本気の戦いを   作:青虹

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前回に関して、少し足りないところがあったので、補足します。

クラス設立にあたって支払われたpptに関して、1000万です。編集しておきましたが、ここにも表記しておきます。大変申し訳ありません。

そして、日間ランキング13位ありがとうございます!


知らしめられた現実

 4月、始業式を迎えた日のDクラス。

 最初に入ってきた生徒は、その机の少なさに疑問を抱いた。その後に続く生徒も、全く同じものを。

 

「ねえ平田くん、なんか机の数が少ないんだけど……」

「えっ!?」

 

 入ってきた平田もその光景を目撃した。

 

 机の数の減少。Dクラスはこの光景を一度だけ見たことがあった。それも、つい一月前のこと。十分に記憶に新しい出来事だ。

 平田にとってそれは恐怖でしかなった。

 

「退学……とかじゃないよね」

 

 しかし、退学にしては机の数が極端に減りすぎている。

 

「でも、春休みに事件ってなかったよね?」

「うん……自主退学ってわけでもなさそうだし……」

 

 そこで須藤も教室に入ってくる。それを見た池が、須藤に話しかける。

 

「なあ健、なんか机少なくね?」

「何があったんだ?」

 

 後から入ってきた生徒も、同じようなことを口にする。しかし、どうしても原因が分からない。

 春休みに特別試験があるはずがない。Dクラスの誰かが事件を起こしたという話も聞かない。

 

「おい、これどういうことだ?」

「僕にも分からないよ。ただ、もしかしたら──」

「お前たち、席につけ」

 

 平田が何か気づきかけたところで、茶柱の声が響いた。

 茶柱は、全員が大人しく席に着いたのを確認するとこう問いかけた。

 

「お前たち、何か質問はあるか?」

 

 それは当然目立つ空白のことだった。

 池がまず手を挙げた。こういう時の行動力は比較的高い。

 

「センセー、なんか人少なくないですか?」

 

 しかし、茶柱は何も答えない。原因は一つ。

 新しいクラスの創設。そのメンバーの中心人物、綾小路のことだ。

 茶柱がAクラスに昇格するために、もっとも頼りにしていた人物だった。しかし、その彼も当然ここにはいない。

 

「え?センセー、何かあったんですか?」

 

 流石の池もこの状況のおかしさに気付き始めた。いつも大抵の質問に対し、冷静に答えてきた。しかし、今日はそれがない。苦虫を噛み潰したような表情で、目を伏せている。

 

 続いて平田が代表して手を挙げた。最近、平田とともに活発に行動していた堀北の姿は、もうどこにもない。

 

「あの、今いない人はどこに行ったんですか?」

「……何を言っている?Dクラスはこれで全員だ」

 

 ようやく答えたが、突きつけられた現実は非情なものだ。

 

「堀北さんや綾小路くん、幸村くん、軽井沢さんたちがいないのですが……」

 

 平田の問いかけに、茶柱は黙り込む。

 

「退学とかではないですよね?」

 

 その質問には、首を縦に振って肯定した。

 

「今いない生徒だが……」

 

 遂に茶柱から口を開いた。

 

「新しいクラス、Eクラスに移動となった」

「──!?」

 

 戦慄と同時に、あの日の情景がフラッシュバックする。

 

「そして、これがメンバー表だ」

「なんだよ……これ」

「坂柳さんもいる……」

「おい、龍園もいるじゃねえか!」

 

 そして、激しく後悔する。

 

 しかし、時すでに遅し。()()の準備は完了してしまっている。

 

 

 

 ー▼△△▼ー

 

 

 

「おいどういうことだ綾小路!」

 

 よく聞き覚えのある声で、よく聞き覚えのある台詞を聞いた。しかし、その声はどこか焦りを含んでいたように聞こえた。

 始業式を終え、それぞれのクラスに戻った直後のことだった。

 

「どういうことも何もないだろ。お前たちがしたことを思い返せば、それが全てだ」

 

 扉に目を向ければ、須藤や櫛田、池たちが見えた。

 今では()()()()()でしかないが。

 

「今のオレたちはcpを持っていない最弱だ。そんなやつにわざわざ構う必要はないだろ。帰ってくれ」

「お前には聞かなきゃいけねえことが山ほどあるんだよ!」

 

 オレからは何も話すことないんだが。原因は自分自身にあるのだし、本人が一番よく分かっているはずだが。

 

「おい、愚痴愚痴うるせえぞ、雑魚が」

「あぁん!?」

「須藤くん、一度冷静になることをお勧めしますよ。無理かもしれませんが♪」

「お前ら……!」

 

 龍園と坂柳が須藤を挑発する。

 それによって、須藤は今にも殴りかからんとしている。相変わらず、沸点の低い男だ。

 

「まあ、せいぜい頑張って下さいね♪」

「お前──」

「あら、須藤くん。その手を下ろしたらどうかしら?」

「すずn──」

「名前で呼ばないで。吐き気がするわ」

 

 毒舌割り増しの堀北が、須藤に立ちはだかって制止する。

 しかし、一触即発の状況であることには変わらない。

 

 しかし、須藤の大きな声のせいで、すでに注目を集めていることだろう。須藤はそれでも気づいていないのだから面白い。

 

「折角変わったと思ったのに残念ね」

「なっ──!?」

 

 やはり堀北に弱いな、この男。

 須藤は夏休み前から堀北に片思いし続けてきた。だからこそ、強く出られない。

 

 時計の針が間もなく授業の開始を告げようとしている。オレは須藤の方へ歩み寄った。

 

「須藤、もうすぐ授業が始まる。帰ってくれ」

 

 有無を言わさず扉を閉め、鍵をかけた。教師は前から入ってくるので、何も問題はない。

 

 チャイムの音と同時に、教師が入室する。日本史担当の茶柱先生は、どこかいつもの冷静さを欠けているように見えた。

 

 

 

 ー▼△△▼ー

 

 

 

 始業式のため、午前中で授業は終わり。多くの生徒は食堂に向かう。Eクラス内でも、龍園たち元Cクラスの面々が既に向かっている。

 

「綾小路くん、私たちも行きましょう」

「ちょっと、坂柳さん!元々あたしと一緒に行くって約束してたんだけど!」

「あんた意外と人気じゃない」

「はぁ……」

 

 右に坂柳、左に恵。どちらが一緒に行くかでも言い争っているらしいが、なぜそんなことをするか分からない。

 

「3人で行っちゃ駄目なのか?」

何も分かってないわね……きょ、今日は坂柳さんが一緒に来るのを認めるけど、今度からはダメだからね!」

 

 軽井沢がボソボソと何かを呟いていたが、オレには聞こえなかった。

 坂柳は、余裕そうな笑みを浮かべて軽井沢に視線を向けている。

 

「では、今度からは先に予約しておくことにしましょう」

「ちょっ──!?清隆、明日からずっと一緒に行くわよ!」

「綾小路くん、軽井沢さんの言葉に耳を貸さないでください」

「だから二人ともオレで争うな……」

 

 ここで争われると、この先が思いやられる。本当に、Eクラスはうまくいくのやら。

 どちらにせよ、()()()()()()()のがオレの役割だ。

 

 相変わらず言い争いを続ける2人を連れて食堂に向かう。

 ところどころに山菜定食を食べている人を見かけた。0pptなだけあって、美味しいとは言えない仕上がりになっている。

 

 適当に注文して、偶然目の前で空いた席に座った。

 

「あれ、綾小路くんと軽井沢さん、坂柳さん」

「平田か」

「平田くん、こんにちは」

「何か用?」

 

 一人で来ていたらしく、他のDクラスの生徒はどこにも見えない。

 

 要件といえば、Eクラスに関しての話だろう。

 

「綾小路くん、どうしてEクラスなんて作ったのかな?」

「言わなくても理由は分かるだろ。あのことを忘れたとは言わせないぞ」

「……うん、ちゃんと覚えてるよ」

 

 平田は目を伏せた。後悔が垣間見えるが、後悔した時にはもう遅い。後悔とは、失敗したことに気づいて初めて襲われる感情だからだ。

 

「よく考えれば、綾小路くんが勝手に情報を漏らすなんてこと、しないよね」

「そうだな」

「あの日はただの世間話をしていただけですから」

 

 今更全ての過ちに気付いた平田は、急に頭を下げてきた。

 許して欲しいのだろう。しかし、平田だけを許したところでやることはもう変えられない。

 

「平田くん、もう行って」

「──え?」

 

 今まで黙っていた軽井沢が口を開いた。

 

「たとえ謝ったとしても、清隆を傷つけたことには変わりない。だから、謝っても無駄だってこと分かってるよね?」

「う、うん」

「平田くんは誰にでも優しい人だって思ってた。だから、あの日もみんなを止めてくれるって……そう思ってた。でも、止めてくれなかった……!それどころか、加担したよね!?分かってる!?」

「ご、ごめん……」

 

 平田が謝っても、軽井沢の罵倒は止まらない。

 

 今、この二人に食堂中の注目が集まっている。仮とはいえ、付き合っていた二人。平田はたくさんの女子から大きな人気を集めていた。それだけに、その事実は大きな話題となり、かなり広まっていた。

 だから、その二人に溝が入っているのを目の当たりにして、その事実を無視できないのだ。

 

「もう平田くんと付き合うなんて無理。どっか行って」

「……ごめん」

 

 平田はそれだけ言って、オレたちから離れていった。

 

「いいのか。平田は」

「いいわよ。幻滅したって感じ。それに、好きな人がいるし……

「そうか」

 

 確かにオレも平田がオレを切り捨てたのにはかなり幻滅した。

 だから、オレが本当の勝者であると思い知らせるのだ。

 オレの手で。はっきりと分からせる。自分自身が敗者であると思い知らせるために。

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