とすんなり了承してくれた。想定外ではあったが、ちょうどいい。
「奇遇だな。オレも堀北にちょっとした話があってんだ」
あそこのイタリアンの店はちょうど客足が少ない。話をするにはちょうどいいかもしれないな。
オレは、その店を指差して二人に聞いた。
「あそこでいいか?」
「人も少ないですし、ちょうどいいですね」
「そうね」
店に入ると、奥の方の席に案内された。
店内は木を基調とした内装で、カフェで流れる曲に近い、落ち着いた曲調のものが流されている。
メニューを見ると、カタカナの長い名前がずらりと並んでいる。あの有名コーヒーチェーン店を彷彿とさせる。
……なぜカタカナはこんなにも読みにくいのやら。いつだったか、池がマッカーサーをマッサーカーと間違えていたのを思い出した。
「決まったか?」
「はい。堀北さんは決まりましたか?」
「ええ」
全員決まったのを確認し、呼び鈴を鳴らす。
注文を伝えると、もう一度確認のために繰り返し、それから戻っていった。
「なぜ二人が一緒にいるのかしら」
開口一番に堀北がそう切り出した。嘘をついてごまかすのもアリだが、わざわざそんなことをする必要はないだろう。
「この前のことについて話をしてたんだ」
「綾小路くんが新しくクラスを作ると言い出したので、少し驚きました」
「……綾小路くん、それは本気で言っているのかしら?」
堀北がオレを睨んでそう言った。かなり衝撃的なことだったのだろう。
「悪いか?あの中にいてもいいことなんてないと思うんだが」
「……まあ、それはそうね。今回に関しては少し──いえ、かなり失望したもの。頰が赤く腫れてるのもそれが原因なのでしょう?」
「そうだ。須藤はかなり手を出さなくなっただけに、かなり残念だったな」
今後も須藤はその手に出ることが増えるかもしれない。そう考えると、不都合が増える。
Dクラスの面々から反感を買ってしまった時点で、
「平田くんは立ち直ったのが逆によくなかったのかしら?」
「結果論でいえばそうなるな。前よりも人を切り捨てやすくなった」
「いつもは爽やかな彼が死んだ魚の目をしているのを見ているのはとても面白かったのですが。綾小路くん、余計なことをしてしまいましたね」
余計なことかどうかといえばそういうわけではない。平田があのままの状態で試験に突入すれば結果はもっと悲惨だった可能性もある。
平田は客観的に物事を見ることに長けていると思っていた。それだけに、あの行動を選択したのは残念だとしか言いようがない。
「で、堀北はどうして一人でこんなところにいたんだ?」
普段は家で一人で本を読んだり勉強したりしている堀北が、一人でいること自体疑問だった。料理は出来るはずだから、わざわざ外食する必要はなかったはずだ。
「これから買い物しようと思っただけよ。時間も時間だし、先に昼ごはんを食べようと思っただけ。フードコートは満席だったから、仕方なくここに来たのよ」
「綾小路くんがフードコートに行こうとしていたのを止めて置いてよかったですね」
「普通昼間っからレストランに行くとかそうそうないぞ」
Dクラスの面々と来た時は、いつもフードコートだったんだが。明るい時間からここに来るという発想がなかった。
「坂柳さん、神室さんと橋本くんはいないのかしら?」
「はい、今日は私一人ですよ」
オレの部屋に人を上げるのに、そんなに人数は必要ないと思った。いつぞの祝勝会とやらの時は、5、6人だけで意外と狭かったからな。
それに、あまり大所帯で動くと周りに疑問を持たれる。
「それで、二人で堂々と出歩いたりしてもう開き直ったのかしら?」
「コソコソしてた方が変に思われるかもしれないだろ」
「それもそうかもしれないわね」
それに、敢えて人混みを選ぶことで密談をしていたという可能性を多少払拭できるかもしれない。
上手くいけば、ある程度注意が逸れるだろう。
「カルボナーラのお客様」
「あ、オレです」
3人分の料理が届き、テーブルの上のスペースが皿で埋め尽くされた。
麺をフォークでクルクルと巻き、口に入れるとベーコンの旨味とともに、胡椒のピリッとした辛さがいいアクセントとなって口いっぱいに広がる。
「ところで、綾小路くんの話は何かしら?」
返事をしようとしたが、まだ口の中に残っていたので飲み込んでから口を開いた。
「さっきも言ったが、新しいクラスを作ろうという計画に関しての話だ」
「綾小路くんもしかしてあなた」
「まあだいたい察せていると思うが、その新しいクラスのメンバーに堀北も入らないかという話だ」
堀北は、暫く考えさせてちょうだいと言って長考に入った。色々思うところがあるのだろう。
オレは堀北の返事を待ちながら、カルボナーラを食べ進める。
堀北は入学当初は完全に人を嫌う性格だった。誰とも関わらず、孤独を貫いていた。ただ、それは堀北の兄、堀北学に憧れ、孤独と孤高を履き違えた結果。オレはそう考えている。
それに比べ、この一年で少しずつではあるが確実に変わってきている。
強く当たることも減り、交友関係を広げつつある。
オレはまだ伸び代があると思っているし、将来的に月城に単独で対抗できるようになる可能性もあると思っている。
そういう意味では、ぜひ欲しい人材である。
「綾小路くんは、今楽しいですか?」
思考に耽っていると、坂柳がそう問いかけてきた。
「まあ、どちらかといえば楽しいな。これから状況がどう動いていくのか気になるっていうもある」
「だと思いました。いつもより楽しそうですから」
Dクラスがどう落ちぶれていくのか。そして、オレたちが特別試験で圧倒していく。そんなことを考えると、意外にも楽しいと思うのだ。
ただ、それが表情に出ているとは。これがいい変化なのか、よくない変化なのか。
あそこの呪縛から解放されつつあると捉えるなら、良い変化だろう。
逆に、月城という影が迫ってきていることや、新一年生の入学など、人間関係も少しずつ変化してきている。おそらく、そこからも脅威が迫って来ているだろう。だから、100パーセント楽しいとは言い切れないのも現実である。
ホワイトルームは一年動いていなかったとはいえ、育成出来ないわけではないだろう。そう考えると、オレに迫るような実力をつけて送り込んでくる可能性が高い。
平穏な学校生活を手に入れるために平穏じゃない学校生活を送るという皮肉を感じるが、あそこに戻るよりは何倍もマシである。
「綾小路くん」
坂柳より若干低く、凛とした声。堀北がオレを呼んだ。どうするか、決心がついたらしい。
「決まったのか?」
「ええ」
堀北はオレの目をしっかり見据えた。そして、ゆっくり口を開いた。
「今までのあなたの活躍はとても大きい。須藤くんの暴力事件の時も、無人島試験の時も、体育祭の時も、あらゆる試験、場面においてあなたはDクラスに貢献していた」
「茶柱先生に強制されていただけだが」
「それでも、よ。もしあなたがいなかったら、Cクラスにすら上がれなかったかもしれない」
ところどころ買い被りすぎなところもある気もしなくはない。
ただ、Cクラスに上がれなかったかもしれないというのは事実だ。
最初の定期試験で須藤がいきなり退学して平田が機能しなくなってしまうかもしれないし、無人島の時には仲間割れをして機能が停止してしまうかもしれない。それ以外にもいくつかあるだろう。
再びDクラスに落ちたちはいえ、Cクラスとの差はあまりない。慌てる必要は全くなかったはずだ。
「今回のあの写真は、確かに誤解されてもおかしくはないわ」
オレと坂柳が並んで歩いているあの写真。
普段めったに見ない組み合わせであることから、裏で繋がっていた可能性を指摘された。
Dクラス降格が決まった直後だからかもしれないが、それでもそう決めつけるのはあまりにも早計すぎると思う。
「私は、あなたについていくことにするわ。私は、あそこまで落ちぶれていないもの」
堀北はそう結論づけた。とても大きな戦力になった。
「分かった。具体的な話はもう少し後にする」
「分かったわ」
「意外です。堀北さんがその選択をするのは」
「色々考えた結果よ」
色々考えた結果──本人はそう言ったが……
「では、話も済んだことですし、早く食べてデートしに行きましょう」
「デートと言われた記憶はないんだが?」
「女の子と二人きりで出かけている時点で、それはもうデートですよ」
「そ、そうなのか……」
「綾小路くん、たまに変なところ抜けてるわね」
たまに恵から言われるが、堀北までもそう思っていたとは……
知識ばかりあっても、女心はなかなか理解できないな。
「では行きましょうか。綾小路くん」
「分かった」
「では、これからはよろしくお願いしますね、堀北さん」
「ええ……」
堀北と別れ、ショッピングセンターを歩き回る。別れ際、寂しそうな表情を浮かべていたのは何故か分からなかったが。
奥へ進んでいくと時々陰口を叩く輩が見えるが、見て見ぬ振りをする。後々そういうやつが痛い目を見るのだから。
「綾小路くん、私の服を選んでください。私が綾小路くんの服を選んであげます」
服屋に入っていきなりそう言うと、坂柳は奥へ進んで行ってしまった。
……オレ、服を選ぶセンスないんだが。
そう思いながらも、これから暑くなることを考え、少し早いが涼しめの服を選ぶことにした。
──結局、堀北も
そう思いながら。
「綾小路くん、まだですか?」
「ああ、すまない。こういうのは苦手なんだ」
「綾小路くん、意外と優柔不断ですね」
ただ、最近の坂柳は今までで一番生き生きしているような気がするのだ。オレは、白藤色のワンピースをてに取った。
漂う坂柳へのヒロイン臭。